ドラえもん「えぇっ! この素晴らしい世界に祝福をだって!?」   作:腎臓「詫び石だ、受けとれ」

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ドラえもんとめぐみん

 アクアが連れていかれてからしばらくして、めぐみんはクエストボードの前でうろうろしながら思案していた。

 

「うーん、困りましたね」

 

「ドラ?」

 

「クエストがまったくないんですよ。このままじゃ、また貯金が尽きてしまいます」

 

「ドララ〜……」

 

「……って、あれ? ドラえもん、いつのまに小さくなったんですか?」

 

「ドラ!」

 

 そこには、ドラえもんの背丈の半分ほどの小さいミニドラがいた。だが、ミニドラの存在など知らないめぐみんは、しゃがみこむとジッとミニドラを見つめた。実際、背丈と色以外には、ドラえもんとの違いは見られない。

 

ぺたぺた

 

 めぐみんがいぶかしげな眼差しでミニドラの体を触っていく。すると、くすぐったそうにミニドラが身をよじった。

 

「ドラドラ♪」

 

「あの、そろそろドラ以外も喋ってもらえますか」

 

「ドラ〜……」

 

「……」

 

こちょこちょ

 

「ドラ!? ドラララッ!?」

 

 唐突なめぐみんのくすぐり攻撃に、ミニドラは悲鳴なのか奇声なのかよく分らない声をあげながら身をよじった。

 

「……むぅ、なかなか強情ですね」

 

「おはよう、めぐみん。おや、なにやってるんだい?」

 

 箒とちりとりを持ったドラえもんが、めぐみんのもとへやってきた。本物を見つけると、めぐみんはミニドラから手をはなした。

 

「おはようございます、ドラえもん。まぁ、ちょっと尋問を」

 

「じ、尋問?」

 

「それより、このちっちゃいドラえもん?はなんですか?」

 

「あぁ、これはミニドラといってね。僕の分身みたいなもんなんだ。ほら、ミニドラ。サボってないでちゃんと掃除してってば」

 

 ドラえもんがそう言うと、ミニドラは了解したのか、「ドララー」と言いながら掃除へとも戻っていった。

 

「え、なんで掃除を?」

 

「アクアが今お勤め中だからね。暇だから、受付のお姉さんのお手伝いしてるんだ」

 

「あー、なるほど。お勤め中ですもんね」

 

 

――30分後

 

 

「まぁ、ありがとうドラちゃん。すっかり綺麗になったわ」

 

 受付嬢のルナが手を合わせてドラえもんをねぎらった。こちらの世界にやってきてはや一週間。受付嬢に『ちゃん』付けされるくらいには、ドラえもんも馴染んできたらしい。

 

「いえいえ、どういたしまして。じゃ、さっそくお礼の方を」

 

「えぇ。どうぞ、調理場を好きに使って良いわ」

 

「わぁい、やったぁ!」

 

「調理場なんて借りてどうするんですか?」

 

 不思議そうな目で、めぐみんがドラえもんに尋ねた。

 

「僕の大好物のどら焼きを作るんだ。グルメかけテーブルで出すのは甘すぎるからね」

 

「どら焼き? あぁ、この前食べてた珍妙なかたちのやつですね」

 

「おや、めぐみんはどら焼きを知らないの?」

 

「えぇ、この前に見たのが初めてです」

 

「そうなんだ。じゃあ、めぐみんの分も作ってあげよう。待ってて、すぐに作るから」

 

「え、ドラえもんって料理できるんですか?」

 

「違うちがう。これを使うんだ」

 

 ドラえもんがポケットに手を入れ、丸く刺繍のされた飾りを取りだした。

 

「これはお料理ワッペンといって、付ければ誰でも凄腕コックになれるんだよ」

 

「へぇ、料理スキルみたいなものですね」

 

「さぁ、ミニドラたちもこれを付けて」

 

「「ドラドラッ!」」

 

「よぅし、みんなで作るぞー」

 

「「ドラッ!」」

 

 

――どら焼き調理中

 

 

「よし。あとは、あべこべタイマーで時間を早送りして、最後にあんこを挟めば……完成!」

 

「「ドララー!」」

 

 ドラえもんがプレートにどら焼きをのせて、机まで運んだ。改めてどら焼きを見ためぐみんが、興味津々に見つめている。

 

「食べてもいいですか?」

 

「はい、めぐみん。おひとつどうぞ」

 

 ドラえもんができたてのどら焼きを一つ、めぐみんに渡した。

 

「ありがとうございます。……はむっ」

 

「じゃ、ぼくたちも食べようか。はむっ」

 

「「ドララ〜♪」」

 

 ミニドラたちもテーブルの上にのっかると、お皿のどら焼きを一緒に食べ始めた。

 

「うーん……やっぱり何か足りないなぁ。しっとり感かなぁ」

 

 ドラえもんが小首をかしげた。どうやら、まだ満足できる味ではないらしい。

 

「どう? めぐみん、お味は」

 

「うーん、確かに甘いですが、私はあんまり……」

 

「ありゃ、きみは味覚もおかしかったのか」

 

