仮面ライダーディケイド2〜平成二期の世界〜   作:らいしん

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「大天空寺は現在参拝をお断りしております……って、ええー!?」

これまでの仮面ライダーディケイド2は……

「大天空寺は一夜の内に跡形もなくなってしまったんだ」
「旅は順調のようだな、ディケイド」
「タケルくん! 手を離すな……!」
「うん……! うわあああああああーーっ!!」
「タケルーッ!!」
「ユウスケ!」


第9話「晴天!二人の覚悟!」

 士と夏海はつくも屋に向かっていた。

 

「やっぱりうまく撮れないな……」

 

 士は早くも、この世界で撮った写真を現像していた。景色が歪んだ写真を見るのはもう飽き飽きだった。

 昨晩雨がぱらついたためか、石畳が敷かれた道は濡れていた。大股ですいすい歩く士と違い、夏海は下を向いてゆっくり歩いていた。ふと、苔の生えた石で足を滑らせる。

 

「ひゃんっ!?」

 

 倒れそうになった夏海の腕を士が掴む。

 

「ったく。下見てるくせに躓くな」

「……すみません」

「そんなにあいつらのことが心配かよ」

「当たり前じゃないですか! 士くんは心配じゃないんですか」

「全然」

「ひどい! それはひどいです!」

 

 夏海はその場に立ち止まって、士を攻める。彼はそんなことは気にもとめずに歩き続けた。夏海は頬を膨らませ、そんな薄情な男の背中を追う。

 

「あ」

 

 ふと、士の足が止まる。

 

「そういや昨日、鳴滝に会ったぜ」

「え!?」

 

 夏海は思わず士に駆け寄る。

 

「何を話したんですか」

「旅の目的を聞いた。だが、何も話さなかった。あいつはいつも一言足りないんだ」

「鳴滝さんにも事情があるんじゃないですか。……あ、分かった。士くん、きっと嫌われてるんですよ。だから意地悪されてるのかも」

「お前は一言余計だ」

 

 そうこうしているうちに、二人はつくも屋に着いた。

 

 

 

 

第9話「晴天!二人の覚悟!」

 

 

 

 

 眼魔世界。それは人間が住むこの世界とは別の場所にあるもう一つの世界のことである。人間の魂の存在、そして魂のエネルギーの研究の最中、偶然にも別世界の観測が可能になった。人間とは異なる姿の知的生命体を複数確認している。

 

「──といった感じだが、眼魔世界は調査中のことが多い。まだ……研究が進んでいない……みたいだ」

 

 マコトはノートをテーブルに置き、力尽きた。ところどころ汚れたり薄れたりしたページを解読しつつ、徹夜で読み込んだらしい。

 

「やっぱりかー」

 

 団子を頬張りながら士は言った。串を置くとアランが皿を下げ、カノンが次の皿を持ってくる。夏海はそれを受け取りお礼を言うと、こう質問した。

 

「その、アイコン……でしたっけ。相手はそれを狙ってるんですよね? どうしてタケルくんを連れ去ったりしたんでしょう」

「確かにそうだ。邪魔されたら撤退すれば良いだけなわけだし、わざわざタケルを連れてく必要はなかったような……うーん」

 

 アランが腕を組んで唸る。

 士が串で皿を叩いて次の皿を要求すると、はーいただ今、と思考を中断して対応にまわった。お行儀悪いですよと夏海に言われても、士は知らん顔だ。

 

「俺たちが今持ってる眼魂は全部で十四。全部リュウさんが持っていたものだけどな。あの眼魔が言っていた十五個を揃えるためには、あと一つなんだが……。ん? おいアラン、眼魂はどこだ?」

 

 マコトが戸棚の奥を覗き込みながら尋ねる。

 

「え? そこにあるんじゃないのか。誰も触ってないし」

「いや、ないんだ」

 

 

「やあ。探し物はこれかい?」

 

 

 笑顔の男が、住居スペースの二階に続く階段に座っていた。右手で見せつけるように持っているのは紫色のノブナガ眼魂。

 

「大事そうにしまってたけど、僕の目はごまかせないよ」

「誰だお前は」

 

 マコトは敵意の視線を男に向けた。それは最初に士に向けられたものと同じだ。

 

「あなた……海東さん!」

 

 夏海が彼に指をさして叫ぶ。士は彼に気づくと、飯が不味くなる、と団子を皿に置いた。

 

「あ、知り合いです?」

「いーや。こいつは悪人だ。さっさととっ捕まえた方がいいぜ」

「っす!」

 

 士にそう言われ、アランも構えた。

 

「いやー面白いお宝だよねえ。こんなのを集めるだけでなんでも願いが叶っちゃうなんてさ」

 

 海東はノブナガ眼魂を軽く投げ、キャッチする。そして元々眼魂が入っていた木の箱にしまった。中に入っている色とりどりの眼魂がガチャガチャと音を立てた。

 

