悲しませるのが嫌なので、防御力に極振りしたいと思います。   作:日名森青戸

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(・大・)<今回めっちゃ長くなってしまいました。



極振り防御と純竜戦。

 

 

闘技場でのランカー達との模擬戦は、ルーキーであるレイやメイプル、サリーにとって大きくプラスするものとなった。

蘇生系、防御系アイテムを解禁というハンデを与えられているというのに早々に勝てないというのは流石実力者といった所。

だが、戦績と戦闘技術の向上は比例しない。フェイントへの対応やスキルの応用なども駆使して、彼らはランカーたちに食い下がるところも良く見られた。

サリーは最近、資材調達のクエストを受けて資金を稼ぐ傍ら、以前【亜竜蜊蛄の甲殻】をイズに見せてもらった所、「回避系の防具なら作れる」と返答を貰ったのでその素材調達にギデオンの西、旧ブリディス伯爵領に赴く日が多くなった。

しかし、ヒドラのスキルは未だ解放されておらず、今も30%を上回った所。

スキルも分からない上に、既存スキルが発動するかどうか不安だったメイプルは、しばらくは錬金術による復興用の資材の錬成による納品クエストと、条件を達成したことで解禁された【毒術師】のジョブスキルを上げるために《毒物錬成》による害虫駆除用の毒の錬成にいそしんでいた。

今は《DDC:アルター支部》の元で錬金術の、時折受けるギルドクエストで【城塞盾士】のジョブレベルを上げつつアイテムの錬成を続けていた――。

 

 

 

決闘都市ギデオン《DDC:アルター支部》【毒術師(ポイズンマンサー)】メイプル・アーキマン。

 

 

「王都に行こう!」

 

いきなりやって来てそう切り出したのはイオちゃんだった。

 

「どうした?藪から棒に」

 

「いやさ、この前のクエストで【墓標迷宮探査許可証】ってのを手に入れたんだ。それで霞とふじのんと一緒に地下5階まで降りようとしたんだけど……ほら、あそこってアンデッド系ばっかでしょ?壁役の1人でも欲しいかなって」

 

ばしっと見せつけたのは1枚の紙。その紙の上側には〈墓標迷宮探査許可証〉という文字が書かれていた。

要するに、私にもその〈墓標迷宮〉探索のパーティに入ってくれないかという誘いだった。

あの場所のアンデッドは脆く、物理攻撃の効かないスピリット系の対策さえしていれば5階程度なら行けると思ったのかもしれない。

確かに壁役1人がいれば回復呪文を使えなくても、攻撃役の負担も減る。私もジョブクエストなどでポーションを作っているし、出発前に幾つかポーションを用意しておけば攻略もそれだけ容易になるかもしれない。

けど、問題が一つ。

 

「私、その許可証持ってないけど?」

 

「あー、そっか。じゃあ売ってるお店探してからにする?」

 

持ってないものは仕方ないから、まずは回復用ポーションの生産がてらそのお店を探してみよう。

 

「め、めいぷる……」

 

――と、思っていたら今度はサリーが入店してきた。

今にも死にそうなほどに顔を青くして。

 

「さ、サリー?どしたの?」

 

「が、ガチャでこれ……引いちゃった……」

 

手にしていた物を見せられて、私は納得した。

サリーが持っていたのもイオと同じものだったからだ。

というか、もうガチャ止めなよ……。

 

「そこに未知があるから?」

 

「いっぺんシバき倒したほうが反省するんじゃねーの?」

 

「とりあえず反省の為にイオちゃんたちに付き合ったら?」

 

「リアクションが冷たすぎる!!」

 

仕方ないよ。半分自業自得だし。こんな調子じゃ将来が心配だよ。色んな意味で。

 

「あー、でも私もその〈墓標迷宮〉には興味あるかな。王都に行って探してみるよ」

 

「これあげようか?」

 

「それは責任もって自分で使いなさい」

 

 

 

 

