ドラえもん「えぇっ! この素晴らしい世界に祝福をだって!?」 作:腎臓「詫び石だ、受けとれ」
――墓地
タケコプターを最大速力にして飛ぶこと30分。ようやく、共同墓地が見えてきた。
無縁仏の墓がほとんどのためか、墓地の中は手入れがされておらず、草木が生い茂り、昼間でも不気味な雰囲気を醸し出していた。
「二人とも大丈夫かなぁ。ダクネスは頑丈だけど、相手は魔王軍幹部だし――」
ドラえもんが二人を探して進んでいくと、激しい金属音が聞こえてきた。音のする方を向くと、ダクネスの悲鳴が上がった。
「たいへんだ!」
ドラえもんがタケコプターの出力を上げ、急行する。墓地のはずれに着くと、ダクネスと首無しの鎧の騎士が激しい戦いを繰り広げていた。
「いた! よぅし、ここは石ころ帽子を使って」
ドラえもんは石ころ帽子を被ると、気づかれないようにベルディアの背後へ降りた。
「むっ! 殺気!」
突如としてベルディアが振り向き、背後のドラえもんへと斬りかかった。
「うわぁ、バレた!」
間一髪で避けるも、剣の風圧で帽子が吹き飛ばされる。
「な、なんでバレたんだ……」
「ふん。この剣の名は名刀電光丸。不意打ちなど効かぬわ!」
「な、なんだって……!?」
「大丈夫か、ドラえもん!」
ダクネスがドラえもんのもとへ駆けつける。
「うん、なんとか……。あれ、めぐみんは!?」
「めぐみんなら大丈夫だ。さっきアンデッドを一掃させて、向こうで寝かせている」
「ほっ……」
ドラえもんが胸を撫で下ろしたのもつかの間、ベルディアが剣を振り上げた。
「あぶない!」
「くっ!」
ダクネスが上段に剣を構えて防ごうとする。
「遅い!」
横なぎの衝撃がダクネスに走った。ベルディアはいつの間にか、真横に剣を構えていた。ダクネスの体は吹き飛ばされ、大木に直撃した。
「ぐぅっ……! は、速すぎる……」
「無駄だ。人の業でこの剣は防げぬ」
ベルディアが剣を肩に担ぎ、ダクネスを見下ろした。そして興味が失せたようにくるりと振り返ると、ドラえもんに剣を向けた。
「ふ、やっと会えたな、ドラえもんとやら」
「ぼ、ぼくのことを知ってるのか!?」
「当然だ。600年前に受けた屈辱、忘れはせぬ。今日こそ、すすいでやる!」
ベルディアは、自身の頭を上空へと投げた。
「よく分らないけど、受けてたとう! ようし――」
ゴソゴソ
「させぬ!」
ベルディアの剣がドラえもんに迫った。突き、払い、叩きつける斬撃が繰り出される。
「うひゃあ!? ちょ、ちょっと待ってぇ!」
「貴様が道具を使うことなど、先刻承知済みだ。なにか出す前に、叩き潰す!」
「ひゃぁ! お助けぇ!」
ドラえもんがポケットに手を入れながら逃げ出した。とても、ポケットの中身を吟味している暇はない。
「あれでもないこれでもない」と、出てくるのはガラクタばかり。
「あぁもう、肝心なときはいつもこうなんだから……!」
「終わりだ!」
ドラえもんに追いついたベルディアが、剣を振り下ろす。
「ひゃぁ!」
ドラえもんが目を瞑り、頭を抱えた。
二人の間に、ダクネスが割り込む。
「……貴様の相手は、この私だ!」
「邪魔をするな、防御だけのクルセイダーめ! 格の違いを見せてやる」
ベルディアが目にも止まらぬ剣捌きを見せ、ダクネスを圧倒する。言葉どおり、あまりにも格が違った。
防御すらかなわず、ただただ、なぶられ続けていく。
「ぐっ、強すぎる……!」
