The iDOLM@STER Cinderella Girls ~Two Irregulars~   作:せいけー

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執筆に四苦八苦した回です。


第18話 Could you answer this question(1)

 ラジオの収録中、エバンスさんはずっとソワソワしていた。このラジオ番組の収録の後、ブレインキャッスルの収録があるからだ。

 

「はい、先程流れた曲がE.G.G.Sで『Union-jAck』でした。可愛い子達が歌ったとは思えない、かっこいい曲ね。エバンスさん、いつ発売するんですか?」

 

「……うえっ、あ、はい! 来週です! 皆さん、是非CDを買ってくだひゃい!」

 

「シンデレラプロジェクトも凄いけど、わたし達も凄いんだから!」

 

「よろしくお願いするわ」

 

 ……収録に集中出来ていないのはいかんな。本番前に言い含んでおいたが、もう少し強めに言っておくべきだったか。

 

「すみません剣崎さん、うちの者が収録に不慣れで」

 

 川島さんと、彼女が所属するユニット「ブルーナポレオン」のプロデューサーである、剣崎さんに頭を下げる。

 

「いえ、大丈夫ですよ。生放送ではないので」

 

 剣崎さんは丁寧に返してくれた。そもそも、ブレインキャッスルの収録があるのは川島さんも同じだ。エバンスさんには、川島さんの大人の余裕を見習ってもらいたいものである。

 

「今夜のわかるわアワー、そろそろお別れの時間ね。皆さん、さよアワー!」

 

「さよアワよ、リスナーの皆!」

 

「うふふ、さよアワ」

 

「さ、さよアワです!」

 

 収録が終わった。川島さんは立ち上がるや否や収録スタッフに会釈を行ない、剣崎さんの元に駆け寄る。

 

「打ち合わせには?」

 

「充分間に合います。――それでは城戸さん、またマッスルキャッスルの撮影で」

 

「ええ、は……い?」

 

 あれ? 剣崎さん、今なんて言った?

 

「マッスルキャッスル、って何ですか剣崎さん? ブレインキャッスルじゃないんですか?」

 

 俺の質問に、剣崎さんも戸惑う。

 

「……あれ? 聞いていませんでした?」

 

 ――え?

 

――――

 

 スタジオのセットには確かに「筋肉でドン! Muscle Castle」と、番組名が銘打たれていた。「頭脳」を「筋肉」に、「Brains」を「Muscle」と杜撰な修正を行なって。

 

「マジでか……」

 

 カメラの方を見ると、武内さんが撮影スタッフに向かって何かを言っている様子が窺える。出演者側に話が来ていなかったのだろうか。こんな重要な事柄、真っ先に伝えるべきだろ。

 

「いやあ、まさか番組が変わるとは思っていなかったよ」

 

 呑気に声を上げたのは、何故かいた本田さんだ。

 

「そうね。ちょっとしたサプライズみたい」

 

 呑気なのはハーミーも同様らしい。

 

「いや二人とも、完全にジャンルが変わっているから」

 

 呑気な二人にツッコミを入れたのは、ニュージェネレーションズでも常識人である渋谷さんだ。……島村さんもいるし、仲良し三人組で収録を見に来たのだろう。

 

「……智絵里ちゃん、大丈夫かな」

 

 島村さんが不安そうに呟く。

 

「智絵里ちゃんと言うと……緒方さんの事かな?」

 

 俺が訊くと、渋谷さんはこくりと頷いた。

 

「テレビの出演が決まった時点で、凄い緊張していたから。多分、こんな事になって更に不安になっていると思う」

 

「そうかあ。大変だな」

 

「うふふ、まるで他人事みたいねプロデューサーさん」

 

「いや他人事だからな? 言い方は悪いけど」

 

 俺達は見物客に過ぎないし、観客席から飛び降りて助け舟を出すようなマネも出来ない。緒方さん達「キャンディーアイランド」と、武内さんが一丸となって乗り越えるべきだ。

 

「もー! シロちゃんしっかりしてよ! ここはさ、『俺がついているから心配するな』って言って、しぶりんの頭をポンポンするべきでしょー!」

 

「頭の中お花畑か」

 

「どうして私が巻き込まれるの?」

 

 本田さんにとって俺は一体何なんだよ。それに、そんな事言うようなタイミングでもないだろ。

 

「凄い! 未央ちゃん、さっきのツッコミ、良かったよね?」

 

 島村さんは島村さんで、どうしてそんなに嬉しそうなんだよ。

 

「んー、ちょっと突き放しすぎかな。やっぱり相手はアイドルだから、もう少しオブラートな言い方の方が――」

 

「……あの、未央さん、何の話?」

 

 ハーミーが困惑したように本田さんの話の腰を折る。

 

「バラエティにはボケとツッコミとリアクションだよ、はみはみ!」

 

