悲しませるのが嫌なので、防御力に極振りしたいと思います。 作:日名森青戸
(・大・)<残念、2話連続投稿だ。
決闘都市ギデオン 第7闘技場ロビーの一角【
「いや最初の出会いが最悪すぎるだろ!?」
思わずツッコミを入れてしまった。
双子の中が悪かったのも対外だが、レイレイさんとの出会いもインパクトがデカすぎる。
他のみんなも一部を除いて唖然としていた。
「とはいえ、体当たりで死にかけた奴に言われたくないのう」
そう言われると反論できない。
そりゃあね、俺だって出会い頭に死にかけたよ?喧嘩に巻き込まれたっていうか、妹探しの真っ最中の副団長殿に吹っ飛ばされたからね、俺は。
――何の自慢大会だ。
「おいおい、幾らなんでも……。あ、でっかいイノシシにド突かれたとか?」
「リリアーナにだ。あの時はレベル差が210もあったから当然と言えば当然だがの」
「ネメシスぅ!?」
勝手に人の過去暴露してんじゃねぇよ!?恥ずかしいわ!なんか周囲の俺を見る目が憐れみを含めててすっげー痛いんだけど!
「ともかく、続きをお願いします」
ルークもあえて無視するなよ!あえて触れないで上げてるの!?それが優しさなの!?
「そ、それじゃあお話ししますね……」
若干引き気味のユイが、話を続けてくれた――。
俺に弁明の時間は無いんですか?
†
王都アルテア〈天上三ツ星亭〉
「で、意気揚々と狩りに行こうとした途端喧嘩に巻き込まれてとんぼ返りしたと」
「そゆこと。相手がレベル0だったのが幸いネ」
事の巻末を聞いたダルシャンに相槌を入れるように、腹部と口を抑えながらレイレイが同意する。
あの後、何とかレイレイを病院へと運ぼうとした2人だったが、肝心の施設が分からず右往左往していた所をレストランのオーナーに呼び止められ、彼の店へと連れて行った。
幸い彼女らからして格上だったレイレイはあんな攻撃を受けていたにもかかわらず、微量のHP減少だけで済んだ。
「「本当いごめんなさい。コイツが悪いんです」」
「って、何私のせいにしてるの!?そっちが喧嘩を売ってきたからでしょ!?」
「だからってテストとか言って攻撃してきたのが原因じゃない!!」
「待て待て待て待て!ここで暴れちゃ困るよ!」
お互いに責任を擦り付け合い、口論に発展。
このままでは武器を取り出す事態に発展しかねないとダルシャンが止めに入る。
「2人とも本当に仲悪すぎ」
必死に取り押さえられる2人に、レイレイはユイとマイを交互に見て考え込む。
そしてぽん、と手を叩いて思いついたように言い出した。
「じゃあ、私が2人の師匠になるヨー」
「「「「「「「「え?」」」」」」」」
その言葉に、3人を含めた店内にいた全員が呆気にとられた。
全員が思わず我を忘れて、呆然と立ち尽くしていると、やがて我に返ったように反論の嵐が飛んできた。
「ちょ、ちょっと待ってください!何勝手に決めてるんですか!?」
「え?だってそこまで喧嘩するなら、誰かが面倒見たほうが良いデショ?」
「それでどうしてあなたが私達の師匠になるんですかって聞いてるんですけど!?」
「まさか私達よりも強いとでも?ここで私達と戦うつもりですか?」
「へー。私を殴り飛ばした責任は取ってくれないんだー?」
「「うぐぅ!?」」
その一言に2人は言葉を詰まらせた。
そして便乗するようにダルシャンが挙手する。
「あー、戦うのは止めといたほうが良い。2対1でも一瞬でお前らが解かされるぞ」
「そういうことダヨー。あ、デスペナ覚悟で挑むっていうなら相手になってもイイヨー」
レイレイが若干敵意を向けたその一言に2人は閉口し……肩を落としながらもレイレイの弟子になる事を承諾した。
「あ、でもレイレイさんってリアルは忙しいんだろ?師匠って言ったってつきっきりって訳にもいかないし?」
「あー、確かに。ちょっと待ってて」
ダルシャンの指摘にレイレイは思い出したように返す。
そして何かを思いついたのか、メモ用紙に何かを書き記していく。
「じゃあこれにトレーニング内容を書いておくからネ。今日は初戦闘に付き合ってあげるヨー」