「ほう、まだ立てるとは、見上げた根性だ。だが、ここまでだな」
ベルディアが剣を振り上げる。瞬間、ドラえもんが喜びの声を上げた。
「……あった!! えぃ! スモールライト!」
スモールライトの光がベルディアの体を包む。
だが、ベルディアの鎧は光を反射させ、四方へと霧散させてしまった。
「――あれ? 小さくならない!?」
「……無駄だ。貴様の使うスモールライトは、すでに対策済みだ!」
「な、なんだって!?」
ベルディアが剣を振りかぶり、ドラえもんに襲いかかる。
「させない!」
ダクネスが背後から斬りかかる。だが、その攻撃さえも読み切られていた。ダクネスの腹部の鎧が無残にも砕け散り、吹き飛ばされた。
「あぁ、ダクネス!」
「ふん、余所見とは良い度胸だ」
ベルディアがドラえもんを掴み上げた。
「うわぁ、離せぇ!」
ドラえもんが足をばたつかせながら逃げようとする。だが、ベルディアの力は想像以上に強かった。
「このポケットさえ取ってしまえば、貴様など、ただの珍獣だ……!」
ベルディアがポケットに手をかけ、べりべりと剥がした。奪い取ったポケットが、鎧の中へとしまわれる。
「あぁ、ぼくのポケットが……」
ポケットを奪われると、ドラえもんはまるでゴミのように投げ捨てられた。
「ぎゃふんっ……」
「さて、ドラえもんとやら。仲間のプリーストはどこにいる?」
「プリースト……?」
「青髪の小娘のことだ」
「アクアになんの用だ……!」
「当然、復讐を果たすためだ。貴様とその娘にしてやられた屈辱、忘れはせぬ!」
「な、なにを言ってるんだ。お前のことなんか、これっぽっちも知らないぞ」
「今は知らずとも、やがて分かる。さぁ、どこにいるか言え!」
「言うもんか!」
ドラえもんが、ベルディア目掛けて石を投げた。カツンと、乾いた音が響く。
「……ただの石?」
ドラえもんが石をかき集め、ベルディアに投げはじめた。
「はぁはぁ……えい!この!」
「……馬鹿馬鹿しい」
ベルディアの剣が消える。瞬間、ドラえもんの横腹をぶち上げられ、体が宙を舞った。
「ふぎゃっ!」
ドサリと、地面に叩きつけられた。よろよろとしながらも、ドラえもんは立ち上がる。
「いきがるな。貴様に何ができる?」
「……みんなを、守るんだ……!」
「ほう、珍獣にしては存外、勇敢だな。だが、力が足りぬ!」
ベルディアがドラえもんの頭を踏みつけた。
「ふぎゃっ!」という叫びとともに、ドラえもんが微動だにしなくなった。
「ドラえもん……!」
ダクネスが叫ぶ。もはや立つ気力さえないダクネスには、見守ることしかできない。
ベルディアが剣を振り上げた。ドラえもんの首に狙いを定める。
突如として、地面に魔法陣が現れた。
「――セイクリッド・ターンアンデッド!!」
浄化の光がベルディアを包んだ。途端に、ベルディアがまるで断末魔かのような叫び声を上げ、飛び退いた。
「ぐっ……! なぜだ、なぜ浄化魔法如きが効くのだ!?」
「残念だったわね。女神の浄化魔法は、ほかのプリーストとはひと味違うのよ」
「女神だと……おぉ! その見た目、まさしく貴様がアクアだな! かつての怨み、ここで晴らしてくれる!」
「……へっ?」
ベルディアがマントをひるがえすと、アクアを囲むように四方から100体近いアンデッドモンスターが出現した。
「ここが墓地だということを忘れるな。前衛もなしに俺に挑んだこと、後悔させてくれる!」
「ちょ、ちょっとまずいかも……」