第二話です。
設定に無理がありますが温かい眼で見てくれると嬉しいです。
感想をくれた『あるにき』さん。ありがとうございます。
良かったら感想、評価お願いします!では行こう!!
パァン! と木刀が宙を舞う。
黒い着物を着た少年は衝撃で尻餅をつき、白い着物を着た少女は木刀を突き出して柔らかく笑う。
「……私の勝ちね」
「クソッ、また負けたよ畜生!」
不貞腐れながらゴロンと大の字で寝転がる少年は心底悔しそうだった。コレで1082戦0勝1082敗だ。太刀筋は届かないし、泣きたくなる。だが白い着物の少女は優しく笑いながら隣に座る。
「あー、やっぱ強えな。
「
「オマエに負けてっから、悔しいんだよ」
「ふふっ、まだまだ負けるつもりは無いわ」
朗らかに笑う少女に悔しさを滲み出す少年。
それがこの2人の名前だ。
「なーんでオレはオマエに勝てないのかね……」
「型の問題じゃないかしら?」
荒夜の木刀は普通の真剣より短め、小太刀と同じ長いに対して織の木刀は真剣のそれより少し長い。リーチの差があるとはいえ、斬り返しが速過ぎていつも負けるのだ。
独自の呼吸法はあるのに、伍の型まである型にも関わらず、織は別の型でオレを圧倒する。呼吸は似ているのに、武器によって繰り出す技が違うせいだろう。
「クソッ、もう一回だ。俺が勝ったらみたらし団子」
「じゃあ私が勝ったら水羊羹ね」
「上等だ……!」
再び立ち上がって木刀を握り、織に向かって走り出した。コレが2人の日常、七夜織と浅神荒夜の毎日の特訓だ。
まあ結局負けて、水羊羹を奢る事になったのだが。
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七夜家はこの街ではちょっと有名な鍛冶屋らしい。いつも鍛った刀を見てうっとりしながら笑う織。鍛冶仕事に熱意を注いでいるのが伝わってくる。織は鍛冶屋の娘で、刀を鍛つ事も出来る。オレも一刀を貰った事があるが、そこらの業物より綺麗な刀身をした美しい刀だった。
そしてオレの家系、浅神家は何でも退魔に通ずる力を秘めているらしく、退魔師としての後継としてオレは選ばれた。そこで教わったのが、剣術や呼吸、体術なんかだ。
様々な事を学んだ。鬼やら上弦やら妖やら色々な事を学んだ。様々な技術を身につけた。色々な技を使えるようになった。
でも、何故か剣だけはアイツに勝てない。
鍛冶屋の娘って刀に関しては何でも強いのか?
「んん〜〜、美味しい」
「クソッ、結局またオレの負けかよ」
「奢ってほしければ精進する事ね。荒夜くん」
「テメェ、見てやがれ。いつか絶対泣かすからな」
悪戯っ子のように笑う織に燃える荒夜。
いつもながらの日常、いつも荒夜が負けて織は朗らかに笑う。
そんな日常は嫌いじゃなかった。
★★★
3年が経った。
オレは18、織は19といまだに女に負ける悔しみを噛みしめながらも剣を振るうが未だに勝てない。振るった木刀を織の木刀が真剣で斬ったかのように切断する。
「今日はここまでね」
「あー、また負けたよクソッ」
荒夜の木刀が折れて、不完全燃焼のまま折れた木刀の先を拾う。折れたと言うには断面が綺麗過ぎる。どうやら、昨日くらいから限界があったのは振っていて分かったが、持たなかったのだろう。
「なあ織、オマエはどうしてそんなに強いんだ? 退魔家のオレは結構な鍛錬とか、色々教わってるけど、オマエは違うんだろ?」
退魔の浅神家に生まれた荒夜は兎も角、七夜家は代々伝わる鍛冶屋だ。鍛冶屋として腕力は強いが、所詮は女の筋力。荒夜程ではない。にも関わらず洗練されたその技は荒夜を翻弄する。
「分からないわ。けど、頭の中に流れるのよ」
「何が?」
「勝つ為の行動予測がね」
織はそう口にする。
荒夜も織も他の人からすれば常人を超えた身体能力をしている。『痣』もなければ、鬼ですらないにも関わらず並大抵の鬼の身体能力を容易く凌駕している。
「やっぱ分からねぇ! 予測するのがクソ難しいのに、予測しろなんて剣筋が鈍るじゃねぇか!」
「まだまだね。荒夜くん」
「この野郎絶対いつか–––––」
次に言おうとした言葉。
2人にのしかかるような重圧が襲い掛かる。
「ッ──ー!」
「!? 荒夜くん……!」
「分かってる!」
