とある爬虫類のヒーローアカデミア(ヒーローになるとは言っていない)   作:丑こく参り

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タルタロスの災厄

(あー……ダリィ)

 

俺は塩酸のプールの中を漂いながら目を動かす。

 

何年経過したのかもあんまり分からないし、そんな事どうでも良い。俺にとって、ここから出る事が最優先だしな。

 

(それにしても、六蜂弐……ねぇ。どう考えても人につける名前じゃねぇだろ)

 

俺には前世の記憶がある。とは言っても、俺の記憶に前世の思い出はない。人間どもが言うところの『エピソード記憶』が欠落していると考えて良いだろう。

 

(人間どもを皆殺しにするのは簡単だけど、この見た目じゃすぐに見つかる。見つかっても全員ころしてしまえば良いんだけどね)

 

ようは、効率の問題だ。見つかって逃げられると殺すペースが落ちてしまう。それはそれで面倒くさいし、時間がかかってしまう。

 

(そう言えば、元は俺は人型だったな)

 

忌々しい事に、俺は人の胎で産まれた。そして、産まれてすぐは人間と蜥蜴が合体したような……『蜥蜴人(リザードマン)』だったけか……に近い姿だった。あれだと器が狭くて無自覚にイライラしていだが、成れる事には、成れるだろうな。

 

(となれば、後は抜け出すだけだが……)

 

酸のプールにも飽きたし、既に酸性に対する耐性は取得した。何せ、最低でも十年はプールの中をプカプカしていたわけだからな。十年以降は知らん。数えるのも億劫になっていたからな。

 

「なぁ」

「ひぃぃ!」

 

プールの近くの監視員に話しかけると棒のような物で俺をプールの中に押し込んでる。

 

全く……これでは出れるものも出れん。仕方ない。こうなれば、サクッと殺してしまおう。

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

押してきた棒を避け、監視員の腹に噛みつきそのまま背骨をへし折る。

 

よし、まずは脱出成功。

 

「けいこ」

「うるせぇなぁ!」

 

後ろ足で地面を蹴り、壁を駆け上がり五月蝿い機械を爪で破壊する。

 

「さて……」

 

機械を全て壊したあと、床に立つ。

 

イメージするのは人間。それさえできれば適応できる。

 

「お、できたな」

 

明確にイメージした瞬間、俺の体は変化を始め、人のような姿に変わる。

 

やはり、元の体の方が感覚的に楽だし、この姿は常にイラついてしょうがない。

 

「動くな!!」

「遅ぇな」

 

唯一の扉から現れた銃を持った人間どもに一呼吸で近づき、爪で腹を裂き、拳で心臓を潰し、尻尾で脳を押し潰す。

 

「全く、この程度で俺を殺せると思っていたのか」

 

死体に変わった人間どもを持ち上げて補食していく。

 

別段、空気さえあれば何も食わ無くても問題ないが、気分的になにか形のあるものを喰う方が気が楽だ。

 

「さて、さっさと脱出するか」

 

全員補食し終えた後、扉から出ていく。

 

うっへぇ、機械まみれの異常な空間だな。それに、この天井の低さは元の姿の俺なら入る事が出来んかった。これ、どう考えても俺専用に作られていただろ。いや、増設させたと考えた方が良いか。

 

人間ども、よくこんな物で俺を抑えれると思っていたな。馬鹿じゃねぇの?

 

「やっぱり、ムカつくなぁ……!」

 

人間どもの心臓を爪で引き裂き、頭を踏み潰し、尻尾で押し潰しながら通路を進んでいく。

 

何か部屋に拘束されていた奴らもいたが、問答無用で殺す。

 

こんなにも生命の気配があるだけでもムカつく。生きとし生けるものはいる事自体イラつく。そして、それらが生み出した物は……許しがたい。

 

「さぁ、恐れろ」

「ひ、ひぃ!」

 

豆鉄砲を放ってくる人間の一人が逃げ出したのを見計らい一気に接近し人間の背中を蹴り飛ばし地面の染みに変える。

 

「こいつ……!」

「接近された時点で終わりなんだよ」

 

