ドラえもん「えぇっ! この素晴らしい世界に祝福をだって!?」 作:腎臓「詫び石だ、受けとれ」
――草原
「じゃあ、私が呪文を唱えている間、あのカエルたちを引きつけておいてください」
「だって、ドラえもん」
「えぇ!? 僕がやるの?」
「もちろんよ。まさかドラえもん、か弱い女の子を前に立たせるつもり?」
「昨日は我先にと行ったじゃないか」
「昨日は昨日。今日は今日よ」
「……まったく。調子が良いんだから」
ドラえもんが呆れた目でアクアを見る。すると、アクアはドラえもんの目の高さまでかがむと、両手を合わせた。
「ねぇお願い。今日だけ、ね? もうぬるぬるになりたくないのよ」
アクアが小首を傾げながら必死に頼みこむ。
「はぁ、仕方ないなぁ、もう」
押しに弱いドラえもんは。しぶしぶといった表情でポケットに手を入れた。
「やった! ありがと、ドラえもん」
アクアがとたんに笑顔になる。
ドラえもんはポケットの中に手を入れると、タケコプターを取り出した。
「なにそれ? 風車?」
「空を飛ぶ道具だよ。じゃ、行ってくるね」
頭にタケコプターをつけると、ドラえもんはカエルのいる方へと飛んでいった。
「この辺でいいかな……カムカムキャット!」
ドラえもんがネコの形をした道具を取り出す。
「スイッチオン!」
途端、周囲に散在していた巨大なカエルが、一斉にドラえもんの方を向いた。地響きを鳴らしながら、カエルがその巨躯に似合わぬ速さでドラえもんのもとへ迫ってくる。
「おぉ、カエルがどんどんドラえもんのところに集まってきます!」
「どう、すごいでしょ? この道具は本来なら客寄せの道具でね――」
ドラえもんが説明しようとしたその時、カエルが長い舌を繰り出してきた。
「うわ、あぶない! 思ったより舌が伸びるな」
慌てたドラえもんはさらに上空へと飛んだ。
「おーい、集めたよー!」
「おお、これは我が爆裂魔法にとって絶好のシチュエーションです!」
めぐみんは目を輝かせながら杖を構えた。眼帯を外し、全神経を集中させる。
「――闇より暗き、深き漆黒よ……」
めぐみんが詠唱をはじめる。すると、ドラえもんの上空に幾重もの魔法陣が出現した。
「うわぁ! 待って、まだぼくが逃げてないぞ」
「いっけぇ、めぐみん。まとめて吹き飛ばしちゃいなさい!」
「はくじょうものぉ!」
ドラえもんが全速力で魔法陣から脱出する。
「いきますよ、エクスプロージョン!!」
草原の中心に、まるで原爆を想起させるような大きな爆発が起き、空をおおうほどの煙が舞った。
「……いてて。まったく、ひどい目に遭った」
爆風で飛ばされたドラえもんがむくりと起き上がる。隣では、あまりの威力に興奮気味のアクアが目を輝かせていた。
「すごい、すごいわ。これが爆裂魔法なのね」
「ええ、これが私の最強魔法です」
「……それで、めぐみんはなんで倒れてるの?」
アクアがしゃがみこみ、小首をかしげる。めぐみんは全魔力を使い果たしたのか、ぴくりともせずに突っ伏していた。
「……我が爆裂魔法は強力ゆえ、一発撃つとしばらく動けないのです」
「えー、そうなの……」
「締まらないなぁ」
アクアとドラえもんは顔を見合わせると、肩をすくめた。
一段落したと三人が思ったのもつかの間、爆発の音によって目覚めたのか、地中から次々とカエルが顔を出し、再び群れを形成しだした。
「げぇ、新手のカエルが出てきた。めぐみん、はやくもう一発を」
「あ、私は一日一発しか撃てません。なので、あとは頼みます」
「えぇ!?……あれ、そういえばアクアは?」
「アクアなら、後ろでカエルに喰われてますよ」
「え」
カエル「モゴモゴ」
アクア「」
「……どうやら、さっきの爆発でカエルが集まってきたようですね」
「えぇ……」
「……あの、できれば私も助けていただけけると助かります」
気づけば、めぐみんの声は上から聞こえていた。振り向くと、そこには巨大なカエルがおり、その口からはめぐみんの上半身がのぞいている。
「はぁ……なんでこうなるんだか……」
――街への帰路
なんとかかんとかカエルを討伐したドラえもんたちは、日が暮れるころに街へと戻ってきた。
「よっこいしょっと」
「すいませんね、ドラえもん」
めぐみんがドラえもんにしがみつく。ドラえもんの背中は、めぐみんに付着した粘液でヌルヌルになっていた。
「うぅ、またぬるぬるになっちゃったぁ……」
アクアは泣きそうになりながら歩いている。カエルの粘液まみれの体に嫌気がさしたのか、体をぶるぶるとふるわせた。
「うわ、ばっちぃ。まわりに飛ばすなって」
「だってぇ……」
「とりあえず、クエスト報告の前に公衆浴場にいきましょうか」
「そうだね。こんな格好じゃ、たぶん入れてもらえないだろうし」
歩くたびに粘液が垂れ、周りの視線が痛い。ドラえもんは申し訳なさそうに縮こまりながら歩いていく。
「そういえば、めぐみんはほかに魔法は覚えてるの?」
「いえ、私は爆裂魔法以外覚えていません。いや、覚える気がありません」
キッパリとした声でめぐみんが答えた。それを聞いたアクアが、落胆したように肩を落とした。
「……なるほど、それでどのパーティからも見捨てられたのね。うーん……」
アクアが頬に手を当ててなにかを思案している。
「おっと、待ってくださいアクア。もしも私を見捨てようとするなら、酷い目に遭いますよ?」
「え、な、なにするのよ」
「見捨てるというなら、このままドラえもんの首を絞めます」
「やめろ、なんて極悪なやつなんだ」
「ドラえもん……私はあなたの犠牲を忘れないわ」
「ひどい、人でなし! 見捨てるなんて!」
「……」
ギュゥッ
「うわぁ、ほんとに絞めてきた! 助けてぇ」
「……ま、人手不足だし、入れてあげましょうか」
「よし! じゃ、これからよろしくお願いしますね、二人とも」
めぐみんは腕の力をゆるめると、満面の笑みを浮かべて答えた。