ドラえもん「えぇっ! この素晴らしい世界に祝福をだって!?」   作:腎臓「詫び石だ、受けとれ」

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潜入!警察署

――翌朝、酒場

 

 

「おはようございます、ドラえもん」

 

「だめ」

 

「なんでですか! まだ何も言ってないじゃないですか!」

 

「昨日の今日だぞ。どうせ散歩に付いてきてって言うんだろ」

 

「……ドラえもんも紅魔族の習性が分かってきたようですね……」

 

「だめだめ。今日はアクアのとこに行くんだから」

 

「あ、そういえば」

 

 めぐみんが明後日の方向を見ながら答えた。どうやら、忘れていたらしい。

 

「そろそろ行ってやらないと、拗ねちゃうからね」

 

「あれ、もう釈放の日でしたっけ?」

 

「違うけど、まぁまかせて」

 

 ドラえもんがポンと胸を叩いた。

 

 しばらく二人で朝食をとっていると、酒場の扉が開いた。金髪の髪を結い、黒いタイトスカートを着た私服姿のダクネスが入ってきた。

 

「やぁ、おはよう。二人とも」

 

「おはよう、ダクネス」

 

「おはようございます、ダクネス。もう家の用事は良いんですか」

 

「あぁ、もう大丈夫だ。実は、街の郊外に魔王軍幹部のベルディアが来ていてな。その対応に追われていたんだ」

 

「え、ベルディアが!?」

 

「おっと、安心してくれ。実は、昨日からパタリといなくなってな。どうやら、もう去ったみたいなんだ」

 

「へぇ、何かあったんですかね」

 

「なんでも、幹部がいた古城が今朝になって無くなっていたらしい。それも、跡形もなくな。もしかしたら、誰かが倒したのかも知れん」

 

「え」

 

「え」

 

 めぐみんとドラえもんが顔を見合わせた。

 

「……めぐみん、ちょっと冒険者カード見せて」

 

「え、ええ」

 

「ちなみに、奴には3億エリスも賞金がかかっているんだ。本当に倒したのなら凄いことだ」

 

「3億!? ど、ドラえもん! どうでしたか!?」

 

「……倒してはいないみたいだね」

 

「見せてください! ……ほんとだ、討伐記録に載ってませんね」

 

 目に見えるように、めぐみんががっくりと肩を落とした。

 

「まさか、二人とも魔王軍幹部と戦ったのか?」

 

「戦ったというか、一方的に爆裂したというか……」

 

「ドラえもん、もう一度あの古城に行きましょう! まだ近くで倒れているかもしれません!」

 

「さすがに危険だってば。もう魔王軍幹部も回復してるかもしれないし」

 

「……それもそうですね。今日は他のところでやりましょうか」

 

「それがいいよ。ぼくもついていくからさ」

 

「……そういえば、アクアはどうしたんだ?」

 

「あ」

 

「あ」

 

 

――警察署

 

 

「なに、被疑者に会わせてほしいって? ダメダメ。あの子はもう検察に送致しちまったから、勝手に会わせられねぇよ」

 

 警察署の前で立番をしていた警官が、ふるふると手を振った。

 いきなり門前払いをくらったもが心外だったのか、ダクネスが食い下がった。

 

「では、検察官に会わせてくれないか。おそらく、顔を見ればわかってもらえるはずだ」

 

「検察に? ああ、それなら今ちょうど来てるが……」

 

「どっちにいるの?」

 

「あっちだ」

 

「向こうですね」

 

 めぐみんが中に入ろうとするや、首根っこを掴まれ、警官に止められた。

 

「おいおい、会わせるわけないだろ。ちゃんと面会の予約を取ってから来い」

 

「は、離してください! 私は中に入るんです!」

 

 めぐみんが抵抗するが、大柄な警官には敵うはずもなかった。結局、襟を掴まれながら入口に戻された。

 

「うーん、どうしたものだろうか」

 

「まぁまぁ。ここはぼくにまかせて」

 

 ドラえもんがポケットから石ころ帽子を人数分とりだした。

 

「はい、めぐみん、ダクネス。これを被って」

 

「こ、これをですか……? すいません、恥ずかしいんですけど」

 

「わ、私も……」

 

「大丈夫だいじょうぶ。被ってしまえば、僕たちは見えなくなるから」

 

 二人はドラえもんの話に首をひねりながら、また、このダサい帽子を人前で被るのかという心理的抵抗と格闘しながら、しぶしぶ頭に被った。

 

「……あれ? いま誰かと話してた気がするんだが……」

 

「ね? これを被ると、まるで道端の石のように気にされなくなるんだ」

 

「おぉ、ほんとです! 私たちのことを途端に見なくなりましたね」

 

「……じゃあ、目の前で服を脱いでも……ほんとだ! 私のことを見向きもしない! あぁ、これは癖になるな!」

 

「ダクネス……」

 

「ぼくたちからは見えてるからね……」

 

「はぅぅ……! 放置プレイと羞恥プレイを同時に味わえるとは……! ドラえもん、やるな……!」

 

「はいはい、ほら、先に行くよ」

 

 ドラえもんが相手にしてられないとばかりに、ダクネスの袖を引いた。

 

「わわ、引っ張るな。まだスカートが下したままなんだ!」

 

 

――聴取室前

 

 

「ここでしょうか?」

 

「とりあえず開けてみよう」

 

 ドラえもんがドアノブを捻る。中に入ってみると、20代ほどの若い女性がスーツ姿で執務を行なっていた。

 

「おや、ドアが一人でに開いた……?」

 

「よし、念のため空間ひんまげテープをドアに貼っておこう」

 

 ドラえもんがポケットから奇妙なテープを取りだし、ドアノブ近くに貼っていく。

 

