悲しませるのが嫌なので、防御力に極振りしたいと思います。   作:日名森青戸

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壊し屋少女と嫌な奴。

 

 

少女らはその外見が瓜二つだった。赤の他人にしては、まるで自分を基にコピーでもしたかのような外見だった。

片方は設計士の子、もう片方は花屋の子だった。

設計士の子は父親のみの家庭で、父親が仕事熱心なために一人でいることが多く、母親の愛情に飢えていた。

花屋の子は母親のみの家庭だが、それでも家業を積極的に手伝いながらも、父親のいない家庭に疑問を持っていた。

そして同じ小学校で2人は出会った。

見た目は同じでも、性格や好みは所々違う。

花屋の子は活発で、設計士の子は大人しく。

花屋の子は料理の腕は壊滅的で、設計士の子はそれなりに。

花屋の子は音楽が好きで、設計士の子は好奇心旺盛。

 

そしてお互いはやがて――お互いの足りないものを持っている相手に嫉妬した。

最初は小さな嫌がらせ程度だったが、次第に言葉の殴り合いとなり――手と足を出す喧嘩になった。幸いだったのは2人の体躯が小さく、力も弱い事だった。

ガキ大将でも2人の喧嘩に巻き込まれると面倒と思われ、2人の喧嘩を良く止めていた。

そして不満を抱えて帰宅して、壁に向かって八つ当たり。それが2人の毎日だった。

そんな2人に転機が訪れたのは、〈Infinite Dendrogram〉発売から2年後の事だった。

たまたま懸賞にハードが出ていて、それが2人に当たったのだ。偶然、2人の周りには〈Infinite Dendrogram〉の経験者もいて、その人からアドバイスをもらってアルター王国でスタートした。

 

やっと、やっとアイツのいない世界に行ける。

(担当AIが12号と2号だったために)チュートリアル時のハプニングを除けば、2人は安堵と喜びに満ち溢れており、

 

 

直後に落胆に変わった。

 

 

 

 

アルター王国 王都アルター 噴水広場。

 

 

「……ねぇ、どういうつもり?」

 

黒い少女、マイ・ルナーが米神に青筋を立てんばかりの怒りを抑えながら、目の前の白い少女、ユイ・フィールに尋ねた。

 

「そりゃあね、私だって馬鹿じゃないよ?ドライフで活動している子に話を聞いて、ドライフに来ないかって誘われたよ?けど多分あなたが誘いに乗ってくるんじゃないかって思ってわざと乗らなかった訳。この国がヤバい状況だとしても、同じ国にいるのは絶対嫌だって。だってほら、100万歩譲って私達の考えてることそっくりじゃん?それで私はあえて私が選ばないだろうという場所を選ぼうとしたの。それでわざわざハードルの高い天地やグランバロアを選んだら絶対苦労するから嫌だろうなって思うから、私はその逆の逆を選んでストレートに王国にしようと思ったの。その可能性を選んだわけ」

 

「そーなんだそーなんだ。長い言い訳お疲れ様。私もね、ドライフで活動している子に話を聞いて、ドライフに来ないかって誘われたよ?けど多分あなたが誘いに乗ってくるんじゃないかって思ってわざと乗らなかった訳。この国がヤバい状況だとしても、同じ国にいるのは絶対嫌だって。だってほら、100万歩譲って私達の考えてることそっくりでしょ?それで私はあえて私が選ばないだろうという場所を選ぼうとしたの。それで初心者殺しで有名な天地やグランバロアを選んだら絶対苦労するから嫌だろうなって思うから、私はその逆の逆で王国に行こうって決め込んだの」

 

「決め込んだってところ以外殆ど全部一緒じゃない」

 

長い弁舌の結果が御覧の通りである。

深読みし過ぎた結果、王国で鉢合わせしてこの様である。

因みにアドバイスを授けたのは、皇国の決闘王者であり、2人の一つ下の学年である。

更なる備考を付け加えると、アドバイスを授けた全員、直後に同じ人物が聞きに来たので全員驚いたとか。

 

「あー、やめやめ。埒明かないしとっととジョブに就こうっと」

 

苛立ちを払拭しつつ歩き始める。

〈Infinite Dendrogram〉を始める前にいくらか話を聞いており、ジョブに就かなければレベル0のままというのも既に織り込み済みだ。

そうして2人は同じ方向へと歩いていく。

 

「……」

 

「……」

 

「……ねえ」

 

「何?」

 

「私の後ついてくるの止めてくれる?迷惑なんだけど」

 

「私はこの先にあるギルドに用があるの」

 

「私だってこの先のギルドに用があるの」

 