その後、レイさんとマリーさん、ルークとも合流した。

なんでもアンデッドに有効な【聖騎士】のレイさんもふじのんから声をかけていたみたい。

3人とも【許可証】を持っていて、レイさんが前に買ったお店を紹介してくれると言ってくれた。

お金のほうは報奨とクエストの仕事でたっぷりある。多分サリーは私の所持金の半分くらいしかないだろうね。これに懲りてガチャをやる機会を減らせばいいけど。

因みに王都まではルークのオードリーと霞さんの召喚モンスターのバルルン、レイさんはシルバーに乗って一直線でした。

 

「お。大所帯でどこ行くの?」

 

【許可証】の購入後に私達はミィさんと炎羅さん、ミザリーさんとばったり会った。

 

「〈墓標迷宮〉に行くつもりなんだ。お前らはどこに行くんだ?」

 

「私達は〈旧レーヴ果樹園〉よ。何か昆虫モンスターの生息地が急速に入り口付近にまで近づいたから、調査ついでに間引いてほしいって」

 

「状態異常持ちも相当いるので、私も参加します」

 

ミザリーさんも伴えば回復面でも万全。後衛2人とパーティとしては心許ないけど、ミィさんや炎羅の火力なら、大抵のモンスターは近付く前に焼かれるのが関の山だ。

 

「……よし。このクエストは私とレイ、メイプル、それと……そこの少年と共に行く。悪いがミザリーは彼女らと共に〈墓標迷宮〉に行ってくれ」

 

突然切り出したミィさんに思わず彼女のほうへ向いてしまった。

 

「解りました。私も【許可証】は持っていますから、そちらに向かいますね」

 

ミザリーさんは余り気に留めることも無くミィさんの話を承諾してくれた。思い切りが良いのか何なのか。

 

「ほらほら、とっとと行くわよ」

 

「うぐぇ」

 

炎羅さんがずるずると私の襟首を掴んでずるずると引っ張っていく。

 

「ミ、ミザリーさぁ~ん、サリーたちに伝えといてくださぁぁ~~い!」

 

ずるずると引きずられて、遠ざかっていくミザリーさんに要点だけ伝えて、私とレイさん、そして同伴することとなったルークと共に〈旧レ―ヴ果樹園〉へと引きずられていった。

 

 

 

 

アルター王国〈旧レ―ヴ果樹園〉【城塞盾士(ランパート・シールダー)】メイプル・アーキマン。

 

 

セーブポイントでジョブを【城塞盾士】にして数分。

すっかりすたびれた果樹園に到着した。

果樹園……というにはさびれた場所の前に到着した。

格子状の門はツタや植物が絡みつき、石造りの柱や壁にはヒビが入っていて、隙間からはコケが生じている。何年も手入れされていない遊歩道はすっかり獣道同然。最早ここは虫と植物の無法地帯だ。

シュウさん曰く、昔なんやかんやあって遺棄させられた自然ダンジョンとのこと、とレイさんが言っていた。

 

「それにしても、あんなことがあったというのにもう間引きするのか?」

 

「あんなこと?」

 

「ネメシスが生まれた時に、リリアーナと兄貴があらかた潰してったんだ。兄貴が倒したのだけでも100匹以上はいたと思う」

 

流石近衛騎士団副団長と【破壊王(キング・オブ・デストロイ)】。ここらじゃ敵無しだろうね。

にしても、何でこんな場所に来たんだろ?やっぱりクエストとか?

 

「とりあえず、クソ白衣(フランクリン)との因縁の始まりとだけ伝えとくよ」

 

なんか遠い眼をしてる……。とりあえず深く突っ込まずに放っておこう。

閑話休題。

 

 

それから私達は奥へ行くごとに湧いて出てくる昆虫型モンスターを狩り続けていく。

前衛攻撃役のレイさん、壁役の私、中衛で魅了やコートに擬態したリズというミスリルアームズスライムを操るルーク、後衛でモンスターのみを器用に焼き尽くすミィさんと炎羅さん。

回復役が居なくても私の作ったポーションをみんなに分けてあるから、回復の時には私とレイさんのどちらかが前に出て攻撃を凌ぎつつ、もう片方がポーションで回復するという行動を起こせば問題は無い。

あれ?案外このメンバーバランス良い?

