悲しませるのが嫌なので、防御力に極振りしたいと思います。   作:日名森青戸

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極振り防御と狂宴ゲーム。“くぃーん”。

決闘都市ギデオン 6番街

 

 

風の噂では「STR極振りはデンドロに不向き」と聞いた事がある。しかしあの姉妹の戦い方は、それがデマじゃなかったのかと思うほどに、一方的に中央広場を陣取っていた敵を薙ぎ払っていた。

今サリーはメイプルと共に12番街のモンスターを衛兵のティアンと一緒に退治している。

 

『VSGUUAAAAAAA!!』

 

PBS(プレパレイティブ・ブルート・サウルス)】と表示されたアロサウルスに似たモンスターが、牙を剥きながら襲ってくる。

 

「メイプル、突進来るよ!」

 

「分かった!《カバー》!」

 

【PBS】の攻撃を衛兵をかばうようにメイプルが防ぐ。そこにサリーが他の衛兵と共に喉を重点的に攻める。

 

『VSGUUAAAAAAA!!』

 

「んぐっ……!こいつ、強い……!」

 

「気をつけろ、亜竜以上はあるぞ!」

 

彼女たちがこれまで戦った中で、目の前のモンスターほど純粋にステータスで強い相手と戦ったことは無い。

亜竜は下級職パーティ相当と聞いて、サリーは納得する。

 

「メイプル、次の突進が来たらお願い!」

 

「任せて!その前に《死毒海域》!」

 

『!!』

 

メイプルがスキルを発動した途端、【PBS】が飛び退いた。さっきまで殺す気満々で牙を剥いていた時とはうって変わって、反撃を恐れているように観察しているように見える。

 

「な、なに?メイプル何かした?」

 

「うえぇ、私ただ《死毒海域》を展開しただけで……」

 

まるで毒に侵されるのを恐れているみたいに、15メートル先の私達に攻撃しようとしない。

試しにメイプルが一瞬だけ解除したら再び牙を剥き、発動したらまたバックステップで下がってしまった。

 

「……ひょっとして、これ使えるんじゃ?」

 

サリーの頭の中である方法が思いついた時、彼女らの背後から何かが飛来した。

それは人であり、<Infinite Dendrogram>では見かけなかったヒーローのようなマスクをつけた〈マスター〉彼のはなった跳び蹴りがPBSの顎を確実にとらえ、大打撃を与えた。

ぐわんと、大きくのけぞって立っているのもままならない。脳震盪を起こしてしまったようだ。

それでも力を振り絞って眼前の私達を……襲おうとはせず、今度は背後からの一太刀で首を落とされ絶命。光の塵となり、アイテムを落として消滅した。

 

「2人とも無事か?」

 

「カスミ!そっちも無事だったんだ!」

 

「ああ。妙な奴と鉢合わせていたからな」

 

「だーかーらー。僕は敵じゃないって言ってるでしょ?」

 

カスミが引っ張る縄の先を見てサリーとメイプルは絶句した。

縄の先は縛られて連行されるカナデだったから。

絶句したままサリーはカナデにこうなった経緯を尋ねてみる。

 

「えと……何があったの?」

 

「ログインしたらそこの着物美人に斬られかけた」

 

「あー……。カスミ、その子味方だから。ほら、フレンドリスト」

 

「……本当だ。いや、すまなんだな。いきなり声をかけられて敵と勘違いしてな。カスミ・ミカヅチだ」

 

漸く誤解が解けたらしく、刀で縄を切ってカナデを解放する。別の意味で安堵したのもつかの間、サリーの頭には再び疑問がよぎる。

あの攻撃してきた飛翔体は誰だ?