町の方からだ。
重く、深い重圧を発したのはあの場所だ。向けられた殺気ならまだしも、こちらに向けられてすらいないのに、明確な『死』を体現したような迫力に身体が少し震える。
「織、オマエは刀を持ってこい!」
「荒夜くんは……?」
「オレは持ってる! 先に行くからさっさと来い!!」
「っ!? でも……」
「オレの実力くらい、分かってんだろ! そこらの雑魚鬼と一緒にすんな!!」
「……分かったわ!」
荒夜は重い闘気を感じた町に、織は自分の家に置いてある日輪刀を取りにそれぞれ逆方向に走っていった。
この時、既に運命の歯車は動き出していた。
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「酷え……な」
町を見渡し、警戒しながら走っているが、見た光景は血の惨劇。赤子の泣き声すらしない上に気配すら感じない。血の匂いに鼻が狂いそうで、赤い惨劇に目が腐りそうで、こんな場所に長く居れば精神が発狂してもおかしくない。
「生存者……いないのかよっ」
世話になった人、顔見知った人、親友だった人、笑って迎えてくれる人、見る限り誰かが生きているような気配も音もしない。ただ感じるのは強大な気配のみ。
自分の屋敷に辿り着いた。屋敷の前に立ち、悠然と歩く六眼の鬼。
「っっ……!」
強大な気配はこの鬼からだ。
だが、荒夜は次に瞬きした瞬間、その表情が変わり果て、激昂していた。その六眼の鬼の右手に持っていた。
それは胴体から離れ、髪を掴まれぶら下がった
「ああああああああああああっ!!!!」
荒夜は腰に持つ短刀で鬼に向かって走り出す。
六眼の鬼は父の首を捨て、腰に据えた刀を抜くが、荒夜はそれより一歩早かった。
鋭い踏み込みから放たれる三つの斬撃。
先程の殺気から技を出す瞬間、荒ぶっていた感情の揺さぶりを殺し、六眼の鬼の腕、胴、首元を狙い澄ませた斬撃を放つ。
「……ほう」
だが、六眼の鬼は右腕を軽く斬られた程度で刀を抜く前に後ろに後退する。だが、胴を狙った一撃は着物を掠っている。片腕を軽く斬られた程度だと思ったが、一瞬とは言え捉え切れていなかったようで、軽く驚愕する。
「チッ、浅い!」
六眼の鬼が刀を抜いた。その刀は刀に見えない。刀に眼がついていて、刀と言うには気色が悪い上に悍しい。呼吸を整えた瞬間、荒夜の耳に嫌でも聞こえたその言葉。
「月の呼吸–––––」
荒夜は瞬時に鬼から離れた。横薙ぎの一閃、だが何か嫌な予感がした瞬間にその一閃を受け流しではなく回避に切り替えて後退する。
参ノ型
横薙ぎに放たれた二撃に、後退した筈の荒夜の胸板が軽くとは言え斬られた。
「っっ!?」
横薙ぎの二撃とは別に、違う斬撃が放たれている。
荒夜は瞬時に理解する。月が満ち欠けするように効果範囲が不規則に揺らぐ斬撃、その僅かに不規則に伸びた斬撃に斬られたのだ。
「何だその技……! その業は鬼狩りの技だろ……何で鬼のオマエが持ってんだよ!?」
呼吸法。それを使えるものは鬼狩り……鬼殺隊が使える鬼に対抗する為に使われる力だ。それは戦国時代より存在していたとも言われているが、今の時代では鬼狩りを行う人間しか、その力を使う事は無い筈だ。
「月の呼吸–––」
陸ノ型
一振りで縦横無尽の刃が放たれる。一瞬のうちに全方向に放たれるこの斬撃を見切れなければ、斬撃の間合いから外に出られない。荒夜は呼吸を整え、斬撃に対して静かに鋭く短刀を振るう。
「空の呼吸––––」
伍ノ型 空の境界
荒夜の前方から放たれた斬撃はまるで境界線にぶつかったかのように消え去る。一撃、頬を斬り裂かれたが、大した痛手ではない。それを見た六眼の鬼は驚いていた。
「(痣無しで斬撃の殆どを斬り落としたか……其処らの柱とは一味違うようだ)」
高揚する懐かしい感覚。
これほど昂るのは何十年ぶりか、分からない。
自分と同種にも関わらず、コレ程の剣技を努力のみで身につけたのが剣を交え、理解出来る。
「(速すぎるっ! 伍ノ型で防ぎ切れないのは織以外に居なかったのに……!?)」
空の呼吸 弍ノ型 対極螺旋
振り下ろした回転する二撃が振り抜かれるが、鍔迫り合いで太刀筋を封じられた。だが、荒夜は鍔迫り合いで止められた刀を蹴り上げて無理矢理に隙を作る。