「いや全然分からねえって」

 

 芸人じゃあるまいし、アイドルがそんな事を気にする必要はないだろ。

 

「ボケ……? 『なんでやねん!』って言うアレですか?」

 

「……ハリエット、それはツッコミだから」

 

 渋谷さんが頭を抑えながら、エバンスさんに答える。正直、俺も頭を抱えそうな程にカオスなやり取りだ。

 

「少しでもカメラに映る工夫、って所かしらね」

 

 ダフネの推測に本田さんはこくこくと何度も、島村さんはゆっくりと一回だけ頷いた。……わざとらしいボケとツッコミとリアクションは寧ろ、場を白けさせそうな気もするが。

 

 そんなくだらない事をぎゃいぎゃい言っていると、他の観客から歓声が上がる。セットの方を見ると、そこにはディーラー風の衣装に身を包んだ、川島さんと十時さんがいた。……改めて実感するが、すっげえ人気だな。俺もE.G.G.Sをここまで成長させないと――。

 

「いだっ、いだだだだだ」

 

 横に座っていた渋谷さんに、何故か突如手の甲をつねられる。何か凄い怖い顔しているんですけど。

 

「えっ何どうした渋谷さん? 俺つねられるような事したかな?」

 

 渋谷さんはため息をわざとらしくつくと、ぷいとそっぽを向いた。

 

「……知らない」

 

 ええええー? 何なんだよその言い方!

 

――――

 

 誰だこれ。えんじ色のツインテールの子が緒方さんで、クリーム色の髪の子が三村さんって事までは分かる。だが、その間にいる小さな女の子は誰だ。

 

 長い髪を二つに結って後ろに流しているその姿は、体操服を着ているとはいえ、紛れもなく双葉ちゃんそのものだ。しかし、俺が以前会ったあの子は、なんと言うか、もっと脱力した感じだったぞ。

 

「わあ! 杏ちゃんとっても可愛い!」

 

 えっ本人!? 島村さん、本人なのこの子? 双海姉妹みたいに双子とかってオチじゃなくて!?

 

『杏ちゃん、意気込みはどう?』

 

『精一杯頑張りまーす! 応援してねー!』

 

 いや誰だよマジで。頑張るって言葉と無縁だろ君は。

 

「……どうしたの?」

 

 渋谷さんが訊いてくる。

 

「いや、余りにも第一印象とは違っていて面食らったというかなんと言うか」

 

 えっ、と意外そうに反応したのは本田さんだった。

 

「シロちゃん、杏ちゃんと会った事あるの?」

 

「ああ、まあちょっとな」

 

 まさか、「この前シンデレラプロジェクトの子がストライキを起こそうとして」なんて言える訳がない。シンデレラプロジェクトが絡んでいるからか、E.G.G.Sの三人も苦笑して誤魔化す。

 

「そう言えば、きらりが言ってたよね。『莉嘉ちゃんのイトコに会った』って」

 

 渋谷さんが言うと、本田さんは思い出したように手を叩いて俺を見る。

 

「そうだよ、そうだった! シロちゃん、美嘉ねえと莉嘉ちゃんの従兄なんだよね!」

 

 ……どうやら、シンデレラプロジェクト内ではその話が完全に広まってしまっているらしい。

 

「あんまり広めないでくれよ」

 

「おおー、有名人の家族っぽい!」

 

 ……「家族っぽい」んじゃなくて、本当に親族なんだけどな。

 

――――

 

 キャンディーアイランドの三人はトークバトルで意図せず勝ちを拾ったものの、風船早割り対決では敗北を喫してしまった。

 

「あら、負けても美味しい展開なのね」

 

 ダフネの言う通り、紙コップを渡されたキャンディーアイランドにカメラが寄る。ただ、美味しい展開とはいえ、中身を一口含んだ緒方さんと三村さんは苦い顔をしていた。

 

『番組特製、センブリ茶でーす! 健康に良いらしいですよー?』

 

 十時さんの言葉を聞いた双葉ちゃんは、必死の形相でコップを顔から遠ざける。川島さんがそれを押し返そうとするが、必死の双葉ちゃんはそれを許さない。

 

「杏ちゃん、そこは飲んでリアクションを取るところだよ!」

 

「いや本田さん、双葉ちゃんはもうリアクション取ってるだろ」

 

 何としても飲もうとしない双葉ちゃんの態度からは、寧ろコミカルな空気が漂っている。本田さんが求めているリアクションとはまた違うが、これも立派なやり方だろう。

 

『い〜や〜だ〜! わたしは絶対に飲まないぞ!』

 

 おい、素が出てんぞ。

 

『……はぁい、では次のゲームに移るわよ!』

 

 スタッフ一同も、双葉ちゃんにセンブリ茶を飲ませる事を諦めたらしい。川島さんに指示を送り、次の企画に移ったようだ。

 