「おっと、今の“も”が何を指してるのか聞かせてもらいましょうか」

 

 めぐみんがすかさず杖をドラえもんの頬に当てると、ぐりぐりと押し付けた。

 

「わぁ、ごめんごめん! ゆるしてってば」

 

 めぐみんのグリグリに、ドラえもんが椅子から下りて逃げだす。

 

「……ふぅ、しょうがないですね。それじゃ、私の散歩に付き合ってくれたら許してあげますよ」

 

「散歩?」

 

「えぇ。ちょっと街の外まで、爆裂魔法を撃ちに行きましょう」

 

「物騒な散歩だなぁ」

 

 ドラえもんが呆れたように頬をぽりぽりとかいた。

 

「よし、じゃあちょっと待ってて。せっかくだからお弁当を作って持っていこう」

 

「あ、それいいですね。ピクニックみたいで」

 

「でしょ? それじゃさっそく準備に……あれ、机の上のどら焼きは?」

 

「それなら、そこのミニドラが全部食べましたよ」

 

「「ドラドラ〜♪」」げっぷ

 

「あぁ、ひどい!」

 

 

――広場

 

 

「それじゃ、ダクネスも呼んでこようか」

 

「ダクネスは家の用事とかで、しばらく来れないんですって」

 

「なんだ、それなら仕方ない」

 

「じゃ、さっそく行きましょうか」

 

 めぐみんが歩き始めようとすると、ドラえもんが袖を引っ張って止めた。

 

「まぁ待って待って。良いのがあるから。はい、タケコプター」

 

「タケコプター? ……あ、これこの前使ってたやつですね」

 

「そうそう。これを頭につけると、自由に空を飛べるんだ。じゃ、めぐみん頭さげて」

 

「こうですか」

 

 めぐみんが帽子を取ると、膝を曲げてドラえもんにつむじを見せた。

 

「よいしょと。じゃ、スイッチオン!」

 

 ドラえもんがスイッチに手をかけると、タケコプターが起動し、おもむろにめぐみんの体が浮き始めた。

 

「わっ、本当に浮き始めましたよ! お、落ちないですよね!?」

 

「大丈夫大丈夫。3歳児でも操作できるように設計されてるから」

 

 ドラえもんが無問題と言わんばかりにめぐみんをなだめる。実際、最初こそ不安定だったものの、めぐみんはまもなく自由に飛べるようになった。

 

「おぉ、すごいです! 面白いですね、空を飛ぶって」

 

「さすがめぐみん、うまいうまい。じゃ、出発しようか」

 

「はい!」

 

ドラえもんもタケコプターをつけると、めぐみんと共に上空へと飛び出した。

 

 

おい、上を見ろよ。誰か空を飛んでるぞ

 

ほんとだ。ありゃドラえもんと爆裂娘じゃねぇか

 

めぐみん、今日は黒か……。大人ぶりやがって

 

 

「おう、今覗いたやつ。爆裂魔法の的にしてあげますから出てきなさい」

 

「まぁまぁ、街中でやったら大変なことになるから。早く外に出よう」

 

 

――草原

 

 

「さて、どこで撃とうか」

 

 キョロキョロとドラえもんが辺りを見回していると、めぐみんがドラえもんの腕を引っ張って、とある建物を指さした。

 

「あ、ドラえもん。あれにしましょう!」

 

「なんだい、あれ? お城?」

 

「ああいう大きいのは、すごい爆裂欲をそそられるんです。あぁ、もう撃っていいですか!?」

 

「や、やめようよ。中に人がいたらどうするのさ」

 

「大丈夫です。あんなボロい城に人が住んでいるでしょうか、いえ、いません!」

 

「一人で会話するなってば、もう」

 

 仕方ないとばかりに、ドラえもんがポケットのなかを探りだした。

 

「スケスケ望遠鏡! これで城の中を見てみるから、ちょっと待ってて」

 

「はやくしてくださいね」

 

「うーんと……おや、なんだあれ? ガイコツが中を歩いてるぞ?」

 

「それはアンデッドですよ。恐らく、人がいない廃墟に集まってきたんです」

 

「うーん、他には首なしの鎧ぐらいだし、人はいなさそうだ」

 

「よし、じゃあ大丈夫ですね」

 

 めぐみんがスタッと地面に降り立つ。帽子を被りなおして、杖をかまえた。

 

「いきますよ! ――闇より深き、暗き漆黒よ……――エクスプロージョン!!」

 

 

 詠唱が終わるや、古城の上に魔法陣が現れ、閃光と同時に轟音が響き渡った。

 

 

「ふっふっふ、どうです、ドラえもん。私の魔法は……!」

 

「すごいもんだなぁ。ほんと、倒れなければカッコいいのに」

 

「それは言わないでください……」

 

 地面に倒れ伏しためぐみんが苦笑いした。

 

「じゃあめぐみん、ここらでお昼にしようか」

 

「そうですね。じゃ、ドラえもん、食べさせてください。」

 

「えぇー……面倒くさいなぁ」

 

「仕方ないじゃないですか、私は指一本動かせないんですから」

 

