ドラえもん「えぇっ! この素晴らしい世界に祝福をだって!?」   作:腎臓「詫び石だ、受けとれ」

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ベルディアとの戦い(後編)

 

 

『……ドラえもん、起きてください。ドラえもん』

 

「ふにゃ……この声は、めぐみん?」

 

ドラえもんがパチリと目を覚ました。声のする方を向くと、アクアたちに渡した糸なし糸電話が落ちていた。

 

『しっ、声が大きいです。ベルディアがアクアの方を向いている今がチャンスなんです』

 

「……なにか作戦があるの?」

 

『私が思うに、ベルディアの弱点はあの頭です。あの頭さえ奪えれば、勝機はあります』

 

「でも、いったいどうすれば……」

 

『私があいつの気を引きつけます。だからドラえもんは、あの頭を何としてでも奪い取ってください』

 

「分かった……やってみる」

 

『ダクネスも、聞こえましたね』

 

『あぁ、聞こえた。私も、足にしがみつくくらいならやろう』

 

 

――

 

 

「ターンアンデッド!……はぁはぁ、ちょっと、雑魚を倒すだけで、もうむり……」

 

 走り続けながら戦っているせいか、アクアは肩で息をしていた。

 倒したそばからアンデッドが湧きあがり、アクアへと襲いかかってきた。浄化魔法を唱えようとすれば、その隙をベルディアが突いてくる。だから、走りながら唱えるしかない。

 しかし、ベルディアの攻撃を避け、浄化魔法を放ち続けるのは限界に近かった。

 

「ふん、もう終わりか?」

 

 ベルディアがさらにアンデッドモンスターを呼び出した。

 

「ま、まだ出てくるの……!?」

 

 悲鳴にも似た声をアクアが上げた。終わりの見えない戦いに、ついにアクアの足が止まってしまった。

 

「そこまでです!」

 

「なんだ……?」

 

 ベルディアが振り向く。

 茂みの奥で、めぐみんが震える足で立ち、杖を構えていた。

 

「残念ですが……あなたの負けです……! 私がとっておきの爆裂魔法をお見舞いしましょう!」

 

「なにを血迷ったことを。貴様の魔力など、とうに尽きているだろう?」

 

「甘く見てもらっては困りますね……。あなたのいた城に、日に何発も撃ったのはこの私ですよ! 紅魔族の魔力はすぐに回復するんです!」

 

「なに……?」

 

 ベルディアの表情が変わった。

 

「闇より深き、暗き漆黒よ、すべてを穿ち放て――」

 

「チィッ!」

 

 ベルディアがめぐみんのもとへ走り出した。

 

「行かせない!」

 

 ダクネスがベルディアの足を抱きついた。ベルディアの足が止まる。

 

「離せ、この! クルセイダーめ!」

 

 ベルディアが剣を叩きつけ、ダクネスを振り払おうとする。ダクネスは手の力を緩めない。鎧が、次々に砕けて散っていく。

 

「いけ! ドラえもん!」

 

「えいっ!」

 

 ダクネスの声とともに、ドラえもんがベルディアに飛びついた。

 ベルディアの抱えていた頭を奪い取る。

 

「な、俺の頭を!」

 

「今です、アクア! 浄化魔法を!」

 

「わかったわ!」

 

 アクアがアンデッドを振り払いながら、杖を構えた。

 

「返せ、この珍獣!」

 

 ベルディアが逃げようとするドラえもんの頭を掴んだ。

 

「うわぁ、捕まった!」

 

 ドラえもんの体が宙に浮いた。そのまま、地面に組み敷かれる。

 

「ふぎゃっ!」

 

「頭を返せ、この珍獣!」

 

 ベルディアが剣を振り上げ、ドラえもんの頭に何度も叩きつける。

 

「……離すもんか! 絶対に離すもんか!」

 

 ドラえもんがベルディアの頭を抱きかかえ、体を丸めて奪われまいとした。

 

「くそったれ!」

 

 怒りに任せたベルディアが、渾身の力で剣を振り下ろした。

 

 グシャリ、と鈍い音が響いた。ドラえもんの頭から、煙が吹き出る。

 

「は……な……」

 

「な……ドラえもん!」

 

「お願い……これで終わって! セイクリッド・ターンアンデッド!」

 

 再び、ベルディアの足もとに魔法陣が現れ、浄化の光に包まれた。

 

「ぐっ……あぁ!」

 

 ベルディアが片膝をつく。

 

「ふぅ……ふぅ……おのれ、おのれよくも!」

 

「うそ、まだ立つの……!?」

 