その疑問に応じたのは先程の〈マスター〉だ。

 

『俺だよ。ああ、俺はマスクド・ライザー。ここの決闘ランキング6位の者だ』

 

「ありがとうございました。それで、どうしてここに?」

 

『自主的なパトロールだったんだが……まさかこんなことになるなんてな』

 

「他にもまだいるってことですよね?」

 

『そうだ……よし。ここは二手に別れて倒していこう。君は〈炎帝の国〉の人たちと6番街に向かってくれ』

 

仮面の〈マスター〉、マスクド・ライザーはメイプルを指した後〈炎帝の国〉のマスター達を指して指示を出した。

 

「サリー……」

 

「大丈夫。すぐにこっちのモンスター片付けてそっちに行くから」

 

「…でも、実力じゃ不安だし……」

 

正直、サリーは内心この約束を果たせるかどうかわからないと感じていた。実力云々ならまだルーキー。フランクリンのゲーム参加者の中では弱い分類に当たる。

 

「じゃあ約束。私は絶対死なないし、メイプルのピンチに駆けつける」

 

「……本当?」

 

「本当だよ。もう悲しませたりしないから」

 

「……うん。絶対だよ?」

 

何とかメイプルを説き伏せて〈炎帝の国〉のマスターと同行した後、ライザーに尋ねてみた。

 

「あの、どうして私とメイプルを分けさせたんですか?」

 

『実はちょっと厄介な奴らに睨まれてな……そこにいる奴、かくれんぼは終わりだぞ?』

 

ライザーが背後に声をかけると、路地裏から一人の女性が飛び出してきた。

その女性は服のあちこちが戦闘に巻き込まれたかのような焦げ跡を残し、金髪も戦火の煤で汚れている。そんな彼女が息を切らして倒れこみ、必死の形相で助けを求める。

 

「ああ、助けてください!奥のほうからマスター達が追ってきます!」

 

「フランクリンの手勢か!わかりました、我々が対処しますので中央大闘技場に避難を――」

 

その女性に衛兵の一人が彼女を起き上がらせようと近付き……。同時にカスミも動いた。

 

「《納刀術》、《兜討ち》!」

 

背後から刀を鞘に納めたまま殴打武具として近付いた衛兵を殴り倒した。

いきなり起きた出来事に全員――ライザーを除いて――驚き、もう一人の衛兵は声を荒げてカスミに異議を唱える。

 

「お、おい!何をするんだ!」

 

「……失礼した。彼女の言葉からキヨヒメが“嘘”を見抜いたから、咄嗟に殴り倒してもらった」

 

その時サリーはメイプルから聞いた事を思い出した。

カスミの〈エンブリオ〉は嘘を見抜く特性を持っていると。

 

「……あら?もうバレてしまったの?」

 

女性は悪びれる様子もなく、さっきまでの必死の形相が嘘のように消え失せ、飄々とした雰囲気を見せる。

 

「貴様、何者だ?」

 

カスミに誰何された女性は不服を漏らして名を名乗った。

 

「私の?普通は自分から名乗りを上げるものなのでしょうけど……私はMISS.ポーラ。現在は“盤上のクイーン”を名乗らせてもらうわ」

 

悠々と名乗りを上げた女性に、サリーの頭にある紙のイラストが思い出される。

指名手配犯の〈マスター〉、謎の同士討ち事件主犯の【同胞殺戮】の二つ名。

カナデもその名前を知っていたらしく、彼の周囲にはいつの間にかバチバチとスパークがほとばしる鉄球を展開していた。

 

「まさか指名手配犯とご対面だなんてね。協力してフランクリンと戦おうなんて都合の良い解釈はしなくていいよね?」

 

「ええそうよ。話が早くて助かるわ。むしろその逆……あなたたちを殺してドライフに城を移すことかしら」

 

女性、ポーラが手を叩くと次々と建物の影から手勢らしき人間が現れる。その数ざっと20。騎士に衛兵、軽装の大男に町娘風の女性と様々。

それぞれが武器を構え、臨戦態勢をとっている。

 

「それがあなたの戦力ですか……なら、なぎ倒して叩くだけ!!」

 

前に出たサリーがスピードを利用して駆けていく。一番前の衛兵に標的を定めた時だった。

 

『そいつらはPKじゃない、全員民間人だ!!下手に殺したら“監獄”に送られるぞ!』

 

