The iDOLM@STER Cinderella Girls ~Two Irregulars~   作:せいけー

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夏ライブ回ラストです。


第30話 Now, I find our way(4)

 一日目の日程が終わった。シンデレラプロジェクト一同とE.G.G.Sの三人は、興奮冷めやらぬ様子でステージに腰かけていた。

 

「いやー、あっという間だったね」

 

「はい!」

 

 本田さんと島村さんは、感慨深そうに星空を眺めていた。結果から言ってしまえば、今回のライブは大成功だ。新田さんの件でバタバタしてしまったが、E.G.G.Sは「Invisible Veil」を何とか披露したし、続くシンデレラプロジェクトも「GOIN'!!!」を全員で、完璧にやり切った。勿論、アンコールの「ススメ☆オトメ」も文句なしの出来だった。

 

「ありがとう、城戸さん。また助けられちゃったね」

 

 渋谷さんが俺に礼を言ってきた。

 

「流石に今回は焦ったけどな。ま、結果オーライって事で。……それに、礼を言う相手は俺じゃないだろ」

 

 莉嘉達と談笑している、E.G.G.Sの三人をちらりと見る。俺の真意が伝わったのか、「そうだね」と頷き、渋谷さんは俺の視線の先へと向かっていった。彼女と入れ替わるように、武内さんが俺の目の前にやって来る。

 

「……城戸さん。ありがとうございました。貴方の判断のお陰で、シンデレラプロジェクトは万全の状態で『GOIN'!!!』を披露出来ました」

 

「いえ、自分も彼女達が揃ってパフォーマンスをする所が見たかったですし、結局はE.G.G.Sの三人に負担を強いてしまった訳ですから。……渋谷さんにもそれとなく伝えましたが、本当に頑張ったのはあの三人です」

 

 ハーミーが俺を指さし、話し込んでいたグループがゲラゲラと笑い始めたが、今は好きにさせておくとするか。アナスタシアさんと二人で話している新田さんを見て、武内さんは俺の言葉に返す。

 

「思えば、城戸さんには借りを作ってばかりですね。……すみません、ろくにお礼も出来ず」

 

「いいですよ、気にしなくて。アイドルは助け合いなんですから、きっとプロデューサーも助け合いですよ。武内さんも、E.G.G.Sがフェスに出られるように頑張ってくれた立役者の一人じゃないですか。シンデレラプロジェクトがフェスに参加出来たから、E.G.G.Sも参加出来たんですよ」

 

 アイドルが仲良いのにプロデューサーがいがみ合ってるなんて、正直やってらんないからな。――それに、仕事仲間は邪険に扱ってはいけないのだ。まあそれは、どちらかと言うと俺の流儀に近いものなのかもしれないが。

 

 無関係と言うには、E.G.G.Sとシンデレラプロジェクトは関わりを持ってしまった。こうなったら同じ新人アイドルを抱える身だ。運命共同体になっても致し方ないだろう。

 

「はい。そうですね」

 

 武内さんが仏頂面を俺に向ける。……こころなしか、若干その顔は微笑んでいるようにも見えた。いややっぱ仏頂面だな。暗いからそういう風に錯覚したのかもしれない。

 

――――

 

 ふと私達の前に現れたのは、二人の女の子だった。一人はふわふわとしたくせっ毛を束ねている、眉毛が印象的な子で、もう一人は明るい茶髪を二つにまとめた子だ。

 

「やっほ、久しぶり」

 

 髪を二つに束ねた子が、私とダフネの方を見ながら挨拶をして来た。……誰だろう。私には心当たりがなかったが、ダフネは大きく目を丸く見開いていた。

 

「久しぶり……ですね、カレンさん」

 

 あれ? 共通の知人なんていたかな。考えを巡らせている私の様子を見て、「やっぱり、覚えてないか」とその子は少し残念そうに笑った。

 

「北条加蓮よ」

 

「あたしは神谷奈緒って言うんだ! 宜しく!」

 

 名前を聞いても、いまいちピンと来ない。

 

「おい、加蓮。やっぱり覚えてないみたいじゃないか」

 

「仕方ないって。調子は良くなっていたけど、学校は休みがちだったし」

 

