ドラえもん「えぇっ! この素晴らしい世界に祝福をだって!?」 作:腎臓「詫び石だ、受けとれ」
――ある夜
いつものようにクエストに行き、いつものように惨憺たる結果に終わって帰ってきた日の夜。
アクアはフラフラとした足取りで馬小屋まで帰ってくると、疲れ切っていたのか、そのままバタリと干し草の上に倒れこんだ。
「はぁ、今日は散々な目にあったわ……」
「いつものことじゃないか」
ドラえもんはもう毎度のこととばかりに、話半分にしか聞かず、ポケットから出した布団を敷いている。
「ねぇ、少しはドラえもんも手伝ってくれたっていいじゃない。私がカエルに食われてるところを見て、良心が痛まないわけ?」
「勝手に飛び出して食われたのはキミじゃないか。少しは作戦を立てたりとかしないと」
「イヤよ、頭使うのは苦手なの。ドラえもん、明日までに考えておいてよ、ね?」
「なに言ってんだ、自分が受けたクエストじゃないか」
「じゃ、お願いね。おやすみー」
「あ、こら。まだ話は終わってないぞ。だいたいキミは――」
ドラえもんが嗜めようとするも、時すでに遅し。アクアはドラえもんが敷いた布団の中に入るや、瞬く間に寝てしまった。
「くぅ……くぅ……」
「……まったくもう、先が思いやられる。ふわぁ〜あ……僕も寝よっと」
ピロポロポン
「おや、糸なし糸電話だ。こんな時間に誰だろう?」
ドラえもんがポケットから糸なし糸電話を取りだし、電話に出る。
「はい、もしもし」
「ドラえもんですか。私です」
「おや、めぐみん。こんな時間にどうしたの?」
「えっと、別にどうしたわけじゃないんですけど」
「あ、そう。それじゃ、おやすみ」
プツンッとドラえもんが電話を切り、ゴロンと寝転がる。
すると、ふたたびコールがかかった。
ピロポロポン!ピロポロポン!
「……なんだよ、もう。はい、もしもし」
「ちょっと、なんで切るんですか!」
「えぇ……特に用事もないんだろう?」
「あ、ありますよ。そ、そう。明日のクエストはどこに行こうかという相談を」
「それなら、明日みんなで決めようよ」
「そ、それはそうなんですが」
「じゃ、おやすみ――」
「わぁ、待ってください寝ないでください!」
「なんだよめぐみん。まさか、怖い夢でも見たとか?」
「……よく分かりましたね」
「……おやすみ」
「なんで寝るんですか!? そこは付き合ってあげるパターンじゃないんですか!?」
「えー、僕も眠いんだよ」
「お願いします、頼れるのはドラえもんだけなんです!」
「もう……わかったよ。ちょっとだけだからね」
「やった。やっぱりドラえもんはちょろいですね」
「……おや、急に電波が」
「わぁ、うそですごめんなさい!」
「はいはい。じゃ、なんの話しようか」
「怖い話をしましょう」
「えぇ……なんでさ、また怖い夢見るよ?」
「いいじゃないですか、怖い話。一緒に寝られなくなりましょうよ」
「仲間を増やそうとするなよ。まぁ、いいや。それで、どんな話なの?」
「そうそう。これはリーンから聞いた話なんですが」
「リーン?」
「あ、リーンというのは同じ宿に泊まる冒険者なんです。そうだ、じつは最近知り合った人なんですけどね、この子がまた――」
「……あ、しまった。さっそく話を脱線させてしまった。これは長期戦になる予感が……」
――――
―――
――
「それで、今度そのケーキ屋に行こうって話になったんです。……って、ドラえもん、聞いてます?」
めぐみんの声が、ドラえもんの寝ぼけた頭の中に響いた。すでにドラえもんの眼は半分閉じており、いつ寝落ちしてもおかしくはない。
「むにゃ……聞いてたような、寝てたような……」
「まだ寝ちゃだめですよ、ドラえもん」
「そんなこと言ったって、眠気が……」
「わぁダメです寝ないでください! そうだ、怖い話してあげましょう!」
「あぁ、話がループしだした……」