「ふざけるな! それは大天空寺を再建するために使うものだ!」

「それは勿体ないね。なんでも願いが叶う。その価値がまるで分かってない」

「大天空寺はこの町の宝であり、タケルの宝でもある! 価値が分かっていないのはお前の方だ!」

「ふうん」

 

 海東は立ち上がり、急に方向転換して二階にダッシュした。

 一呼吸遅れてそれを追いかけるマコト。

 階段を上がった後、海東は手すりを掴み、勢いのままに素早く廊下を曲がる。正面の開いた窓から飛び降りて、つくも屋の外に出た。

 それを見たマコトは再び階段を駆け下りる。既に腰にはゴーストドライバーが巻かれている。そして鬼の形相でアランを怒鳴りつけた。

 

「なにボーッとしてるんだアラン! お前も来い!」

「えっ、おう!」

 

《カイガン スペクター》

《テンガン ネクロム メガウルオウド》

 

 スペクターとネクロムに変身した二人は海東を追い、店の外へ走る。

 それを見て、士も立ち上がった。ディケイドライバーを手に取り、腰に巻きつける。

 

「珍しいですね。士くんが人のために動こうとするなんて」

「俺をなんだと思ってんだ……」

 

《カメンライド》

 

「変身」

 

《ディケイド》

 

 手をパンパンと鳴らし、ディケイドは一枚のカードをライドブッカーから引き出した。

 その間も海東とライダーたちとの追いかけっこは続いていた。

 

「はっ!」

 

 スペクターはガンガンハンドを使って、逃げる海東の手元を撃つ。弾は箱を撃ち抜き、中に入っていた眼魂は辺りに散らばった。

 

「おい、撃っ……!? ふ……流石に必死だね」

 

《カメンライド》

 

「変身!」

 

《ディエンド》

 

 ディエンドに変身した彼は、お返しだと言わんばかりにスペクターとネクロムに向かって発砲する。二人の足は止まった。そしてディエンドは、腰のカードホルダーから二枚のカードを取った。

 

「君たちにはこれがいい」

「はあ?」

 

《カメンライド アクセル》

《カメンライド メテオ》

 

「足止めよろしく!」

 

 現れたのは赤いライダーと青いライダー。それぞれスペクター、ネクロムと戦いはじめる。ガンガンハンドとエンジンブレードが勢いよくぶつかり、火花を散らした。

 追手がいなくなり、ディエンドは落ちた眼魂を拾おうと手を伸ばす。

 

《フォームライド ダブル ルナメタル》

 

「!?」

 

 刹那、目の前の眼魂が消えた。

 ディエンドはライダーバトルが繰り広げられている背後を見た。スペクターたちが戦う後ろから、メタルシャフトをムチのように使って眼魂を一つずつ素早く自分の手元に飛ばすディケイドダブルの姿があった。

 

「士ァ……」

「海東! これはお前に渡さない」

 

「いいぞ士! そのまま逃げろ――ぐわっ!」

 

 メテオのパンチを受け、ネクロムは地面を転がる。

 

「待て!」

 

《アタックライド ブラスト》

 

「ぐわああああ!!」

 

 ブラストのライダーカードを使ったディエンドはディケイドダブルに向かって発砲する。アクセルとメテオは道の両側に回避し、弾は三人に命中した。

 ディケイドダブルは十四個の眼魂を、閉まっている店の先に置いてあったトタンバケツの中にまとめて投げ入れた。そしてそれを抱えながらカードをドライバーに装填する。

 

《アタックライド トリガーマグナム》

 

 シルバーの半身が青へと変わる。ディケイドダブルはルナトリガーへとフォームチェンジした。

 ディケイドダブルとディエンドの撃ち合いが始まる。両者は一歩も退くことなく、大天空寺跡地へと続く長い道の両脇を走りながら銃を撃つ。木箱や水溜りがあっても、それに気を取られることなく、両者は互いに集中している。

 ディエンドが発砲すると、それに合わせてディケイドダブルが撃つ。全てディエンドライバーの弾と相殺していた。

 いつのまにか二人は商店街を一周し、つくも屋の近くまで戻ってきた。ディケイドは一足先に店に入る。

 

「わっ、士くん!?」

「ナツミカン、ちょっと隠れてろ!」

「ちょ、ちょっと士さん! このお店は……」

「分かってる。この町の宝ってのを壊すわけにいかないからな」

 

 つくも屋に残る夏海とカノンは、突然入ってきたディケイドダブルに驚く。

 足が濡れたままの彼は、一枚のカードを取り出した。

 

「おーい。そんなとこに逃げ込んでも無駄だよ。それとも店ごとやって欲しいのかい?」

 

 追いついたディエンドがつくも屋の入口に銃口を向けた瞬間、ディケイドは別のライダーに変身してそこを飛び出した。

 

《フォームライド ビルド ニンニンコミック》

 

 つくも屋から飛び出した四人のディケイドビルドがディエンドを取り囲む。それぞれの右手には4コマ忍法刀、左手には眼魂が入ったバケツ。

 

「確率は四分の一。運試しかい?」

「はああっ!!」

 