「はぁ……」
「宜しくお願いします」
†
それから数時間、レイレイ付き添いの〈イースター平原〉での狩りは続いた。
「ふぅ……ふぅ……」
「ぜー……ぜー……」
「うーん、なんか妙ネ。妙」
内容を強いて言えば、狩りの成果はあまり順調とはいえなかった。
「どうして2人とも、図ったみたいに穴が開いてるの?」
「「穴?」」
そう言われて、2人は自分の周りを見て、そこにレイレイが訂正するように切り出す。
「違う違う、戦い方ダヨ。ほら、2人ともどこか完全にフリー……隙だらけなところがあるの」
ユイもマイも、これまでの戦闘で武器の扱い方、戦闘における身体の動かし方は大分慣れてきた。
しかしそれでも、レイレイのサポートが無ければ【リトルゴブリン】や【パシラビット】などのような初心者モンスターでも付け入る隙が見分けられるような大きな隙が目立ってきている傾向にある。
「まるでユイちゃんは右半身、マイちゃんは左半身だけで戦ってるみたいダネ」
「人を人体模型みたいに言わないでくださいよ、気持ち悪い」
「それに私達、利き手逆ですよ」
「ごめんネー。あ、私はもうそろそろ時間だから、ログアウトするヨ。後はメモ通りダルシャンのお店頑張ってネー」」
「あ、ちょっと!」
軽く謝罪したのち、2人の制止も聞かずログアウトしていった。
それから残された2人はメモに従いジョブクエストをこなしつつ、その日は終了。翌朝は〈天上三ツ星亭〉で掃除のお手伝い。そして開店前に初心者狩り場でレベ上げを繰り返す。
しかし、それでも戦闘効率が向上することは無い。お互い独りで戦っている2人は1対1でもそう容易い戦闘ではなかった。
レイレイの指摘したように2人の隙が大きく、モンスターにそこを突かれる点が多かった。
モンスターを狩って得た金でポーションを買っておけとのレイレイのアドバイスで、戦闘後の回復には問題は無い。
――最も、調子に乗りすぎて初心者モンスターが隠れてからの奇襲でデスペナになってしまったのもあったが。
そうしていくうちにレベルも20にまで達することとなった。
†
王都アルテア〈天上三ツ星〉
そんなルーティンを繰り返していって10日後。
掃除をしているユイが、しびれを切らしたように声を荒げる。
「もう、いつまで続けるつもりなのよ!」
「ちょっと、ここ最近そればっか言ってない?」
毎日毎日、3倍加速の時間の中とは言え、ルーティンを繰り返していったユイには我慢の限界を迎えていた。
彼女がこの〈Infinite Dendrogram〉に入ったのは、マイのいない世界で自由を謳歌する為だった。
それなのに今まさにレイレイに勝手に弟子にされ、一番嫌いな相手と一緒にこの10日間を過ごしている。幼い少女にとって我慢の限界はとっくに超えていた。
「レイレイさんの指示もあるんだし、ちゃんと守りなよ」
「大人のいう通りにしてれば良いなんて、そんなんだから頭が固いって言われてんのよ!」
「誰の頭が石頭よ!そっちこそ我儘過ぎなんじゃないの!?」
「こっちはあなたと毎日毎日顔を合わせてるのに我慢してらんないのよ!」
「リアルでも毎日毎日学校で顔を合わせてるじゃない!それとこれを一緒にするなんて馬鹿げてるでしょ!」
「うるさい!」
口論からユイがマイを突き飛ばす。
戦闘中でなかったので、リアルと大差無い力で突き飛ばされ、マイが転ぶ程度のものだった。
「もうこんなところにいて何日になるの!?なんの意味も無いことを毎日毎日やらされて、見たくも無い顔も見てばっかで、ウンザリしてるんだよ!!こっちはあなたの顔を見たくないからって思いで始めたのに!これじゃリアルと何も変わらないじゃない!!」
「おいおい、落ち着けって。まだ10日だろ?リアルじゃ3日ちょっとじゃないか」
「3日だろうと4日だろうと、見たくもない人の顔を毎日見せられてるんですよ!もうほんと、このまま出てって――」
止まらぬユイの怒声が突然消えた。直後に轟音が轟く。
