三話目です。『ゆきピカ』さん感想ありがとうございます!
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黒死芒の戦い、後編です。では行こう!!
身体が軽くなった。
血が流れて今にも倒れそうなのに、気分がいい。
目の前で織を失ったと言うのに、今の感覚はとても刺激的な感覚だ。殺意と衝動の螺旋が目の前に浮かび上がる。
綺麗だ。綺麗な螺旋と色に世界が違うモノに染まっていくようで、だけど殺意はまだ消えない。消えるべきじゃない。
痛い。痛くて血を吐き出して倒れてしまいたい。倒れてしまえばどれだけ楽なのか。
許せないと思った。
戦いは好きだ。ギリギリの戦いは楽しいのに、今だけはそんな気分にすらなれない。
「───行くぞ」
ああ、そうか。
織を傷付けたオマエが存在するのが我慢ならないだけだ
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雰囲気が変わった。
あの男は既に傷だらけ、出血量もかなりのものだ。全身が斬り裂かれた傷で今にも倒れかねない。
だが、あの蒼く染まった瞳を見た瞬間、黒死牟は
神に愛されたあの男に、奴の雰囲気が重なる。
何故、何故だと思考が止まらない。
奴は明らかにコチラ側、努力で天才を追いかける側だ。それが今はどうだ? 明らかに今の奴はあの男と同じ──ー!!
「───っ!?」
一瞬にして左腕が斬り裂かれた。
足捌きも、太刀の重みも、速さすら先程とはまるで別人のように変わった。まだ別人に変わったと言われた方が納得出来る。
「(……! やはり再生しない!? 郝刀ですら……いや、日輪刀ですら無いにも関わらず!)」
左腕は再生する気配すらない。まるで斬られた所が
「(間違いない。原理は不明だが奴はありとあらゆる存在を殺せる!!)」
悠然と歩いているようでまるで隙がない。
黒死牟が唯一勝てなかったあの男に近いその領域、透明な世界など意味をなさないくらいに、今の荒夜には闘気を感じられない。赤子すら微弱にも闘気を発する筈なのに、今の荒夜はまるで植物のように何も感じられなかった。
「あり得ない……貴様、一体何があった!?」
殺意も、闘気も、足捌きも、技も、それは黒死牟が唯一到達出来なかった至高の領域に荒夜は立っている。
今の荒夜は
「…………織、これ借りるぞ」
頰を軽く撫で、織が持ってきた刀を抜く。
日輪刀ではない。だがその綺麗な直刃には目を惹かれる程に美しく、強く鍛たれた刀だ。
「──月の呼吸」
拾ノ型
黒死牟は瞬間的に本能が警鐘を鳴らした。
この男は今此処で殺さなければ、自分は死ぬと言うそんな確証もない直感に、刀身が半分再生しないまま三又に枝分かれさせた刀で斬撃を放つ。
「──空の呼吸 伍ノ型
先程伍ノ型で防げなかった無数の斬撃が右手の短刀と左手の刀によってまるで螺旋の境界線にぶつかり全てが逸らされたように斬撃を受け流された。
その斬撃の剣線に居た織に一太刀すら傷付けることを許さないように、まるで境界を張られた聖域を生み出したかのようにも見える程の神業。
「──空の呼吸 参ノ型
斬撃の波状攻撃が下から、そして上からも首を狙われて放たれる。黒死牟はその瞬間、下からの斬撃を躱し、首を狙われた織の刀の斬撃を刀で受け止める。斬撃は止められた瞬間、荒夜は更に深く懐に潜り込むような足捌きで黒死牟に迫る。
「月の呼吸!」
拾陸ノ型
その瞬間、上から地面に向かい三日月を縦に突き刺す様な斬撃を複数放つ。 懐に入られたその一瞬を埋める反応は流石上弦の鬼と言った所だ。だが、その一瞬の隙を逃さずに荒夜は両手の刀を振るう。
「──空の呼吸 弍ノ型