近づかれた事に気づいた人間どもが筒をこちらに向けてきたが、撃たれることはなかった。

 

何せ、撃つよりも速く、俺の爪、拳、脚、尻尾が振るわれて地面、天井、床に突き刺さり、押し潰され、染みに変わったから。

 

「高々、人間の力で俺を抑えれるとか、滑稽だな」

「ちくしょお……!化け物め……!」

 

唯一生きていた隊長のような人間の頭を踏みつけながら嗤う。

 

無論、俺に豆鉄砲何か通じない。硬質な鱗と皮膚が鉱物の塊程度に突き刺さる事なんてあり得ねぇからな。

 

「化け物?当たり前だ。俺は『不死身の爬虫類』。その名の通り、不死身だ」

「ちくしょお……」

「俺にダメージを与えたければ核爆弾でも持ってくるんだな」

「ちくしょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

嘆く男の頭を踏み潰し、人間どもの死体を見下しながら嗤う。

 

やはり、怨嗟に籠った人間を踏みにじるのは心地よい!この憎しみは永久に続く。何を成そうと、俺の憎悪は止まる事を知らない!

 

「さて、さっさと行くか」

 

一通り嗤ったあと、俺は再び廊下を進む。

 

壁とか床を潰せば楽だろうが、人間どもは自分の手で殺したい。何せ、そっちの方が楽しいからな!

 

「おっ、あれが出口か」

 

フロアを上がるごとに人間どもを惨殺していくと、外に通じそうな扉を見つける。

 

閉じているが、閉じているのなら壊してしまえば良い。

 

「ふん!」

 

軽い呼気と共に拳を扉にぶつけるとあっさりと扉が吹き飛ばされる。

 

おーおー、橋の上に人間どもが沢山。全員殺し……て、このタイミングじゃなくてもいっか。最終的に殺してしまえば良いわけだから、成るべく殺してさっさと逃げよ。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

咆哮と共に地面を蹴り人間どもの塊に突っ込む。

 

豆鉄砲程度で俺は傷つかない。何も学んでねぇな人間ども!あの中で死んでいったやつらは本当に無意味な死んでいったわけだ!

 

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

嘲笑と共に暴力の嵐山となる。

 

腕を振るえば人間どもは紙のように吹き飛んで肉塊に変わる。

 

尻尾を振るえば弾き飛ばされて圧死する。

 

脚を振るえば胴が引きちぎれる。

 

爪を振るえば体が引き裂かれる。

 

「全く、学習能力のない猿が」

 

気づけば人間どもは全員血の海に沈んでいた。

 

人間どもの言葉で言えば、地獄絵図と言うものだろう。それじゃあ、さっさと去るか。

 

「よっと」

 

両腕を振るい拳を橋にぶつけると、橋に罅が入り俺を起点に崩壊が始まる。

 

これでサクッと逃げれる。

 

「あばよ人間ども!生きとし生けるものがいる限り、俺は暴虐の嵐となり続ける!!俺は『不死身の爬虫類』。生きとし生けるものの敵であり、貴様らを滅ぼすものだ!!」

 

崩壊する橋の上で爆音とも言える声量で宣言し、終えた瞬間橋が倒壊する。

 

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!

 

(ざまぁあみやがれ、人間ども!)

 

海の中を高速で泳ぎながら笑みを浮かべる。

 

これで人間どもは俺に気づいた。それなら、後は効率よく暴虐の嵐となり、生きとし生けるものを滅ぼすだけだ!

 

―――この日、タルタロスから初めての脱獄者が現れた。

 

―――名前は六蜂弐。十年近く前にオールマイト、エンデヴァーと言ったトップヒーローたちが総掛かりで捉えることに成功した最凶のヴィラン。

 

―――タルタロスの死者は百名を越え、生存者は数名のみ。

 

―――また、自衛隊の被害は百二十名を越え、橋の崩壊に巻き込まれて死んだ一般人は五百名を越えるとのこと。

 

―――『タルタロスの災厄』による死者約七百二十名、負傷者、負傷者五十三人。

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