悲しませるのが嫌なので、防御力に極振りしたいと思います。   作:日名森青戸

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壊屋少女と師匠と弟子。

 

2匹に一撃を叩き込んだ後、2人はそれぞれ白猿と黒猿へと歩み寄る。

 

「ゲフッ……ま、まさかこのような童にやられる、とはな……」

 

「うわ、まだ動けるの……?」

 

血反吐を吐きながらも、見上げる形で尋ねる。

まだ口を利けるウキョウにユイは若干引いていた。

もしこの状態でも戦えるというのなら、ユイの、2人の勝ち目は完全に消え失せるということを意味していた。

だが、ウキョウは静かに首を横に振った。

 

「抜か、すな……首の骨がズレて、もう長くは無い……」

 

「……そっか」

 

「のう……一つ、聞かせて、くれぬか……?」

 

ウキョウは一言、途切れ途切れの掠れ声で疑問を投げかけた。

 

「あの時……あの時、なぜ、無言で攻撃を……?」

 

最後の1撃、それは2人とも無言で、ぴったりのタイミングで叩き込んだ。

あれだけ口論を繰り返し、仲違いをしていたのに。まるでお互いが噛み合ったような連携。

即席なんてレベルを到底超越したものだった。

 

「あ、えっと……なんというか……」

 

その質問にユイは一瞬どう答えようか言い淀み、

 

「何でかわからないけど……」

 

やがて、答えを口にする。

 

「アイツなら絶対やってくれるって思っただけなんだ。なんとなく」

 

答えにならない答えを。

その答えにウキョウは口をあんぐり開けて唖然としたが、暫くしてそれが乾いた笑い声に変わっていった。

 

「カ、ハハ……なんだそれは……?」

 

ウキョウのリアクションにユイも「あれ?変な事言った?」と困惑する。

 

「……のう、いっぺん、あの黒い童と話を、してみたらどうだ…?」

 

「え?」

 

「案外、話せば…馬が合う仲間と、思うがな…」

 

「だっ、誰が!!」

 

思わず反論するユイを無視して、正面――サキョウが跳ばされたであろう直線状を見る。

 

「……兄者よ。長い間、本当に…ありがとう……」

 

それは、感謝だった。

自分の独断だったとはいえ、それを拒絶することなく受け入れ、兄弟として認めてくれた。

ウキョウにとってはそれは感謝してもしきれないといっても過言では無かった。

 

「こん、な……こんな、口数の減ら、ぬ、猿公(エテこう)の戯れに……付き合ってくれて……、ありがとう……」

 

兄であるサキョウへの、自分の我儘に親身に付き添ってくれたことへの感謝を告げた瞬間、ウキョウは事切れ、光の塵になって天へと昇っていく。

 

【〈UBM〉【猿門白鬼ウキョウ】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【ユイ・フィール】がMVPに選出されました】

【【ユイ・フィール】にMVP特典【猿門白衣ウキョウ】を寄与します】

 

機械的なアナウンスが聞こえたが、ユイはそれでも見続けていた。

白と黒、2つの光の塵が風に流れながら天へと昇っていく様を。

 

 

 

 

 

「……倒したん、だよね?」

 

重い足取りでサキョウの元へ近づくマイ。

サキョウが直撃したことで木は圧し折れ、荒い断面を曝し、ものの見事に倒れていた。

その木に背を預けるように、だらりと手足を伸ばしているのは動かないサキョウ。

 

「……何故だ」

 

「ッ!?」

 

マイが近づいた途端、サキョウが語りかけてきた。

思わず武器を構えて遠ざかる。

 

「……安心しろ、骨を砕かれ、臓を潰されては、もう長くない……」

 

サキョウの言葉に少しは安堵したが、それでも武器は構えたままだ。

不用意に近付けば不意討ちを食らうかもしれない。

警戒するマイを諭すようにサキョウが言い放つ。

 

「……案ずるな。もう襲っても……無意味だ」

 

「そうなんだ……」

 