 四方から一斉にディエンドに飛びかかるディケイドビルド。ディエンドは素早くカードを装填する。

 

《アタックライド インビジブル》

 

「うあっ!!」

 

 ディエンドが消えたことで、四人はぶつかり、その場に転げる。

 

「士、僕の邪魔をした罰だ」

 

《ファイナル アタックライド ディディディディエンド》

 

 ドライバーから放たれた青い光線は四人のディケイドビルドを飲み込む。分身したといっても同時にやられてしまえば意味がない。直撃した地面が煙を上げるなか、光線を放出し終えた。

 だが、その場にはディケイドの姿も、変身解除した士の姿もない。

 

「……」

 

 ディエンドは無言で変身を解除する。そしてディケイドが最後にいた場所、つくも屋の中に入る。その場にはテーブルに座る夏海しかいない。

 裏口に続く濡れた足跡を見て、彼はからくりに気づいた。

 実は、ディケイドはさらに一人多く分身していた。四人をおとりにすることで本物の眼魂を持って逃げることができたのだ。

 

「士め……やってくれるじゃないか」

 

「何をしている、ディエンド」

 

 追いかけようとする海東を呼び止める声。彼と夏海がそちらを見ると、鳴滝が店の奥のテーブルに座っていた。

 

「鳴滝さん!」

「はあ……あなたですか。怖い顔はやめてくださいよ。僕の役目はもう終わったはずでしょう。だから僕は僕のやりたいことをする。それで文句はないはずだ」

「ディケイドの旅が終わらなければ、今度こそ世界が破壊される」

「言ってることが無茶苦茶ですよ、鳴滝さん。あなたは何がしたいんだ?」

「……っ」

 

 海東が鳴滝に銃口を向ける。それを見て動揺したのか、彼は立ち上がった。そして、背後から迫るオーロラの中に消えた。

 

「……あら? 夏海さん、さっきの方は?」

「帰っちゃいましたけど」

「ええー。せっかくのお客様だったのにぃ」

 

 鳴滝のために水を持ってきたカノンは、文句を言いながら店の裏に戻っていく。

 

「海東さん」

「なんだいナツメロン」

「……夏海です。あの、海東さんの役目ってなんだったんですか」

「そんなこと聞いて何になるんだい」

「知りたいんです。同じライダーの仲間なのに、士くんは何も知らないし、海東さんは別の役目があるし――」

 

 無視して帰ろうとしていた海東はある言葉に反応し、夏海の座るテーブルをばんと叩く。

 

「分かった、教えてあげよう。だから、仲間なんて気持ち悪い言葉使わないでくれ」

 

 彼は語り出す。

 

「僕の役目は、士より先に世界を巡り、お宝を手に入れることさ。それを決めたのも、大ショッカーからドライバーを盗むように仕向けたのも、全部あの鳴滝という男だ。弱いくせに、ずっとあの人の掌の上で踊らされてるようで、気に食わない。……これでいいかな?」

 

 ありがとうございました、と夏海が声をかける間もなく、彼はさっさとどこかに行ってしまった。

 

 

 

 

 そこは眼魔世界。赤い空の下、二人は歩いていた。昨晩は近くにあった廃墟で夜を過ごした。埃を被ってはいたが、一通り家具は揃っていたため不自由に感じるところはなかった。

 

「ゴホッ! ガハッ……!!」

 

 ユウスケは咳込み、膝をつく。そんな彼の背中をさすり、タケルは心配する。

 

「大丈夫?」

「うん。大丈夫大丈夫」

 

 そう言って彼はタケルに笑顔を向ける。ユウスケは今朝からこの調子だ。少し歩いては吐き気と咳に襲われる。しかし、タケルの方には変わった症状は見られない。

 二人の目的地はそびえ立つ塔。周りに目立つものが何もないため、元の世界に戻るために藁にもすがる思いでそこを目指す。

 やはり厳重に警備されているのか、近づけば近づくほど眼魔の出現頻度が高くなっていく。二人の前に五体の眼魔コマンドが現れた。

 

「うわぁあ……!」

 

 タケルはユウスケの後ろに隠れてしまう。

 

「くっ……変身!」

 

 動悸が激しい胸を押さえつつ背筋を伸ばし、ユウスケはクウガに変身する。そして眼魔コマンドにパンチを繰り出し、次々に倒していく。

 最後の一体を倒したところで、クウガのボディが一瞬白くなり、変身が強制的に解除された。ユウスケはまた激しく咳き込む。

 彼の背をさするタケルの俯いた表情はどことなく暗い。

 

「どうした? 大丈夫か?」

 

 大粒の汗を流しつつ、ユウスケはタケルを心配する。それに対してタケルは、違うよと答えた。

 

「俺、どうしても戦えないんだ。怖いんだ。大天空寺を継ぐ、立派な人にならなくちゃいけないのに。あの時も、つくも屋を守るために戦う決心をすることもできなかった。今もそう、ユウスケが戦ってくれてる。それなのに俺は……逃げてるだけだ」

