悲しませるのが嫌なので、防御力に極振りしたいと思います。   作:日名森青戸

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(・大・)<ここから双子の話。

(・大・)<過去編になります。




3.5章2/3:壊屋少女と酒池肉林。
壊し屋姉妹と語り始め。


決闘都市ギデオン 第7闘技場前。

 

 

このアルター王国には三巨頭と呼ばれる3人を含めた、4人の〈超級〉が存在する。

かつて城塞都市を襲い、幾万もの〈マスター〉とティアンを葬った〈SUBM(スペリオル・ユニーク・ボス・モンスター)〉【三極竜グローリア】を討伐した3人。〈アルター王国三巨頭〉。

 

このギデオンの象徴たる決闘王者、“無限連鎖”のフィガロ。

 

王国のクランランキング1位、《月世の会》オーナー兼教主、“月世界”扶桑月夜。

 

今までその正体の知られなかった元【正体不明】。討伐ランキング1位にて、“不屈”のレイ・スターリングの兄、シュウ・スターリング。

 

そして今目の前にいる、同じく討伐ランカーにして“酒池肉林”のレイレイ。

 

ログイン時間は4人の中でも最も短く、ジョブも上級止まり。ジョブだけなら彼女は最弱の部類だろう。ジョブだけ、なら。

それでもアルター王国三巨頭が並んで「敵に回したくない」と評するのが彼女だ。

その4人目の〈超級〉が、今メイプルの前にいるのだ。

 

「メイプル、いったい何があったの?」

 

騒ぎに駆け付けたサリーもやってくる。

そして彼女を筆頭に次々と、闘技場内にいた〈マスター〉も騒ぎの中心地へと顔を出してきた。

 

『おい、いったい何事――おぉ』

 

「どうしたライザー――って、なにぃ!?」

 

「どうしたの――思いがけぬ邂逅か」

 

ライザー、ビジュマル、ジュリエットがそれぞれリアクションを口にする。

それほどまでに珍しいのかと一瞬戸惑ったが、メイプルは改めて倒れている姉妹に話しかける。

 

「えと……何があったの?」

 

『要約するとレイレイさんが来たのを知って突っ込んできたら師匠にいなされてそうなった』

 

シュウからの答えで沈黙するメイプル。

そして……、

 

「ご……」

 

「ご?」

 

 

 

 

 

「ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」

 

 

 

 

第3闘技場 ロビーのとある一角。

 

 

「まさかPKと勘違いするなんて……」

 

「「本当に申し訳ございませんでした」」

 

「イイヨイイヨー。そういうのは慣れてるからネー」

 

闘技場前のごたごたを終えて休息場に集まった〈マスター〉達。

同じテーブルにはレイレイと、彼女と向かい合う形で座りつつ頭をテーブルに打ち付けて謝罪するメイプルとヒドラ、そしてユイとマイ。

隣のテーブルにいたサリーが彼女にあきれた声を漏らしていた。

 

「まあまあ、ジュースでも飲む?」

 

「ありがとうございます」

 

レイレイから手渡されたジュースを受け取るメイプル。

……若干ユイとマイを含めたサリー以外の全員の顔がにやついているのが印象に残ったが、気にせずジュースを飲もうとして――。

 

「これはテメェが飲め!!」

 

「もごがっ!?」

 

隣のヒドラがひったくり、それをマイの口へと突っ込んだ。

無理矢理にもかかわらず中身をすべて飲み干したマイは、直後にひっくり返る。

 

「お姉ちゃん!?」

 

「やっぱり毒の類を仕込んでやがったか。〈超級〉相手に通じたって事は、ジョブ系統のほうか?」

 

「……なんでわかったの?ちょっとやそっとの《危険察知》じゃ見抜けないと思ったのに」

 

「毒を見抜くスキルを持ってんだよ。固有スキルでな」

 

「というか挨拶代わりに毒渡します!?王国じゃこれが普通なの!?」

 

「ああそっか。お前らレイレイさんの歓迎スルーしてたのか」

 

レイが呆れた物言いで彼女らの経緯を思い出す。

レイレイは新顔の〈マスター〉に対して、「こういう不意討ちもあるから気をつけろ」という教訓を実体験込みで教えている。メイプルは経緯が経緯だけに彼女の洗礼から免れた為に知らなかったのだが。

彼女が専ら使う【神毒鬼便酒(弱)】は、酒のような味に変えてしまう。人命に影響が出るようなものではないが当然毒なので、弱い毒を薄めているとしても飲みすぎれば【宿酔(ふつかよい)】という状態異常が起きる。この状態異常は痛覚設定がOFFになっていたとしても常にズキズキするような頭痛に襲われ、本当の二日酔いを体験してしまうというある意味恐ろしいものだと経験者は語る。

レイも彼女の歓迎を受けて同じような目に遭い、そしてフランクリンのゲームのきっかけとなったイヌ耳騒動(もといレイ・スターリング毒殺未遂事件)も遠からずこれが原因である。

因みにマイに飲ませたものは軽い【酩酊】を与えるものであり、味変効果を加えた毒を混ぜたものだ。

 

「え?この子〈マスター〉じゃないの?」

 

「アポストルの〈エンブリオ〉だよ。ったく、アポストルってそんなに珍しいのか?」

 

『まあメイプルちゃん以外でアポストルの〈マスター〉と会ったのは、俺とフィガ公くらいだからな』

 

「闘技場の費用工面してくれた奴も言ってたが、相当珍しいんだな。てか、動物園に寄贈された珍獣か俺は」

 

「隣の檻には私がいるヨ」

 

「……張り合う必要あるか?」

 

「ごめんごめん。あ、それじゃあ2人と模擬戦やってみる?」

 

軽い悪ふざけの後、レイレイが直後にそんなことを言い出した。

マイは【快癒万能霊薬】を呑んでもまだ目を回していて、とても戦える状態じゃない。

 

「さ、流石に今すぐってのはちょっと……」

 

「じゃあその間は私達がこの子らについての事を話すヨー」

 

「良いんですか?そういうのってプライバシーに違反するというものではないでしょうか?」

 

ルークが挙手をする。

確かにこういったVRMMOには個人のプライバシーポリシーというものが付いて回る。

面白半分に他者が足を踏み入れてはならない領域。個人情報を曝け出すというのはこの中の〈マスター〉の誰もがマナー違反だと十分理解している。そう易々と他人の事を話していい気になれるはずがない。

 

「私達は構いませんよ。リアルのほうまで言わなければ」

 

「わりゃひもしょうひゅうれぇんひゃほぅへぃれひゅ」

 

今だ呂律の回らないマイと共にユイも承諾してくれた。

そして自分の位置を丁度全員と向かい合う所に移して、最初はユイが語りだした。

 

 

 

 

「私達、最初はとんでもなく仲が悪かったんです」

 

 




(・大・)<今回は短め。

(・大・)<次から姉妹の過去編になります。

〈K&R〉の部隊として、どっちを出す?

  • 『thunder storm』
  • 『ラピットファイア』
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