「……我慢できないのは、こっちの台詞だよ」
その轟音の正体は、マイによるものだった。
起き上がった直後に〈エンブリオ〉を実体化させ、渾身のスイングでユイを殴り飛ばした。
お陰でユイのHPは8割方消し飛んだ。
「ダルシャンさん、今ここでこの子を潰したらどうなりますか?」
「お、おい!いくら〈マスター〉同士の殺し合いが犯罪にならないからって、なにも俺の店で――」
ダルシャンとしては、自分の店で本気の殺し合いに発展するのは勘弁してほしかったのだろう。
しかし、発する言葉を誤った。
勿論2人はアドバイスの際に“監獄”の事も聞いている。
今の台詞から、2人は〈マスター〉同士のPKに関しては犯罪にならないということを理解してしまったのだ。
「ああそう……。じゃあ、こっちも、殴られっぱなしにならなくても良いってことだよねぇ!!」
次の瞬間、今度はマイの小さな体躯が吹き飛び、轟音が再び轟く。
反撃した相手は先程吹き飛ばされたユイ。まるでマイがユイにした事を焼きなおしたような反撃を与えた。
そして同じくマイのHPも8割消し飛んだ。
「……!」
「もういい加減決着着けようか?うだうだうだうだ、一緒にいるのも嫌でしょ?」
「……上等じゃない。〈マスター〉相手に攻撃しても大丈夫なら、遠慮しなくて済むからね……!」
ハンマーを向けたユイに、マイも斧を現出させて構える。
【壊屋】のSTRで店内で暴れたらダルシャンとしたらたまったもんじゃない。
しかしそんな話、今の2人は聞く耳を持たないし、考えも至らない。
あるのはただ一つ、目の前の少女をPKすることのみ。
握り手が握力で圧し折れんばかりに持ち手に力を籠め、じりじりと狙いを定める。
「「うりゃああああああああああああああ!!!!!」」
お互いの武器を相手に向け振りぬき――
「はーい、ストップダヨー」
その一撃は、再びの乱入者の手で受け止められた。
まるであの時の再現のようだが、あの時とは決定的に違う点があった。
その一つは攻撃。あの時はレイレイの腹を直撃してしまったが、今度は彼女が2人の攻撃を受け止めていた。
「レイレイさん!?」
「何のつもりですか!離して!」
「離して?」
そしてもう一つは、レイレイの表情。
普段のフレンドリーな表情は身を潜め、獲物を射抜くような冷徹な目。
「私がこの手を離したら、また喧嘩しちゃうでしょ?」
「「――!!」」
その目に一気に怖気づいて腰が抜ける。
そうして骨の髄まで思い知る。
――この人は、自分よりずっと先のステージにいる人間だということを。
「さて、とりあえずやる気も無くなったみたいだから、そこに正座ネー」
口調や表情は戻っても、そのオーラだけは抜かずに2人に切り出す。
「とりあえず原因は
「は、はい……」
「お互い謝りっこダヨ。ほら、ごめんなさい」
「「……」」
レイレイに促されるが、2人の間の空気は険悪なまま沈黙していた。
お互いが嫌いな相手だからか、中々謝罪の言葉が出てこない。
「……こんな所に押し込めて、何時間も嫌な奴の顔を見っぱなしで!もううんざりなのよこっちは!」
怒りをまき散らし、ずかずかとマイの隣から店のドアに歩くユイ。
「どこに行くの?」
「どこに行こうが自由でしょ。こんなところでずっといるより、もっと素敵なところへね」
ドアノブを握り潰さんばかりの力でドアを開け、
「ありがとうございました、さようなら。永遠にね!」
思いっきり力を込めてドアを閉じる。その衝撃で棚に掛けられた食器が落ちそうなほど揺れ、あわや落下してしまうところだった。
「……この2人の仲の悪さ、筋金入りかも……」
ユイを見送りながらも、がっくりと項垂れるレイレイだった。
〈K&R〉の部隊として、どっちを出す?
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『thunder storm』
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『ラピットファイア』