「そうだったんですね。あまり見かけなくなったから、すっかり元気になったんだと」

 

「今は元気元気。あすちーは?」

 

 北条加蓮に話を振られたダフネは、「ええ、まあ」と言葉を濁す。あすちー? 誰のことだろ。

 

「元気ですよ。あたしがアイドルになって、一番喜んでると思います」

 

 「ふふっ、変わんないね」と彼女は笑う。

 

「えっと、私は覚えていないんだけど」

 

 私が訊くと、彼女は「えっとね」と説明を始めた。

 

「中学が同じだったんだよ。さっきも言ってたけど、アタシは学校休みがちだったし知らなかったと思うけど」

 

 「でもね」と北条加蓮は言葉を続けた。

 

「あなたが噂になってたのは覚えてて。――だから、一方的にアタシが知ってる形になっちゃってるのかな」

 

 確かに、中学生の頃に「激レアな美少女がいる」というような話は耳にした事があったのだが、それが目の前の子だとは思ってもいなかった。

 

「いやー、すごいよな加蓮は。『アイドルになった知人が二人いる』なんて」

 

 神谷奈緒が感慨深そうに言った。確かに、なかなか出来ないような体験だろう。……私はもうアイドルだから、そんな体験は出来ないだろうけど。

 

「エバンスさん、ハーミー。紹介が遅れたわね。――二つ結びの人が、北条加蓮。あたしの知り合いよ。もう一人が……ええと、初対面の人ね」

 

「神谷奈緒! これから宜しくって言ったじゃないか!」

 

 ――ん? これから宜しくって事は。

 

「えっと、もしかして」

 

 ハリエットの疑問に、北条加蓮と神谷奈緒の二人は大きく頷く。

 

「アタシ達も346プロのアイドルになったの。……とは言っても、まだまだ新米だけどね」

 

「アイドル……? でも、カレンさん」

 

 不安そうに訊いてくるダフネに、北条加蓮は微笑み返した。

 

「大丈夫。もう元気だから」

 

 「それならいいんだけど」とは言っているが、ダフネは心配そうな表情を崩さない。「学校を休みがちだった」という言葉と、「今は元気」という言葉から想像すると、ダフネは彼女を体力的な方向から心配しているようにも思えた。……私の目からしてみると、健康そのものと言った感じだけど。

 

「もしかしたら、これから一緒に仕事をする事もあるかもしれないわね! 二人でユニットを組むの?」

 

 ハーミーが訊くと、神谷奈緒は「ああ!」と力強く頷いた。

 

「来月の末にデビューする予定なんだ! デュアルプリズムってユニットで、これからレッスンも本格化していくらしいんだ」

 

「だったら、手伝える事は手伝います。なんたって、カレンさんがいるユニットですから」

 

「ありがと、その時はお願い」

 

 ダフネと北条加蓮が会話をしていると、城戸さんがゆっくりと近付いてきた。

 

「仲が良さそうで何よりだよ。――えっと、神谷さんと北条さん、だったかな」

 

 二人は城戸さんにぺこりと頭を下げると、私達の方を見る。

 

「この人は城戸さん。E.G.G.Sのプロデューサー」

 

 私の紹介に応じて、城戸さんはにこりと微笑む。

 

「渋谷さんの言う通り、E.G.G.Sのプロデューサーをしている城戸だ。デュアルプリズムだったか、また一緒に仕事をする時はよろしく」

 

「よろしくお願いします!」

 

 何だか、アイドルにしっかりとした挨拶をされている城戸さんを見るのはかなり新鮮だ。

 

「そこまでかしこまる必要はないですよ。プロデューサーさんはかなりざっくりとした人ですから。――ね、プロデューサーさん?」

 

 ダフネが城戸さんの方を悪戯っぽく向くと、彼は肩を竦めて苦笑いした。

 

「もうちょい敬って欲しいのは山々だが、まあ俺もあまりお堅いのは好きじゃないからな。……っつーか、その二人には敬語なんだな、ダフネ」

 

「あら、プロデューサーさんも敬語がいいかしら?」

 

「今更変えられても変な感じがするからな。そのままでいいよ」

 

