遥か彼方の永劫を超えて   作:とも2199

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遥か彼方の永劫を超えて14 エピローグ(最終回)

 

帰還

 

 ユミとダニエルは、ようやく未来の時の流れが変化したのを確認した。

「その後、どうなった?」

「あれじゃないか」

 ユミとダニエルは、更に三百年後の未来で、タイジとアユーシが、ブライアンとともに、次の計画を話すのを見た。かと思えば、アオとユリ17の影響で起きた変化。自然分娩のよる子の誕生が再び始まったのだ。

 そして、様々な人々が、時代の変革に翻弄される様子を見た。ほんの一瞬でこれらのことが手に取るように理解出来る。

 それらの時の流れを確認すると、ユミは、一気に更に遠い未来へ跳躍しようとしていた。

「おい、ユミ!」

 ダニエルの呼びかけを無視した彼女は、無鉄砲に先へ先へと飛び去って行った。

 

 時空間を縦横無尽に行き来する中で、ユミは更に遠い未来で、銀河に進出した人類が、その銀河自身の崩壊に直面する様子を見た。人類は、再びそのような絶望的な危機に立ち向かい、そして、力尽きて行く未来が見えた。

 かと思えば、遠い過去の遠い星で、銀河や、この宇宙の未来を知った異星人の姿を垣間見た。彼らは、この宇宙の膨大な時空を知る術を持ち、高度な文明を築いていた。その技術こそ、今ユミたちが経験しているものの正体だった。

 ユミは、同じ時空に存在する、彼らの意識に触れ、その絶望感、悲壮感に意識を侵食された。

「やめろ! あたしに勝手に入って来るな!」

 ユミの意識は、彼らと次第に一体化し、彼女という存在自体が、何の意味も持たなくなって行った。元々ユミだったその存在は、この宇宙に絶望し、救済をを求めていた。

 

 我々は、何の為にこの宇宙に存在しているのか。

 いつしか、宇宙が滅びる運命なのであれば、困難に立ち向かい、努力を積み重ねて行くことに、何の意味があるのか。

 誰か――。

 ここに生きる意味を永遠に喪う前に、この宇宙に救済を――。

 

 それは、存在自体への渇望だった。

 数万年、そして数億年の膨大な時の流れに身を任せることによって、時空間は俯瞰可能な主観的な概念と化し、いつしか高次の存在をも感知し始めていた。

 それこそが、我々が神とも呼ぶ、何者かの存在だったのかも知れない。

 そして、突然前触れも無く、ある惑星が誕生した。その時空間には、過去にも未来にも存在しなかったはずだが、高次の存在が、何か目的を持って生み出したのだろうか。

 異星人たちは、現実の世界で船を建造し、その惑星の衛星に拠点を築いた。そして、それが意味することを近くで観察した。

 

 そして分かったことは、彼らに、僅かに干渉するだけで、時空間が増殖するということだった。増殖した時空間は、可能性世界の拡大を意味する。もしかしたら、この宇宙を救う触媒としての可能性があるのかも知れない。

 

 そして、ある可能性に賭けた。

 ほんの僅かな干渉をするのだ。

 一言、魔法の言葉を囁いた。

 

 だから、お願いだ。

 この宇宙を救って欲しい――。

 

 この言葉による干渉は、形を変え、時の流れの中で変化して受け継がれ、彼らの触媒としての存在を活性化させた。

 いつしか、彼ら自身が、自らに干渉し、自身で変化を続けるのを確認した。時空間は、その瞬間から爆発的に拡大し、可能性世界が無限に増殖した。

 それでも、宇宙は救われていなかった。しかし、いつかは、その増殖の中から、新たな可能性が開かれるかも知れない。

 

 やがて、ユミだった存在は、爆発的に広がる、可能性世界の時空を漂流し、最早、自らが存在した世界が何処だったのか、思い出せなくなっていた。

 その何処かで、何か大切なものがあった気がするが、それは何だっただろうか。ユミだった存在は、意識の片隅で、その記憶を探した。

 あれは、何だっただろう――。

 

「……!」

 何かが、その意識の片隅で知覚される。

 何だろう。

 これは、気持ちのいい眠りを妨げられる時に似ている。

 気持ちのいい眠り?

 そう言えば、遠い昔、住む所も無く、辛い日々を誰かが、救ってくれた。そして、与えられた部屋のベッドで、心の底からくつろいで、安心感に包まれて眠りについたのを、懐かしく思い出した。

 その幸せで温かい感覚。

 そうだ。誰かにとても感謝してたのに。

 あれって、何だったかなぁ。

 

「……ユミ!」

 

 ユミは、眠りから目覚めるように、突然意識が自分自身に戻っていた。その意識を包んでくれたのは、紛れも無い、温かい部屋とベッドを与えてくれた、ダニエルその人だった。

「ユミ! お願いだ、戻ってくれ!」

 ユミは、意識をダニエルに向けた。そうすると、本当にすぐ近くに彼の意識が存在していた。

「随分遠くまで来ちまったよ。ダニエル、あんた、帰り道知ってる?」

 ダニエルの意識が、大きな安堵に包まれていく。

「ああ。探したぞ。いつもいつも、迷惑ばかりかけて……」

 彼の意識が、その温もりが、ユミは懐かしかった。きっと、そこが一番居心地がいい場所に違いない。

「帰ろう。俺たちの居場所へ」

 大きく頷いたユミは、彼の意識に寄り添い、もと来た道を辿って行った。

 

 

エピローグ

 

 とある病院で、子供が誕生した。

 父親と母親は、その子の誕生を祝った。

 よくある風景だった。

 

 病院を退院した母親は、子を抱いて自宅に戻った。

 自宅では、祖父母がやって来て、いろいろと手伝いをしてくれた。

 育児に関わるいくつかのやり取りをし、赤子をベッドに寝かせると、お祝いの準備をした。

 楽しい話に花を咲かせた一家は、幸せに包まれていた。

 

 祖父母は、帰り際に、もう一度子を抱きたいと言うので、母親は、赤子を抱き上げて、祖母の腕の中に渡した。

 赤子をはすやすやと眠っており、祖母は大切にその子を抱えて優しい笑顔をしていた。

 泰司と命名されたその子は、元気な男の子だった。

 

 優子は、その子を抱きながら、幸せにそうに、夫の裕介の方を見た。裕介も、笑顔を返し、その子を見つめた。

「元気な子だ。いい子に育つといいな」

 優子は、少し考えてから言った。

「そうね。どんな子になるのかな? 楽しみだね」

 

 そうして、二人は、その子の成長を願い、彼のこれからの未来に願いを込めた。

 

 

 

遥か彼方の永劫を超えて

 

完――。




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
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