この話はHaig氏主催の世論型AAR「バルト海は再びスウェーデンの海となるか」の登場人物「カール・ハンソン」と「イェーオリ・パルメ」が主役の外伝作品です。

※世論型AARという素晴らしいコンテンツを生み出してくれたHaig氏、そして全ての参加者と読者に厚く感謝申し上げます。

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これはあくまで外伝なので世論型AAR本編とは、多少の時代設定の矛盾が生じてる場合がありますが、気にしないようにお願いします。


モスクワ攻防戦

1917年1月、「ブルシーロフ攻勢」の失敗により総力戦に耐えきれなくなっていたロシア帝国は、皇帝ニコライ二世の突然の亡命によりあっけなく崩壊した。無政府状態に陥ったロシアでは、社会革命党のアレクサンドル・ケレンスキーを中心とした「ロシア臨時政府」を樹立。事態の収拾を図るも、同年11月[ロシア歴10月]、ウラジーミル・レーニン率いるボルシェビキによって打倒される[ロシア10月革命]。

しかしケレンスキーの捕縛に失敗し脱出を許す。さらに各地で反ボルシェビキ運動が活発化、遂に内戦が勃発する[ロシア内戦又はロシア革命戦争]。

内戦は激化の一途をたどるも1919年、オムスク会議において、白軍(旧ロシア帝国軍グループ)の将軍たちがケレンスキーの臨時政府と協力し、赤軍(ボルシェビキ)と戦うことを同意、同年ペトログラードの奪還に成功する。

1920年、欧州大戦に勝利したドイツ帝国はロシア内戦に介入、白軍の全面的支援を開始し、戦局は白軍優位となっていった。

1921年2月21日、ツァーリツィンにおいて、白軍総司令官デニーキン元帥とドイツ帝国軍のグレーナー将軍率いる連合軍が、トロツキー、トハチェフスキー、ハンソン率いる赤軍と激突、何週間にも及ぶ市街戦の末に連合軍が勝利、ボルシェビキの本拠地であるモスクワへの道が開かれた。同年9月1日、連合軍はモスクワへの進撃を開始、赤軍の抵抗を排除し、数日後市内への突入を実施、ボルシェビキ首脳部の立て籠もるクレムリン宮殿へ軍を進めたのであった・・・

 

 

 

 

「同志トロツキー!」

カール・ハンソンは名前を呼びながら彼のいる執務室の扉を開けた。

 

「同志ハンソン!よかった!無事だったか!」

トロツキーはそう言いながらハンソンの肩を抱いた。

 

「同志トロツキー!反革命分子どもは既に赤の広場から10キロ手前まで迫っています!もうここは持ちません、脱出して再起を図りましょう!」

 

「それは私も考えていた。だが敵はそこまで迫ってきている。上手く逃げられるだろうか?」

 

「心配に及びません。今なら敵味方が入り乱れていて前線は混乱しています。この混乱に紛れて脱出しましょう。幸い同志は外国語が堪能で有らせられる。それで上手く誤魔化してください。」

 

「そのようだな・・・まあ逃げることには慣れてるし何とかなるだろう。君はどうするつもりだ?」

 

「私は他の同志達の脱出の支援のためギリギリまで残ります。せめて貴方と同志レーニンだけは何としても脱出してもらわないと死んでいった同志達に顔向けできませんからね。」

ハンソンはそう話しながら笑った。

 

「そうか・・・君には迷惑をかける。生きてまた会おう!我が最愛の同志よ!」

トロツキーはそう言いながら護衛と共に姿を消した。

 

 

 

 

連合軍は赤軍の決死の抵抗を排除しながら一歩ずつ前進していたが、赤の広場の数キロ手前で赤軍の強力な防御陣地に遭遇、激しい抵抗を受け前進できないでいた。

 

「クソったれ!赤の広場は目の前だってのに、ボルシェビキの連中め!」

イェーオリ・パルメは崩れかけた建物に隠れながら毒づいていた。

 

「仕方がねえだろイェーオリ、敵さんも必死なんだよ!」

 