右手の二撃が無数の斬撃を最小限を逸らし、左手の螺旋を描くような斬撃が黒死牟の腰を捉える。まるで黒死牟の動きを読んだかのような、
いや、それ以上のモノが
「……何故」
黒死牟は叫ぶ。
「何故!! 何故貴様は強い!? 何故先程までとはこれ程違う!?」
黒死牟が見た空の呼吸はまだ未熟だった。
未熟だった故にその領域に至れた事が不明だった。努力しても、鬼になってもその先に行く事が叶わなかった黒死牟は、目の前の男の急激な成長に思わず叫ぶ。
「貴様は! 一体何者だ!!」
鬼殺隊でもなければ鬼でもない。
その男が持つ刀も日輪刀で無ければ、更には身体能力も痣すらないのに鬼である黒死牟と同格なのだ。
意味が分からない。
こんな存在、生前で化け物と称した弟以外に会ったことが無い。
「……退魔士だよ。ただの退魔士」
「退魔士……だと?」
「ただ魔を殺すに特化した家系の没落者」
荒夜は所詮、魔を払う事に向いていない。
魔を殺す事に特化した存在である事は隠されていたが、魔を払うと殺すでは訳が違う。極楽浄土に導き、魔を払うのが退魔士の在り方だが、荒谷は魔を殺し、虚無へ導く事しか出来ない殺戮者。
故に非常識な存在に対する魔殺しに特化した存在。
「……けど、
空っぽだった自分を満たす存在の喪失感。
だが、失った痛みは宿り、燻り、世界を染めた。
「オマエを殺せれば、なんだっていい」
荒夜は再び刀を構えた。
黒死牟は目を見開く。あの時、縁壱との最後の邂逅のあの一瞬と重なる。燻る熱と、一部の隙も無いその構えに黒死牟は次の一撃に全霊を掛ける。
「──空の呼吸
荒夜はその一瞬の一動作に全霊の集中をする。
空の呼吸はそもそも
だが、荒夜はいつも誰と戦っていたか。
織のその太刀筋が自分の唯識の足りない所を埋めてくれる。
自然とその一歩は踏み出していた。
重なった、あの時の織の太刀筋と自分の唯識の太刀筋が合わさった奥義が此処に完成する。
「──月の呼吸 拾肆ノ型」
だが黒死牟も黙っている訳が無い、近寄らせない間合いから斬撃を放つ。踏み込んだ荒夜には回避も非常に困難な斬撃。
だが、荒夜は踏み込んだ脚で斬撃を放つ刀の刃の表面を踏み込み、その一撃を躱し、ただ真っ直ぐ黒死牟に踏み込む。脚が斬られようが、斬撃を防げなかろうが、それでも荒夜は止まらなかった。
空の呼吸 壱ノ型 奥義
「────
それは澄まされた一瞬。
身体を通り過ぎた風を感じるしか出来なかった黒死牟。痛みはない。斬られた傷すら感じる事も、何処を斬られたかも分からない程の一瞬。
「……何故……私とお前はそこまで違う……」
黒死牟は剣を握り締めたまま、振り向かずに荒夜に問う。
「……空っぽの自分を満たしてくれる奴を受け入れたか見捨てたか」
「!」
「誇り捨ててまで剣を振るうオマエと織の為に振るうオレ、ただそれだけの下らない話さ」
「……そうか」
黒死牟はその答えに笑っていた。
刀を地に落とし、空を見上げる。鬼としてではなく、最後の最後で全霊をかけて侍として戦った。
故にもう充分だった。
これ以上は侍としての
「我が名を黒死牟……貴様の名を問いたい」
「……荒夜、浅神荒夜だ」
恐らくは生涯、その名を忘れる事はないだろう。
あの男と同じ所に辿り着いた、自分と似た強き名を……
「……良い名だ。……最後に侍として終わりを迎えた事に……感謝する」
全身から血が噴き出し、首を落とさずして黒死牟の身体は消えていく。まるで鬼としてではなく、人間として死んでいったかのように……
だがその背中には一片の悔いはなかった。
荒夜が振り返ると、そこには血溜まりしかなく、黒死牟と言う侍はこの世界から消え去っていた。
「…………織……」
荒夜は織の隣に辿り着くと、意識が朦朧とし始めた。