 

「てっきりミィが何もかも焼き払うのかと思ってたけど、案外まともに退治してるんだな」

 

あ、それは私も思ってた。

 

「失敬だな。私も【魔術師(メイジ)】には用があったんだ。そもそも、そんな火力で討伐するとここのモンスターも絶滅しかねないからな。あくまで調査。身を引くモンスターまで借る必要はない」

 

確かに手に負えないと判断して撤退してくモンスターには一切の攻撃を仕掛けていない。そこまで考えてるとは。

 

「ミィは元々【紅蓮術師(パイロマンサー)】も取るつもりだったからね」

 

そういえば、そんなこともあったっけ。

まだ10日くらいだっていうのに懐かしく感じてくる。

 

「そもそも炎羅があの姿になったらそれこそ〈ノズ森林〉の二の舞だぞ?」

 

……確かに。隣にいるレイさんも簡単に想像できてしまったらしく、軽く引いている。

 

「それで、僕らを連れてきた理由は何ですか?」

 

ここで、意見を唱えずに中衛の仕事をしていたルークが訊ねてきた。

 

「そうだった。お前達メイデンとアポストルに聞きたい事があったって炎羅から聞いてな」

 

「メイデンって、バビは純粋なガーディアンだよ?」

 

「あれ、そうだったの?ごめんごめん。人間に近いからてっきりメイデンかと思って」

 

『そう易々とメイデンの〈マスター〉が増えるのは困る。私の希少価値がなくなってしまうではないか』

 

メイデンと間違われたバビは改めて自分がルークの〈エンブリオ〉でTYPE:ガードナーの上位、ガーディアンということをビシッ、と効果音が付きそうな勢いで自己紹介する。

私もバビの事はメイデンかと思っていた。ほとんど人間と変わりないし、紋章があったら〈マスター〉と間違えそうだ。

 

「まあいいか。パーティ的には男女比1:7よりも3:4のほうが肩身の狭い思いをする必要も無いし」

 

「それはどうも」

 

ああ、確かにハーレム状態になっちゃうね。

 

「まあともかく。レイにネメシス、あなた達2人に聞きたい事があるの」

 

「聞きたい事?」

 

「あなた、あの赤いパネルを見たことある?」

 

炎羅さんの、これでもかといわんばかりの単刀直入な質問の直後、レイさんが相手にしていたヤツデ型モンスターが、ミィさんの《ファイアボール》で炎に包まれ、瞬く間に灰の代わりに光の粒子になって消滅した。

今の質問は多分――ネメシスに向けてのことだと思う。

 

『……お主、何故それを?』

 

「私達もそのウィンドウを見たからよ。そうね……大体こっちで3、4年くらい前かしら?第3から第4へ上がる時にね」

 

私達――特にネメシスは大剣形態のままとはいえ――、炎羅さんの思い出語りを聞き入るように耳を立てる。

おっと、ウツボカズラ型モンスターがやってきたから話の邪魔にならないようしっかりガードしておかないと。

 

「それで、YESって選択した後は?」

 

「いやー、大変だったわ。第5に上がるまでにこっち時間で1年半もかかっちゃって。遅れを取り戻したくて必死に頑張ったわー。王国に来る少し前にやっと第6になったくらいよ」

 

『い、いちねんはん……!?』

 

「あら?その口はYESを押しちゃった系?」

 

「え、ええ。ガルドランダの時に」

 

「それって、蓄積経験値ってのがイエローだった?」

 

「いや。グリーンだった気がするけど……」

 

レイさんが思い出しながら呟く。

そういえば、私の時にもあったから、聞いておくべきかもしれない。

 

『俺の時にもあったぞ』

 

「なんですって?」『何だと?』

 

私の代わりに発したヒドラの言葉に、ネメシスと炎羅さんが同時に食い入った。ネメシスなんて大剣状態なのにレイさんを引っ張って行くかのようにぐい、と方向転換するほどにだ。

 

『俺もグリーンだったが、その時はメイプルが拒否ってな』

 

「メイデンだけじゃなかったのか」

 