「聞いてください聞いてください。郊外にある屋敷の話なんですけど――」
「……ふわぁ、うんうん……」
――――
―――
――
「その女の子は幽閉されて密かに殺されたとか。そして夜な夜な屋敷の人間を――」
「あふぅ……ぐぅ」
「ドーラーえーもーん!!」
「ひゃい!……なんでしょう?」
「寝てましたね」
「寝てないです」
「それで、どこまで話しましたっけ?」
「郊外にある屋敷がなんたらだったような……」
「そうそう。私思ったんですけど、ベルディアの賞金で屋敷を買いませんか?」
「そんな話だったっけ……」
「そうですよ。みんなが住めるくらい大きいのを買いませんか。そしたら、いつでも一緒にいられますよね?」
「いいんじゃない。そうしましょうそうしましょう……」
「ほんとですか。約束ですよ?」
「うんうん……」
「そしたら、どんな家にしましょうか」
「ふわぁ……屋根があって窓があるとこ……」
「もう、真面目に考えてくださいよ! やっぱり、みんな一部屋ずつ欲しいですよね。それからそれから!」
「あぁ……めぐみんがどんどん元気になっていく……」
――――
―――
――
――翌朝、馬小屋
「おっはよー! ドラえもん、起きなさい! 気持ちのいい朝よ!」
「むにゃむにゃ……あと5分……」
「なにがあと5分よ。1日は24時間しかないんだから。ほら、さっさと起きなさい!」
アクアがキンキンと声を響かせながら、ドラえもんの布団を剥ぎ取った。
「今日は良いお天気だし、久々にお布団も干しちゃいましょう!」
「ひぃ、なんでこんな日にかぎって元気なんだ……」
――酒場
「……くぅ……くぅ……」
「めずらしいな、めぐみんがここで寝てるなんて」
「昨日はずっと起きてたからね……ふわぁ」
「そういえば、ドラえもんも昨日は夜更かししてたわね」
「めぐみんが寝れないからって、明け方まで話に付き合ってたんだ。ふぁわ〜……」
「それはなんていうか、お疲れさま。私じゃなくてよかったわ」
「ドラえもんはやさしいな」
「これでも、僕は子どものお世話をするロボットだからね」
「ねぇねぇ、ドラえもん。わたしも暇なときは電話しても」
「だめ」
「えー、なんでよけち! 減るもんじゃないでしょ」
「ばか言うな、ぼくの睡眠時間が減るじゃないか」
「ど、ドラえもん。私も、うずいた夜は電話しても」
「だめ! ぼくはそういうロボットじゃないんだ!」
「だ、大丈夫、聞いてくれるだけでいいから!いや、むしろ聞き流されるのもありだ!」
「なにがありなもんか! だめだぞ、ぜったいに電話しちゃだめだからね」
「はぅ……」
「大丈夫よ、ダクネス。あれはフリってやつよ」
「は! そうだったのか!?」
「ちがうってば!」
――閑話休題
「でも、めぐみんがこれじゃクエストには行けないわね」
「たまにはこういう日もいいじゃない。のんびりしようよ……ふぁ〜あ」
「それはうれしいんだけど、とつぜん休みになると、暇ねぇ」
「それなら、私は鎧の新調に行ってこようかな」
「ダクネスはお金持ちねぇ、私も服買いにいきたいわ」
「そういえば、まだ賞金とどいてないんだっけ?」
「そうなのよ。小切手はもらってるんだけど、換金できるのは明日からなんだって。やんなっちゃうわ」
「なるほど。そういうことなら僕にまかせて」
「え、服買ってくれるの!?」
「ちがうちがう。服を買うお金はないけど、良いものがあるんだ」
そう言ってドラえもんは、ポケットの中からピンク色のカメラを取りだした。
「はい、着せ替えカメラ!」
「……なにそれ?」
「絵や写真をこの中に入れると、その服に着替えることができるんだ」
「ほう、面白いものを持ってるな。写真というのが何かはわからないが」
「あぁ写真というのはね――」
「説明はいいから。はやく使わせてよ」
「待ってて。まず、着替えたい服の絵を用意しなきゃいけないから。たしか、カタログを持ってたはず……」