沈黙を貫いていた2人の間に言葉が飛び、次第歩調も強く早くなり……終いには同時に駆け出した。

向かう先は同じく冒険者ギルド。そこのジョブクリスタルで就ける【壊屋(クラッシャー)】のジョブを得るために、お互い一歩も譲らずに駆けていくのだった。

 

 

 

 

アルター王国〈イースター平原〉

 

 

「どうしてこうあなたと被りまくってんのよぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

「知る訳無いでしょ。こっちだってウンザリしてるんだし」

 

ユイの怒声が〈イースター平原〉一帯に轟く。

結論から言って、そこからはほぼ同じだった。

 

同時に冒険者ギルドに登録し、

同時に【壊屋】に就き、

同時に〈エンブリオ〉が孵化。それが同じTYPE:アームズ。

挙句の果てに初戦闘場所も同じ。

 

ここまでくれば2人でなくともうんざりするだろう。

場所は仕方ないとしても、ここまで行動や結果がシンクロしたのは後にも先にもこの2人くらいだ。

 

「唯一の救いが、私達の〈エンブリオ〉が違うってことだよね」

 

「それまで一緒だったら辞めてやった所だよ!!」

 

幸いにも完全なる唯一性たる〈エンブリオ〉は、お互い違うものだった。

確かに双方同じアームズ系統だが、ユイの〈エンブリオ〉は白い両手持ちのハンマー。マイの〈エンブリオ〉は黒い両手持ちの片刃斧。いや、正確には斧状の鈍器と言うべきか。刃物たる斧だというのに、三日月状の刃に当たる部分が潰れており、それを質量で補っている感じだ。

装備補正、ステータス面では攻撃力が高く、他は必要最低限。皮肉にも、少女らが願った「強さ」を反映した結果なのだろう。

しかし、それでいて奇妙な点が2つだけあった。

 

「にしても、スキルが詳細不明ってどういうこと?」

 

2人の〈エンブリオ〉の画面には、余程の例外を除いて最低限1つはあるであろうスキルが、【使用不可】となっているのだ。

試しにその文字に触れても、『条件未達成の為、使用できません』、『スキル詳細不明』と出るばかり。

 

「それに、向こうの人と比べてなんだかくすんでいるみたいだし……」

 

もう一つはそれだ。

近くで戦闘に励んでいる〈マスター〉の持つアームズの〈エンブリオ〉は日光を反射して輝いているのに対し、ユイとマイの〈エンブリオ〉はくすみが特に酷かった。

まるで力が抜け落ちているのか、それともこれが本来の姿なのか。今のマイには見当がつかない。

 

「何かのバグかな?」

 

「普通に使えるよ……っと!」

 

「うひゃあ!?」

 

ユイが画面を見ているマイの背後からいきなり殴りかかってきた。

直前に気付き、辛うじて回避したマイがユイに食いかかる。

 

「ちょっと何するの!?」

 

「あーごめーんてがすべったー」

 

「棒読みがひどすぎる!?絶対わざとでしょ!」

 

「確認テストですー私は悪くないんですー」

 

ユイの開き直る態度にマイも堪忍袋の緒が切れた。

ロッテを振りかざし、ユイも応じてルイーゼを構える。

 

「もう頭きた!モンスターの前にあなたを叩き潰してやる!」

 

「へぇ、やるんだ?まあ私も同じこと考えてたし」

 

じり、じりと、お互いの射程距離に近づく。

近付くにつれ、お互いの得物を握りしめる力も強くなる。

そして――、

 

 

 

 

「「うりゃああああああああああああああ!!!!!」」

 

 

 

お互いの武器を相手に向け振りぬき――

 

 

 

「よーし、今日は西の辺りにでも――おぼがぁ!?」

 

その一撃が割り込んだ相手の腹に直撃した。

乱入者はてんてんとスーパーボールのようにバウンドし、5メートル先へと吹っ飛ばされた。

 

「「……あれ?」」

 

2人の喧嘩に意図せず巻き込まれた乱入者、それが〈酒池肉林〉のレイレイとの出会いだった。

 

 





(・大・)<補足コーナー。

(・大・)<ユイの〈エンブリオ〉はアニメ原作の白ハンマーだけど、

(・大・)<マイの〈エンブリオ〉はMHWIの宮廷十字鎚【鍛星】を黒く染めた感じです。

(・大・)<因みに武器スキルでは鎚系統に分類されるようです。

( ̄(エ) ̄)<見た目完全に斧なのにな。

(・大・)<見た目完全に斧のくせして片手剣やハンマーに入るのはモンハンあるあるです。

(・大・)<鉄球飛ばすスリングショットなのに弓に分類されてるのや、

(・大・)<完全ドリルなのに双剣扱いのもありましたからね。

〈K&R〉の部隊として、どっちを出す?

  • 『thunder storm』
  • 『ラピットファイア』
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