「空の呼吸––––」
「月の呼吸––––」
参ノ型
伍ノ型
荒夜の回転する波状斬撃に対して、刀を振らずに斬撃を放つ鬼。互いの太刀がぶつかり合う中、荒夜の太刀は鬼の腕深くを斬り裂き、鬼は荒夜の至る所に斬撃の痕を残した。
「ぐっ……!」
「……素晴らしい」
身体を斬り付けて尚、致命傷を避けている。
だが、結果は見るに明らかだ。片腕を深く抉った所で再生する六眼の鬼、
「素晴らしい剣技だ。天才とは違う、努力で積み上げられたその剣技。実に殺すのは惜しい」
「何……?」
「……鬼になる気はないか?」
それを聞いた瞬間、荒夜の身体が震えた。
武人、この鬼は間違いなく武人にも関わらず、その領域に至る為だけに武人の誇りを捨てたのだ。
「はっ、ふざけた話をするなよ……耳が腐る」
「……何?」
「オマエ武人だろ? 武人の誇りを捨てて満足か?」
その言葉にピクリと、黒死牟は僅かに動揺する。
その動揺に荒夜は軽く笑った。恐らくは戦国時代から存在していた人間が鬼となったのだろう。
「オレは捨てるつもりはない。空っぽの心を満たしてくれた奴を裏切ってまで命を乞う事はしねえ」
「……これだけの実力であるならばすぐに十二鬼月にも迎え入れられる。貴様は私と似ている。至高の領域を求めている」
至高の領域。
確かに、オレはいつもそれを求めていた。それに辿り着くなら何を捨ててでも辿り着きたいと思っていた。退魔の到達地点はどんな存在も滅する事が可能な存在。オレはそれになりたかった。
だが……
『無理はしないの……荒夜くん』
それを否定する女がいた。
それが気に食わなかった自分がいた。だが、そいつはいつもオレの前に立ち、気が付けば勝手に隣に立ち、勝手に笑い、勝手にオレの居場所を作ってくれた。
気が付けば、至高の領域に至りたいと言う気持ちは消えていた。いつか、オレもコイツのようになりたいと、いつからか思っていた。
「……興味ねえな。強さ以上にオレにも大切なモノがある。空っぽのアンタとオレは似ていても違う」
「残念だ」
血走った血管の様な模様と共に瞳が無数に付いていた黒い刀身から三又に枝分かれさせ巨大化させた刀に変形させる。荒夜はその瞬間、次の一手を悟り、傷だらけの身体を呼吸で止血し、呼吸を強める。
「月の呼吸––––」
玖ノ型
荒夜に向かって降り注ぐような軌道の複雑かつ無数の斬撃を放つ。 その数は先程の陸ノ型より多過ぎる。
「空の呼吸–––!」
伍ノ型 空の境界
いち早く防御に徹して、対応したのは見事と言わざる得ない。だが、
「ぐっ……がぁ……!!」
身体の至る所が斬り裂かれ、胸元から腰にかけて深い斬撃を受けてしまった。
降り注ぐ斬撃の雨に境界を張るように刀を振るうが、捌き切れない。範囲も斬撃の多さも桁違い。空の境界は単純に全て、自分の領域に入るもの全てに境界を張るように弾く技。数が多過ぎて捌き切れず、胸元から腰にかけて深い斬撃が荒夜を襲った。
「ぐっ……ああ…………っ!」
「終わりだ」
出血を呼吸で整えようとしたその矢先。
最後に見えたのは長い刀を振り下ろす黒死牟の姿だった。躱せない。躱す程の余力と呼吸が整っていない。
死ぬ。そう肌で感じた次の瞬間、刃は振り下ろされた。
「…………えっ?」
気が付けば、振り下ろされた刀に斬り裂かれていた。
斬られて、吹き飛び受け身も取れずに尻餅をつく。にも関わらず、自分が生きていた。そして、其処にいたのは……
「……し…………き?」
織だった。
自分に抱きつきながら血を流す織が居たからだ。
自分が斬られる剣線に飛び込んで、身を挺して荒夜を守った織。しかし、織はその背中は深く抉られたような鋭い斬撃をくらって血が溢れて止まらない状態だった。
「––––織っ!!!!」
呼吸ではコレ程の傷は止血できない。流れていく血に荒夜の身体は冷水に晒されたように震えていく。
「馬鹿野郎!! 何で……何でオレを!?」
倒れ込む織を抱えて荒夜は叫んだ。
どうして、オレを助けてオマエが死にそうになっているのか理解出来なかった。オマエなら死に体寸前のオレより戦える上に、勝てる可能性はあったのに。
どうして……
「どうしてだよ!! 織!!?」
必死に叫んだ。
織は答えなかった。答えようとして口を動かすが声が出ないようだ。
