始まりの退魔四家   作:アステカのキャスター

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 真菰救済編になります!!
 それでは、どうぞ!!では行こう!!




第四話

 

 

「…………迷った」

 

 

 織が鬼の気配がすると運ぶ木箱に爪を立てて、順調に鬼を殺していくのは良かった。だが、南、西、北、西からまた北と鬼が転々と居るらしく、だんだんと面倒だったが、狩っていったのは良かった。

 

 だが、帰り道が分からないほど深い森の中に来てしまった。

 

 

「この女も……起きねぇし」

 

 

 走っては斬り、走っては再び斬る。

 そんな事をしてたら気を失った女の子を拾った。

 

 ツインテールの黒髪、刀は折れて鬼に殺されそうになって死にかけたようだ。幸い傷は無く、肩で背負っているが織とツインテ女で2人分、流石に足取りが重い。

 

 

「なあ織、帰り道とか気配や匂いとかで辿れねぇの?」

 

 カリカリ

 

「……無理かよ。どうしたもんかね……」

 

 

 此処は空間を意識して探してみるか? 

 新しい型の参考程度にはなりそうだが、気配を察知するだけじゃなく、音波や頬を撫でる空気の感触を最大限に集中して知覚する。

 

 

「(意外にも、難しくない……よし、陸ノ型で名付けよう)」

 

 

 瞳を閉じても身体は色々な物を感じ取る。

 感じたのは剣が岩にぶつかったような音と、何かの笑い声。これは……

 

 

「また鬼じゃねえか! いい加減にしやがれ!!」

 

 

 荒夜はツインテールの女の子を担ぎながらも、誰かと戦っている鬼の所へ走っていった。因みにこの察知能力は空の呼吸の陸ノ型になる事になったのは先の話である。

 

 

 ────────────────────

 

 

 真菰はただひたすら鬼を狩っていた。

 出会った鬼をただひたすら斬り、藤襲山の鬼を片っ端から斬殺していた。

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

 

 兄弟子の錆兎は強かった。

 今まで会ってきた人を数人しか喰らっていない鬼が幾ら束になって襲い掛かろうが錆兎を殺すことなんて天地がひっくり返ってもあり得ないだろう。だが、錆兎は帰って来なかった。

 

 錆兎が帰って来ないと分かった瞬間、私は泣いた。

 その道中で何人かの他の選別者を助けたが錆兎が行なったような正義感による結果ではない。

 

 自身の復讐心を満たすついででしかないのだが、助けた相手から向けられる感謝の気持ちに少し申し訳なさと多少の罪悪感に気が滅入ってしまう。

 

 6日間、ほぼ休み無く動き続けた私の身体と精神は底を尽きてしまい、つい近くの大きな木の幹に身体を預けてしまった。

 

 

「……ふぅ」

 

 

 少し上がっている息を整えて、状況を整理する。

 初日には選別者たちは日が早く昇る東側に拠点を構えようとするのでそれを理解している鬼共は東側によく集まっていた。

 

 東から西へと順に鬼を狩り続け現在、真菰がいる場所は藤襲山でも最も陽光の光が遅く届く西側。

 

 辺りを見渡すが、どれだけ見渡しても鬼の姿も見えなければ他の選別者も姿が見えない。

 

 鬼の気配を感じ取ることができる真菰は意識を察知範囲を薄く引き伸ばして感じ取れる範囲を広げていく。

 

 

「────っ」

 

 

 東寄りの傾斜がなだらかな場所。

 そこにこの選別で居てはいけない強さを持つ鬼の気配を真菰は感じ取ってしまった。せっかく整った息と心拍数が徐々に上がっていき、刀を握りしめる力が強くなった。

 

 

「……コイツだ」

 

 

 絶対にコイツが錆兎を殺した。

 確認するまででもない。夥しい程の血の臭いと鬼の気配の強さ。

 

 何人の人を喰ったのか? どれほどの強さなのか? 考える余裕なんて今の真菰には無かった。

 

 条件反射に近い反応速度で真菰はその気配の方へ駆け出す。

 自身が出せる最大出力の速度を緩める事なく走り続け、藪を抜けた先には巨大な手に追われる1人の少年の姿が真菰の瞳に映される。

 

 

「────水の呼吸、玖ノ型」

 

 

 着地面積を最小にし、縦横無尽に駆け抜けるこの技は足場の悪い山道には最適の技。

 

 

「水流飛沫・乱!!」

 

 

 襲われていた少年の頭に大きな掌が包もうとしたその刹那、無数に伸びていた数々の手が真菰の剣撃によりバラバラに切り裂かれる。

 

