悲しませるのが嫌なので、防御力に極振りしたいと思います。   作:日名森青戸

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極振り防御と〈炎帝〉と炎羅。

決闘都市ギデオン【盾士】メイプル・アーキマン

 

 

あの後ギルドの報酬を受け取り、5等分した後で私は再び転職カタログの【盾巨人】のページを見る。

2番目の条件は未だ未達成のままだが、レベルのほうはかなり上がった。【ブルーレミングス】の戦闘で一気に39まで駆けあがりあと11。こちらは目標まで見えてきた。

 

「もし転職にお悩みでしたら、適職診断をしてみてはいかがでしょうか?」

 

受付のティアンの人がカタログを真剣に見ている私に声をかけてきた。

そういえば私は即答で【盾士】になった為に、そういうのはしていなかったっけ。

物は試しと早速私で試してみた。5分ほどの質問を繰り返していって、その結果が出た。

 

「【毒術師(ポイズン・マンサー)】……?」

 

なんとまあ。

私が想像していたものとは予想外のものだった。

確かにヒドラがアームズじゃなくてガードナーだったらこれも選択肢に入っていたと思う。

けど、スキルを見てみると病毒系状態異常への耐性を上げる《病毒耐性》や、毒への状態異常強化の《猛毒化》もあったから、これも視野に入れてみようか。

 

「サリーもやってみる?」

 

「オッケー」

 

今度はサリーの番。きっと【隠密(オンミツ)】や【暗殺者(アサッシン)】が似合いそうだ。

結果は……。

 

「【幻術師(イリュージョニスト)】だった」

 

「えー……」

 

また裏切ってくれたねカタログ君。サリーが後衛に回るなんてちょっと想像できない。

けどサリーが言うには、あの時ガチャで手に入れたレイピアを最終段階まで進化させるには〈厳冬山脈〉という場所まで赴かなければならないとのこと。勿論サリーはそこに行けるレベルになっても戦闘するつもりは無い。【冒険者(アドベンチャラー)】が必要になる前に、幻術を使って逃げの一手に尽くそうとレベル上げて備えておけってことですか?

諦めて大人しく【大闘牛士(グレイト・マタドール)】になろうと思い、私も横から条件を見てみる。

条件1『闘牛士のレベルが50に達している』。条件2『《回避》のスキルの使用数を含めた回避を、100回以上成功』条件3『反撃系スキルで与えたダメージが累計1万以上』。

 

「私は……あと20回か」

 

いつの間にか条件3をクリアしていた。因みにサリーのレベルは41で、あと9で条件1は達成される。

順当にいけば明日中には【大闘牛士】になるかもしれない。それと、厳冬山脈チャレンジ用に【冒険者】のページも見ていた。

 

「これからどうする?」

 

「解散しとく?大闘技場は〈超級激突〉で入れないし」

 

「そうだね。各自ご飯を食べに行こーってことで」

 

「ああ、ちょっと良いか?これを持っていってくれ」

 

解散しようとした時、カスミが3つのカフスを取り出した。

 

「これは?」

 

「《テレパシーカフス》だ。フレンド登録も済ませてあるし、これを使えばギデオンと同等の範囲で念話で会話できる。今後の為にも連絡できるならと思ってな」

 

「私達は中央大闘技場に行ってきますね」

 

「何から何まで、今日は本当にありがとうございました」

 

カスミからカフスを受け取って、改めてパーティを解散して別々の行動へ。

6番街を中心に散策していた私は、レストランやカフェを見回しながらどこにするか迷っていた。

 

「んー……」

 

「あんまり食いすぎると後が困るぞ。主に財布と体に」

 

「だって、現実じゃろくにご飯食べてないし……」

 

「……あんなスキルを手に入れたのって、それが原因かもな」

 

「どゆこと?」

 

「お前のその《毒入りでもいいから気兼ねなく食べたい》って願望が進化に影響しちまったんだと思う」

 