 後じさりするアクアに、ベルディアが詰め寄っていく。

 ダクネスが再び足に食らいついた。

 

「いかせな――」

 

「邪魔だ!」

 

 ベルディアの蹴りが鋭く入った。ダクネスの体が吹き飛び、地面に叩きつけられる。

 

「ぐはっ……」

 

「私も、もう限界です……」

 

 めぐみんがガクリと膝をつき、倒れた。

 

「はぁ、はぁ……残るは貴様だけだ! アークプリースト!」

 

「うそ……いや……」

 

 アクアが悲鳴にも似た声を上げた。彼女の震える足が、じりじりと後ろへと下がっていく。

 だが、後ろにはアンデッドの大群が構えていた。

 逃げる場所は、どこにもない。

 

 ベルディアが剣を構えて、突進した。間合いに入ったアクアに剣を振り下ろす――

 

 

「――カースド・ライトニング!!」

 

「なっ……!!」

 

 突如として現れた横殴りの雷に、ベルディアの体は吹き飛んだ。

 

 アクアが振り返る。背後のアンデッドも次々と炎に呑み込まれ、その姿を消していった。

 

「大丈夫ですか!? みなさん!」

 

「あ、あんたは、リッチー!?」

 

 背後から現れたのは、紫色のローブに身を包んだウィズだった。

 かつて、アクアが浄化しようとした相手である。

 

「言いたいことはあると思いますが、今はベルディアさんを倒すことが先です。アクアさん、今一度、ターンアンデッドを」

 

「わかったわ!」

 

「おのれ、させぬ!」

 

 ベルディアがアクアに向かって剣を振り上げる。

 

「あなたの相手は私です! カースド・クリスタルプリズン!」

 

 巨大な魔法陣が現れ、ベルディアの身体を巨大な氷が覆いだした。みるみるうちに胴体までが凍り付く。

 

「ぐっ……小癪な!」

 

 ベルディアが剣を頭上に掲げた。

 剣はまるで意思を持った生き物のように、凄まじい速さで動きだし、ベルディアを覆う氷を次々と破砕していく。

 

「く、あの剣には敵いませんか……」

 

「大丈夫、時間稼ぎはもう十分よ!」

 

 アクアが杖を構え、詠唱する。

 

「――セイクリッド・ターンアンデッド!!」

 

 三度目の浄化魔法。アクアが渾身の力を込めて発動させた魔法は、今までの魔法陣とは大きさが違った。墓地全体を包む魔法陣から、浄化の光が波のように湧きあがると、うねりを上げてベルディアの体に注ぎ込まれた。

 

「ぐぎゃぁ……!!……あ、ぁぁ……」

 

 ベルディアの体が内側から光だし、ポロポロと砕けていく。やがて、跡形もなく浄化されていった。

 

「終わった……のか?」

 

「ドラえもん!」

 

 アクアは杖を放り投げると、すぐにドラえもんのもとに駆け寄った。

 

「ドラえもん、しっかりして! 起きてよ、ねぇ!」

 

 抱き上げ、何度もドラえもんに声をかける。しかし、返事はない。

 

「落ち着け、アクア……。ドラえもんは、もう……」

 

「いやよ! リザレクション! リザレクション! どうして……お願い……起きてよ。また私とお話ししてよ……」

 

 アクアの手当を、ウィズは痛々しそうに見つめた。

 

「ドラえもんさんはロボットです……。アクアさんの蘇生魔法でも恐らく……」

 

「そんな……」

 

 アクアがドラえもんを抱きしめたとき、めぐみんが杖に掴まりながらやってきた。

 

「……私に任せてください」

 

「めぐみん……?」

 

「ドラえもんがロボットなら、これで直るはずです」

 

 めぐみんが持っていたのは、時計の模様が描かれた風呂敷だった。

 

「あ、タイムふろしき!」

 

「ポケットから拝借しました。これで、ドラえもんが壊れる前に戻せば……」

 

 パサリと、ドラえもんの体にタイムふろしきがかけられる。

 

「ドラえもん……?」

 

 タイムふろしきの中のドラえもんは動かない。

 

「だめなのか……?」

 

 そのとき、ドラえもんの口元が動いた。

 

「……むにゃむにゃ。どら焼きがいっぱい……」

 

「ドラえもん!」

 

ダキッ

 

「……ありゃ……ぼくのどら焼きは?」

 

「どら焼きなら、あとで死ぬほど食べさせてあげますよ」

 

 

おーい、大丈夫かぁ!

 

 

「おぉ、討伐隊の人たちだ」

 

 

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