 

 タケルはポケットから刀の鍔を取り出した。

 

「これは?」

「これ、父さんからもらったものなんだ。俺が一人前になれるようにって、昔の立派な侍の剣の鍔をくれたんだ。でも、俺はずっと変われないまま。ねえ、ユウスケは怖くないの? なんで戦ってるの? 俺に教えてよ」

「怖くない……こともないかもなあ」

「じゃあなんで」

 

 ユウスケは楽な姿勢をとるため、仰向けになってその場に寝転ぶ。彼の視線は空へ。

 

「世界中のみんなの笑顔のため、かな。……そういえばタケルの笑った顔、まだ見てないな」

「笑顔?」

「世界中の人のためなら、俺は強くなれるし、戦える。俺がすごーくお世話になった人の言葉なんだ。なに、生きてれば辛いことだってあるさ。雨が降ることだってある。でも、その雨はいつか絶対止んで、綺麗な青空になる。な? タケルの心の雲だって、いつか晴れるさ」

「うん……」

「まずは、何かやりたいことを見つけたらどうだ?」

「やりたいこと……かあ」

 

 そんな二人の前に、二つの影が近づいてきた。片方は色とりどりで歪なパーカーを纏った眼魔。そしてもう片方は顔を防塵マスクで覆い、体中に布を巻きに巻いた、暑苦しい格好をしていた。

 

「おい、君たち、生身の人間か!? まさか眼魔眼魂まで取り上げられたのか!? それよりどうしてこんなところに――」

 

 防塵マスクの男は二人の顔を見て、立ち止まった。その口から出た名前は自然に漏れたような声だった。

 

「タケルなのか……?」

「と、父さん……」

 

 そこにいたのはタケルの父、九十九リュウだった。

 

 

 

 

 海東襲来からしばらく時間が経った頃、士は大天空寺跡地に来ていた。マコトから鍵を預かっていたため、中に入ることができた。

 士はバケツを地面に置き、眼魂を一つずつ取り出して確認する。形は同じだが様々な色のものがある。

 眼魂を地面に並べているうちに、士はそこに何かが埋まっていることに気づいた。マコトが立ち入りを制限し、また自らもここに来ることがなかったことで、これに誰も気づかなかったのだ。

 

「なんだこれ」

 

 掘り出してみれば、それは小さな彫刻だった。ドライバーと同じくらいの大きさの石に、目の紋章が彫られている。

 それは小さなモノリス。二つの世界を結ぶことができる不思議な石。かつて九十九リュウが大天空寺を眼魔世界に移動させる際に使用したものだ。しかし、士はそれを知る由はない。

 

「……」

 

 ふと気配を感じて振り返ると、見覚えのあるコート姿の男が立っていた。

 

「鳴滝、昨日はよくもはぐらかしてくれたな」

「時間がない。今こそ選択の時だ、ディケイド」

「あ? 何がだ?」

「小野寺ユウスケをこの世界に置いていくことをだ」

 

 あまりに唐突な話だった。

 

「いきなりなに言ってやがる」

「彼はこの旅の障害になり得る存在だ。いつかまたお前と拳を交えることになる」

「あいつにベルトを渡したのはお前なんだろ。そもそもあいつはそんなヤツじゃない。お前、俺が破壊者になることはないって言ったよな。だったらユウスケが俺の敵になる理由がない」

 

 以前、彼と戦ったことがある。全ての世界を巡ってなお世界の融合を止められず、破壊者としての自分を受け入れてしまった時。

 

「理由はある。彼の世界の意思が消えかかっているのだ。それに、徐々に私の力もなくなりつつある」

「世界の意思? お前の力?」

「まだお前の旅は終わらない。急ぐのだ。早くしないと……世界が……」

「世界が、なんだ!? おい、また肝心なことを言わず消えるのか!」

 

 士の声も虚しく、鳴滝は消えた。

 

「チッ。ったく。出てくるならもっとまともなことを言って帰れ……ん?」

 

 突如士が持っていた彫刻が光り出した。光は大きくなり、塀の中全体を包み込んだ。

 

「うわあああああっ!」

 

 

 

 

 時は数分前に遡る。

 二人はリュウに連れられ、彼の隠れ家にやってきた。それを見てタケルは息をのむ。外見の色合いが派手に変わっているが、間違いなく自分がかつて住んでいた建物──ある日忽然と消えた大天空寺が、そこにあったのだ。

 

「ここの空気は生身の人間には毒だ。大天空寺の外に出る時にはマスクが必須。君は一晩中何もつけずに外にいたんだってな。死ななかっただけでも運がいいぞ」

 

 ユウスケはベッドに寝かせられ、リュウの連れの眼魔――画材眼魔が持ってきた呼吸器をつけられる。しばらくすると、辛そうな彼の表情は柔らかくなった。

 

「俺は平気だった……」

「それはゴーストドライバーの力だ。眼魔世界で自由に行動できるように開発したものだったが、こういうかたちで本来の使い方がなされるとは」

 

