The iDOLM@STER Cinderella Girls ~Two Irregulars~   作:せいけー

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ちょっとここは修正が入るかもです。


第25話 Which do you like, cat or rock(2)

 本田さんがちらりとこちらを見た事で、俺が来たことに気付いたようだ。

「シロちゃん、やっほー!」

 

「やっほーって何だやっほーって」

 

 本田さんが大きく腕を振るのに釣られてしまい、小さく手を振る。

 

「……あ、凛ちゃんの隣にいた?」

 

 三村さんが思い出したように声を出す。おそらく、マッスルキャッスルの収録の事だろう。

 

「ああ。城戸進ノ介、E.G.G.Sのプロデューサーだ。三村さんと緒方さん、それにアナスタシアさんは初めましてだな」

 

「ダー。アナスタシア、です」

 

 ロシア語混じりのアナスタシアさんが、とてとてと俺の元に近付く。

 

「……オトナの人、呼びます」

 

 えっ俺何かした?

 

「ああ違うってばアーニャさん! 確かに初対面だけど、プロデューサーは大丈夫なの!」

 

 ハーミーが慌てたようにアナスタシアさんに言う。だから、一体何の話をしてたんだよ。

 

「……そうなのですか?」

 

 アナスタシアさんはきょとんとした顔でハーミーに聞き返す。

 

「うふふ、ハーミーったら、アーニャさんが良く街で変な人に声を掛けられるって話を聞いて、『じゃあわたしが何とかしないと!』って張り切ってたのよ」

 

 ダフネが事情を説明してくれた。……拒否された訳じゃなかったのか。悪気はなかったみたいだし、ハーミーもしっかり訂正するだろうし大丈夫だろう。

 

「えっと……、その……」

 

 緒方さんが恐る恐るといった調子で俺に声をかける。

 

「ん、どうしたの? 緒方さん」

 

「あの、シンデレラプロジェクトの皆を助けてくれて、ありがとうござい、ます」

 

 ぺこりと彼女は礼をした。

 

「いやいや、感謝されるような事は出来てないって。それに、結果として助けるような形になっているだけだから」

 

 それ以前に、キャンディーアイランドの三人への手助けは何一つしていない。彼女達は自分達の力で乗り切ったし、先日のバンジージャンプもしっかりとやり遂げたとか。

 

「城戸プロデューサー、また手助けするんじゃないんですか? 次はみくちゃんと李衣菜ちゃんだって」

 

 三村さんがカップケーキを頬張りながら訊く。やっぱり噂は広まっていたか。

 

「そう言えば、二人とも何かを一生懸命調べていたみたいだけど、あれって城戸さんが関係してたんだ?」

 

 渋谷さんの質問に頷く。

 

「ああ、まあな。それぞれの意見をプレゼンしてもらおうと思って」

 

「プレゼン? それって、ドラマの会議シーンとかでよくやってるやつだよね?」

 

 本田さんが話に入ってきた。

 

「何もドラマだけの話じゃないぞ? 社会人なら大なり小なりやる事だ。現に俺も、E.G.G.Sが夏フェスに参加できるようにやったりしてたからな」

 

 とは言え、シンデレラプロジェクトの一同とE.G.G.Sのデビューシングルの売上を比較し、その上でE.G.G.Sにも伸びる余地がある事を指摘、シンデレラプロジェクトと同じくE.G.G.Sにも参加する事に問題がないことをアピールしただけだ。……テレビ出演が叶わなかった分、今回ばかりは頑張らせてもらった。

 

「……未央ちゃんの言っている事とは違って、ちゃんと仕事してるんですね」

 

 緒方さん緒方さん、さっきのは聞き捨てならなかったぞ。いや待て本田さん、こっそり逃げようとするな。

 

「いやあ、私は第一印象で言っただけだよ? あ、でもほら、ギャップ萌えってヤツじゃない? 普段はリアクションが面白いお兄ちゃんキャラが、実はバリバリに仕事出来るって結構ポイント高いよ! うん! しまむーもそう思うよね?」

 

 急に話を振られた島村さんはばっと顔を上げ、「えっ、ええ?」と困惑したように周りを見渡す。俺の顔をじっと見た彼女は、何かに気付いたかのように頷くと、満面の笑みを浮かべた。

 

「はい! 私も城戸プロデューサーは素敵な人だと思います!」

 

 違う、そうじゃない。褒めてくれるのは有難いけど、質問の答えにはなってない。

 

「……卯月にも鼻の下伸ばしてるの?」

 

 そして渋谷さんは睨むのを止めてください。お願いします。そして鼻の下を伸ばしていない。

 

「……問題の二人がいないみたいだが、今は仕事に行ってるのか?」

 

 無理矢理話題を変える。

 

「はい。今、二人は飴のPRをしていて、もうそろそろ戻ってくるんですけど」

 

 三村さんが俺の疑問に答える。なるほど、飴のPRね。……ん?

