ドラえもん「えぇっ! この素晴らしい世界に祝福をだって!?」 作:腎臓「詫び石だ、受けとれ」
――翌日
アクアとドラえもんはひさびさに早起きをすると、朝食をとるために酒場に向かった。
中に入ると、いつもはいるはずのめぐみんとダクネスがまだ来ていなかった。
「あら、めずらしい。私たちが一番乗りみたいね」
「ほんとだ。じゃ、二人が来るまで待ってようか」
「それなら、私は受けられるクエストがあるか先に見てくるわね」
「いってらっしゃい」
ドラえもんは手を振ってアクアを見送ると、メニュー表に目を通した。
「はてさて、今日はどれにしようか」
足をぶらぶらさせて待つこと10分。クエストの紙を持ったアクアが、やけにニコニコしながら帰ってきた。
またロクでもないことを考えているな、とドラえもんがジト目をしながら推測する。
案の定、アクアはドラえもんにしなだれかかるように甘えてきた。
「ねぇ〜ドラえもん。ちょっと女神のお願い、聞いてみない?♡」
「だめ。道具なら貸さないぞ」
「なんでよ! 女神さまの色仕掛けなんだから、ちょっとくらい騙されてもいいじゃない!」
「自分で色仕掛けって言うなよ……」
ドラえもんが呆れたようにアクアを押し返した。すると、アクアがひと目もはばからずに泣き出し始めてしまった。
「うぇぇん! ドラえもんが私を女神扱いしてくれないぃ。せっかくクエストやろうってやる気出したのに、ドラえもんに見捨てられちゃったぁ。もう私は天界に戻れないのよぉ……」
女神の捨身の行動に困惑したのか、はたまた周りの視線が気になりだしたのか、ドラえもんはしぶしぶアクアの肩を叩いてなだめた。
「分かった、分かったから。ほかの人も見てるからそう泣くなよ」
「さっすがドラえもん! チョロくて頼りになるわ」
「やっぱりやめた」
ドラえもんがプイとそっぽを向いた。
「うそうそ、冗談だってば」
「……それで、どんなクエスト受けるつもりなの?」
「これよ、湖の浄化クエスト。汚染された水を綺麗にしてほしいみたいなの。それで相談なんだけどね」
「ふむふむ。じゃ、あれの出番だ」
ドラえもんが自信たっぷりに道具を取りだす。
「はい、ウォータークリーンシップ。これを使えば、どんな汚水でも綺麗に――」
「わぁぁ! やめて、ドラえもん! 私の存在意義を奪わないで!」
「あれ、違うの?」
「違うわよ。ドラえもんったら、忘れたの? 私はなんの女神だったかしら?」
ふふん、とアクアが胸を張って髪をかき上げた。
「うぅむ、これはむずかしい。勤勉ではないし、清らかでもないし、お酒くさいし」
「……ふん」
「ごめんごめん、冗談だってば。水の女神でしょ?」
「どうせ私は酒臭いわよ。はぁあ、やる気なくなった。今日はもうお酒飲んで寝るわ」
「悪かったってば。そうすねないでよ。ほら、アメあげるから」
そう言うと、ドラえもんはポケットからアメを取りだした。
「……ねぇドラえもん、私を子どもか何かと勘違いしてない?」
「おや、いらないなら――」
「いる!」
ドラえもんからアメを受け取ると、アクアは包みを広げてパクリと食べた。
「それで、ぼくはどう協力すれば良いの?」
「もごもご……私が水を浄化してるから、その間、私がモンスターに襲われないようにしてほしいのよ」
「そういうことか。ならまかせて」
ドラえもんはポケットに手を入れると、薬のようなものが入ったビンを取りだした。
「はい、がんじょう!」
「なにそれ? くすり?」
「そう。これを一錠飲むと、体が鉄よりも頑丈になるんだ。どんな攻撃もこれでへっちゃらさ」
「すごいじゃない! さっそく一粒ちょうだい」
アクアが受け取ろうと手を伸ばすと、ドラえもんはサッと手を引いた。
