悲しませるのが嫌なので、防御力に極振りしたいと思います。   作:日名森青戸

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極振り防御と狂宴ゲーム。■■■。

 

決闘都市ギデオン 2番街【盾士】メイプル・アーキマン。

 

 

デンドロで数日前から度々足を運んでいる4番街も、すっかりPKやモンスターによって静まり返っていた。

私の足だと相当時間が掛かっただろうが、ジュリエットの飛行能力は私の100倍以上の速度で到着した。

 

「私はギルドのほうへ行ってきます」

 

「任せた」

 

私はギルドへ、そしてジュリエットは周囲のPK掃討へと向かっていった。

 

 

 

 

もうほとんどの寝返り組やモンスターを討伐してくれたか、私が冒険者ギルドに行くまでの間はPKに遭遇することも無かった。

 

「誰かいますかー!?」

 

その一声と共に冒険者ギルドに入ってみる。

誰の声も返ってこなかったが、不安になって探してみると10人ほどの受付の人たちが一塊になっていた。

 

「逃げ遅れた方ですね。大丈夫ですか?」

 

「す、すみません。モンスターが現れたので思わず……」

 

「だったらここにいてください。助けを連れてきます」

 

ここから中央大闘技場まではかなり距離がある。10人もの大所帯を連れ歩くのは流石に危険すぎる。

ジュリエットに運ばせるのも手間が掛かる上に、あの速度だと物理的にこの人達の身が持たない。

あの人の近くにもPK討伐に向かっている人がいるなら手伝ってもらえるから、そっちのほうが効率が良い。

ギルド受付の人たちにここから動かないよう念を押してジュリエットの所へ戻ろうとした時、後ろから声をかけられた。

 

「おーおー、俺も随分幸運に恵まれているようだな」

 

「!!」

 

ギルドの入り口からの声に振り返る。

魔術師風の衣装に身を包んだその人物は、逆光でよく見えないが肉体はまるで生きている人とは思えないほど痩せ細っている。まるで現実での今の自分を思わせる。左手に紋章があるから〈マスター〉だろう。

その左手には鎖が巻き付いていて、引きずって来たかのような棺桶につながれていた。

 

『味方……な訳ねぇよな』

 

こんな時に希望的観測ができるほどおめでたくはない。

 

「――【盾士】か。まあいい、こいつの遊び相手にはもってこいだろう」

 

ぐい、と鎖を引く。

その瞬間、睡眠から起こされたかのようにガタガタと棺が震えだす。

確か【大死霊(リッチ)】にはアンデッドを使役したりするスキルがあったと思い出す。

十中八九、あの棺桶から相手が使役したアンデットが出てくる。気を引き締めて盾を構えようとした時、

 

『防げ、メイプル!』

 

突然ヒドラがそんなことを叫んだ瞬間、私の身体に衝撃が走りカウンター奥の壁へと叩きつけられた。

 

「が……ッ?!」

 

一瞬何が起きたのかわからなかった。

床に落ちてから無理矢理身体を上げると、1匹のモンスターが腕を振り抜いていた所だった。

所々肉や骨が見えるその異形は、死者たるアンデッドだと物語っている。しかもそのアンデッドを改造したのか、右手首から先は鉄球、左手首から先は、鋭利な5本の刃物に置き換えられている。

明らかにフランクリンが用意したモンスターとは一線を画している。

 

「ククク……こいつは最近できたお気に入りの1体でな。名前はそうさな……【VIK(ヴァイオレンス・イモータル・コング)】とでも名付けようか。やれ【VIK】!まずはそのガキを潰せ!」

 

『VUGAAAOOOOOO!!!』

 

ヒドラの解説も束の間、ゾンビゴリラ――【VIK】が再び攻撃を仕掛けてきた。

まるで廃屋撤去に使われる鉄球のような衝撃が、空気を裂く爪が、【VIK】の攻撃を受ける度に凄まじい衝撃が伝わってくる。

それでも盾を構えて何とか攻撃を防いでいく。

 

「んぎっ……」

 

けど、例え痛みが無いとはいっても純粋な衝撃は伝わってくる。

衝撃を受ける度に腕に痺れが蓄積していく。

 

『このままじゃ埒が明かねぇぞ!』

 

ヒドラの言う事は尤もだ。

だけど《第1の首は猛毒滴る竜鱗の盾(メナスティル・ヴェノム)》を使ってもアンデッド相手には効果がない。

今更ながら、攻撃スキルの乏しさが悔やまれるが、そんな場合じゃない。

 