 リュウはベッドの下から薬を取り出し、画材眼魔に渡す。眼魔はユウスケの呼吸器に繋がった機械にそれを入れた。

 

「この眼魔は?」

「私の研究に関心を持ってくれたから、ここに住まわせることにした。なかなか頼もしいやつなんだぞ。趣味の絵描きで寺の外観がちょっと変わってしまったがな」

 

 リュウにそう言われ、画材眼魔は照れたように自分の頭をかいた。

 

「そうじゃないよ。なんで眼魔と仲良くしてるんだってこと。眼魔は悪い奴らじゃないの? 今日だって、閉まってるお店を壊してたんだ」

「それはきっと過激派の眼魔たちだな。眼魔というのはこの世界の住人だ。私やタケルとなんら変わらず、同じように生きている。……一部の過激派の眼魔は、こいつらのような一般眼魔の生命エネルギーを使ってよからぬことをしようとしているらしいがな」

「ヒイッ」

 

 画材眼魔は怯えた声を出し、震える。彼も過激派の眼魔とやらから逃げてきたのかもしれない。

 

「眼魔にもいいやつと悪いやつがいるってことなのかな。うん、それは分かったよ。じゃあ、大天空寺がここにある。これはどういうこと?」

「……眼魔や眼魂の研究をはじめてから、もう何年が経ったか」

 

 リュウは語りだした。息子に説明するのではなく、まるで独り言のように。

 

「元々、私は人間の魂の存在を証明することと、それらが現実世界に作用する現象を研究していた。そしてある時、地球とは違う別の世界の観測に成功した私たちは、その世界の研究にも手を出した」

 

 ユウスケに繋がれた器具の中の液体が、ゴボンと音を立てる。

 

「この眼魔世界では魂、とりわけ英雄と呼ばれる者の魂は強いエネルギーを持つ。そのエネルギーを集め、一つに凝縮することで凄まじい力を発揮し、世界の改変――つまりなんでも願いが叶えられるほどの力を発する。それを知らなかった私たちは、遺品や研究資料をもとに地球の英雄を眼魂に変換させる実験を成功させてしまったのだ」

 

 リュウの視線はだんだん下に向いていく。拳を強く握りしめ、表情も険しくなっていく。

 

「魂を眼魂に変換するには大きなエネルギーが必要となる。それを提供してくれたのは眼魔側だ。それがまさか……眼魔世界の人間たちの命を使って生み出されたものだったとは思わなかったのだ」

 

 タケルがはっと声を漏らす。その隣で、画材眼魔は両手で顔を隠して震える。

 

「実験が成功すると、眼魔世界からそれを狙ってたびたび兵が送られてきた。……今思えば、最初から英雄眼魂が欲しかっただけだったのだろうな。奴らは口で話してなんとかなる相手ではなかった。私は、自分の研究のせいでこれ以上他の人たちを巻き込むわけにはいかないと判断した。だから、大天空寺を眼魔世界に転送した」

 

 語り終わる頃には、ユウスケも目を覚ましていた。

 

「あなたも、ここでずっと戦ってきたんですか」

「ああ。幼いタケルを残して眼魔世界に来ること、それが私の覚悟だった」

「かっ、覚悟ってなんですか! タケルはずっと一人で……!」

「マコトくんたちがいるだろう。タケルは私がいなくとも強くなれると思ったんだ」

 

 リュウはタケルの頭を撫でた。彼の手の下で、タケルは唇を噛んでいた。

 

「奴らは私を狙っている。眼魂を生み出した私が、今もまだそれらを所持していると思い込んでいるのだろう。実際は地球にあるとも知らずにな。もし私が見つかり殺されたとしてもタケルに危害が及ぶことはないと高をくくっていた……」

 

 彼はユウスケに繋がった器具を外す。そして彼にマスクを渡した。

 

「このままでは眼魔世界も終わりを迎えるだろう。環境の悪化で世界が滅びかけている。眼魔たちは地球を第二の眼魔世界にするために眼魂を集めているんだ。二つの世界を無理矢理繋げて、今度は地球の人間から生命エネルギーを吸い取って資源にするつもりだ。私たちは、奴らに抵抗するためにここにいる」

 

 リュウは画材眼魔の肩に手を置いた。

 

「英雄眼魂がなくとも、この世界をなんとか良くしたいと思っている奴らがいる。私はそれが嬉しかった。ここに隠れるだけでは暇なのでな、こいつらの故郷であるこの世界のために、今は環境汚染を解決する研究をしている」

 

 リュウはそう言った。大天空寺の中にある実験器具は全てその研究のためのものだった。

 その時、突然壁に大穴があいた。

 

「なんだ!?」

 

 リュウはタケルを抱え、壊れた壁から遠ざける。画材眼魔はユウスケの使っていた枕を取りあげ、盾にする。

 

 

「見つけたぞ。そのガキの気配を追って来てみれば、まさかお前がこんなところにいるとはな! 九十九リュウ博士」

 

 