「んなことは分かってる!だがなニコライ!義勇軍は相次ぐ転戦でバラバラ、俺達の部隊も、生き残りは遂に俺とお前だけになっちまった。これでどう進めってんだ!このままじゃあ白軍とドイツ軍を出し抜くどころか俺達は全滅だぞ!」

 

「じゃあどうする。撤退でもするか?」

ニコライがパルメにそう問いかける。

 

「バカ言ってんじゃねえ!赤の広場に突入してクレムリンまで一気に駆けるにはここが最短ルートなんだ!それに俺達共和国義勇軍が、白軍とドイツ軍よりも先にクレムリンへ一番乗りを果たさなければ、ケレンスキー先生の臨時政府は奴等の玩具に成り下がっちまう。それだけは何としても阻止しなくちゃならねえ!」

 

「ならあそこを突破するしかないな。」

 

「だがその手がまるで浮かばねえ!クソっ!どうすればいい!」

パルメとニコライはあたりを見まわした。すると、砲撃の衝撃で崩れた建物を見かけた。

 

「見ろニコライ!あそこからは入れるんじゃないか!」

パルメはニコライと共に建物に入った。

 

「よっしゃ!ここから建物伝いに奴等の裏側に回ろう!連中もここまで兵を回す余裕がないみたいだしな!」

 

パルメとニコライは崩れた建物を上手く活用し、敵防御陣地の裏側に回り込むとに成功する。そして二人は手榴弾を投げつけ突入した。

 

「オラオラオラァ!ボルシェビキ共!くたばれっ!」

2人は格闘戦をしながら次々と赤軍兵士銃剣で突き刺していく。すると息も絶え絶えになっていた一人の赤軍兵士が最後の力を振り絞って手榴弾のピンを抜いた。

 

「イェーオリっ!?危ない!」

ニコライは咄嗟にパルメを庇った。その瞬間手榴弾は爆発し、ニコライは吹き飛ばされた。

 

「ニコライ!?」

パルメがニコライの下に駆け寄るとニコライの下半身は吹き飛んでおり、血が大量に流れだしていた。

 

「ニコライ!ニコライ!しっかりしろ!」

パルメが必死に声をかけるも、ニコライの顔から精気はどんどん失われていった。

 

「むす・・・め・・・を・・・たの・・・む・・・」

ニコライは消え入りそうな声でパルメにそう告げると、ニコライは二度と声を発することはなかった。

 

「ニコライ・・・?ウワァァァァァァァァァァ!!」

パルメの断末魔の叫びは砲撃音でかき消された。

 

 

 

 

連合軍は遂に赤の広場へ突入を開始した。しかし赤軍の抵抗も激しく、両軍入り乱れた激戦が展開された。だがその中にレーニン以下、ボルシェビキ首脳部はいなかった。

 

 

 

「同志ハンソン、もうここでいい。私を置いていきなさい。」

ハンソンに支えられながらレーニンはそう言った。

 

「同志レーニン、なに言ってるのです!ここ脱出すればまだ戦えます!ペトログラードもツァーリツィンもモスクワ落ちましたが、幸い同志達の多くは脱出に成功しています!我々も合流して再起を図れば、またやり直せます!」

 

「確かに我々はまだ戦えるだろう。だがそこに私が加わることはできないだろう。」

 

「どういうことです・・・?」

ハンソンが問いかけた。

 

「皆には黙っていたがもう長くはないんだ。いつ死んでもおかしくはないと医者には言われたよ。」

レーニンは寂しそうに言った。

 

「嘘だ・・・嘘だと言ってください!同志レーニン!」

ハンソンがそう言いながらレーニンに詰め寄ったが、レーニンは何も答えなかった。

 

「そんな・・・同志がいなければ我々はどうなるんです!同志がいなくてはプロレタリア革命は成し得ない!」

 

「それは違う!同志ハンソン、いやカルル・・・革命とは一人の人間によって成されるものではない。革命とは、万国のプロレタリアートが団結して起ち上がり、支配者を打倒して成されるものだ。カルル、我々は革命家はプロレタリアートを指導するのであって、革命の主体ではない。革命の主体はあくまでプロレタリアートでなければならない。それを忘れるな。そしてその指導者は唯一無二の存在ではない。いや、そうであってはならない!」