「まぁまぁ、今飲むと効果が切れちゃうから、湖に着いてから飲もう」
「えー」
「えーじゃないって」
ドラえもんはそう言いながら、がんじょうの入ったビンをポケットにしまった。
しばらくすると、酒場のドアが開いてめぐみんとダクネスが入ってきた。アクアが手を上げて二人を招く。
「二人とも、こっちこっち」
「おはよう。アクア、ドラえもん」
「おはようございます、二人とも」
「おはよ、めぐみん、ダクネス」
「ちょうどよかったわ。今日のクエストはこれにしない?」
アクアがクエストの紙を広げようとすると、その手をドラえもんが止めた。
「ねぇ、まずは朝ご飯にしようよ。みんな揃ったことだしさ」
「食いしん坊ねぇ、ドラえもんは」
「たしかに。まずは朝食としようか」
――朝食後
「へぇ、湖の浄化クエストですか」
食後のジュースを飲みながら、めぐみんはクエストの紙を覗き込んだ。
「浄化か。それだと、私の出番はなさそうだな」
「私もです。湖の水を蒸発させても良いのなら、ついていきますが」
「じゃ、めぐみんは留守番と」
「冗談ですよ? ドラえもん」
「それなら、二手に分かれましょう」
「二手? 湖は二つあるのか?」
「ちがうちがう。実はもう一つね、お手頃なクエストがあったのよ」
アクアが折りたたんでいた紙を取りだすと、テーブルの上に広げた。
「ゾンビメーカーの討伐?」
「どうやら、近くの墓地に現れたらしいのよ。しかも昼間に」
「ゾンビメーカーか。初心者パーティにはうってつけだな」
「そうですね。これなら、私とダクネスだけで退治できそうです」
「じゃあ決まりね」
「では、クエストが終わったら、またここに集合にしようか」
ダクネスとめぐみんが立ち上がると、ドラえもんが二人を呼び止めた。
「ちょっと待って。一応、二人にはこれを渡しておこう」
ドラえもんがポケットの中から、紙コップのようなものを取りだした。
「糸なし糸電話型トランシーバー!」
「なんですか、これ?」
「紙のコップ?のようだが」
「二人とも、糸電話って知ってる?」
「糸電話? 知りませんね」
「ありゃ、こっちじゃまだ電話は発明されてないんだっけ」
ドラえもんがどう説明したものかと頭をかしげた。
「とにかく、実践してみようか。はい、めぐみん。これを耳に当てて」
ドラえもんに手渡しされためぐみんは、まじまじと道具を見たあと、言われた通りに耳元に当てた。
「はい、当てましたよ。次はどうするんですか?」
「じゃ、ぼくが外に出て話しかけるから、聞こえたら応答して」
「え? なに言ってんのよ、ドラえもん。外からじゃ聞こえないでしょ?」
何をバカなことを、とアクアが言いたげに首を傾げる。
「まぁまぁ、見ててって」
ドラえもんはもう一つの糸なし糸電話を持つと、酒場の外に出ていった。
「行っちゃいましたね」
「……このまま出発したら怒るかしら」
『ひどい!! ぼくをおいてくな!!』
突然、ドラえもんの大声が道具から聞こえてきた。耳に当てていためぐみんが、「きゃあ!」と悲鳴をあげて片耳を押さえる。
「ちょっとドラえもん! 突然大声を出さないでくださいよ!」
『ごめんごめん。でもほら、ぼくの声が聞こえたでしょ?』
「……たしかにそうですね。ここにいないのに、ちゃんと聞こえます」
めぐみんが感心したようにうなずいていると、ドラえもんが戻ってきた。
「この道具を使えば、遠く離れていても会話ができるんだ。それじゃ、はい、みんなにもあげる」
ポケットから同じものを二つ取りだすと、それぞれダクネスとアクアに渡した。
「じゃあ、クエストが終わったらこれで連絡を取り合うとしよう」
「そうね。ようし、二ついっぺんに終わらせて、今日はいっぱい飲むわよ」
「「「おー!」」」