ドラえもんがポケットの中に手を入れようとすると、アクアがそれを制した。
「いらないいらない、私がちゃちゃっと描くわ」
「え、キミが?」
「ほぅ、アクアは絵も描けるのか」
「当然よ。宴会に役立つことならなんだってできるんだから」
「なんで宴会縛りなんだ……」
ダクネスが呆れたように首を振った。そんなのはお構いなしに、アクアは適当な紙にドレスの絵を描くと、二人に見せた。
「はい、じゃあこれでおねがいね」
「へぇ、この短時間でここまで描けるなんて」
「ふふん、私にかかればこんなもんよ」
ドラえもんはアクアからドレスの絵を受け取ると、それをカメラの中に差し込んだ。
「いくよー、はい、ポーズ」
パシャリと音がすると、アクアの青色の洋服が、綺麗な桃色のドレスへと変わった。
ドラえもんがポケットから姿見を取りだし、アクアに見せた。
「どうだい、自分で描いた服の感想は?」
「やだ、我ながらこれ超かわいいんですけど! 私のとっておきにしちゃお」
「な、なぁアクア、私にもなにか描いてくれないか」
「いいわよ、どんなのにする?」
「じゃ、じゃあその、亀甲縛りで」
「えぇ……」
「ひとになんてもの描かせようとするのよ……」
「い、いいじゃないか、二人とも。なんか文句あるのか」
「あるわよ、ありまくりよ!」
「まったく、こんな場所でそんな恰好したら、白い目で見られるんだぞ?」
「むしろ望むところだ。どんな状況であろうとも、私は屈しない!」
ダクネスがキリっとした表情で胸をドンと叩いた。
「……やだ、ダクネスがなんか格好よく見えてきたわ……」
「騙されるな、アクア。あれはただの変態だって」
アクアがポッと頬を赤らめて靡きそうになったので、ドラえもんが必死に引き止める。
しばらくして、ようやくダクネスの暴走を止めることに成功すると、ドラえもんが一つの提案をした。
「この際だから、ダクネスにはうんと女の子っぽい恰好をしてもらおうよ。例えば、フリルのついたワンピースとかさ」
「あら、かわいらしいわねぇ。ダクネスもそれでいいかしら」
「むぅ……。まぁ、今回はそれで頼む」
ダクネスがやや不満げに注文すると、アクアが「了解」と笑いながら再び絵を描いていく。
「こんなもんかしら」
「はい、じゃあいくよー」
「あぁ」
ドラえもんがシャッターを押すと、ダクネスの服が水玉模様のオシャレなワンピースへと変わった。
「あら、いいじゃない!」
「うんうん。だいぶ女の子っぽくなったじゃないか」
「……それは褒めてるのか?」
「褒めてるほめてる」
ダクネスが姿見の前でくるりと回りながら、新しい洋服をまじまじと見ている。その表情に笑みがこぼれているので、恐らく気に入ったのだろう。
ダクネスの服を描き終えたアクアは、次の服に着手した。
「ねぇドラえもん、つぎはこれで撮ってよ」
「あいあいさ」
パシャリとシャッターを切る。すると、アクアの服がまるで魔女のような格好になった。
「ん? それはめぐみんの服じゃないか」
「どう似合う? めぐみんの服、魔法使いっぽくて着てみたいと思ってたのよね。ちょっと胸のところが少しくるしいけど」
「滅多なこというなよ。本人が聞いてたら、この街ごと消し飛ばされるって」
「大丈夫だいじょうぶ。めぐみんは寝てるし。ほら、ダクネスも着なさいって」
アクアはドラえもんからカメラを借りると、ダクネスにレンズを向けた。
「いくわよー」
「ま、まって――」
パシャッとシャッターが切られる。
「わっ、あう……ちょっと、丈が短すぎないか」
「さっきまで亀甲縛りとか言ってた人がなに恥ずかしがってんのよ……。ほら、ダクネス。一緒にアレやりましょうよ」
「え、あれって?」
「わが名はアクア! 天界随一の水の使いにして、珍獣をあやつるもの!」
「やい、だれが珍獣だ!」
プンスカとドラえもんが顔を真っ赤にした。
