ドラえもん「えぇっ! この素晴らしい世界に祝福をだって!?」 作:腎臓「詫び石だ、受けとれ」
――ダクネスと自己紹介中
「えっ、ダクネスってエリス教徒なの!? どうして!?」
「ど、どうしてと言われたって……。いいじゃないか、どこに入っていようと」
「ダメよ! だって、エリス教に入ったらパッドになっちゃうってもっぱらの噂なのよ」
「き、聞いたことないぞ、そんな噂」
「……そういえば、アクアのその見た目って、もしかして」
「ふふん、分かっちゃった? 分かっちゃったのね!」
「あれか……」
「あれですか……」
「あれ?」
「なによ、あれって! なんでちゃんと呼んでくれないのよ!」
「いや、関係者と思われるとアレなんで」
「わ、私はアレ扱いされても……」
みんなが何かを察している中、ドラえもんだけが首を傾げている。
「ねぇねぇ、めぐみん。あれってなぁに?」
「後で教えてあげますよ。ここじゃあれなので」
「だから、なんで代名詞でしか呼んでくれないのよ!」
――ドラえもんに説明中
「へぇ、じゃあアクアは、そのアクシズ教ってところの女神さまだったんだ」
「そうなの。やっとわかってくれた?」
「まぁなんとなく」
「ドラえもんは優しいですね、信じてあげるなんて」
「うそ、めぐみんまだ信じてくれてないの!?」
「いや、信じるほうがおかしいじゃないですか」
「そんなぁ……。ドラえもんは信じてくれるわよね!? ね!?」
アクアがドラえもんの両肩をゆっさゆっさと揺さぶりだす。
「わ、わかったわかった。信じる、信じるから」
目を回しながらドラえもんがうなずいた。それでようやく、アクアが手をはなした。
「ちなみに、この国で一番信仰されているのがエリス教だ。その証拠に、お金の単位にもなっているだろう?」
「ああ、そういえば」
納得したように、ドラえもんがお財布を開けた。今まで見もしなかったが、確かに通貨にはエリスの肖像が描かれていた。
「はぁ……。みんな口を開けばエリスエリス。お財布を開いたってエリスエリス。こんなの、絶対おかしいわ」
「見栄張るなよ。君のお財布はすっからかんじゃないか」
「そこは問題じゃないの、ドラえもん」
「さっきまでツケがどうとかって言ってたはずですが」
「それは置いといてよ。重要なのは、なんで私が敬われていないのかってことよ」
「なぁ2人とも。彼女はいっつもこうなのか」
「えぇ。温かい目で見てやってください」
「というわけでドラえもん、私がすぐさま敬われるような道具はない?」
「ない」
ドラえもんは、それはもうキッパリと言い切った。
「なんで即答するのよ! ちょっとはポッケのなか探してくれたって良いじゃない」
「馬鹿いうなよ。だいたい、君はこっちの世界に来てまだ誰も助けてないじゃないか。それで信者なんか増えるもんか」
「そんなこと言ったって、こっちの世界じゃ奇跡の一つも起こせないのよ? 信者なんて増やせっこないじゃない」
「別に奇跡はいらないだろう。小さなことでも、コツコツと積み重ねていけば、信仰してもらえるかもしれないだろう?」
「そうですよ。宗教に入るきっかけなんか、自分が得したいからですよ」
「いや、そうでもないと思うが」
やんややんやと、議論なのかわがままなのか分からない問答を繰り返したあと、ついにアクアは折れた。
「……はあ、分かったわよ。人助けをすればいいのね」
「素晴らしい。その意気だ、アクア」
やっとのことで改心してくれたと思ったドラえもんは、素直に褒めた。
「……それで、困ってる人ってどこにいるの?」
「ありゃ……まぁ、今回は助けてあげよう」