 

「大丈夫?」

「────っひ!? あ、あぁ」

 

 

 オカッパ頭の少年は腰を抜かしたのか、地面に座り込んでいる。

 

 刀を構えて真菰は正面を見つめる。木々の合間を縫って巨大な手で体を覆った、自分の身丈の倍はあろう異形の鬼がゆったりと姿を表す。同時にドロドロとした腐ったような悪臭が真菰の鼻を刺激する。

 

 この鬼は、他の鬼とは比べ物にならない。10人、いや、50人は喰らっている。だが罪悪感など一切なく笑うその鬼ね怒りを抑えながら、浅く呼吸を刻み、出来る限りの態勢を整える。

 

 

「あぁ、また来たな。俺の可愛い狐が」

 

 

 醜悪な笑みを浮かべながら鬼はのそりのそり、と真菰たちに一歩づつ近づく。警戒度を高めていつでも技を出せるように真菰は構える。

 

 

「狐娘、今は明治何年だ?」

「は? 教える義理なんて無いんだけど」

 

 

 話しかけてくる鬼は初めての遭遇だったが苛立ちが収まらない。一言一言に嫌悪感が募り、反吐が出そうになる。気持ち悪い異形に、ニタニタと笑うその風貌が目障りだ。

 

 

「まぁいい……」

 

 

 すると手鬼は真菰の付けている厄除の面を見てニタァと笑みを浮かべた。厄除の面を見た瞬間に真菰の顔は強張った。

 

 

「そうかァ、お前、鱗滝の弟子かぁ……」

 

 

 自然と刀を握る力が強くなる。

 何故それを知っているのか。いや、答えはもう分かっていた。

 

 

「……なんで、鱗滝さんの名前を知ってんの?」

 

 

 その言葉を聞いた直後、手鬼は突然狂ったように叫ぶ。

 

 

「知ってるさァ!! 俺を捕まえたのは鱗滝だからなァ!!! 忘れもしない!! アイツがまだ鬼狩りをしていた頃だ!! 江戸時代……慶応の頃だった!!」

 

 

 自信から生える無数の手で身体中をガリガリと掻き毟る。鬼の鋭い爪は皮膚を斬り裂き、血を滴らせる。その光景は一種の恐怖を覚えさせるほどだった。

 

 

「ひっひぃぃ!!?」

 

 

 真菰の後ろに隠れていた少年はその恐怖に耐えきれず、脚を震わせながら走って逃げていった。真菰はそれを止める事はしない。

 

 逆に足を引っ張る可能性がある存在が自らこの場を去ってくれたのだ。更に言えばこの手鬼は明らかに真菰の恩師である鱗滝に怨みを持っている。ならば、狙われるのは必然的に真菰になるだろう。足手纏いになりかねない以上、逃げてくれたほうが楽だった。

 

 

「十一、十二、お前で十三人目だ」

 

 

 無数の手で真菰を指差す。

 その姿に真菰の嫌悪感が更に込み上げてくる。

 

 

「……どういうこと?」

 

 

 真菰の問いに手鬼はニタニタと醜悪で気持ち悪い笑みを浮かべながら言う。その数の意味を鬼は嗤いながら口にした。

 

 

「俺が喰った鱗滝の弟子の数だよ。アイツの弟子は、みんな殺してやるって決めてるんだ。お前は特に旨そうだしなァ」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、真菰の抑えつけていたドス黒い感情が溢れ出る。呼吸が乱れようと、その怒りが収まることはなかった。

 

 

「────っ!!」

 

 

 そんな事は気にも止めず、手鬼は言葉を繋げる。

 

 

「そうだなァ……1番印象に残ったのはこの前来た珍しい毛色のガキだなァ……1番強かった。宍色の髪に頬に傷がある奴だ。あぁ……最後にこう呟いてたよ。まこも、ぎゆう、すまないってなァ。俺は笑いながら喰ってやったんだァ」

「────殺す」

 

 

 真菰には抑えれるわけがなかった。

 兄弟子の、最愛の人の仇がすぐそこに居る。真菰は自信が持てる最大威力で最大出力の攻撃を繰り出す。

 

 

 水の呼吸 漆ノ型

 

「────雫波紋突き」

 

 日輪刀であろうと首を絶たねば再生する。

 基本的にこの技は突き技の為、首を切断しなければ死なない鬼にとっては致命傷にはならない。

 

 だが、真菰はそれを理解した上でこの技を放った。

 