「冗談よ、ドラえもん。使い魔兼友達よね」
「だから、使い魔じゃないってば!」
「……わ、わたしもその名乗りをやるのか?」
「当然よ。その格好して、疼かないとは言わせないわ!」
「言わせてほしんだが……」
「じー」
「じー」
「うぅ、ドラえもんまで……。わ、わかったから!やるからそんな見ないでくれ」
「待ってました!」
「期待してるわ!」
「……わ、わが名はダクネス。あ、アクセル随一の――」
「……なにやってるんですか」
「ひゃぁ! め、めぐみん!? 起きてたのか!?」
「いま起きました」
「おはよう、めぐみん」
「おはようございます、ドラえもん。昨夜はどうもありがとうございました」
「よく寝られた?」
「まだちょっと眠いですね」
「あらそう? 眠いなら、もうちょっと寝ててもいいわよ?」
「いえ、もう大丈夫です。それで、これはいったい?」
めぐみんがまるで不審者を見るようにアクアとダクネスを見た。
不審になるのも無理はない。目が覚めたら自分と同じ格好してはしゃいでる仲間がいるのだ。自分の頭がおかしくなっていないのなら、向こうの頭がおかしくなったと考えるのは自明の理である。
ドラえもんがめぐみんの不審を解こうと、着せ替えカメラを彼女にみせた。
「この道具で遊んでたんだよ。これを使えば、いろんな服を着ることができるんだ」
「せっかくだから、めぐみんも着替えましょうよ。誰の服を着てみたい?」
「そうですね――」
めぐみんが二人に目をやった。よくよく見ると、二人は胸元をキツそうにしており、周りからも視線を集めている。そこに、自分が加わったらどうなるか。
紅魔族随一の頭脳を持つ少女は、二十二世紀のロボットに劣らぬ計算力で瞬時に結果を弾きだした。そして――
「……こんなくだらないこと、とっととやめましょう。えぇ、やめましょう」
「えー、面白かったのに」
めぐみんのひと言で、二人のファッションショーは幕を閉じた。
ドラえもんが二人の服をもとに戻していく。
「それよりも、家を見にいきませんか」
「家?」
名残惜しそうに自分の服を見つめるアクアが、キョトンとした目でめぐみんを見た。ちなみに、ダクネスは後生大事そうにアクアが描いた絵をポケットにしまっている。きっと、機会を見て再び着るつもりなのだろう。
「そうです。みんなで住める家です。今は宿で暮らしていますが、長い目で見れば家を買ったほうがいいと思うんです」
「ふむ、まぁ一理あるな」
「そうね。いい加減あの馬小屋からは出たいと思ってたのよ」
「え、まだ馬小屋に住んでたんですか?」
「ま、まぁ、あそこも慣れたら住み心地は悪くないのよ?」
「見栄張るなよ。あいかわらず酒代でお金が消えてるからじゃないか」
「うわぁ……」
めぐみんがドン引きした目でアクアを見た。
「めぐみん、こういう大人になったらダメだぞ」
「い、いいじゃない。私のお金よ。なに、文句あるわけ?」
「すこしは節制しなよ。このままじゃいつまでたっても天界に帰れないぞ」
「いーや。お酒だけはぜったいに譲れないんだから」
「だめだこりゃ」
お手上げといった様子でドラえもんが両手をあげた。
そんなちょっと間の抜けた空気の中で、めぐみんが少し恥ずかしそうに手を上げた。
「……すいません、朝ごはん食べてもいいですか」
「そ、そうだな。朝食を頼もうか」
「なら、ぼくが作ってあげようか」
「あら、ドラえもん料理できるの?」
「いいんですか。そういえば、前にも作ってましたね」
「いいよ。今日は台所が使えないから、食べ物の実を作ろう」
「え、木の実ですか……。もっとマシなの作ってくださいよ」
「まあまあ。きっと喜ぶと思うよ。ところで、どんなのが食べたい?」
「カエル」
「トカゲ」
「またそれか……。というか、アクアはさっき食べたじゃないか」
「いいじゃない。ちょっと小腹がすいたのよ」
「まぁいいや」