「――ッ!?」

 

ライザーの悲鳴の直後にレイピアの矛先を腕を捻って無理矢理逸らす。レイピアの刺突はティアンの頭の横の空間を突いただけに終わった。

そして跳躍で後ろに跳び、呼吸を整える。

たった数拍、ライザーが伝え損ねていたら、気付いていなかったらティアン殺傷で指名手配待った無しになるところだった。

 

「あなたも《看破》をとっていたのね」

 

「相手を操るスキル……これって【傀儡師(マリオネッター)】のスキル?」

 

『いや、【傀儡師】なら5体、【高位傀儡師(ハイ・マリオネッター)】でも10体が限界だ。というか、あれは傀儡人形か【傀儡】になった相手だけ。つまり……』

 

恐らくカナデやライザーは気付いているだろう。

この時サリーは本気で自分も《看破》を手に入れておかないと今後の戦闘に支障が出るかもしれないと感じていた。

 

「……呪怨系状態異常による操作か」

 

「その通り。ご褒美に良い物見せてあげるわ」

 

推測を立てたカスミにポーラがぱちぱちとわざとらしい拍手をし、辞書のような分厚い本を左手の紋章から出現させた。

 

「私の〈エンブリオ〉、【絶対原書】メアリー・スーはこの紙に取り憑かれた相手を、その命令を忠実にこなす下僕にする。私だけのTYPE:アナザールール・レギオンよ」

 

「紙1枚1枚がレギオンって事か……」

 

「まさか、この人たちはその能力で兵士にしたって事?」

 

ポーラの手勢であるかのように見えたティアンもまた、彼女の〈エンブリオ〉で無理矢理下僕とさせられたこの街の者だった。

彼らを斬れば指名手配。それが嫌なら下僕からの集団リンチ。いつの間にかサリーたちは、最悪な二者択一を迫られていたのだ。

 

「さあ命令よ。彼らを始末しなさい!」

 

命令の直後、襲い来る損傷不可の肉の壁。ポーラにとっては指名手配のリスクを齎す人質を盾に、相手の攻撃を制限。

同士討ちも使えばまともなパーティほど混乱に陥りやすい。

 

「くっ……!」

 

操られたティアンに対して、拘束する術を持たないサリーは逃げるしかない。

ライザーも殺さない程度に加減した格闘術で【気絶】に追い込もうとしてるが、何分装備やリスクが枷になって思うような戦闘が封じられている。いや、デメリットが無くとも彼らにとって住民を人質に取られているのと同意だ。

 

「だったら……《魔法範囲拡大》、《マッドクラップ》!」

 

カナデが下級拘束魔法の範囲を広げ、衛兵2人と騎士1人を、泥のような粘液と化した地面に拘束される。

 

「――――――!!」

 

「ちょっ、バカ……ッ!大人しくして!」

 

必死に拘束を抜け出そうともがき、獣のような声を上げる。無理矢理身体を動かし、口も最低限の動きしかさせないために、言葉を発することはできなかった。

だがこれで何とか助けられた。そう思った時だった。

 

 

――ガチッ。

 

 

「……え?」

 

何かを噛み千切った音がした途端、拘束された3人のうち1人が口から血を垂れ流し、動かなくなった。

そして同時に気付く。舌を噛み千切った人物――ギデオン騎士団の騎士が今、何をしたのかを。

 

「舌を……噛み千切った……?」

 

「あらあらなんてこと。折角戦力増加に借りた子は返すつもりだったのに」

 

『ふざけるな、お前が命令したんじゃないのか!?』

 

「とんでもない!私は操って声を出せないようにしておいただけよ?どうせくだらないプライドの為に死んだほうがマシって思ったんじゃない?なんて騎士道精神に満ち溢れたティアンなのかしら」

 

全員が硬直する中、わざとらしく悲しさを表現するポーラに怒りがこみ上げる。

刹那、石畳を抉り突き進んだ2つの衝撃波がポーラの胴体を捉え、肉体に大きな裂傷を刻んだ。そこから更に白い影がすれ違いざまに、4度の斬撃を刻む。

 

