祐介の実力の一端が垣間見えます。
放課後、俺は風太郎と一緒に中野姉妹の住んでいるマンションに向かう。
(そういえば、1つ確認してなかったことがあるな。)
俺は、風太郎に重要なことを確認してなかったことに気づき、確認を取った。
「そういえば、俺が家庭教師の手伝いをすることは、中野姉妹には言ってあるのか?」
「いや、まだ言ってない。」
「おまえバカか。いくら俺と彼女たちの面識があるからって、いきなり男が女性の家に来たらどう思う?」
「…完全に不審がられるな。」
「ああ。どうせ昨日の様子からして、まだ彼女たちと連絡先交換してないだろ?」
「ああ…」
「そんなことだろうと思ったぜ。いいか。家に着いたら、俺のことを至急伝えろ。これはお前の仕事だ。」
「わ、分かった。」
「じゃあ行くとしますか。」
そして、俺たちはマンションの前まで到着した。
風太郎が何故かオートロックの自動ドアの前で部屋番号を押さずに足止めを食らっているのを見て、俺は呆然と立ち尽くす。
(マジかコイツ。今時オートロックも知らねえのか。うわー。監視カメラに向かって1人で喋ってるよ。は、恥ずかしい…)
流石に見ていられなかったので、俺は風太郎にオートロックの開け方を説明する。
「ドアの横のボタンがあるだろ。そこに用がある部屋の番号を入力して中の人に開けてもらうんだよ。」
「そ、そうなのか?」
「ああ、というか今時オートロック知らないってかなり恥ずかしいぞ。」
「し、仕方ないだろ。今までこんな高級マンションに行く機会なんてなかったんだよ。」
そういう風太郎の顔はかなり赤かった。
どうやら本人も恥ずかしかったらしい。
そのまま風太郎は、部屋番号を入力する。
呼び出しに出たのは五月だった。
「はい、中野です。」
「上杉だが。家庭教師の仕事に来た。」
「分かりました。今開けますね。」
「待ってくれ、実は1つ伝えていなかったことがあってな。」
「何ですか?」
「実は、家庭教師のサポートをしてもらおうともう1人呼んでるんだ。」
「誰ですか?」
五月は、少し怪訝な様子でこちらに問いかける。まあいきなり連れてきましたなんて言ったらそうなるな。
「安心してくれ。お前たちも面識がある」
「え?」
「白銀祐介だ。初日にあっただろ。」
「白銀さんが!?」
「今横に居る。とりあえず2人で部屋に上がらせてもらっていいか?」
「分かりました。今開けます。」
そして五月はオートロックを解除し、中に入れてくれた。
「とりあえず門前払いは何とか避けられたな。じゃあ行くか。」
「ああ。」
俺たちはマンションの中に入っていった。
部屋の中に入ると、5人が中で待っていた。
(さすが最高級マンション。部屋の内装も豪華だな。)
俺が部屋に入ってそんなことを考えていると、二乃が話しかけてきた。
「ちょっと祐介!どういうことよ!」
どうやら俺が急に家に来たことに対して怒っているらしい。
彼女からしたら、俺も風太郎もいきなり家族の中に割って入ってきた異分子。あまりいい気分ではないだろう。
「すまない、二乃。既に風太郎から伝えられていると思ったんだが、まさか伝え忘れているとは思わなかった。家庭教師の件は今日急遽決まったことだから、報告が遅れてしまった。本当に申し訳ない。」
「…まあ事情は分かったわ。いきなり怒鳴ったりしてごめんなさい。」
俺が頭を下げると、彼女もそれ以上強く当たることはせずに、渋々下がっていった。
そこで、風太郎から改めて紹介する。
「事後報告になって申し訳ないが、今日から家庭教師のサポートをしてもらうことになった白銀祐介だ。」
「改めて、白銀祐介だ。ここにいる上杉風太郎から依頼を受けて、君たちの卒業までの家庭教師のサポートをすることになった。事前に言っておくと、俺は毎日来れるわけじゃないからそのあたりは承知しておいてくれ。あともう一つ、俺が依頼を受けた以上、俺の誇りにかけて君たちは全員笑顔で卒業できるようにしてみせる。どうかこれからよろしく頼む。」
俺の挨拶が終わると、歓迎する声、否定の声、、戸惑い、はたまた無関心。様々な感情が彼女たちから見られた。