 眼魔ウルティマが大勢の眼魔コマンドを引き連れ、やってきた。

 

「お前……アーロンか! みんな逃げるんだ! こいつが過激派のリーダーだ!」

「英雄眼魂を渡してもらおうか。どこに隠したんだ?」

 

 アーロンと呼ばれた眼魔ウルティマがすっと手を上げた。それを合図に、コマンドたちは大天空寺の柱を折り、崩していく。リュウの研究のレポートや実験器具も、崩れ落ちていく天井に飲み込まれる。

 

「やめろ! この研究はこの世界を救うためのものだ!」

「お前が消えてからかなりの時間が経った。それからずっとこの研究をしていたと見える。しかし未だに成果は出ていないのだろう? ならばこんなもの必要ない! さあ! 英雄眼魂を渡せ! 多くの犠牲の上で、眼魔世界は復活を遂げるのだ!」

「それは復活ではない。ただの略奪だ! それに、その方法で解決したとしても、それは一時的なもの。またすぐに限界が来るぞ。それはお前も分かっているはずだぞ」

「黙れ」

 

 ウルティマは剣を持ち、リュウに斬りかかった。リュウは壁に飾ってあった刀をさっと取る。刀身を鞘から抜き、相手の剣を受け止めた。

 

「この世界は救われるはずだったというのに……! お前の他にもいるはずだ……眼魔という名の多くの人間が! この環境汚染で、人間の姿を捨てざるを得なくなった者たちがな!」

「救われる必要などない。いくら延命したとて、必ず終わりが来るのだから!」

 

 リュウとウルティマの剣が激しくぶつかる。リュウは生身の人間でありながら、上級眼魔を相手に渡り合っている。

 

「それに、やつらは所詮低級の存在。皆が等しく滅びの未来を待つのならば、俺一人が最強の力を手に入れ、全てを統べる王になる! 完全な存在となり、世界を導く!」

 

 ウルティマは剣を床に突き刺す。刃が輝き、それと呼応するかのように周りの低級眼魔たち数人が光りだす。そしてその眼魔たちからエネルギーが抜け、体は黒いもやになって消えた。生命エネルギーは地面を這い、剣に吸収され、それを掴むウルティマへと移動する。

 

「アーロン、お前ッ!!」

 

 リュウはまた攻撃を仕掛けるが、今度は触ることすらできずに防がれてしまう。

 

「この程度の命でも、お前の攻撃を無にするには十分すぎるほどだ」

「この程度、だと! 命を愚弄するのか……!」

 

 ウルティマのもう片方の手には英雄の力を持った二つの眼魔眼魂が。

 

「知恵の王・ソロモン! 力の王・アーサー! うおおおおおおお……!」

 

 その力を取り込むと、彼は眼魔ウルティマ・カイザーへと変化した。

 進化したウルティマの力は凄まじい。リュウを剣の一払いで吹き飛ばし、もう一度剣を振ると半壊していた大天空寺の屋根が消え去った。

 

「や――」

「やめろ!」

 

 背後から聞こえた少年の声に、リュウは振り返る。

 なにかに隠れることもなく、ウルティマ・カイザーの前に堂々とタケルが立っていた。

 

「ほう……英雄眼魂を渡す気になったか?」

「お前には渡さない。自分のために誰かを傷つけるお前には!」

「ならば消えろ!」

 

 ウルティマは剣を地面にずぶりと突き刺す。溢れる力を地面に放出することで、残った眼魔コマンドもろとも辺り一面を吹き飛ばそうとしたのだ。だが、そこにはあるものが存在していた。

 九十九リュウが大天空寺を眼魔世界に転送するためにつかった装置。

 それを破壊したことで、二つの世界の境が不安定になる。

 

 

「うわあああああっ!」

 

 

 大天空寺跡地に大きな次元の穴が開いた。

 穴から流れ込んでくるのは大小の瓦礫と、たくさんの眼魔コマンドとウルティマ・カイザー、そしてユウスケ、タケル、リュウの三人。ついでに画材眼魔。

 

「も……戻ってきた?」

 

 次元の穴は開いたまま。モノリスの力と、装置を破壊したことで溢れたエネルギーが残留しているのだ。

 

「異世界旅行はどうだった」

 

 士が、倒れるユウスケに手を差し伸べた。

 

「なんだお前、少しは心配してくれてもいいじゃないか」

「お前なら大丈夫だと思ってたからな」

 

 ユウスケはふっと笑う。

 その時、山のように積まれた木片を吹き飛ばし、ウルティマ・カイザーが姿を現す。

 

「お前たちを殺して英雄眼魂を奪ってやる! そうだ、お前たちの故郷のこの地を墓場にしてやろう!! この絶対の王がな!」

 

 ウルティマ・カイザーは剣を天に掲げる。周りの眼魔コマンドが苦しみだす。皆生気を失ったようにうなだれ、ゾンビのような姿勢になる。

 