「――見え透いた嘘は吐くだけ無駄だ」

 

【武士】系統の斬刀系武器スキル、《斬空》。魔力を糧に、斬撃を伴った衝撃波を居合の要領で放つ、【弓武士(ボウ・ザムライ)】以外では珍しい遠距離攻撃、文字通り“飛ぶ斬撃”。

キヨヒメの特性上、嘘を吐いた相手に対してENDを下げ、とんでもない与ダメージを与えるパッシブスキルを持つ。

相手がどんなに強固な壁役だろうと、嘘を吐いた相手ならばたやすく切り裂ける。

カスミが《看破》した時、相手の職業は【高位呪術師(ハイ・ソーサラー)】。【救命のブローチ】は1つしか装備できず、破損すれば24時間装備できない。【身代わり竜鱗】は装備数に制限は無いが、それでも1度使えば確実に破損。

それゆえに、2度の《斬空》でブローチと竜鱗の一つを、4度の斬撃はポーラにとって確実な死を意味する――はずだった。

 

「……酷い人。折角の【救命のブローチ】が壊れちゃったじゃない」

 

「何!?」

 

だが、ポーラの身体はブローチは砕け散ったものの、彼女の身体は傷一つ無い。それどころか、カスミには【身代わり竜鱗】が破壊された痕跡すら確認できなかった。

カスミの攻撃は非戦闘職には耐えられるはずがなく、6撃目の攻撃で確実に倒れるはずだった。

まるで2つ目からの斬撃が、避けられない死を否定するように自ら回避したように。

 

「《私のお願いは何でも叶えてくれるの》、“カスミ・ミカヅチ。あなたは【救命のブローチ】を装備していない私を攻撃できない”」

 

『なんだ?』

 

「“マスクド・ライザー、あなたは操られた者達を殴れず、蹴れない”。“カナデ・ベアトリス、あなたは自分の魔法で私を傷つけられない”」

 

彼女は自分の望みを口にするかの如く、言葉を並べる。

何を訳の分からないことを。カナデがそう思いつつ格好の的であるポーラを斃さんと《アイアンフィスト》を生成し、数秒後には鉄拳が彼女の頭を砕いただろう――。

だが、その瞬間にカナデの身体が硬直する。

 

「……ッ!?」

 

まるで見えない力に止められたように、身体が動かない。

何度身体を動かそうとしても、ポーラに向けた途端にビデオの停止状態のように動かなくなる。

 

『これは……!?』

 

ライザーやカナデのほうにも異変が起きていた。

気絶させようと拳を掲げた途端、カナデと同様に動きが止まってしまい、寄りかかられたものの何とか振り払い脱出。後ろから羽交い絞めにしようとしたティアンを、今度はタックルでけん制。だがこれは動きを止められることは無かった。

カナデは身代わりの類の無いポーラに再び切りかかろうとするが、刀が接着剤で張り付けられたように抜けなくなってしまった。

 

「行動制限の呪い!?」

 

「アッハハハハハハハ!!今頃気付いたの!?とんだマヌケね!!」

 

「貴様、何をした?」

 

「わざわざ手の内をバラしておいたのはなんでだと思う?」

 

「はぐらかすな、貴様――」

 

はぐらかすポーラに苛立ちを隠せないカスミが思わず石畳を踏みつける。だがその時、紙を踏んだような感触を受けて思わず目線を足元に下げた。

一見しただけではわからないが、拾い上げると石畳と同じ絵が描かれた紙だった。裏には何も書いていない白紙。

なぜこんなところに紙が?

