The iDOLM@STER Cinderella Girls ~Two Irregulars~   作:せいけー

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第20話 Could you answer this question(3)

 三村さんが正答したことにより、ボクドスエチームの滑り台が初めて動いた。

 

『さあキャンディーアイランド、巻き返しの時よ!』

 

 双葉ちゃんはこくりと小さく頷くと、意を決したように前を見る。

 

『「科学」の三〇』

 

 観衆からは、悲鳴交じりの歓声が飛び出す。

 

『あ、杏ちゃん……』

 

 緒方さんと三村さんは、不安そうに双葉ちゃんを見る。

 

『負けないためにはこれしかないよ』

 

 いやはや、男らしいぜ双葉ちゃん。しかし、一体何だっていうんだ。せいぜいクイズ番組なんだから、そんな難しい問題が出るはず――。

 

『スカイツリーのてっぺんからリンゴを落とすと、落下直前の速さはいくらになりますか? スカイツリーは六三四メートル、重力加速度は九.八とします』

 

 ……あのさあ。難易度のふり幅が激しくねえかこれ。珍解答を連発したっていうBBチームを責められないぞスタッフ。

 

「城戸さんは分かる?」

 

「……渋谷さん、無茶は言わないでくれ」

 

 仮に理系出身だったとしても、暗算でこんな計算を行なうのは無理がある。

 

『秒速一一一.四七四メートル』

 

 ほんとかよ。適当に言っても意味ないだろ。

 

『えーっと、時速だと?』

 

 川島さん、あなたは鬼か。適当に答えた双葉ちゃんに追い打ちをかけるな。

 

『四〇一.三〇六キロ!』

 

 双葉ちゃんが力強く答えて一瞬。スタジオが静まり返ったかと思うと、ピンポンピンポンと正解を表わすSEが鳴り響いた。……え、マジで?

 

『せ、正解です!』

 

 カワイイドスエチームの角度がぐんと上がる。その勢いに負けたのか、輿水さんは滑り落ちて……ない。すんでのところで、滑り台にしがみ付いている。

 

「幸子さーん! 頑張ってー!」

 

 エバンスさんは必死の形相で、輿水さんを応援している。

 

「なんかすごい態勢になっているわね……」

 

「アイドルがしていいのかな、これ」

 

「幸子さんだから大丈夫です!」

 

 エバンスさん、それは褒めているのか貶しているのか。

 

『「アニメ」の三〇!』

 

『「幽体離脱! フルボッコちゃん」の主人公、フルボッコちゃんが生まれた場所はど――』

 

『冥王星六丁目六番地六号!』

 

 双葉ちゃんの快進撃が止まらない。食い気味で答えるとは。

 

「これが三〇の問題? 一〇でもいいくらいだわ!」

 

 ハーミーは鼻をふんすと鳴らしながら言った。それに食いついたのは本田さんだ。

 

「おっ、はみはみフルボッコちゃん好きなの?」

 

「あっ、いや、……常識よ常識!」

 

 ……知らんよそんな常識。そもそも作品名自体初耳なんだが。

 

『も、もう、あきまへん……あぁっ!』

 

 一気に角度が上がった滑り台に対応出来ず、小早川さんは滑り落ちてしまった。ぼすん、と勢いよく粉に落ちていった小早川さんは、真っ白になってしまう。

 

『早く、早く次の問題に移ってくださーい!』

 

 それでも落ちない輿水さんは、もはや意地だろうか。

 

『「スペシャル」の三〇!』

 

 双葉ちゃんが問題を選択する。三連続で最高難度か。チャレンジャーだなこの子。

 

『江戸時代のオランダ貿易で、ガラス製品の緩衝材として持ち込まれた外来種です。花言葉に「幸運」、「約束」などがある花は?』

 

 ……知らねえ。無茶苦茶難しいな。

 

「しぶりん、家が花屋でしょ? 分かる?」

 

 本田さんの質問に、渋谷さんは首を横に振る。

 

「ううん、分からない。花言葉はともかく、江戸時代に入ってきたかどうか……」

 