ドラえもんがポケットの中に手を入れた。ゴソゴソと中を探っていく。
めぐみんは、ポケットから出てくるであろうごちそうに期待を寄せて、今か今かと待った。
「はい、植物改造エキス!」
ドラえもんのポケットから出てきたのは、スポイトのようなものだった。期待を寄せていためぐみんは、落胆したように顔を横に振った。
「……はぁ。ドラえもん。そんなものでお腹が膨れると思うんですか?」
「違う違う。これは植物にかけるんだよ」
「植物に?」
「ちょっと観葉植物を借りてこよう」
ドラえもんが飾ってある観葉植物を持ってくると、スポイトを数滴垂らした。
すると、徐々に実が現れ始め、みるみる大きな木の実へと変化していった。
「ほら、できた。これの中身を開けると……」
ドラえもんが観葉樹から実をもぎ、パカリと二つに実を割る。
「お、これはカレーライスのようだ」
「……かれーらいす? なんですか、それ?」
「なかなか香ばしい香りだな。こちらも食欲がそそられてくる」
「僕らの世界では、子どもから大人まで人気の食べ物さ。ひと口食べてみなよ。はい、スプーン」
「すんすん……いただきます」
「もぐもぐ……か、からい!ペッペッ」
「あ、きたない! だすなよ。これはそういう食べ物なんだ」
「それならそうと言ってくださいよ! 私、辛いのはだめなんですから!」
めぐみんが慌てて水を飲みほし、ぷんすかとドラえもんに怒った。
「えー、そんな辛かったかなぁ……」
「ねぇ、私にも一口ちょうだい」
「いいですよ、はい」
「んーっ……もぐもぐ」
アクアがひと口食べると、最初はビックリしたようだが、そのままゴクリと飲み込んだ。
「……たしかに辛いけど、なかなかイケるわね。はい、ダクネスもアーン」
「んっもぐ……!」
アクアが問答無用でダクネスの口にスプーンを突っ込んだ。ダクネスが驚きながらも咀嚼し、飲み込む。
「……うん、たしかに辛いが、深みのある辛さだな」
「え、み、みんな平気なんですか?」
「めぐみんには、まだ早い味だったかしらねぇ」
「そうだな。大人になれば、この美味さが分かるはずだ」
「なんですかなんですか! みんなして子ども扱いして! 私ももう14歳になるんですよ!」
「おや、めぐみん13歳だったの」
「そうですよ」
「ははぁ、可哀想に」
「おう、なんで可哀想と思ったのか聞かせてもらおうか」
いつものように、めぐみんの杖によるグリグリがドラえもんの頬にヒットする。
「痛いいたい! ごめんってば。杖を下ろして」
ドラえもんが頬をさすりながら、もう一つの木の実を割った。
「こっちの実なら食べられると思うよ。はい」
「おぉ、これはパンケーキですね!」
「なに言ってんだ。これはホットケーキといって――」
「ドラえもんこそなに言ってるのよ。これはパンケーキよ」
「どう見てもパンケーキだな」
「……おかしいな、こっちの世界じゃ名称がちがうのか」
「これなら食べられそうです。いただきます」
「もぐもぐ……おいひいです」
「そりゃよかった」
「あっ! ドラえもん、大変です!」
「え、どうしたの!?」
「シロップが足りなくなりました!」
「……なんだ、そんなことか。かけすぎだって。それ以上かけると太るよ」
「じゃあ、太らないシロップ出してください」
「そんなのないって」
「そんな、このままでは口の中の水分がなくなってしまいます」
「まったくもう。じゃあ、もう一つホットケーキを取りだして――」
「パンケーキだってば」
「……パンケーキの実からシロップを取り出して、ふえるミラーで増やしてと。ほら」
「ありがとうございます、ドラえもん」
シロップを受け取ると、こっちが胃もたれするくらいにシロップをかけていく。ご満悦な顔をしためぐみんは、パンケーキを口に運んだ。
最後のひと口を頬張ったとき、ちょうど酒場の扉が開いた。それが、次の冒険の始まりの合図だった。