一瞬疑問が生じたが、ピクリと動いた紙を見た途端、居合斬りの如き速さで手にしていた紙を両断した。

両断された紙は重力に従って落ちるでもなく、ふわりと自我を持ったように浮かび、瞬く間に折りたたみ、紙人形が2体出来上がった。

 

「これが私の〈エンブリオ〉の本当の姿。どう?お気に召した?」

 

『『FUFUFUFUFUFU……』』

 

「クソッ、こっちも手が離せないのに……!」

 

「君たちは彼女を何とかしてくれ!きっとどこかに弱点があるはずだ!」

 

唯一呪いの制限を受けていないティアンの衛兵も、相手とつばぜり合いをしたまま動けない。だが拘束すれば先程のように血迷って舌を噛み切る危険もある。

それに、仲間意識の強い衛兵は自ら強要された友ごとポーラを斬ることは考えもしないだろう。

 

(このままじゃジリ貧……けど、制限されてない私はまだチャンスはある……)

 

サリーは操られた者達を掻い潜り、ポーラの喉を裂く為のルートを探していた。

彼らを相手にしても捕まらないよう回避を中心に立ち回り、やがてルートを見出し、駆けた。

傀儡の間を裂き、暗夜を駆け抜け、一気にポーラへと肉薄する。数秒後にはレイピアに刺し貫かれるだろう。

 

 

 

 

 

 

「“サリー・ホワイトリッジ、あなたは私から一番近い操られた人に首を絞められる”」

 

刹那、サリーの首に誰かの手が掴まれる。

サリーが見出したルートに、突然腕が伸びて彼女の首を掴んだ。

彼女は傀儡の対応できないルートを走って行った。気付かれても自分のAGIなら抜き去れる。非戦闘系上級職でも一撃食らわされば大ダメージは必須だった。

それなら何故彼女は首を掴まされた?

決まっている、ルートを誤導させられたのだ。誤導させられた先の傀儡に、首を掴まれたのだ。

 

「あ……が……」

 

「まさか、私があなただけ忘れていたなんて思っていたのかしら?」

 

騎士に首を掴まれ、そのまま絞められる。

徐々に力が籠められていき、簡易ステータスにも【窒息】が表示される。それに応じ、どんどんHPも減少していった。

例え痛覚設定をOFFにしていても、窒息の苦しみが消えるわけではない。現にサリーの意識は今も朦朧とし続けている。このまま窒息による気絶も時間の問題だろう。

 

(どうする……?指名手配されないためには手を切り落とすしかない。痛覚があるなら、切りつけるだけでも痛みを受けて怯む筈だけど、そんな抜け道を残しておくわけがない……)

 

指名手配去れないためにも、今自分の首を絞めている手を切り落とす。その後急いで止血して中央大闘技場に戻り、ミザリーを始めとした上級のヒーラーに腕を付けてもらう。

ともあれこれを脱出した後はスピードが命。倒し、助け、治す。その3つを迅速に行わなければならない。

薄れる意識の中、サリーは必死にレイピアを握り、そこで自分の頬に何かが垂れたのを感じた。

血ではない、透明な水滴……涙。

 

「……て…」

 

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺して……くれぇ……!」

 

それは、嗚咽。

肉の壁となり、王国の牙になり、唯一の希望を刈り取る。それに耐えかねた最初の騎士は、手駒よりも死を選んだ。

恐らく、それを考えてるのは先の騎士や首を絞めている騎士だけではない。衛兵もギデオンの騎士も、ギデオンに住む一般人も、皆王国に無理矢理牙を剥いてしまう現状を受け入れがたいのは必然だった。

同時にサリーも、ある面影と重なってしまった。そして薄れゆく意識が完全にブラックアウトしたと同時――。

 

「ああああああ!!」

 

カナデの鞘を納めた刀の一撃が、サリーを解放した。

急いで容態を診ると、HPも僅かに残り、【窒息】が消え【気絶】が現れている。

 

「《カース・オブ・マリオネット》」

 

『チィ!』

 

ライザーの蹴りを入れる直前、ポーラは自分自身を【傀儡】を付与する。

正面にはいずれも操られたティアンの衛兵や騎士や市民、その奥のポーラは自ら傀儡化し、操られたものに対しての拳や蹴りを封じられたライザーにさえ、ポーラを倒す手段が消えてしまった。

――之即ち、絶体絶命。

 

 

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