「そんな、私は<Infinite Dendrogram>を始めた後は食が細くなったんだよ!」

 

「逆説的にそれ以前は食が太かったってことじゃねぇか!」

 

閑話休題。

 

しばらくして一つのカフェが目に入った。なんとなく気にいったので入ってみることにした。

中に入ってみると、どうやら現実でいう猫カフェのようなものみたいで、室内で猫が放し飼いになっていた。

にゃーにゃーと気まぐれに鳴いたり、登り棒に上ったり、先客が持っていたおもちゃで遊んだりと、見てるこっちも癒される。

その店内で、

 

「うぅぅぅ……疲れたあぁぁぁ……」

 

「まあ仕方ないんじゃない?皇子護衛の後で跳んでいったのを追って、何人か残して竜車でこっちに来たんだし。メイハイ大使は頼れる部下が護衛に就いてるし」

 

「私とマルクスとシンとミザリーだけで行くつもりだったのに、まさかクラン丸ごとついてくるなんて思ってなかったよぉ……」

 

「私が孵化した時にティアンと護衛のマスター達を狙っていたあの下劣なマスターに天誅を下したのはいいけど、それを目の当たりにした彼らに崇拝されるとはね。とんとん拍子で今やクランランキングと討伐ランキング15位内に食い込む精鋭クランとして知れ渡ってるもの」

 

「助けた時は無我夢中だったし、ティアンの人を殺すとか言ってて頭に来ちゃったのにぃ……」

 

「やっぱり根っからの世界派ね。でもいいじゃない。みんなの前では《炎帝》の、私の前ではいつもの貴女であればいいのよ」

 

「……そっかぁ。ありがと。おかげでなんか気が晴れてきた」

 

「あ、でも私がうっかり口を滑らせてもそんなミィも尊いなぁとか言い出してより結束力が高まったりして?」

 

「ちょっ、何その上げて落とすやり方は!?」

 

「冗談よ冗談」

 

なんて会話をしている真っ赤な二人が猫と戯れていた。

あ、ちょっと待って。これ入る店間違えたかも。

 

「……あら」

 

あ、こっちに気付いた。

チャイナ服の女の人に続いて魔術師風の女の人がこっちを向いた。

 

「……いつから聞いてた?」

 

「えっと、ごめんねってところから……ぶっ!?」

 

いきなり顔に何かが貼られた。

そしてチャイナ服の人がミィと呼んでいた女の人がガシッと私の肩を掴む。

 

「店は燃やしたくない。だから今見たことは全て忘れろ」

 

「ひ、ひゃい」

 

それはもう、脅し以外の何物でもなかった。

 

 

 

 

「さっきは失礼しました」

 

「いやいい。さっきは私も悪かった」

 

あの後、チャイナ服の人が道士服の女の人を落ち着かせてくれた。

ちなみに私はハンバーグプレート、ヒドラはドリア(毒入り)、ミィさんはスフレパンケーキ、そしてチャイナ服の人、炎羅と名乗ったその人は現在カレーライス(辛口+黄河産の唐辛子の粉末投入)を食べながら談話していた。

 

「私はミィ。黄河のクラン《炎帝の国》のオーナーを務めている」

 

「私は炎羅よ。《炎帝の国》のサブオーナーを務めてるわ」

 

「私はメイプルです。こっちが私の〈エンブリオ〉のヒドラ」

 

「ども」

 

黄河というと、カルディナを挟んだ先にある王国と連盟を結んでいる国だ。

そういえば〈超級激突〉に参加している迅羽って人も黄河に所属している。

 

「ミィさんは何しに来たんですか?」

 

「私は迅羽――もとい、メイハイ大使の付き添いだ。私のクランの中にも【罠師(トラッパー)】や【紅蓮魔術師(パイロマンサー)】を取りたかった者がいたから、あと2人――もとい、クラン総出で王国に来たという訳だが」

 

「んで、お前らの職業は?」

 