ポケットに手を入れると、ドラえもんは星の模様の入った帽子を取りだした。
「はい、タスケテ帽」
「なにそれ?」
「これを被ると、助けがほしい人の場所を教えてくれるんだ。試してみようか」
ドラえもんは帽子を被ると、くるりと回ってみせた。
「こうやって被ると、帽子の先が助けを求めている人の方を指すんだ」
「おぉ、不思議な魔道具だな」
さっそく帽子が反応し、帽子の玉の緒が酒場の奥を指し始めた。
「よし、こっちだ」
「うぉーいおいおい……!」
「ほら、いた」
「うわ、大の男が泣いてますよ。私、関わりたくないんですが」
「そんなこと言うなよ。やぁやぁお兄さん、何かお困りですか」
「聞いてくれよ。さっき、クリスとかいう奴にスティール勝負を持ちかけられてな、それにのったらよ、財布を盗られちまったんだよ」
「そりゃ、勝負だからしょうがないじゃないか」
「でもよぉ、その中にはお袋の形見も入ってんだ。だから何とかして取り返してぇんだ」
「ふむふむ。よし、じゃあ僕に任せて」
「え、できるの?」
「もちろん」
ドラえもんが胸をポンと叩くと、ポケットからピンク色のバッグを取りだした。
「取り寄せバッグ!」
「バッグ?」
「これは、願ったものなら何でも取り出せるんだ」
「へぇ、どうやって?」
「まぁ見てなって」
そう言って、ドラえもんがバッグの中に手を突っ込み、ゴソゴソと探り出した。
キャーッ。だ、誰かがアタシのお尻を触ってる!?
どこからか悲鳴が聞こえた気がしたが、集中しているドラえもんはそれに気が付かない。取り寄せバッグの中に手を入れ、懸命に男の財布を探している。
「これか、こっちかな……えぃっ!」
ドラえもんがバッグから手を抜くと、ピンク色の財布が握りしめられていた。
「……おや? 女性物の財布だ」
「俺のじゃねぇな」
「それはクリスの財布だ。間違いない」
「おっかしいなぁ、こっちかなぁ」
ひぃ、また誰かがアタシのお尻を!? ……って、この手はドラえもん!
酒場の扉が突如開かれ、銀髪の娘のような少年のような人がドラえもんのもとまでやってきた。
「ちょっと、ドラえもん!」
「え? 誰だい、きみは?」
「クリスだよ! それより今、アタシのお尻を触ったでしょ!」
「えぇっ!? ち、ちがう、誤解だ!」
「アタシのパンツまで引っ張っておいて、シラを切るつもりかい!」
「うわ、最低ねドラえもん」
「クズですね、ドラえもん」
「ドラえもん、君という奴は」
「流石に引くぜ、俺でも」
「ちょちょっと待ったぁ! これは濡れ衣だ。ぼくはそんなつもりこれっぽっちもないぞ」
――30分後
「うぅ、全く、ひどい目にあった」
「ドラえもんがセクハラするからでしょ」
「僕はロボットだぞ。そんなことするもんか」
「あ、ドラえもん。それ以上こっちに近づかないでもらえますか」
「下卑た視線ならその、ぜひ私に……」
「だからちがうってば!」
さんざんにいじられたドラえもんは、やっとのことで会話の流れを変えると、頭の帽子を脱いだ。
「じゃあはい、アクア。この帽子を貸すから、困ってる人を探してきてごらん」
「分かったわ。このダサいのを被れば良いのね」
「文句があるなら貸さないぞ」
「冗談だってば。じゃ、行ってきまーす」
アクアが帽子をかぶると、すぐさま街中へと駆けて行った。
「これで、少しは天界の人に評価されれば良いけど」
「じゃ、ダクネスも入ったことですし、カエルの討伐に行きましょうか」
「え、アクアがいないが」
「大丈夫です。いても食われるだけなので」
「そ、そうなのか」
「そうだ、めぐみん。電光丸の電池替えたけど、また――」
「いりません!」
「あ、はい」