(まぁ最初はこんなもんだろう。一応事前に顔合わせしておいてよかった。)
そして、風太郎から今日のことについて説明される。
「さて、紹介も済んだことで、今日は集まってくれてありがとう。」
「まあ私たちの家ですし。」(四葉)
「zzz…」(一花)
「まだ諦めてなかったんだ。」(三玖)
「………」(五月)
「友達と遊ぶ予定だったんだけど。あと家庭教師はいらないって言わなかったっけ。祐介には悪いけど、そういうことだから。」(二乃)
彼女達はやる気がないようだが、そうは問屋がおろさない。
風太郎はあくまで自分の意見を押し通す。
「だったら証明してくれ。今日はこの小テストを受けてもらう。合格ラインを超えたものには金輪際近づかないと約束する。勝手に卒業して行ってくれ。」
(風太郎がドヤ顔で言っているが、こいつの思うとおりにはならんだろう。)
「それと祐介。お前にもテストを受けてもらう。この中にはお前の学力に疑問を持つ奴もいるかもしれんからな。お前にも家庭教師の素質ってやつを証明してもらいたい。ちなみにテストはこいつらに渡したものとは別で、難易度はかなり上げてある。」
「へえ。面白いじゃん。」
「ちょっと待ちなさいよ。何でアタシたちがそんな面倒なことを…」
二乃は未だに乗り気ではなかったので、少し口を挟むことにする。
「そう言わずに頼むよ。これをクリアできれば少なくとも面倒な家庭教師の授業を受ける必要もなくなる。君にとっては願ったり叶ったりだろ。」
「いや、それは…」
「分かりました。やりましょう」
「五月!?」
どうやら五月さんがやる気を出したようだ。
それに触発されて、他の皆もやる気になり、最後に二乃も渋々ながらテストを受けることを了承した。
(まぁさっきの発言でターゲットにしたのは実は二乃ではなく、五月なんだけどね。ああいえば、五月は受けざるを得ないと思っていた。風太郎に対し苦手意識のある五月なら。)
俺は、内心でそんなことを考えながら、テストの準備をする。
「よし!ではテストを始める。合格ラインは60…いや、50あればいい。」
「別に受ける義理はないんだけど、あんまりアタシたちを侮らないでよね。」
そういって二乃も他の皆と同様にテストを受ける。
(いや、すげえ自信満々に言っているところ悪いんだけど、それできるやつのセリフだから。)
俺は二乃のセリフに呆れつつも、テストを始める。
(なるほど。確かに難しいな。少なくともあいつらのやっているテストより数段レベルが上だ。風太郎のやつ、家庭教師の素質を見せろっていって、これでダメだったらすげえ恥ずかしいぞ。まぁ俺に限ってはそんなことありえないんだが。あいつもそこは信用してくれてるのかね。)
そんなことを考えながら、俺は解答用紙をスラスラと埋めていく。
そして他の5人も終わったようだ。
「採点終わったぞ!まずは祐介の点数だ。全問正解。100点だ!」
風太郎からそんな声を聞き、5人は驚いている。
一方俺は、当然の結果だったので、あくまでも冷静だった。
「そうか。少し難しかったが、結果を残せて良かった。」
「いや、お前に限ってそれはない。」
(やっぱこいつ分かってやりやがったな。意地悪な奴だ。)
俺が風太郎に対して、呆れた目を向けつつも、続いて中野姉妹の採点結果発表に入る。
「そして、お前らの点数も出たぞ!凄え!100点だ!」
「全員合わせてな!!」
(やっぱりね…)
俺はその言葉に、呆れつつも、自分の考えが正しかったことを認識する。
そして…
「逃げろ!!」
5人全員自分の部屋に向かって走り出した。
つまり、彼女たちは、5人揃って落第しかけて転校してきた赤点候補の問題児なのであった。
(依頼を受けたはいいが、これは今までで一番骨が折れそうだな。)
俺は、これから退屈しなそうだと思い、自然と笑みを浮かべていた。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
話の進むペースが遅い気がする。
早く林間学校まで書きたい…