天災探偵と五等分の花嫁   作:ダイガスタ

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第8話 5つ子の可能性

風太郎side in

「三玖!お前が来るのを待っていたぞ!」

「何か用?フータロー」

「俺と勝負だ!お前の得意な戦国クイズでな。」

翌日、俺は三玖を呼び出した。俺はあの後、図書室であらゆる日本師関連の本を読み尽くした。今の俺なら三玖とも対等に会話できるはずだ。

しかし、三玖はあまり乗り気ではないようで、俺は少し挑発してやると、直ぐに乗っかってきた。

だが三玖はまともに取り合おうとせずに、直ぐに俺から逃げてしまう。

 

「待て三玖!逃がすか!」

俺は急いで三玖を追いかける。すると曲がり角で四葉とぶつかった。

「わお、上杉さん!ちゃんと前向かなきゃダメですよ。」

「す、すまん。」

(あれ、三玖は?どこに行った?)

何故か三玖が姿を消してしまい、俺は慌てて探すが、俺はまたしても四葉を見つけた。

「わお、上杉さん!ちゃんと前向かなきゃダメですよ。」

「よ、四葉!?」

(どういうことだ?四葉はあそこにいる。ドッペルゲンガー?)

だが、俺は少し注意深く観察すると、前の四葉は少し髪が長いことに気がついた。

そのまま、リボンを取って、ヘッドホンをつけて、

「お前三玖だろ!トリッキーな技を使いやがって。」

三玖はそのまましれっと逃げ出すが、俺も後を追いかける。

「三玖!この前は騙して悪かった。俺は図書室の戦国関連の本に全て目を通した。今ならお前と対等に話せる自信がある。」

俺はそういうが、三玖はなかなか心を開いてくれない。

その後、三玖は戦国武将しりとりなるものをやろうとし、俺から逃げるも、俺も負けじと答えてあとを追う。

しかし、だんだんと体力の限界が近づき、倒れそうになる。

だがそんな時、三玖が走っているさらに前方から俺たちに近づいて来る影。

「捕まえたよ。三玖。」

そいつは俺の悪友、白金祐介だった。

 

風太郎side out

 

 

三玖も風太郎も体力が既に限界だったようで、そのまま芝生に倒れこんでしまう。

俺は二人に声をかける。

「大丈夫か?」

「ああ、なんとか。それにしても、何故祐介がここに?」

「ああ。風太郎が三玖を呼び出していたのは分かっていたからな。しばらく様子を見させてもらったが、二人が追いかけっこを始めたのを見て、俺は二人が必ず通るであろう道で待ち伏せさせてもらったって訳。」

「そ、そんなことが出来るの?」

「この学校の地形は一通り記憶しているからね。そこから逆算してルートを割り出すのはそんなに難しいことじゃないよ。」

俺がやったことに対して、二人共驚いているようだ。

「やっぱりお前はチートだな。」

「はいはい。それより風太郎。ちょっと飲み物を買ってきてくれないか。」

「は?なんで俺が」

「いいから、早く行ってこい。」

「わ、分かったよ。」

 

俺は風太郎を追い出し、三玖と二人で話をする。

風太郎なら俺の意図に気づくはずだ。

「三玖。大丈夫か?」

「う、うん。ありがとう。」

三玖は少し体を楽にしながら、俺に話しかけてきた。

「どうして二人共そんなに必死なの?」

「どうして、か。俺の気持ちはこの前と変わらない。お前達はまだ諦めるには早い。俺も依頼を受けた以上、その手助けをしたいと思ったんだ。それに風太郎もな。」

「フータローを?」

「アイツとは高校入って以来の付き合いだが、色々助けられたこともある。アイツの頼みは可能な限り叶えてやろうと思ってるんだ。」

「そっか。二人は仲がいいんだね。少し羨ましい。」

 

そんなことを話していると、風太郎が戻ってきた。手には抹茶ソーダを持ち、三玖に渡そうとする。

「これ、好きなんだろ。もちろん鼻水は入っていない。」

その後、風太郎はこの逸話の真相を語る。どうやら調べ物をしている最中に偶然通りかかった四葉にスマホで調べてもらったらしい。

しかし、三玖は自分の趣味を知られたくなかったのか、不満そうに風太郎を見つめる。

風太郎は姉妹にまで秘密にする必要があるのかと三玖に問いただす。

三玖にとっては誰にも知られたくないことで、それはたとえ家族であっても言えないことのようだ。

 

