今なしろは産屋敷邸に来ていた。 あの村で鬼殺隊になったあと、詳しい話を聞くために招待されたのだった。
現在なしろは庭が見える縁側で耀哉と座っていた。
なしろの視線は耀哉ではなくその下、庭に膝をついて座る9人に向けられていた。
その中には昨日耀哉と一緒にいた槇寿朗もいた。
(耀哉が説明していた鬼殺隊の中で最も階級が高い柱…)
柱とは鬼殺隊にある階級【上から甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸】の中で最も高く、鬼殺隊士の中で1番権力と実力がある者たちを言う。
昨晩の説明や鬼殺隊などの説明を一通り耀哉が終えると柱の1人が手を上げた
「…お館様申し訳ございませんが、こんな子供が十二鬼月の頸を斬れるとは思えません」
納得しない顔で言う、雫が刺繍された羽織を来ているのは雨柱・
「私も雨竜殿の考えと同じです。刀を初めて持ったその日に下弦の陸とはいえ十二鬼月を倒すなど信じろという方が難しいです」
鏡柱・
「だったらここで殺りあって見りゃいいじゃねえか!こいつは鬼殺隊に入ったわけだし、そっちの方が手っ取り早く実力がわかるし何より面白そうだしなぁ!」
波の模様があしらわれた羽織を着る230cmはある大柄の男は海柱・
「海原、お前はなぜいつもそうくだらない考えができるのか俺は知りたい」
ため息を吐きながら海原を見るのは土柱・
体格は海原岸士と同じく230cmの巨漢。
「お前らうるせえんだよ!もっと静かに出来ねえのかよクソども!」
「そう言うお前が一番うるさい」
我慢の限界からか怒鳴り散らした男は嵐柱・
そしてその嵐野に呟くようにツッコんだのが樹柱・
「なんで柱の人たちはこんなに暑苦しいのよ…」
手をパタパタと動かしてあおいでいるのは雪柱・
柱の中で唯一の女性。
こんな騒がしい中端っこでずっと黙って膝をついているのは水柱・
そして今までずっとなしろを見る炎柱・
以上9名が現鬼殺隊の柱である。
その柱たちの様子を笑顔で見ていた耀哉は人差し指を立て口元に添えた。
するとさっきまで騒がしかった柱含め、みんなが耀哉に注目した。
「みんなに説明した通り彼が十二鬼月・下弦の陸を討ち取ったのは本当だよ。でも信じられないと言うみんなの気持ちもわかる。そこでなしろにお願いがあるんだけど、よかったら柱に君の実力を見せてあげてくれないかな?」
耀哉の言葉に柱たちは少し驚いていた。それもそうだろう、鬼殺隊の柱ともなれば他の階級の者たちとは隔絶した実力を持つ者達。それほどの実力を持つ柱に刀を握って1日も経たぬ子供が相手になるはずもない。そんな無謀なことを耀哉はなしろに頼んでいるのだから。
柱は一斉にバッ!となしろに視線を移す。
なしろはピクリとも動かず座っているだけだった。
その様子に会った時から違和感を感じていた槇寿郎は、困惑していた。
(やはりわからない…この子供からは覇気は愚か生気も何も感じない…この子供には何かある…私含め、この場にいる全員にはない何かが)
槇寿郎は眉間にシワをよせ険しい顔になった。
そしてなしろは今まで動かさなかった口を開いた
「…いいよ」
たった一言。けれど確かに了承したその返事を聞いた耀哉は「ありがとう」と言うと産屋敷邸の離れにある道場へ向かうことにした。
一同は道場へ着くと、柱たちは誰がなしろの相手をするのかで揉めていた。
「俺が提案したんだから俺がやる!」
「お前は力の加減ができないだろう!」
一番駄々をこねていたのは海柱だった。海柱はその恵まれた体格もあってか柱の中でもトップを争う実力を持っていた。その海柱を止めているのはトップ争いの土柱。この2人は歴代の柱よりも遥かに強いと評されている。
他のものもしばらく揉める柱たちを見ていたなしろは初めて普通の声量で喋った。
「だったら複数人でやればいいじゃん」
『『…は?』』
その発言に柱たちは同時にすっとぼけた声がが出た。
「お、おい一人でも厳しいのに複数って何を考えている?」
槇寿郎はなしろの肩を勢いよく掴み目を見ると
「いつもそうだったからいいよ」
なしろの目には何も写ってなかった。
(目が合っている筈なのに…なぜその瞳には何も見えないんだ…!?)
槇寿郎は未知の恐怖に、思わずバッ!となしろから距離を取った
その槇寿郎の行動に、柱たちはどうした?と聞くと
「…いやなんでもない。あちらが複数を希望ならそれでもいいと俺は思うぞ」
その言葉に柱たちは驚いた。なぜなら彼らが知る煉獄槇寿郎は曲がったことが大嫌いな男だったからだ。
それ故に柱たちは驚いていた。
「お前がそう言うのならそうしよう!だったらあとは…」
「俺がやる」
そう言って前に出たのは雨柱だった。
他の柱もこの二人で納得したのか特に口出しはしなかった。
こうしてなしろの相手は炎柱・煉獄槇寿郎と雨柱・東雲雨竜となった。
なお今回の手合わせは木刀で行われる形となった。
(子供だからと言って油断はしない!この子は何かおかしい、それをハッキリさせなければ)
槇寿朗は全集中の呼吸により精神を研ぎ澄ましたことから、槇寿郎からは隙が一切ない。
一方なしろはというと、構えることなくただ木刀を握っているだけだった。
その姿は無気力に立つ、命を宿さぬ人形のようだった。