 

「だったら、キャンディーアイランドの方が良くないか? ユニット名に飴って付いてるぐらいだし」

 

 たはは、と苦笑したのは本田さんだ。

 

「アンズ、何処かに行ってしまって、キラリが探してます」

 

 アナスタシアさんが代わりに説明してくれた。また双葉ちゃんか。そしてまた諸星さんが探してるのか。

 

「あの二人の次に、私たちがPRをするんですけど」

 

「双葉ちゃんが見つかるまでは待機、って事か」

 

 緒方さんはこくこくと頷いた。

 

「杏ちゃん見つけたよぉー!」

 

 双葉ちゃんを抱えた諸星さんがやって来たのは、緒方さんが頷いてすぐだった。

 

「うへ……。だから杏はやる気が……。げ、城戸プロデューサーじゃん……」

 

 ぐったりとしている双葉ちゃんは、俺を見て更に脱力する。

 

「聞いたよ。アンタも結構物好きだよね。あんな言い合いにわざわざ乗っかかるなんて」

 

 諦めたような笑いに俺も乗っかる。

 

「乗っかった訳じゃなくて、巻き込まれた感じだけどな。でもま、乗りかかった船ではあるし、ちょっとは助けようかなと」

 

 話を聞いていた諸星さんは、にっこりと笑みを湛えた。

 

「城戸ちゃんはいい人だから、ついついお世話焼いちゃうんだよぉ、杏ちゃん!」

 

「いや、これは度を越しているでしょ。世話焼きどころか、お節介だよ」

 

「それは同感しちゃうわね」

 

「おいおいダフネ、それはないだろ」

 

 そのお節介がなけりゃ、こうして自主レッスンで和気あいあいとやってないだろうに。

 

「うーん……ま、テキトーに聞き流せばいんじゃない?」

 

 何だか投げやりだな、双葉ちゃん。

 

「まあ、そうさせてもらうよ」

 

 ……今更かもしれないが、嫌な予感がしてきた。

 

――――

 

 E.G.G.Sのプロジェクトルーム。前川さんと多田さんは、距離を置いてソファに座っていた。ちらりちらりと互いを見ては、「ぐぬぬ」だの「うぐう」だのよく分からない唸り声を上げている。

 

「さて、それじゃあ始めようか。今回二人のプレゼンを聴くのは、俺とE.G.G.Sの三人。最初に言っておくが、互いに相手のプレゼンを邪魔しない事。時間は三分程で頼む」

 

「ええっ!? それじゃあネコチャンの魅力が全然――」

 

「ロックのロの字も伝えられないよ!」

 

 何分を想定していたんだ二人とも。

 

「あ、余り長すぎても、ダメな気がするんですけど」

 

 エバンスさんがおずおずと右手を上げながら言う。

 

「エバンスさんの言う通り。――さて、どちらからやる? ジャンケンで決めてもいいぜ」

 

 二人は互いに顔を見合わせ――いや、睨み合って、互いにすっと右手を振りかざす。

 

「最初はグー!」

 

 前川さんが掛け声を上げる。

 

「ジャンケン……!」

 

 多田さんの掛け声と同時に、二人の手が出る。互いにチョキ。

 

「あいこで……」

 

 次は両方ともグー。

 

「あいこで」

 

 またチョキ。二人の顔が曇り始めた。

 

「……あいこで」

 

 二人ともパーを出した所で、前川さんの腕がぷるぷると震えた。

 

「にゃー! 全然決まらないにゃー! 李衣菜ちゃん、同じのを出し続けないで欲しいにゃ!」

 

「みくちゃんだって、さっきからあいこになってばかりじゃないか!」

 

「なにをー!」

 

「ぐぬぬ!」

 