『VUGAAA!!』

 

「ぅあっ!!」

 

【VIK】が放った爪の一撃で、初ログインから使っていたアイテムボックスが破壊され、中身がばら撒かれる。

 

「ハハハハハ!コイツは亜竜の【亜竜剛腕猿(デミドラグ・アームドコング)】を素体にした改造アンデッド、実力は亜竜級以上だ!たかがルーキー風情に倒せる代物じゃないんだよ!」

 

【大死霊】のマスターが勝ち誇るかのように笑い声をあげる。

確かにこのモンスターは、私が戦った中では強さは別格。おまけに毒が通じない相手となれば私の相性とは最悪だ。

とてもじゃないが、私1人じゃ勝ち目がない。

決着を思ったのか、【大死霊】のマスターが視線を私からカウンターへと向けた。

その途端、私の脳裏に嫌な予感が浮かぶ。

 

「あなた、何を……」

 

「ん?なんだ知らないのか?はは、こりゃ傑作だ」

 

【大死霊】のマスターはたまらず笑い出す。

何がおかしいのか私には理解できない。私の中で苛立ちが燻ぶっていると、相手はとんでもない事を口にした。

 

「ティアンは経験値がたっぷり入るんだよ。狙って損はないだろ?」

 

その瞬間、私は言葉を失った。

 

――ティアンを、殺す?たかが経験値の為に?何の抵抗もできない人間を?

 

そこから先は、まるで燻ぶっていた炎が一気に燃え広がるかのようだった。

 

――ああそうだ、こいつは理沙を殺したあの鎧と一緒だ。

へらへら嗤いながら相手を殺して、何の罪悪感も無しに楽しいからという理由で殺し続ける奴だ。

嘗て理沙の命を奪ったあの鎧と同じようなプレイヤーが、何より許せない。

 

もうそこから先は、単に本能として動いていたんだろうと思う。

【VIK】がティアンに迫る中、私は死に体に鞭打つかのように身体を動かす。

力の入らない手で、普通なら激痛でロクに動けないだろう身体で、回復ポーションを拾って嚥下する。中身がほとんどこぼれているが気にしない。

残存HPが3割から5割になった所で次に私は傍に転がっていた別の小瓶を手に取る。

【沼トカゲの血毒】。名前からして摂取したら【毒】状態になりそうなアイテムだけど、今の私にはこれを用いた方法しか、ティアンを守る術は無い。

 

「ヒドラ、多分これから物凄い無茶をするよ」

 

『顔見りゃ分かる。思いっきり――なんだ?』

 

突然言葉を遮ってヒドラが戸惑う。

彼に疑問を投げかける前に、見たことのないウィンドウが展開された。

 

 

同調者(〈マスタ―〉)生命危機感知】

【同調者生存意思感知】

【<エンブリオ>TYPE:アポストル【毒葬紫龍ヒドラ】の蓄積経験値──グリーン】

【■■■実行可能】

【■■■起動準備中】

【停止する場合はあと20秒以内に停止操作を行ってください】

【停止しますか? Y/N】

 

 

『なんなんだよこれ?クソッ、こんな時に!』

 

ヒドラの声は珍しく困惑を表立たせたようなものだった。

私もこんなカウントは初めて見た。そんな私達を他所にカウントはどんどん減っていく。

でも、一つだけ分かったことがある。

それは――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるさいから黙ってて」

 

――今この状況をひっくり返すのに、この警報はただの雑音でしかないということ。

拳を叩きつけるように【NO】のタッチパネルを押下した。

 

 

【カウント停止】

【同調者の緊急進化の否定意思を確認】

【■■■緊急進化プロセス中断】

【進化に耐えられる程度の負担耐性と、本体のパーソナリティとの調和を計測。……計測完了】

【次回進化は約288000秒後となります】

 

 

「……なんだ、終わったのか?【VIK】、命令変更だ。先にルーキーを潰せ」

 

目の前のゴミを片付けようと【VIK】が動く。

半分賭けだが、今はこれに縋るのが今の私の一番だ。

確信を胸に、私は隠し持っていた小瓶を握りしめる。

 

「……おいおいおいおいおいおい。まさか【毒】にしてやろうって考えてんじゃないだろうな?とっくにくたばってるアンデッドに毒が効くと思ってんのか?」

 