「ミィの今のメインは【大赤龍道士(グレイト・パイロタオシー)】よ。【大赤龍道士】っての【紅蓮魔術師】の範囲特化の超級職って言った所かしら」

 

【紅蓮魔術師】はともかく、【大赤道士】は聞いた事が無いから、多分黄河限定の職業なんだろう。

それにしても……どっちも赤々としている。共通点が多くてユイちゃんマイちゃん姉妹を思い出してしまう。

 

「お二人は姉妹、ですか?」

 

思わず口に出てしまった質問に対して――、

 

「そう見える?」

 

炎羅さんがどや顔気味に返し、

 

「そうは見えないだろ」

 

ミィさんが引き気味に答えた。

 

「ちょっとそれどういう意味?」

 

「いや、お前と姉妹って流石に引くだろ」

 

「引くってどういうことよ!?こんなお姉ちゃんがいて幸せじゃないの?」

 

「からかいまくってる姉を持った分不幸だと感じてる」

 

「酷い!!お姉ちゃん泣いちゃう!!」

 

傍から見れば姉妹の会話。それとも幼馴染同士の会話にしか見えない。

にしても、黄河か……。

 

「あの、黄河ってどんなところですか?」

 

「興味を持ったのか?」

 

「はい。実際アルター以外の国にも興味があったので……」

 

事実私はそのアルター王国もロクに回れてない。

この世界は私の心に傷を負わせた癖に、私はこの世界をまだ知っていない。

ここに黄河から来た人がいたのは幸いだった。

 

「黄河はカルディナの向こうにある国だ。今は皇帝が収めていてな……」

 

それから私はミィさんから黄河の話を聞いた。

自分達がここまでの旅路、野盗クランを潰したこと、〈UBM〉との戦いの事。

色々話しているうちにすっかり日も暮れ、完全に夜になってしまった。

夕食も食べたことだし、そろそろお暇しようとした。

その時、中央大闘技場から火柱が上がる。それも細い線じゃない。太く大きく、観客すらも巻き込みかねないような炎の奔流が夜空を昼間の如く照らし出した。

 

「なっ、何あれ!?」

 

「《真火真灯爆龍覇》だな。【尸解仙(マスター・キョンシー)】の奥義だから、多分迅羽が使ったんだろう」

 

「にしてもあの火柱、観客巻き込んでねぇだろうな?」

 

「大丈夫よ。レベル51以上のマスターの攻撃なら突き破られる心配は無いわ。観客に被害は無いから安心して」

 

……天井の結界貫いちゃってるんですけど。

 

「……ん?」

 

「どうかしました?」

 

「いや、クラン用のカフスから連絡が来たんだ。どうした?」

 

ミィさんが席を外して通話に対応する。

何が起きたのか気になったが、私達は料金を払ってお店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだった?」

 

「王国所属で妙な動きをしているという報告があった。多分夕刻会った《集う聖剣》からの情報と一致しているかもしれない。ドライフとカルディナの〈超級〉も見かけたと報告が入ったが、彼らの手に負える相手じゃないから監視だけを言っておいた」

 

「相変わらず炎帝モードになるとキリっとするわね。嫌いじゃないけど」

 

「うるさいな。――あれ、メイプルは?」

 

「中央大闘技場のほうへ行ったわ」

 

「中央大闘技場?まずいな……」

 

「どうしたの?」

 

「どうもそこにいる王国所属の奴らが〈超級激突〉の前に出ていった奴が何人かいたという報告を受けた。私達も闘技場に行くぞ」

 




(・大・)<次回から、《極振り防御と狂宴ゲーム。》シリーズが始まります。

(・大・)<端的に言えばフランクリンのゲーム開始。

(・大・)<現在執筆状況は第1戦を終えて第2戦クライマックスの辺りです。

(・大・)<読み返してみたけど、正直長い。

(・大・)<今現在9話分で、多分あと3つか4つ増える。

(・大・)<エピローグも加えると全体で15,6はあると思う。
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