「……なんつーか、近所の兄ちゃんって感じの人だな」

 

 神谷奈緒が、二人の会話を見てそんな感想を言った。

 

「怖い人じゃないからいいんじゃない? 何だか、奈緒みたいな雰囲気があるし」

 

「どういう事だよそれ」

 

「ほら、いじられ体質っぽい所とか」

 

「「んな訳あるか!」」

 

 神谷奈緒と城戸さんの声が綺麗に揃った。

 

――――

 

 あの、とエバンスさんが恐る恐る俺に声を掛けてくる。

 

「ああ、どうしたエバンスさん」

 

「あの、北条さんとダフネさんに何らかの繋がりがあるみたいなんですけど、心当たりありますか?」

 

 なんだなんだ、藪から棒に。

 

「本人に訊けばいいんじゃないか? 何か後ろめたい事でもあるのか」

 

 つーか、俺も初耳だぞ。

 

「妹の関係よ、プロデューサーさん」

 

 ――ああ、そういう事ね。成程。

 

「そういう事ね」

 

「……えっと?」

 

 ハーミーは察したらしいが、エバンスさんは依然として分からないらしい。

 

「また後で話すよ。少々込み入った話だし」

 

 話すんなら、本人もいた方がいいだろうからな。

 

「ダフネ、近々報告に行くのか?」

 

 俺が訊くと、彼女は「ええ」と首を縦に振った。

 

「明日にでも行くつもりよ。プロデューサーさんも行くの?」

 

「ああ。俺だけじゃなく、エバンスさんとハーミーも同行していいか?」

 

「ええ、もちろん。喜ぶと思うわ」

 

 ダフネはスマホを取り出し、素早く画面にメッセージを打ち込む。

 

「うん、やっぱり喜んでいるわ。一緒に行きましょう」

 

「それは良かった」

 

 なんの事か分からないエバンスさんを尻目に、ハーミーは一人嬉々としている。

 

「わたし、会うのは初めてなのよ。楽しみだわ」

 

「お、そうだったか。俺は久々かな。少しは良くなっているといいんだが」

 

「ええ、そうね」

 

 ダフネはにっこりと微笑んだ。――しかし、一瞬だけ見せた寂しそうな顔が、少しだけ気にかかった。

 

――――

 

 夜空には満点の星が瞬いている。その一つ一つが自己主張をしながらも、他の星を照らしてより明るく輝かせているようにも見えた。――まるで、今日のライブのように。

 

「感謝しなくちゃいけない、かな」

 

 美波は城戸の方を見る。彼は彼女に目もくれず、自分の担当しているユニット――E.G.G.Sの三人と何かを話し込んでいた。

 

「はい。彼の助力もあり、シンデレラプロジェクトは『GOIN'!!!』を問題なく披露する事が出来ました」

 

 武内プロデューサーが頷きながら美波の言葉に答えた。他の皆が言っていたような面白い青年という印象は、美波の中からは消え去っていた。

 

 ――俺達を、頼ってください。

 

 そのように彼女を諭した彼の目は力強く、頼りがいがあった。

 

「凛ちゃん、全然頼りなくなんかないよ」

 

 初めて見る女の子二人と話している凛を見ながら、美波は呟いた。

 

「プロデューサー。もしE.G.G.Sが困るような事があったら、私も――いいえ、私達も手伝えたらいいですね」

 

 美波がそのように言うと、武内プロデューサーは美波の方をしっかりと向き、「はい」と返事をしながら頷いた。

 

「彼に――いえ、E.G.G.Sの子達にも、助けられてばかりですから。シンデレラプロジェクトで手伝える事があれば、その時はよろしくお願いします」

 

 仏頂面を崩さない武内プロデューサーに苦笑しながらも、美波は頷いた。

 

「はい。これからもよろしくお願いします、プロデューサー」

 

 満天の星空が、エールを送っているような気がした。




■加蓮と奈緒
もう少し後の登場だった気がしますが、ダフネ周りの話もあるので、早めの対面になりました。


何とか、アニメ一期分が終わりました。評価や感想、お気に入りありがとうございます。励みにして、二期分のお話も進めていきたいと思っています。
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