あのマスターは私が次に起こす行動は『小瓶の中の毒液を振りまいて相手を【毒】にしてから仕留める』といったところだろう。

当然彼が思うように、私もアンデッドに毒が効くとは思っていない。

だからこそ、私は手にした瓶の蓋を開け、嚥下した。

 

「!?」

 

いきなり予想外のことで面食らった顔をしている。

それもそうだよね。自分で毒を呑む人なんてそうはいない。

飲み干すと同時に吐血し、同時にHPもゆっくりとだが減っていく。

けどそんなのは気にしない。大盾を構えて【VIK】に向け《シールドアタック》を叩き込む。

直後、【VIK】が吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

「なっ!?」

 

【大死霊】のマスターが驚く中、もう一度《シールドアタック》を叩き込んで吹き飛ばした。

100以上もあるレベルとステータスの差なのにどうして吹っ飛ばせたのか。

理由は第2形態に進化した時に得た《我、毒をもって戦を制す》。

第2形態になった今、HPとMP、SP以外の全ステータスが2分間倍になる。

代償として2分間解毒不可能になるけど、元々のENDは120、STRは90を超えたから、亜竜級の攻撃でもそう易々とダメージを与えられないはず。

 

『VASGAAAAAAA!!!!』

 

そこから先は、【VIK】の攻撃を防ぐと同時に反撃をするというルーティンな戦闘だった。

爪を往なし、鉄球を受け止め、感覚の痺れた手で短刀を握り斬り付ける。

ダメージは浅くとも……それ以前にダメージが通っているのかどうかわからない。

それでも攻撃を防いで反撃を繰り返す。

 

 

――ピシリ。

 

 

その攻防を続けていくうち、嫌な音が私の耳に入った。

その音源はヒドラからだ。激しい攻撃に耐えているうちに、盾に僅かな罅割れが起きている。

 

「ヒド――」

 

『俺に構ってんじゃねぇ!』

 

その叱咤でヒドラに向けかけた意識を【VIK】に戻す。

攻撃、防御、反撃。永遠かに思えるような2分間が続いてく。

【VIK】は傷を与えた傍から傷口が再生していってダメージの蓄積が感じられない。

どうにかしなければ《我、毒をもって戦を制す(グラッジ・ウォー・ヴェノム)》の強化時間が終わって反撃を受けてしまう。

 

「――!」

 

どうにかしなければ。その時に【VIK】の両手首が機械化されているのを発見する。

あれはいわば、改造アンデッド。元々の腕を切り離してあの義手を装着させたものだと判断する。

《我、毒をもって戦を制す》まであと1分を切った。後は一種の賭けとして、反撃個所を【VIK】の両手首に絞る。

今度はザシュリ、と今までの肉を割く感覚とは違う。確かな感覚に私は確信し、反撃を続ける。

 

「この……ッ!」

 

45秒、30秒、15秒、10秒……。

カウントが刻一刻と迫る中、死に物狂いで反撃を続ける。

やがて【VIK】の両手に裂け目が見えた時、

 

「《テラー・バインド》!」

 

急に身体が硬直し、【VIK】の鉄球を受け、三度吹っ飛ばされる。

同時に《我、毒をもって戦を制す》の効果時間が切れる。これでも防御したつもりで、ヒドラに生じた亀裂は全体の8割以上にまで及んでいる。【毒】の状態異常で残るHPは1割を切った。

 

「こ、このガキ……!よくもやりやがったな……!【VIK】、あのガキをぶっ殺せ!」

 

復活した【大死霊】のマスターが呪術で横やりを入れてきた。

【VIK】との戦闘で蓄積されたダメージに加え、【恐怖】と【呪縛】で動けない。たとえ動けても、罅だらけのヒドラではあと1撃防げるかどうかわからない。

フシュウ……、と息を吐く【VIK】が私を殺そうと拳を振り上げた。

――この一撃を食らえば、私は確実に死ぬ。

 

「みんな……ごめん……!」

 

自分の無念を呪いながら私は眼前に迫る死を覚悟した。

その時だった。いつ現れたのか気付かないほど速く私と【VIK】の元へ駆けつけ、私に迫る一撃を、手首を貫いて防いでくれた。

その姿を見て、私の心の中は安堵へと包まれる。

それは私が守ると決めた、青い服の少女。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やらせない。絶対に」

 

サリーだった。

 

 

 

 

「チィッ、援軍かよ!?」

 