 その意図は油断している手鬼との距離を確実に詰める為。それと、その次の技へと繋げる為。片手で持った柄を両手に握り変え、次の技へと繋げる。

 

 

「––––水の呼吸」

 

 弐ノ型 水車

 

 全身を水車のように回転させて斬撃を与えようと力を込める。水の呼吸の強さは流水のように次の技に繋げられるしなやかさにある。

 だが、直後、右側後方より感じ取れる劣悪な空気に真菰は直前で技を止め、突き刺さった刀を引き抜きながら手鬼の顔面を蹴り、振り抜く腕を紙一重で躱す。

 

 

「────っ」

 

 真菰の直感が当たったのか、直後に悪寒がした方向から手鬼の厳つい豪腕が着物の一部を掠る。近くに生えていた木々の枝を使い、なんとか態勢を立て直し、着地する。

 

 

「速いなァ、すばしっこいなァ……けど、それじゃあ俺は斬れないなァ!!」

 

 

 余裕だが、捕まえられない苛立ちを露わにする手鬼は自身の手を無数に伸ばして真菰を掴もうとする。自身を掴もうとする手を最低限の斬撃で斬り落としながら後方へと下がる真菰。

 

 

「––––水の呼吸 肆ノ型、打ち潮!!」

 

 

 首を斬ろうと奔走するが、迫り来る手に真菰は身体をそらして躱す。

 手鬼の圧倒的な攻撃範囲の広さに真菰は悪戦苦闘しながら回避に徹する。防戦一方ではこの鬼の首なんて到底斬れない。

 

 ギリギリの容量で動かす頭もそのことを理解しているがこの手数では近づく事もままならない。先程の一撃で決めるべきだったのだ。焦りと怒りで動きが鈍る。

 

 

「これでどうだァ?」

 

 

 すると、手鬼は自身の防御に使っていた腕を攻撃へと回してくる。

 刹那に真菰の周囲に無数の手が現れ、回避する隙間すら無くなってしまう。

 

 水の呼吸 参ノ型

 

「────流流舞い!!」

 

 

 真菰はとっさの判断で参ノ型を使う。水流に身を任せるように移動しながら全方向から襲ってくる手を丁寧に一つずつ斬り落としていく。

 

 激しい攻防の中、真菰は直感的に身体を動かす。

 異形の鬼は攻撃の為に自身の防御を手薄にした。それは真菰にとって危機でもあり、これと無い好機の機会。

 

 必死に攻防を繰り返す中、確実な隙を模索し続ける。だが、それが精一杯、近づくにはあの手を潜り抜けなければ勝機はない。

 その最中に手鬼は余裕の表情で呟くように言った。

 

 

「────アァ、そう言えばその面。鱗滝が作ったヤツだろ? 目印なんだよ、その面が。鱗滝の彫った面の木目は全部覚えてる」

「っなにがっ!? 言いたいのっ!?」

 

 

 苛立ちながら叫ぶ。

 呼吸を途切らせないように必死に技を繰り返す真菰。普段なら聞きもしない鬼の戯言は恩師名前が出てくるせいで無駄に耳に入ってくる。

 

 

「厄除の面とか言ったか? それを付けてるせいでみんな喰われた。みんな腹の中だ。鱗滝が殺したようなものだ。残念だなぁ! 無様に俺にみーんな喰われちゃって!! 鱗滝がわざわざ狐面を渡さなければなァ!!」

「────っ」

 

 

 今まで感じたことのない怒りが真菰を染め上げる。

 当たり前だ。最愛の人をこの手鬼に殺され、挙げ句に父のように慕う恩師まで侮辱してくるこの屈辱。

 怒りと憎しみが頂点に達して溢れ返り、涙となって零れ落ちる。

 

 

「オマエがっ!!! オマエが殺したんだろぉがぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 真菰はここで致命的な失敗をしてしまった。

 怒りと憎しみで目の前が見えなくなり、呼吸が乱れてしまったのだ。

 

 

「ヒヒッ」

 

 

 手鬼の憎たらしい笑みが脳裏に焼きつく。

 均衡を保っていたはずの攻防が真菰の乱れにより、崩れる。

 

 何時もなら察知できていた。

 だが、今の真菰にはそれが出来なかった。

 感じ取るには余りにも視野が狭まり過ぎた。

 

 

『最終選別……必ず生きて戻れ。真菰』

 

 

 走馬灯のように駆け巡る記憶。

 いつの間にか消えていた一本の腕が地中から飛び出して、真菰の身体を叩きつけたのだ。

 

 

「────っが」

 

 