「あいつ、何をした!?」

「また周りの眼魔からエネルギーを奪ったんだ! 今度は命までは取らなかったようだが、あれでは……」

「その通り。王の意思は絶対だ。そこに余計な感情など必要ない。永遠に存在する俺だけの世界には、俺だけがいれば良いのだ!」

 

「違うな」

 

 傷だらけのリュウたちの前に、士が立つ。

 

「人は一人じゃ生きられない。だから助け合う。人は誰しも、人生の大切な時間を共に過ごす仲間が必要なんだ。誰かを愛し、共に笑い、悲しみ、たまに怒り、同じ時を過ごす。それを軽んじるお前は王どころか、ただの人間にすらなれない」

「黙れ! もう眼魂はこちらに渡ったも同然!」

「それも無理だ!」

 

 ユウスケが言う。

 

「なんだと? それはなぜだ!?」

「勇気だ。タケルはそれを手に入れた。もう戦うことを恐れない」

 

 タケルの目は真っ直ぐにウルティマを見つめていた。

 

「お前たちは……一体?」

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ。行くぞ! タケル! ユウスケ!」

「はい!」

「おう!」

 

 三人は横に並び、それぞれベルトを装着した。

 

《アーイ!》

《カメンライド》

 

「変身!」

「変身」

「変身!」

 

《カイガン オレ》

《ディケイド》

《レッツゴーカクゴ! ゴゴゴゴースト!》

 

「命、燃やすぜ!」

 

 三人は眼魔の群れに向かっていく。

 

「タケルッ!」

「変身できたんだな!」

 

 回復したスペクターとネクロムが加勢し、ディケイドやクウガとともに眼魔コマンドたちを蹴散らしていく。

 ゴーストのガンガンセイバーとウルティマの剣がぶつかりあう。

 

「ついに戦う気になったらしいな……!」

「俺は父さんの話を聞いて、地球も眼魔世界も、両方救いたいと思ったんだ! だから、俺がやりたいと思ったことをやるだけだ!」

「救う? その感情の到達点が俺との戦闘か? まったく。俺を否定する割に、野蛮なのはそちらも同じではないか!」

「誰かを傷つけるためじゃない! 地球の命、眼魔世界の命、みんなの命を守るために……俺は戦うんだ!」

 

 ゴーストが叫ぶと、彼が持っていた刀の鍔が浮遊する。そして眩い光とともにムサシ眼魂へと変化した。

 

「あれは……最後の英雄眼魂……」

 

 地上で、リュウは新たな眼魂の誕生を見ていた。

 数々の歴史的資料と多くのエネルギーを消費して、やっと眼魂生成実験に成功した。それが今、目の前で生まれた。タケルの心──覚悟に応えるように、英雄が力を貸したのだ。

 

「これは……」

「英雄眼魂! どけィ!」

 

 ウルティマはゴーストを弾き飛ばし、赤い眼魂を鷲掴みにした。エネルギーを眼魂に注ぎ込むと、残りの十四個の眼魂が飛んできた。

 

「かっ、返せよ! うわっ!」

 

 ウルティマに蹴られたゴーストは地面を転がり、乱戦の中へと放り込まれた。眼魔コマンドを倒しながら、それを見ていたディケイドが彼のもとへと向かう。

 それと同時にライドブッカーが開き、カードがディケイドの前に飛び出す。そしてそれらは眼の紋様とともにゴーストの力を手に入れた。

 ディケイドはカードをドライバーに装填する。

 

《ファイナル フォームライド ゴゴゴゴースト》

 

「タケル、立て。ちょっとくすぐったいぞ」

「え? はい」

 

 ディケイドがゴーストの背に手をやると、そこから大きな爬虫類の顔が飛び出した。そしてゴーストは宙に浮かびながら体を大きく捻る。再び地に足をつけた時には、その姿は『ゴーストイグアナストライカー』へと変わっていた。

 上空では、既に十五の眼魂が円状に整列していた。

 

「この俺を……!!」

 

「行け! タケル!」

 

 ウルティマが眼魂に向かって願いを言おうとするところに、ゴーストイグアナストライカーがぶつかっていく。ウルティマは吹き飛び、眼魂は地面にぱらぱらと落ちた。

 

「……ッ! 邪魔をするな!」

 

 ウルティマ・カイザーの剣は大きく変化する。それを思い切り振り下ろすが、イグアナはそれに自身の尻尾で対抗する。剣を弾き飛ばして隙をつき、イグアナはウルティマを空に向かって蹴り飛ばした。その反動でイグアナは地上のディケイドのもとへ飛んでくる。

 

《ファイナル アタックライド ゴゴゴゴースト》

 

「かましてやれ! タケル!」

 

 イグアナは四肢を折り曲げ、大きな眼魂へと変化した。空を舞うウルティマ・カイザーの背後には眼の紋様が浮かび上がる。

 

「どうだ! 人間が協力すると、こんなに強い力が出せるんだ!」

「はあああっ!!」

 

 ディケイドは巨大な眼魂を空に向かって蹴り飛ばした。眼魂はウルティマに命中する。

 

「う……うわああああああああああ!!!!」

 