レーニンは鬼気迫る勢いでハンソンに語り掛けた。

 

「私はここで死ぬ!だがそれは革命の敗北を意味するものではない!我が志は、同志ハンソンやこの場にいない同志達、そして他の地で戦いを続けている全ての同志達に受け継がれ、新たな革命へと繋がっていくだろう!さあ行け同志達よ!我が屍を超え、必ずや生き残り、志を果たすのだ!共産主義万歳!プロレタリア革命万歳!同志達に栄光あれ!」

レーニンはそう声高に宣言すると、こめかみにナガン・リボルバーを当て、引き金を引いた。

銃声と共にレーニンは倒れ、辺りは静まり返った。

 

「・・・聞けっ!同志達よ!」

ハンソンがそう叫びながら続けた。

 

「我等が偉大なる指導者、同志レーニンは死んだ!しかし、革命はまだ終わっていない!私と、諸君ら同志達にレーニンの志が受け継がれたからだ!同志諸君!我等はレーニンの屍を乗り換え、その気高き志を果たさねばならない!それこそが、我等ボルシェビキの使命であり、死んでいった同志達の手向けとなるからだ!さあ同志達よ行こう!レーニンの志果たすまで、我等は生き残るだ!同志レーニン万歳!革命万歳!」

 

「「「同志レーニン万歳!革命万歳!」」」

彼等はそう叫ぶと各々脱出を果たすべく行動を開始した。

 

「さようなら同志レーニン、いやヴォロージャの兄貴・・・」

 

 

 

 

赤の広場を突破した連合軍は、遂にクレムリンへ突入を果たした。宮殿内でも赤軍残党が待ち構えており、ここでも激しい戦闘が行われた。その中、体中ボロボロになったイェーオリ・パルメが必死に最上階を目指していた。

 

「早く・・・早く上を目指さないと・・・今までの犠牲が水の泡だ!」

パルメは傷だらけの体を引きずりながら向かってくる敵にモーゼル拳銃を乱射した。

 

「邪魔だぁ!」

いったいどれだけの敵を殺しただろう。いったいどれだけの傷を負っただろう。パルメはそんなことを心の片隅で思いながらなおも戦い続けた。

 

やがてふと辺りを見回すと、敵の姿が消えていた。近くにあった窓から外をのぞくと自分がかなり上にいることが分かった。

 

「ここならこれも良く見えるだろう・・・」

そうパルメは呟くと、雑嚢から一枚の布を取り出した。それは血や泥で汚れてはいたが、ロシア臨時政府が制定した、ロシア共和国旗だった。

パルメは窓を開け、身体を大きく乗り出し、共和国旗を掲げ、叫んだ。

 

「勝ったぁー!勝ったぞぉー!俺達の勝利だ!」

パルメが大きな声で叫び続けていると、やがて辺りから歓声が聞こえてきた。

 

「悪しきボルシェビキは打倒された!新しきロシアの共和国、万歳!」

パルメがそう続けて叫ぶと、辺りもこう叫びだした。

 

「「「ロシア万歳!自由万歳!共和国万歳!」」」

 

この姿は従軍記者によって撮影され、後に「燃えるクレムリンにロシア旗を掲げた英雄」として世界中に報道されることになるが、それはまた別の話・・・

 

 

 

1921年9月14日、ボルシェビキの本拠地モスクワは陥落し、ロシア内戦は白軍の勝利となった。だが、主だったボルシェビキの指導者は、脱出に成功しており、最高指導者のレーニンも行方不明として処理されることになったのであった

 

そして時代が流れ、1936年、彼等の物語がロシアとは別の北欧の国、スウェーデンから再開されることになるのである・・・

 

 

 

END

 




パルメもハンソンも最初は設定なんか殆どなく、ただの賑やかし役として登場させたのですが、物語が進むにつれて設定が追加されていき、立派な登場人物と呼べるまでに成長してくれました。AAR本編で演じた私にとっても愛着があります。
このような機会を与えてくれたHaig氏と、世論型AARに関わってくれた全ての関係者に、改めて感謝いたします。ありがとうございました。

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