『次は、マシュマロキャッチ対決です!』

 

 派手な色のおもちゃの銃が、それぞれのチームに手渡された。

 

「マシュマロキャッチで銃が必要なのかしら……?」

 

「撃ち出すんじゃないか?」

 

 俺の予想通り、マシュマロを銃を使って撃ち、それをキャッチするというものらしい。

 

「……幸子さんがキャッチするんじゃないんですね」

 

 エバンスさんが落胆したような声を出す。輿水さんのチームは、マシュマロを撃つのが輿水さん、キャッチするのが姫川友紀――野球好きで知られているアイドルだ。

 

「そうみたいだけど……エバンスさん、残念そうだね」

 

 島村さんがそう言うと、エバンスさんは苦笑した。

 

「ぼくとしては、小早川さんがマシュマロを撃って、幸子さんがキャッチする役だと思っていて……。そうしたら、小早川さんが幸子さんに真っ直ぐマシュマロを撃って、凄く面白くなるかなって」

 

 いい笑顔でなんて事言いやがる。今までのイメージが少し変わったんだが。他の皆も、穏やかな眼鏡っ子から飛び出てきた物騒な内容に、若干ドン引きしてしまっている。あの本田さんでさえ苦笑いって相当じゃないか。

 

「……え、ええと、エバンスさん、本当に輿水さんの事が好きなのね」

 

 ダフネの懸命なフォローも、かなり虚しい。

 

「うん! 見ていて元気になるから」

 

 それはアイドルとしてなのか芸人としてなのか。今は追及をしないでおこう。

 

『さて、キャンディーアイランドの方は――』

 

『はい! 私がキャッチします! マシュマロ大好きです!』

 

 キャラが突然変わったのは、スタジオの三村さんも同じだった。食い気味で返事してきたぞあの子。

 

「あー、みむっちは甘いものに目がないからなー」

 

「そうなの? 初耳ね」

 

 本田さんとハーミーの会話を聞くに、甘いものならモチベーションが上がるタイプの子か。さっきは苦い飲み物を飲まされていたから、尚更食い付きがいいのだろう。

 

『マシュマロを撃つのは……智絵里ちゃんね』

 

『えっ!? あ、はい!』

 

 双葉ちゃんが緒方さんの左腕を上げていたが、やはり面倒だからだろうか。節々で省エネしてやがる。

 

『それでは、YDチームから!』

 

『ちょっと! カワイイボクが抜けてますよ!』

 

 ツッコミを入れながらも、しっかりとマシュマロを上に撃つ輿水さん。やはり威力は調整してあるらしい。高く飛ぶには飛ぶが、天井の照明に当たる程までは飛ばない。

 

『オーライ、オーライ……』

 

 姫川さんはフライ球を撮る要領で、危なげなくマシュマロを手に取った。野球好きと公言するだけはあるな。

 

『友紀さん、マシュマロをキャッチしましたー! キャンディーアイランド、ここは取れないとピンチです!』

 

 三回勝負ではあるが、ここで成功できないと後に響くだろう。テレビに不慣れな二人が、致命的な失敗をしなければいいのだが。

 

『う、撃ちます!』

 

 素っ頓狂な声を出しながらマシュマロを撃つ緒方さん。ありゃ、微妙に明後日の方向に飛んじまったな。撃つ時に目を瞑ってしまったからだろうか。

 

「ダメかもしれないね」

 

 渋谷さんがため息をつく。……あと二回残っているし、残りをキッチリと成功させれば問題ないだろう。

 

『はあっ!』

 

 三村さんが動いた。おおよその落下地点が分かると同時に、風船早割り対決では見せなかったような俊敏さで滑り込む。スライディングの体勢を取った彼女は、そのまま落ちてくるマシュマロに向かって大口を開け――。

 

『あむっ!』

 

 閉じた。急に力の入った右足が三村さんのスライディングを止めることはなく、彼女はゴロゴロと数回ほど床の上を回る。

 

『ちょっと、大丈夫!?』

 

 慌てた様子で、川島さんと十時さんが駆け寄る。むくりと起き上がった三村さんは、満足気に口を動かしていた。

 

『……せ、成功! 成功でーす!』

 

 十時さんがふと我に返り、声を上げた。……確かに成功ではあるのだが、ちょっと体を張りすぎてないか。

 

『凄い取り方だったけど、感想は何かあるかしら?』

 

 川島さんが三村さんにマイクを向けると、彼女は満面の笑みを浮かべて答えた。

 

『はい、美味しいです!』

 

 ――いや、そうじゃないだろ。




■マッスルキャッスル
初案ではE.G.G.Sも参加させる予定だったが、収拾がつかなくなったためアニメ本編と合わせる方向に。実はこの変更のために蘭子回を書き直した。


■ハリエットが幸子のファン
なんか書いてたらこうなった。
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