「お前らさあ、本当は仲良いんじゃないの?」

 

 俺のボヤキに、二人が一斉に振り向く。

 

「そんな事ないにゃ!」

 

「そんな訳ないって!」

 

 ……やっぱり仲良しじゃん。

 

――――

 

 兎も角、最初は多田さんに決まった。え、決め方? 鉛筆を転がしたんだよ。

 

「よーし、それじゃあ始めるよ!」

 

 黒いトートバッグから多田さんが取り出したのは、何枚かの画用紙だった。一番前の画用紙には、『ロックについて』と書かれ、様々なアーティストのシールが貼り付けられている。

 

「……紙芝居?」

 

 ハーミーが訊くと、多田さんは「うぐっ」と言葉に一瞬詰まったが、咳払いをして持ち直す。

 

「プレゼンで紙芝居ってロックじゃん?」

 

「全然ロックじゃないにゃ」

 

「どうどう、前川さん。……それじゃ、始めてくれ」

 

 俺はストップウォッチのボタンを押し、時間を測り始める。

 

「うん。……ロックについて、始まり始まり〜」

 

「あの、やっぱり紙芝居なんじゃ……」

 

 エバンスさんのツッコミを無視し、多田さんは表紙の画用紙を束の後ろに追いやる。次のページには、なにやらびっしりと文字が詰め込まれていた。

 

「まずロックって何かなんだけど、音楽のジャンルなんだよね。1950年代にアメリカ合衆国の黒人音楽であるロックンロールやブルース、カントリーミュージックを起源とし、1960年代以降、特にイギリスやアメリカ合衆国で、幅広く多様な様式へと展開した。また、ロックミュージックは英国のモッズやスウィンギング・ロンドン、1960年代後半に米国のサンフランシスコからひろがったヒッピームーブメントやカウンターカルチャーなどの社会運動が高揚した時代と同時期に絶頂期を迎えた。同様に、1970年代後半のパンクは、ゴスや後年のグランジなどの新しいジャンルのルーツとなった。フォーク(民族音楽)のプロテスト精神を継承し……」

 

 待ってくれよ。画用紙の中身全部読むのかよ。しかもそれ、ネット百科事典の丸写しじゃねーか。

 

「……」

 

 前川さんが俺の方を見て、目で「ツッコミを入れていいか」と訊いてくる。俺は首を横に振り、前のめりになって画用紙を読む多田さんを顎で指す。

 

「それじゃ、次のページに行くね」

 

 文字まみれの画用紙を超えた先は、また文字まみれの画用紙だった。

 

「1964年、ビートルズはロックンロールが誕生した国、アメリカへの上陸を果たし、全米チャートでヒットを連発することになった。ビートルズ以外にも、エリック・バードン率いるアニマルズやローリング・ストーンズ、ザ・フー、キンクス、ゾンビーズ、デイヴ・クラーク5といったイギリスのロック・バンドなどがこの時期にアメリカでヒットを出したことから、これはブリティッシュ・インヴェイジョン と呼ばれる。アメリカでもブリティッシュ・インヴェイジョンの影響を受けて……」

 

「……残り一分」

 

 ストップウォッチを見ながら声を出すと、多田さんは画用紙から目を離し、慌てたような声を出す。

 

「ちょっ、ちょっと待ってよ! まだ二ページ目なんだけど! ……後にガレージロックと呼ばれるグループが次々と登場し、一部のバンドは成功を収めた。また、時を同じくしてブリティッシュ・インヴェイジョンの影響を受けたフォーク・グループも次々と登場した。これらのグループの多くは元々はフォークを演奏していた若者たちによって結成されたものであり、彼らの音楽性もフォークからの影響を受けたものであったため、この動きはフォーク・ロックと呼ばれた。フォーク・ロックの代表的アーティストには」

 

「三分経ったな。多田さん、終わりだ終わり」

 

 多田さんから画用紙の束を没収すると、彼女は不満そうに顔をしかめた。

 

「まだ全然説明出来ていないんだけど!」

 

「いやいやいや、丸パクリじゃねーか!」

 

 大学のレポートだったら即死だぞ! つーか、これ全部書き写したのかよ! 無茶苦茶だぞオイ!




■李衣菜のロック解説
Wikipedia「ロック(音楽)」より引用。もしかしたら直すかもしれないです。
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