無理もない。『』に繋がったのは十年ぶり、そして全身は斬り傷で血を流し過ぎた。身体がもう動く気がしない、腕も上がらない。脚が前に出ない。
荒夜は織の隣で倒れていた。
力が抜けていくその感覚に死を感じながら……
★★★
「…………っ……」
頰に雫が落ちる。
雨が降ったかと勘違いするくらいに大粒の雫が落ちた。身体が熱い、力が抜けていた身体は動かすくらい出来るくらいに動ける。
瞼を開くと、其処には涙を流しながらオレを揺さぶる……。
「…………織……?」
織が涙を流しながらオレの身体に触れていた。
「──織!? なっ、何で……! オマエあの時……!」
起き上がると激痛が走るが、身体から血は出ていない。
止血の呼吸は全身には出来なかった筈だ。いや、それどころじゃない。身体の傷が消えている。
織の方を見る。
織の眼はトロンとしながらも声を発さずに、歯牙が別人のように伸びていた。それはまるで……
「鬼に……なっちまったのか……オマエ」
鬼となり血鬼術で荒夜を生かしたのだ。
あの時、腕を抉っていたから、其処から黒死芒の刀に血が流れて織を斬り裂いた時に体内に入ってしまったのだろう。結果、鬼になってしまったと言う訳だ。
退魔士としては邪な魔を殺さなければならない。
「……親父が死んだなら当主はオレだ。勝手にやってやる」
荒夜は織の頰に両手を添え、織を視る。
直視した死の螺旋には至る所に青い螺旋が織の至る所に、血管を通じて微妙に消えたりする。完全には殺せない。鬼の細胞が血液を通じてグルグルと巡っている。
「ダメか……魔を払うじゃなくて殺すに特化したオレじゃあ、魔と同時に血の役割まで殺しちまう訳か」
鬼である織を人間に戻すには血清が必要なようだ。
退魔士であるオレはあくまで薬剤師ではない。専門的な人間に頼るしかない訳か。
「織、聞いてくれ」
「…………」
「もし、オマエが人を食うようであれば、オレはオマエを殺さなくちゃならねぇ。けど、もし人を食わないと約束出来るなら……」
オレは精一杯安心させるように織の涙を救う。
頭に手を乗せて額をくっつける。よく親父がやってくれたように、オレは織がとても泣いている所を見たくなかった。
例え世界が敵に回ろうと……
「オレと一緒にオマエを元に戻す旅をしよう」
「!」
「だから、オレにオマエを護らせてくれ。──織」
その言葉を聞いた織は荒夜を抱き締めて泣き出した。
それは退魔士である浅神荒夜の唯一の光だから。失いたくないと思った大切な友達だから……荒夜は織の頭を撫でて宥めていた。
退魔家である浅神は荒夜を残して全滅した。
町の住人は全て黒死芒に殺され全滅、織の両親も残念ながら殺されていたらしい。織を鬼にした黒死芒の血を注射器で取り、町の住人達を一つの場所に集め、火葬した。
大切だった場所はもう何処にもない。
退魔士である荒夜と、鬼となった織の旅が今こうして始まったのだ。
「さて、行くか」
コレは、愛をくれた女を鬼を戻す為の物語。
第一話を投稿してみたけど、続けて欲しいですか?
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続かなかったら直死–––
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続かないなら知れ。コレがモノを殺すとry
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続くなら凶がれ!
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続くなら堕ちろ!!
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そんな事より鮭大根が食べたい。