 空で巨大な爆発が起きた。

 ゴーストが着地するとともに、ウルティマを構成していた眼魂はバラバラになり、彼の剣も折れた状態で落ちてきた。

 スペクターたちの活躍によって、地上の眼魔コマンドも全滅した。クウガはゴーストに向かって、サムズアップを向ける。ゴーストはそれに応えるように親指を立てるのだった。

 

 

 

 

 大天空寺の門の前。つくも屋の面々とリュウ、そして士とユウスケと夏海がそこに集まっていた。

 英雄眼魂は、タケルが生み出したムサシ眼魂で十五個になった。集められた眼魂は輝き、強大な力を持っていた。

 

「タケルが覚悟を決めたことで、最後の眼魂が目覚めたんだな」

「うんうん! さすがタケルだあ!」

「ほら、タケル。願い事を」

 

 ユウスケが、中央でそれを眺めるタケルの背中を押した。大天空寺を元に戻し、町を復興させること。それが願い事だ。

 

「うん」

 

 彼はすうっと空気を吸った。

 

 

「眼魔世界を、元の住みやすい世界にしてほしいんだ」

 

 

「!?」

 

 一同が驚く中、眼魂は宙に浮かび、ぽっかり空いたままの次元の穴の中に飛んでいった。眼魂のエネルギーは眼魔世界の中で弾ける。

 みるみる景色が変わっていく。視界の悪い空気は澄んでいき、漂う塵は消え、毒された大地も浄化された。

 

「戻った……世界が……」

 

 リュウは茫然とそれを見つめていた。自分が成しえなかった研究の先にあったものが、そこに現れていた。

 画材眼魔は喜び、綺麗になった眼魔世界を走りまわっていた。それだけではない。以前まで見られなかった動物たちが眼魔世界に現れた。

 眼魔世界は地球と同じく、綺麗な世界になっていくに違いない。そしていつか眼魔のボディも必要なくなり、再び生身で生活することができるかもしれない。それはきっと、遠い未来の話ではないだろう。

 

「タケル! これは!?」

「今、俺がやりたいこと。父さんを今日まで匿ってくれた世界へのお礼だよ。それに、困っている人がいるなら助けたいと思ったんだ」

「だが大天空寺が壊れたままだぞ!?」

「それはこれから直していけばいいよ。父さんも帰ってきたし、俺ももっと頑張るからさ」

 

 焦るマコトにタケルは落ち着いた様子で言った。若干乱心気味の彼を、アランとカノンがなだめる。

 

「ユウスケ」

 

 タケルは士たちの方へ歩いてきた。

 

「いろいろありがとう。やっと、青空になったよ」

「……ああ!」

 

 二人の笑顔は眩しかった。青く美しい眼魔世界の空を見つめる二人の背中を、士は写真におさめた。

 

 

 

 

 光写真館のスタジオで、士はこの世界で撮った写真並べていた。相変わらずの写真の出来だった。

 ユウスケはその中の一枚を手に取る。眼魔世界が背景になった二人の写真だ。

 

「お、これいい写真だなあ」

「おー。いいねいいね。アルバムにしまっとこう」

 

 栄次郎はいくつかの写真をとり、アルバムに貼っていく。

 

「タケルくんたち、お寺の参拝受け付けはじめたそうですよ。まだ完璧じゃないですけど、本堂がもうすぐ建つみたいです」

「大天空寺復興のために、眼魔世界からお手伝いが来るらしいぞ」

 

 嬉しそうな二人に対し、士は興味ないね、といった顔。

 

「ま、この世界もあいつらがいるなら大丈夫だろ」

 

 士はお土産にもらった握り飯を頬張りながら呟く。

 

「おっ! あらっ! わっ!」

 

 アルバムを棚に片付けようとした栄次郎がバランスを崩し、柱に寄りかかる。同時に鎖を掴んで引っ張ってしまったことで、ジャララララと新たな絵が出現する。

 鬱蒼とした森の中に、毒々しい実をつけた見たことのない植物が描かれている。絵の中央付近には、何か光源があるのか、金色に光る何かがある。それが何であるかは絵からは読み取れない。

 

『彼はこの旅の障害になり得る存在だ。いつかまたお前と拳を交えることになる』

 

 士は鳴滝の言ったことを思い出していた。そして、絵を見つめるユウスケの横顔を一瞥する。

 

 まさかな。杞憂だ。

 

 そもそも士は鳴滝の忠告など聞くつもりはない。

 

「俺たちも次の世界に急がなくちゃいけないみたいだな……」

 

 士は、手に持っていた握り飯の残りを口に放り込んだ。




次回 仮面ライダーディケイド2

「チキチキ! 黄金の果実争奪! ヘルヘイムサバイバルゥー!」
「ユグドラシルのことなんて信じられるか!」
「二人一組がルールとなりまーす」
「これは罠だああ!」
「刀の錆にしてやる」

第10話「探せ果実 鎧武の森」

全てを破壊し、全てを繋げ!
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