「これで準備万端。さぁ、みんな帽子を脱いで」

 

「「はい!」」

 

 ダクネスたちが帽子を脱ぐ。

 すると、今まで視線の合わなかった女性が、こちらを見て驚きの声を上げた。

 

「きゃあ! あ、あなたたち、一体どこから!?」

 

「はじめまして、ぼくドラえもんです」

 

 ドラえもんが手を上げて挨拶をする。

 

「ドラえもん!? あ! あの被疑者の使い魔ね!」

 

「や、やぁ、セナ嬢。ここではダクネスと呼んでくれ」

 

「ラ、いえダクネス様!? どうしてここへ!?」

 

 ダクネスが遠慮がちに挨拶する。予想外の訪問客に、セナと呼ばれた女性は頭がついていかないようだ。

 

「我が名はめぐみん!」

 

「あ、はい」

 

「あれ、私の時だけ反応薄くないですか!?」

 

「それは、その……いや、そんなことはどうでもいいでしょう。誰か、誰か来なさい! 曲者です!」

 

 セナがドアに向かって声を張り上げた。すぐに、廊下が騒がしくなる。だが、一向にドアが開かれる様子はなかった。

 

「無駄だよ。空間ひんまげテープを使ってるから、今は誰もここに入れないんだ」

 

「そ、そんな!? わ、私をどうするつもりですか!」

 

「ぐっふっふ。どうしてやろうかなぁ」

 

「うっわぁ……ドラえもんがいつになくムカつく顔してますね」

 

「おぉ、なんというゲス顔……! ドラえもん、悪逆非道なことはまず私に――」

 

「しないってば! ちょっとした冗談だって!」

 

 ドラえもんがプンスカと声を張り上げた。

 

「はぁ、なんだ……」とダクネスが心底残念そうにため息を吐いた。

 

「なんでガッカリするのさ……」

 

「そ、それで、あなた方の目的はなんですか!」

 

「おっと、そうだった。実は、アクアを釈放してほしいんだ」

 

「被告の釈放ですって? 残念ですが、それには応じられません!」

 

「だと思った。じゃ、これを使おう」

 

 ドラえもんがポケットの中へ手を入れ、マイクのようなものを取りだした。

 

「ジーンマイク!」

 

「なんですか、それ?」

 

「まぁ見てなよ。あーあー、検察官さん、アクアは、洪水を出したけど、そのあとはちゃんと直したじゃありませんか。それなのに捕まえるなんてひどいんじゃないでしょうか」

 

「おぉ! 何と素晴らしいお言葉! えぇ、すべて私が間違っておりました!」

 

「へ?」

 

「は?」

 

 セナの突然の豹変に、二人が豆鉄砲をくらったように目を丸くしている。だが、ドラえもんは気にせずに続けた。

 

「そうでしょうそうでしょう。なら不起訴処分にいたしましょう」

 

「はい、すぐに釈放したします!」

 

 言うや否や、セナはすぐに決裁文を作成し始めた。

 それを見届けてから、ドラえもんが振り返った。

 

「ね、すごいでしょ? このマイクで話すと、どんな話でも相手を感動させることができるんだ」

 

「おぉ、なんて素晴らしい言葉なんだ!」

 

「こんな卑怯な方法で助けるなんて、私も涙が止まりません!」

 

「あ、切るの忘れてた」

 

 

――酒場

 

 

「いやぁ、娑婆の空気はうまいわ!」

 

「まったくもう。これからは街の人に迷惑かけるなよ」

 

「分かってる分かってる。今度はもう少しおさえて使うから」

 

「あ、これ反省してないですね」

 

「それにしてもドラえもん、もう少し助けに来るの早くても良かったんじゃない? 私、檻のなかでとっても寂しかったんですけど」

 

「すぐに助けちゃったら、君は反省しないだろう」

 

「するする! すぐに反省するから。次はもっとパッと助けてよ」

 

「なんで次もある前提なんだか」

 

ドラえもんが呆れたようにジトと見つめる。

 

「しかし、ドラえもん。あの道具の効果はいつまで続くんだ?」

 

 ダクネスが首を傾げて尋ねた。ドラえもんもはっきり分からないのか、うーんと思案する。

 

「分からないけど、おそらく人によると思うんだ。頭の良い人なら、1日やそこらでおかしいと気付くかもしれない」

 

「じゃあ、もしかするとアクアがまた捕まることもあるってことですか」

 

「え、うそ!?」

 

「大丈夫だよ。一度決められた処分は、多少おかしくてもまずひっくり返らないもんさ。お役所なんてそんなもんだよ」

 

「はぁ、よかったぁ」

 

「ただ、次も助けられるとは限らないからね。これに懲りたら、周りのことも考えて行動しなよ」

 

「はぁい……」

 

 アクアが少し反省したようにうなずいた。

 それを見たドラえもんは、への字に曲げていた口元をふっと緩めた。

 

「……ま、今日はこのぐらいにしておこう。はい、シュワシュワ」

 

「え、くれるの?」

 

 アクアがジョッキを受け取ると、不思議そうにドラえもんの顔を見つめた。

 

「ま、今日はキミが出れたことを祝って、ぼくがおごるよ」

 

「ほんと!? ありがと、ドラえもん!」

 

 途端、アクアが笑顔になった。

 

「ドラえもんは甘いですね」

 

「まったくだな」

 

「まぁまぁ、今日のところはいいじゃない。じゃ、みんなジョッキは持ったかい?」

 

「あ、私もシュワシュワが欲しいです」

 

「こら、めぐみんはまだダメだろう。ほら、ジュースだ」

 

「そんなぁ……」

 

「じゃあみんな、いくわよー」

 

「「「「せーの、かんぱい!」」」」

 

 

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