〈マスター〉は殺されても3日後にはこの世界に戻ってくることをサキョウは理解していた。

事実、自分たちの故郷の辺境で怖れられていた猪型の〈UBM〉をある〈超級〉が、形は相打ちという判定勝ちで撃破しているのを耳にしていた。

 

「……一つ、いいか?」

 

マイは「良く喋るなぁ」と思っていた所を、サキョウの問いかけで我に返る。

 

「……なぜ、あれだけの連携を?」

 

「……とても、即席と…思えなかったからな」

 

サキョウの疑問は、ウキョウのそれと同じものだった。

あれだけの仲の悪さを見せつけられていた。自分でも苛立ちを募らせるほどだった。

それがどうだ?結果は最後の最後で頭角を現した連携で自分達を倒してしまったのだ。

 

「あ、えっと……なんというか……」

 

その質問にマイは一瞬どう答えようか言い淀み、

 

「何でかわからないけど……」

 

やがて、答えを口にする。

 

「アイツなら乗ってくれるって思っただけだよ。なんとなく」

 

答えにならない答えを。

その返答にサキョウは一瞬だけ目を見開いたが、やがて納得したように溜息を吐く。

 

「……なるほどな」

 

「……?あの……」

 

「……おい、あの白い娘と…面と向き合って話をしてみろ」

 

「白い……?ユイと?なんであんなのと話をしなきゃいけないの?」

 

「……案外、お主の半身かもしれぬぞ」

 

「はん……?」

 

「……お前が足りないと感じていたもの、を埋めてくれる存在ということだ……我と同じように……」

 

「……!」

 

サキョウの言葉は、マイには自分の事を見透かされたかのような物言いだった。

自分には父親が欠けていた。それがマイにとって疑問に残っていたのだ。

――なんで自分に父親がいないのか?

――自分の父親がどんな人なのか、答えられなかった。

だからこそ、父親のいるユイ見て、嫉妬が沸き上がったのかもしれない。

同じ理由で、母子家庭のマイを父子家庭のユイが嫉妬していたかのように。

 

「……ウキョウよ」

 

そしてサキョウは最期にウキョウが叩きつけられたであろう場所を見る。

彼は産まれた時から独りだった。

家族も、友人も、長も、彼を見ようとしなかった。

古くからの仕来りを守らなかった彼を異物とみなし、差別していた。

〈UBM〉化し、里の者を皆殺した後に出会ったウキョウだけが、自分を受け入れてくれた。

似た境遇で出会ったサキョウも、同じように惹かれて会っていったのかもしれない、と。

 

「……本当に、ありがとう………」

 

それは、感謝だった。

たった独りだった自分に寄り添い、兄弟として受け入れ、支えてくれた。

サキョウにとってはそれは感謝してもしきれないといっても過言では無かった。

 

「……こんな、こんな馬鹿な猿公を兄と呼んでくれて、本当にありがとう……!」

 

もう彼にとっては一生分の感情を捻り出し、綴ったのだろう。

その言葉には、今まで自分を兄として慕い、付いて着てくれた感謝。自分の不甲斐無さ故に敗北してしまった後悔。弟を護れなかった憤り――様々な感情が込められていた。

サキョウの噎び泣きがやがて消え、黒い光の塵となって天へと昇っていく。

 

【〈UBM〉【猿門黒鬼サキョウ】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【マイ・ルナー】がMVPに選出されました】

【【マイ・ルナー】にMVP特典【猿門黒衣サキョウ】を寄与します】

 

機械的なアナウンスが聞こえたが、マイはそれでも見続けていた。

白と黒、2つの光の塵が風に流れながら天へと昇っていく様を。

 

「……ねぇ」

 

やがて、ユイが訊ねてきた。

普段なら声をかけられただけでも不機嫌だったが、不思議と今はそんな感情は出てこない。

 

「これ、本当にゲームなの?」

 

「……さぁね」

 

答える気にもならなかった。

いや、そもそもこの質問は、小学生のユイとマイには難しすぎたのかもしれない。

2人ができるのは、風に消えた2つの光を、ただ黙祷するかのように見つめるだけだった。

 