 鍛えているとは言え人間が耐えるには難しい衝撃が真菰を襲う。

 バギバキッと何度も身体から骨が砕ける音が鳴り響き、軽い真菰の身体は慣性により後方へと吹き飛んでいく。

 

 後方にある巨木に身体を打ちつけ、肺から全ての空気が漏れ出すと同時に口から大量の血液が噴き出す。

 

 

「ゴブッ────」

 

 

 肺が潰れ、呼吸ができない。

 手鬼の醜悪な笑い声が聞こえ、四肢が長い手に掴まれた。

 

 そのまま引き千切れ──

 

 

 

 

 

 

「──空の呼吸 肆ノ型 名残ノ華」

 

 

 通り過ぎたような流麗な剣線に真菰が掴まれていた腕は全て斬り落とされる。それはまるで華が咲いたように、斬られた腕から血の華を生み出すように見えた。

 

 

 ────────────────────

 

 

「全く、今日は嫌になる程に鬼に出会うな。もう35体だぞコラ」 

 

 

 真菰の身体を優しく受け止め、異形の鬼を睨み付ける。

 真菰の身体は骨が大分砕けて放って置けば死ぬ。此処には医者も寝させる場所もない。そもそも迷子だ。

 

 木箱を3回叩くと、織は箱から出た。

 

 

「織、狐面を回復させてろ」

 

 

 コクリと頷いて真菰を血鬼術で癒している。

 荒夜は織を背に異形の鬼を見据えている。異形の鬼はそれを見て苛立ちと一瞬の恐怖が襲った。

 

 ()()()()()。斬られた腕が再生しないのだ。

 

 

「なんだァお前!! 邪魔をするなァ!!」

「──空の呼吸」

 

 伍ノ型 空の境界 

 

 伸ばされた腕は境界に触れたかのように斬り裂かれ、織達の後ろに一片の肉片すら寄せ付けなかった。そして再び自分の斬られた腕を見る。再生しないのだ。毒を塗っているかと思い、自分の腕を引きちぎって再生しようとしても斬られた場所は再生しない。

 

 

 

「は、ははは……!? な、何なんだ……!?」

 

 

 あり得ない。あり得ないあり得ない!! 

 鬼すら人間のように殺せるなら、まるで奴は──ー死神のようではないか!! 

 

 

「──空の呼吸」

「ヒッ!? くるなああぁぁぁぁ!?!?」

 

 

 迫り来る荒夜に異形の鬼は恐怖する。

 まるで死神のような、その蒼い眼に心臓を掴まれたかのような感覚が走り、残った腕を全て荒夜に伸ばすが、荒夜にとっては遅過ぎる。

 

 

「──壱ノ型 唯識」

 

 

 死の線を的確になぞり斬る荒夜の一撃は異形の鬼の首を跳ねることなく斬り崩していた。

 

 

 

 ────────────────────

 

 

「織、狐面はどうだ?」

 

 

 血を吐いてはいたが、身体の方は恐らく大丈夫のようだ。鬼を斬った後は息切れも刃こぼれもなく、刀を鞘に納めて織に近づく。潰れたはずの肺は元に戻り、砕けた骨は繋ぎ止める程度には回復はしていた。

 

 

「織の血鬼術ってやっぱり不思議だよな」

 

 

 織はコテンと首を傾げるが、治癒の血鬼術なんて聞いた事ない。鬼についてはまだ実態が分かっていないが、他人に干渉し傷を治す力があるならもしかしたら太陽すら克服する可能性がある。

 

 とりあえず、この場所から休める所を探す為に呼吸を整える。さっき完成した新しい型を使う。

 

 

「空の呼吸 ()()()

 

 ──空ノ心眼(からのしんがん)

 

 先程分からなかった音と気配を瞳を閉じて感じる。

 分からなかった空間を全て把握して、近場に水がある場所か雨宿り出来る場所を探す。

 

 近くにザアアアと言う音が聞こえ、水が流れる音が聞こえる。

 

 

「見つけた」

「!」

「悪いが織も歩いてくれ。流石に三人背負うのは嫌だし」

「…………」コクリ

 

 

 織は気絶したツインテールの女の子を、荒夜は狐面の女の子を背負って、近くの川の音がした場所へ向かった。その時、織が何故か膨れっ顔だったのに首を傾げながら。

 






良かったら感想、評価をよろしくお願いします。


第一話を投稿してみたけど、続けて欲しいですか?

  • 続かなかったら直死–––
  • 続かないなら知れ。コレがモノを殺すとry
  • 続くなら凶がれ!
  • 続くなら堕ちろ!!
  • そんな事より鮭大根が食べたい。
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