「渋谷さん、実家が花屋やっているのね」

 

 ダフネが意外そうに渋谷さんに訊く。

 

「小さい店だけどね」

 

 実家が花屋でも分からない問題か。物凄い難問だ。いや、もしかしたら双葉ちゃんなら――。

 

『ごめん、分かんないや』

 

 ……分からないのか。どうしたものか。

 

『……シロツメクサ』

 

 俺の思考は、小さく掻き消えそうな声で遮られた。

 

『シロツメクサです!』

 

 それは、緒方さんの声だった。双葉ちゃんが落下速度を答えた時のような、はっとした静寂が訪れ――ピンポンとSEが鳴った。

 

『――正解です!』

 

「シロツメクサって……!」

 

「うん。四葉のクローバー」

 

「まさに、幸運の象徴だね!」

 

 緒方さんと親交があるニュージェネレーションズの三人には、何やら思うところがあるらしい。

 

「緒方さんと何か関係あるのかしら」

 

「うん。智恵理、クローバーが好きだから」

 

 なるほど。緒方さんにはうってつけの問題だったという訳か。

 

 ボクヤキュウチームの滑り台が上がる。元々限界が近いのに、更に傾斜をつけられたのだ。運動神経がいい姫川さんでも、耐えきれるようなものではなかったらしい。

 

『うわっ、うわわ!』

 

 もうほとんど壁と言ってもいいぐらいの角度になった滑り台を、彼女は勢いよく滑り落ちた。

 

『もう、限界……』

 

 それに続くような形で、輿水さんも粉の入ったプールに沈んでいく。

 

『幸子ちゃん、可愛い落ち方でしたよぉ』

 

『はぁい、ということでキャンディーアイランドの勝利!』

 

 観客席が沸いた。あれだけ綺麗な逆転劇を見たのだ。盛り上がらない方が不自然だろう。

 

『やったあ! 杏ちゃん、私たち、勝ったんだよ!』

 

 感極まったらしい三村さんが、今にもずり落ちそうな双葉ちゃんに抱き着く。――そうすると当然、二人を支えるのが緒方さん一人になるわけで。

 

『うわっ、うわああ!』

 

 勝者のはずであるキャンディーアイランドの三人も、真っ白な粉に勢いよく突っ込んでいった。もくもくとスタジオに煙が舞う中、スタッフの声が響いた。……対決の撮影は終わったらしい。

 

「あっ、気付いたみたい!」

 

 本田さんが、キャンディーアイランド三人に向かって手を振る。粉まみれの緒方さんは、いい笑顔でこちらに向かって手を振っていた。

 

「城戸さんは手を振らないの?」

 

「いや、双葉ちゃん以外にとってみたら初めましてだからなあ」

 

 突然知らない男性が手を振ってきたら、少し怖いだろう。それに、双葉ちゃんも手を振り返すような子じゃないだろうし。

 

 ふと、双葉ちゃんと目が合う。彼女は小さくため息をつくような真似をすると、控えめにピースサインを送った。――これに応じないのは流石に無礼だろうな。俺も彼女と同じように、小さなピースサインを見せた。

 

「何よ、結局ピースしてるじゃない」

 

「別にいいだろ、向こうからしてきたんだからさ」

 

 双葉ちゃんも、はしゃぐ時があるんだな。

 

――――

 

 結局、得点は一二〇対一二〇で終わり、両者引き分けとなった。

 

『仲がいいですねー』

 

 いや十時さん、仲が良くてもなかなか点数は揃わないと思うぞ。

 

『そんな仲良しな二チームには、アピールタイムは半分こ! 罰ゲームも一緒に受けてもらうっていうことで』

 

 川島さんの言葉に、両チームが一斉に顔色を変える。

 

『聞いてないですよー!』

 

『言わないようにって言われていたもの~』

 

 それでいいのか。この番組、色々と連絡が抜けているような気がするんだが、大丈夫なのかそれ。場当たり的に制作してねえか。

 