ただ、その時の織は笑っていた。
まるで貴方を守れて良かった、と告げているようで。
ただ、少しだけ涙を流しながら微笑んで、オレの頬を軽く撫でると、織は瞼を閉じていく。
冷たくなっていく身体に、嫌に鼻につく血の匂いに初めて湧き出る感情にオレは動けなかった。
「…………死んだか」
黒死牟は呟いた。
水を刺すように後ろの鬼は2人を見下ろしている。荒夜は織を抱き寄せたまま、動かなくなった。それは黒死牟にも分かる愛ゆえの喪失による絶望、妻を娶った事がある黒死牟にもそれは理解していた。
「せめて一撃で死なせてやろう」
そう言った黒死牟は横薙ぎの一閃を繰り出した。
ただ首を斬り落とし、一瞬で絶命させる。それが自分を昂らせた相手に対する敬意だった。
キィン、と音が響いた。
「…………何……?」
だが、その一閃は荒夜の首を斬り落とせなかった。まるで手前で刀が空ぶったようなそんな感覚と、一瞬にして何が起きたのか理解出来なかった。
首を斬り落とすはずの刀身が届かないくらいに、首を斬る前に斬り落とされていた。気付けば右手に握られた短刀が振るわれた後の姿で左腕で織を抱き寄せながら、振るっていた事に気づいたのだ。
「何をした……」
荒夜が顔を上げた。
抱き寄せた彼女をそっと下ろし、黒死牟へ顔を向ける。
零れていたのは涙だった。
空っぽの自分を満たしてくれる人間の喪失に、頭が狂う程の悲しみが荒夜を襲う。
それと同時に
驚く程に燻る心が冷めていた。身体がやけに軽くなった。呼吸が甘く感じる。世界が小さく感じる。
昔、子供の頃に広く感じた庭が大人になると小さく感じるように、世界がやけに小さく感じていた。
「何をした! 貴様ァ!?」
黒死牟が持つ刀の刀身が
黒死牟の血鬼術で直せるはずの刀身は幾ら力を込めようが、再生する事がない。斬られた刀身がまるで
だが何故? 意味が分からない。
赤く染まった郝刀でも無ければ、アレは日輪刀ですらない。
ただの短刀。
それに斬られただけなら再生する筈だ。
先程斬り裂かれた腕も元に戻っているのに。
「ああ、吐き気がする…………」
そう呟いた荒夜は腕を下ろし、立ち上がる。
俯いた顔を上げる。風に靡く白い髪の奥に見えたその瞳。それを視た瞬間、黒死牟は叫ばずに居られなかった。
「貴様……何をした……」
「…………」
「何だ……何なんだ
黒死牟から見えた荒夜の瞳は『死』そのものだった。
それはまるで別の世界を視ているように
荒夜に視えていたのは、
「何だっていいだろ? ––––オマエを殺せるなら」
荒夜はそう呟いて嗤っていた。
【設定】
『浅神荒夜』
・退魔四家の始まりとされたこの作品の主人公。退魔の始まりである彼は生まれつきにして特殊な眼を宿している事に気付いた父は、その力を明確な殺意がなければ使えないようにしていた。両儀式や七夜志貴のように死に触れたわけではないが、超常の純血種であった彼は生まれつき『』に接続する事が可能だったが、七夜織と出会う事で、無意識のうちに接続を解いて生活していた。
『七夜織』
・この作品のヒロイン。単純に鍛冶屋の娘として存在していたらしく、『』に接続していないとはいえ荒夜に敗北を一度も許した事がないくらい強い。荒夜が持つ短刀も織に渡されたものだった。
大分説明に無理があるかもしれませんが、良かったら感想、評価お願いします。
第一話を投稿してみたけど、続けて欲しいですか?
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続かなかったら直死–––
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続かないなら知れ。コレがモノを殺すとry
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続くなら凶がれ!
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続くなら堕ちろ!!
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そんな事より鮭大根が食べたい。