彼にとって、この状況は十分予想できた。

ルーキーを始末して、奥にいるティアンを殺して経験値を貯め込み、そして騒ぎに乗じてギデオンを脱出する。それでうまくいくはずだった。

それなのにどうしてこんな状況に至ったのか?その理由はメイプルにあった。

自ら【毒】に陥りるの引き換えに自身を強化する《我、毒をもって戦を制す》。

それによって下級職カンスト寸前にまで上がっていた【盾士】のステータスが倍化し、亜竜級と互角と言えないまでも、張り合えるまでに至ったのだ。

加えてノックバック攻撃の《シールドアタック》で相手を吹き飛ばしたのも大きい。

そして決定的なのは、無意識にメイプルが【VIK】の影に隠れながら防御に徹していたことだ。

そのせいで下手に呪術のサポートを行えず、今やっとメイプルに呪術を与えられたのだ。

 

それでも男にとってはルーキーが1人増えた所でどうということはない。

 

「たかがルーキーの1人……始末しろ【VIK】!」

 

『VASGAAAAAAA!!!!』

 

標的をサリーへと変えて【VIK】が鋭爪の腕を振り上げる。メイプルと違いAGI型のサリーがあれを食らえば1撃でデスペナルティになるだろう。

サリーがレイピアを構えた次の瞬間、鋭爪が砕け散り、鉄球が手首ごと切り落とされる。

 

「んなっ!?」

 

「ちょ~っと調子に乗りすぎたんじゃないの?」

 

「――危難の刻、我が翼は舞い降りる」

 

その声は【大死霊】の前後からだった。

振り返ると青白い炎で形作られた猫型のモンスターに騎乗する術者、フレデリカ。

そして視線を戻しもう一人に向ける。黒いゴシックドレス調のアーマーに漆黒の翼を生やした剣士、ジュリエット。

 

「フレデリカにジュリエット、よりにもよってコイツらもかよ?!」

 

「サリー、メイプルをお願いできる?」

 

「――もちろん!」

 

入れ違いにサリーがメイプルに駆け寄り、ジュリエットが【大死霊】を、フレデリカが【VIK】に挑む。

 

「覇アアアァァァッ!!」

 

「うおおおぉぉッ!?」

 

有無を言わせぬ斬撃のラッシュに男は魔術を使う余裕がない。距離を開けようにも1万を誇るジュリエットのAGIで距離を開ける暇なんて無い。

幸い、【堕天騎士(ナイト・オブ・フォールダウン)】に対アンデッドスキルは持ち合わせていないため、肉体が切断されるような一撃に用心していれば、例え串刺しにされても致命傷にはならない。

尤も、デスペナルティにならないだけで優位に立てるはずがない。

フレデリカのほうも有利に事を運んでいた。

 

「キャスパリーグ、押さえつけてて!」

 

『BUGYAAAAAAA!!』

 

【VIK】とキャスパリーグと呼ばれたモンスターがロックアップに似た体勢で膠着する。

今のキャスパリーグは今までとは違い、熊の姿に猫の要素を足したような姿となっている。がっちり膠着していることからSTRは【VIK】と互角だろう。

 

「《術式起動:ホワイトランス》」

 

フレデリカが宣言すると、キャスパリーグが口を開ける。そこから白い魔法陣が浮かび、次の瞬間には聖なる光の槍が【VIK】の顔面目掛けて発射された。

1発、2発、3発とゼロ距離から立て続けに放ち、【VIK】に大ダメージを与え、ついに消滅する。

 

「や、野郎……!」

 

「悪いけどこっちもこの子たちをこれ以上殺されると、私も立つ瀬が無いんでね!」

 

開口し、標的を【大死霊】のマスターへと向ける。

その時彼は予感した。【VIK】と同じく、聖なる光の槍でハチの巣にされる自分の姿を。

 

「《――――――》!!」

 

発射と同時にスキルの宣言をする。

被弾し爆発が巻き起こる。

確実に仕留めたか。そう思っていた2人だったが、煙が晴れると意外な光景が答えとなって帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ホワイトランス》が直撃したのは、【大死霊】のマスターでもなんでもない、ただの【ウーンド・ゾンビ】だったから。

 

「「「!?」」」

 

【ウーンド・ゾンビ】はそのまま肉体が崩れていき、消滅。フレデリカがキャスパリーグに乗ったままその場所を調べるが、古い布の切れ端以外ドロップ品は無い。

 

「……仕留めた、訳じゃ無いよね?」

 