(誰にも知られたくない、か。俺も少しだけその気持ちが分かる。俺にも誰にも言えない秘密があるからな。)

俺が三玖の言葉に共感していると、三玖は自信なさげに自分のことを落ちこぼれと言う。

(これで風太郎も気づいただろう。三玖は自分の趣味に自信がないんじゃなく、自分に自信がないのだと。)

風太郎は三玖のことを励まそうとするが、三玖の考えは変わらない。

「私程度にできることは、ほかの4人も出来るに決まっている。5つ子だもん。」

三玖のこの言葉は、風太郎にとって一筋の光明となった。どうやらコイツも気づいたらしい。

「風太郎。気づいたか。」

「って事は、やっぱり…」

「ああ、間違いない。じゃなければあんなにバラバラになるわけがない。」

「何話してるの?」

 

三玖は俺たちの話がわからないようなので、解説することにする。

「とりあえずこれを見てくれ、前回の小テストを1問づつ正解、不正解で1人ずつまとめたものだ」

「これが何?」

「これを見てなにか気づかないか?」

「あ、正解した問題が1問もかぶっていない。」

「その通りだ。そして、これこそが、お前たちの希望になる。」

「どういうこと?」

「さっき三玖が自分で言ったことだ。自分に出来ることはほかの4人にもできる。それは他の4人にできることは三玖にもできるということだ。つまり、お前達は1人ができることは全員ができるポテンシャルを秘めているということだ!」

「!!」

「なにも全員が100点の潜在能力を持っているなんて、そこまで過信するほど俺は考えなしじゃない。しかし、俺たちが協力すれば可能性は0じゃない。0じゃないなら、俺たちが諦める事は決してしない。だから、少しでもいい、俺たちを信じてついてきてくれないか。きっと最後には5人そろって笑顔で卒業できる、俺はそう信じている。」

「そうだぞ、祐介の言うとおりだ。もっと自分に自信を持て。俺たちはお前たちを決して見捨てはしない。」

 

俺たちがそう言うと、三玖は少し恥ずかしくなったのか、顔を赤らめる。

俺たちに顔を見せることはなかったが、

「屁理屈だね。本当に…5つ子を過信しすぎ。」

三玖のその素直じゃないが、どこか救われた様子を見て、俺も自然と笑みを浮かべた。

ちなみにこの後、風太郎から密かに買った抹茶ソーダを飲まされ、また体調を崩した。

 

その翌日、俺は風太郎のサポートとして、図書室で風太郎の手伝いをしていた。

もっとも、実際に来ているのは、四葉だけなので、俺が手伝うことはほとんどないのだが。

(しかし、四葉は5つ子の中で一番勉強ができないとは思っていたが、予想以上だな。まだ問題は山積みだし、早急にどうにかしなくてはな。)

俺がそんなことを考えていると、どうやら問題の1つは解決できたようだ。

なぜなら、そこには三玖が来ていたからだ。

 

「三玖。来てくれたのか。」

「待ってたよ。三玖。」

「うん。ユースケとフータローのせいで、ほんのちょっとだけ、私にもできるんじゃないかって考えちゃった。だから…」

そこで、三玖は俺たちの方に視線を向け、

「責任、とってよね。」

その言葉に対して、俺と風太郎は、

「ああ。絶対に後悔させないさ。」

「任せろ。」

そう返事した。

そこで、四葉は何やら5つ子特有の直感が働いたのか三玖に質問する。

「もしかして、三玖の好きな人って、上杉さんか白銀さんのどっちかだったりする?」

それに対して、三玖の返答は、

「どうだろうね。」

その顔は、まだ自覚はないが、どこか恋する乙女を彷彿とさせる、そんな表情をしていた。

 

 




ここまで読んで下さりありがとうございます。
今のところ、三玖はヒロインの1人に考えています。
あと1人ほどヒロインは追加で考えています。

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