「もう、わかったよ」

 

 ドラえもんがしぶしぶ、めぐみんを抱き上げる。

 

「あ、そうだ!」

 

 ドラえもんがパッとめぐみんから手を離した。

 

「あいた! ちょっと、急に手を離さないでくださいよ!」

 

「ごめんごめん。でも、いいこと思いついたんだ」

 

「いいことですか?」

 

「ちょっと待ってて」

 

 ドラえもんがポケットに手を入れると、いつか使ったタイムふろしきを取りだした。

 

「これをめぐみんにかければ……」

 

 倒れているめぐみんにタイムふろしきをかける。すると、まるで今まで動けなかったのが嘘かのようにすっくと立ち上がった。

 

「すごい、魔力が回復しました!」

 

「撃つ前の状態に戻ったんだよ。さ、これで食べられるで――」

 

「エクスプロージョン!!」

 

 めぐみんが再びバタリと倒れた。

 

「……ドラえもん、食べさせてください」

 

「もう! なんで撃っちゃうのさ!?」

 

「なんでと聞かれましても、そこに魔力があるからとしか言えませんね」ドヤァ

 

「そんなこと言ったってカッコよくないぞ。……はぁ、仕方ない。もう一回戻そう」

 

パサッ。

 

「エクスプロージョン!!」

 

バタッ。

 

「……ドラえもん、食べられないので――」

 

「もう知らないぞ」

 

「お願いします、ドラえもん! 一日に何発も撃てることなんてなかったので嬉しいんです。ほら、土下寝ならいくらでもしますから」

 

「倒れてるだけじゃないか。……もう、アクアといいめぐみんといい、ほんとにしょうがないんだから」

 

 ドラえもんがやれやれとため息をついて、めぐみんにタイムふろしきをかけた。

 

「ありがとうございますっ! いきますよ、エクスプロージョン!!」

 

バタッ

 

「……もう一回いきたいですね」

 

「……はいよ」

 

パサッ

 

「エクスプロージョン!!」

 

バタッ

 

「もう一声」

 

「はいはい」

 

パサッ

 

「エクスプロージョン!!」

 

バタッ

 

 

…………

………

……

 

 

「はぁ、満足です。今日はなんて良い日なんでしょう……」

 

「まさかとは思っていたけど、ほんとにきみの頭はおかしかったんだなぁ」

 

「今日は気分が良いので、夕方までは見逃してあげますよ」

 

「さて、夜はどこに逃げようか……」

 

「しかし困りましたね。これではお昼ごはんが食べられません」

 

「撃たなきゃいいじゃないか」

 

「はぁ……これだからドラえもんは。私が撃たずに済むと思うんですか」

 

「開きなおるなよ、もう。……そうだ。逆にタイムふろしきで時間を少しだけ進めてみよう」

 

 ドラえもんがタイムふろしきを裏返しにして、めぐみんにパサリとかけた。

 

「ん……ちょっとだけ動けるようになりました」

 

「それじゃ、ご飯にしよう。おにぎりを作ってきたんだ」

 

「え、その手で握れるんですか」

 

「しっけいな! この手はしっかりと変形できるんだぞ。ほら」

 

ニョキッ

 

「うわ、きも」

 

「ひどい!」

 

 

――昼食中

 

 

「しっかし、あれだけ撃ったのにちっとも壊れないね、あの城」

 

「もぐもぐ……ほんとですよ。これだけ撃って壊れないなんて、私のプライドに傷がついてしまいます」

 

 めぐみんがもう一個のおにぎりに手を伸ばしながら、古城を見上げた。

 一度撃てば半壊はするのだが、しかし修復機能があるのか、いつのまにか元に戻ってしまっていた。

 

「ここはもう、私とあの城で雌雄を決するしかありませんね」

 

「おっと、今日はもう終わりだぞ」

 

「良いじゃないですか。減るもんじゃないですし」

 

「キミに付き合ってたら、日が暮れちゃうじゃないか」

 

「ふっ、日が暮れる程度で終わるとでも――」

 

「さぁ帰ろう」

 

 そう言って、ドラえもんはめぐみんの腕を引っ張った。

 

「イヤですイヤです! あと一発だけ撃たせてください!」

 

「そんな子どもみたいに駄々をこねるなよ……。じゃあ、あと一回だけだよ」

 

「よし!」

 

 

――夕方

 

 

「はぁ、満足しました。見ましたか、ドラえもん。あのにっくき城を更地にしてやりましたよ」

 

「まさか、ほんとうに日が暮れるまでやるなんて……とほほ」

 

 めぐみんを背負いながら、ドラえもんががっくりと頭を落とした。めぐみんはまったく動けないので、ドラえもんだけタケコプターをつけて飛んでいる。

 

「なんだかんだ言って、ドラえもんはやさしいですよね」

 

 めぐみんがぎゅっとドラえもんを抱きしめる。

 

「おだてたってダメだぞ。もう散歩には付いていくもんか」

 

「そんなこと言っても、ドラえもんなら付いてきてくれそうですけどね」

 

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