『来週は、キャンディーアイランドさんとどすえチームさんのバンジー特番でーす!』

 

 罰ゲームでまるまる一時間使うのかよ。無茶苦茶だなこの世界は。

 

「対決の意味はあったのかしら……?」

 

「ハーミー、深く考えるのはやめよう」

 

 これはバラエティ番組だ。一々意味を求めていたら成り立たない。

 

『杏が頑張った意味がないじゃないかー!』

 

 双葉ちゃんの虚しい叫びは、観客の笑い声で掻き消えてしまった。

 

――――

 

 収録が一通り終わった。キャンディーアイランドの三人は自らのデビューシングルの告知、ボクドスエチームはブレインキャッスルの総集編DVDの告知といった形でアピールタイムを終えた。

 

「大成功だね、しまむー!」

 

「うん、やったね未央ちゃん!」

 

 大きなトラブルもなく撮影を終えた事に、シンデレラプロジェクトの仲間は安堵している様子だ。

 

「CDの告知も出来てテレビのお仕事がもう一つ入るなんて、とってもいいじゃない」

 

 ダフネもしみじみと感想を述べる。確かに、テレビの仕事がもう一つ入ったのはデカい。内容がどうであれ、全国の視聴者に顔を覚えてもらうチャンスが増えたのだ。

 

「本当にな。さて、俺達は帰るけど、三人はどうする?」

 

 俺が渋谷さん達に訊くと、エバンスさんは「えっ」と声を上げて俺を見る。

 

「こういう時はいつも、武内さんの所に行って話をしていません? 今回は行かないんですね」

 

 あれ? そうだったっけな。

 

「とかいってえっちゃん、幸子ちゃんを見たいんでしょ?」

 

 本田さんが図星を突いたのか、エバンスさんは「うっ」と返答に窮する。……付いてくるつもりだったのかよ。

 

「今回はパスパス。武内さんもバンジーロケの調整があるだろうし、忙しいだろ」

 

 それに、わざわざ挨拶をする程でもない。

 

「あら、残念だったわね。エバンスさん」

 

 ダフネの言葉を受け、エバンスさんは無言で俺の背中をポカポカと殴る。……何だか今日は、アイドルから良く暴力を受ける日だな。

 

「取り敢えず、エバンスさんは輿水さんとの共演を目標に頑張っていったらどうだ? アイドルを続けていれば、チャンスはいくらでもあるだろうし」

 

 エバンスさんは突如動きを止める。その後、決意したようにぐっと顔を上げた。

 

「……はい! 頑張ります!」

 

「頑張ってください! エバンスちゃん!」

 

 島村さんのエールを受けて、エバンスさんはにっこりと笑った。……うん、目標が出来たのは良かった。モチベーション維持には大切だからな。

 

「わたし達も、頑張らなきゃいけないわね! 目指すは、テレビ出演! 撮れ高確保よ!」

 

「ふふっ、ハーミーが頑張るなら、あたしも頑張らなきゃね」

 

 今回、収録を見学して良かったな。こうして、E.G.G.Sの三人もやる気が出たらしいから。

 

「……私達も帰ろうか、未央」

 

「うん、そうだね! 明日、盛大にお祝いしちゃおう!」

 

「はい!」

 

「おう、気を付けて帰れよ」

 

 俺が手を振ると、ニュージェネレーションズの三人は各々会釈をして去っていった。

 

「もちろん、プロデューサーも頑張らなきゃいけないわよ」

 

 ハーミーが釘を刺すように言った。

 

「分かってるよ。何せ、四人五脚だからな」

 

 さてさて、先生に進捗を訊いてみないとな。

 

「……もつれて一緒に倒れるのだけは勘弁よ」

 

「うっせハーミー」

 

 もし倒れても引き摺ってやるよ。




■DVDの告知
何もなしにKBYDが出演するとは思えなかったので、それらしい理由をつけた。


■「E.G.G.Sの三人もやる気が出たらしい」
ただ収録を見てそれだけというのも味気ないなと思い、急遽付け加えた。


次はスムーズに書けるといいな……。
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