 

 

 

2人による〈UBM〉討伐は完遂された。戦闘中は他の〈マスター〉による介入も無く、2対2の攻防を制した2人が勝利を収めた。

しかし、2人――特にユイはあることを失念していた。

ユイが出会ったあの〈マスター〉の他にも、あの場所に別の〈マスター〉が存在しているという可能性。

自分が〈UBM〉がいるという情報を知らなかったために、〈UBM〉の強さが個人ではどうにもならないレベルだという情報を知らなかった為に、他の〈マスター〉の存在を忘れていたのだ。

だが、結果的に横槍は入らなかった。

いや違う。横槍を入れられなかったのだ。

 

「おぉ~、やっと決着したみたいネ」

 

チャイナドレスの女性、レイレイが上っていく光を見て決着を悟っていた。

彼女の周りには大量のリルがばら撒かれていて、それが戦闘――と呼べない一方的なワンパンプレイ――の跡だというのを語っていた。

ウキョウとサキョウが、ユイとマイに倒される前に潰していた〈マスター〉と、ユイが出会った中年男の〈マスター〉は接点が無かった。

無理矢理に接点があるかと言えば、獲物と狩人。

 

「けどまあ、《ハンターズ・キル》が出しゃばってくるなんてネ」

 

レイレイが2人に〈UBM〉を任せた後、周囲を探っていると案の定〈マスター〉の一団を発見。

聞き耳を立てていると案の定横取りを考えていたので、先手を打って彼女の〈エンブリオ〉のスキル《フォールン・エンジェル》によって状態異常耐性を削り落とし(2匹と2人に何の変化も見られなかったのは、見守っている間にどちらも状態異常付与、属性付属スキルを持っていないのを確認し、問題ないと判断した為。なお、念のため耐性は下限0に調節しておいた)、基本戦術で手早く全滅させていった。

 

「流石に我ながら無茶かもって思ったけど、フィガロやシュウも下級職1つ目の時に倒してたんだし、結果オーライダヨ~」

 

あっけらかんと語っているが、比較対象が度を越している。

完全ソロ専の脳筋の決闘王者と芸術以外オールラウンダーの元天災児と彼女らでは色んな意味で方々からツッコミを入れられるだろう。

一人ケタケタ笑っていたレイレイだったが、やがてぴたりと笑いを止め、溜息を吐いた。

 

「……自分の想いを伝えるって、結構難しいんだね」

 

思えば、彼女らと会ってからは若干そのことを思っていた。

世界的なロック歌手となったとはいえ、言葉の隔たりから自分の思いを正しく伝えられないという悩みは<Infinite Dendrogram>の言語翻訳によってあっさり叶ってしまった。

だが、仲直りを企てて2人の師匠になったのに、それが逆に仲違いに拍車をかけてしまった。

結果的に〈UBM〉の介入のおかげで多少は鎮圧したものの、もしその介入が無くユイとマイが合流してしまった場合、この〈ウェズ海道〉でのPvP(殺し合い)に発展していっただろう。

 

「私もまだまだね」

 

やれやれと首を横に振る。

思いの伝え方は何も歌だけじゃない。

手紙でも、詩でも、手話でも、思いの伝え方は無数にある。

彼女はその中で自分が最も思いを伝えやすいのが歌だということだ。

次に彼女らに会ったら何をしようか。そんなことを考えながら、〈ウェズ海道〉の公道から満身創痍の状態で歩いてくる2人の少女――ユイとマイに手を振った。

 

「終わらせたみたいだね」

 

「「終わらせました、師匠」」

 




(・大・)<次でラストだよ!正真正銘ラストだよ!

(・大・)<そして最近になってSAOにハマってて、プリコネとSAOのコラボなんて計画やヴァンガードアニメ10周年ものとかも書こうかって無謀な策を思案しているよ!

〈K&R〉の部隊として、どっちを出す?

  • 『thunder storm』
  • 『ラピットファイア』
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