「ええ、多分。〈エンブリオ〉のスキル、それも転移スキルって所かしら」

 

「彼の地に逃走せし、生を踏み外した者を追うか?」

 

「流石に今は襲ってこないでしょ。それよりメイプルちゃんを」

 

追跡よりメイプルの保護を優先した3人。メイプルのほうを振り返ると、サリーが既にHP回復ポーションでメイプルを回復させ、HPも8割がた回復したところだった。

毒の状態異常もメイプルのENDの高さで、思ったより早く自然治癒できたそうだ。

 

「……あの、草原のほうは?」

 

「大丈夫。あっちは終わったよ」

 

フレデリカの話によれば、フランクリンはユーゴーに助太刀されるも彼共々デスペナルティにされ、第二王女のエリザベートも救助されたという。

フランクリンの放った“スーサイド”シリーズもミィと【破壊王】シュウ・スターリングを筆頭にベテランが残らず殲滅し、ギデオンに来ることも無い。

PKや寝返り組はまだ残っているが、流石に今となってはもう手を出して得になる事は無いし、襲われる危険も無いだろう。

 

「良かった……そうだ、フレデリカさん脚は!?」

 

「大丈夫。ほらこの通り。まあ、動かせるのと立ったり歩いたりってのは別だけど」

 

フレデリカが自分の脚を振って見せる。アドルフによって切断された脚もしっかりくっついている。

とりあえず一安心したが、再び表情が曇った。

 

「……何故に愁いを見せる?」

 

「だって、ヒドラが……」

 

次いでヒドラのほうを見る。

盾形態の彼は全体に罅が入り、今にも音を立てて崩れそうだ。短刀のほうも【VIK】の手首への攻撃でギリギリ折れなかったといった所だ。今刃を床や壁に立てれば音を立てて折れるだろう。

 

『安心しろ……壊れても…時間を掛けりゃ、また直る……』

 

「でも……」

 

『……まあ、人型に戻るのも、無理そうだ……紋章ン中で…修復に集中したいから、後は頼む』

 

メイプルを安堵させるようそれだけ言い残して、ヒドラはそのまま紋章の中に戻っていった。

決着したところでサリーに担がれ、ジュリエットとフレデリカがティアンを護衛しつつ中央大闘技場へと向かう。

 

「サリー」

 

「ん?」

 

やっと中央大闘技場が見えた頃、メイプルが唐突に口を開く。

 

「ありがとう、助けに来てくれて」

 

「……約束だからね」

 

 

 

 

【フランクリンのゲーム第4試合:冒険者ギルド内の戦い】

 

敵陣:【大死霊】のマスター。亜竜級アンデッド【VIK】。

 

自陣:メイプル・アーキマン。

 

結果:メイプル・アーキマン、重症ながらもティアンの防衛に成功。

 

備考:途中、サリー・ホワイトリッジ、フレデリカ・クーパー、ジュリエットが乱入。【VIK】を討伐するも、【大死霊】のマスターは逃走。

 

 




※サリー乱入。

(・大・)<実はこのシーン、何気に防振り原作のオマージュをしています。

(・大・)<あの時のメイプルが無駄に格好良く見えた。

(・大・)<ってかよく見たら、原作と立場逆転しとる。



【大死霊】の〈マスター〉。

(・大・)<一応彼の〈エンブリオ〉はテリトリー系統です。能力は察しの通り。

(・大・)<ちなみに引きずってた棺桶はマジックアイテムの一種。

(・大・)<本来の用途だけでなく、【大死霊】や【死霊術師】用の為のアンデッドを複数体保存でき、使用者には重さを感じられないが、取り出すのに手間取る為戦闘前に事前に出しておく必要がある。

(・大・)<ボクタイシリーズの棺桶引きずる太陽少年をイメージすればわかりやすいが、なんであんなの作った?

(・大・)<なお、彼は前にガチャで引き当てた(10万投入でCランク)。



【VIK】
冒険者ギルドを襲った【大死霊】が連れていたアンデッド。
【亜竜剛腕猿】を素体に両腕を爪と鉄球に改造、STRも上方修正させたもの。
魔法耐性は当時その〈マスター〉も耐性を加えようとしたが、素体故に改造しても大して上がらず、魔法(特に聖属性と炎属性)に滅茶苦茶弱い。

因みに【亜竜剛腕猿】はSTR500、END330、AGI110のボスモンスター。腕を使ったスキルが特徴である。
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