「お二人の話を聞くに、どうやら炎羅さんの言うウィンドウは、危機的状況にありつつ、その〈マスター〉の〈エンブリオ〉がアポストルかメイデンのどちらかであるということになりますね」

 

「どういうことー?」

 

「それは分からないよ。レアカテゴリ、複合型、人型……現状は情報が少なすぎる。どうしてこのカテゴリを生んだのか、運営の意図が掴めません」

 

ルークは少し思考にふけっていたけど、これ以上は埒が明かないと改めてクエスト相手のモンスターに集中する。

バビも【魅了】デバフを中心に、昆虫モンスターの同士討ちを誘って殲滅を促していく。

 

 

 

 

 

「妙だな……」

 

「ミィ、どうした?」

 

「ここの平均レベルって、どれくらいだ?」

 

「レベル?確か25くらいって兄貴が呟いていたけど……あれ?」

 

数分後、狩りを続けていたミィがやがて疑問を投げかけ、レイさんが答えた瞬間に何か疑問を抱いたように呟いた。

 

「たしかここって、虫系しか存在しなかったよな?」

 

「え?植物系もさっきいたはずですよ?」

 

何を言ってるんだとルークが返す。

確かに私も、虫型モンスターに交じって襲ってくる植物型モンスターを対峙していたけど……?

 

『いや、そのようなモンスターはあの時には見かけていなかったぞ』

 

レイさんとネメシスが記憶を探って今までの戦闘の矛盾点に気付く。

その時だった。

 

「――茂みの向こう、何かいます!」

 

「《ファイアボール》!」

 

ルークが叫び、同時にミィさんが火球を放つ。

火球は10メートル先で何かに当たったように爆散した。普通ならここで火の粉が茂みに燃え移って大惨事、なんてことになるはずだけど、その火の粉は一瞬で消し飛ばされた。

次の瞬間、その場所の森が動いた。

 

――いや、何を言ってるんだって言いたいのは分かるけど。実際その通りにしか表現できなかった。

まるでそこで何かが切り取られて移動するかのように、木々をなぎ倒しながら這いずりながら動きだす。

 

「これは……!?」

 

「さっきのモンスター共の中に、レベル40前後の植物型も交じっていた。おそらくはあれの一部だろうな」

 

「一部って、この巨大なモンスターのですか……」

 

先のテロで見たバルドルやパンデモニウムと比べれば、大きさは大した問題ではないと思う。

しかし、50メートルはあろう巨体はプレッシャーを与えるには十分すぎる大きさだ。

鎌首をもたげるその蛇の体表には、鱗の代わりにコケやツタ、背中にあたる部分は小さい茂みや細い木まで生えている。

文字通り、森の一部を背中に貼り付けた大蛇【フォレスト・キングヴァイパー】が、薄い靄みたいなものを纏いながら私達を見下ろしていた。

 

「随分デカいな。おそらく亜竜……いや、純竜の下位辺りか?」

 

「人間のいないここでなら、経験値の虫モンスターを気付かれない程度に狩っていれば良いですからね。おそらく生息地が急に変わったのも――」

 

「アイツに元々の住処を追われたせいか」

 

レイさんも大蛇を相手取るように構え、ルークもバビも警戒を最大限にして、ミィさんもMPを【MP回復ポーション】で回復して炎羅さんも【符】を出して臨戦態勢。

私も盾となったヒドラを構えて《死毒海域を展開した瞬間、鎌首をもたげていた大蛇が一直線に突進してきた。

 

「《カウンター・アブソープション》!!」

 

亜音速級の突進をレイさんが前に出て、薄い膜のバリアで攻撃を無力化する。その隙にミィさんと炎羅さんが回り込み、炎を放つ。

 

「よし、十分効くみたいだな」

 

「こっちもアイツの攻撃は耐えられるぞ!」

 

『今度突っ込んできたら《復讐するは(ヴェンジェンス)》を叩き込んでくれるわ!』

 

ユイちゃんたちとの模擬戦で、攻撃を受けた時の衝撃には慣れたみたい。

案外私の出番無いんじゃないかも。

そう思った時、私の身体が何かに引っ張られるようにレイさんの前に出て、彼を護るように盾を構えていた。

 

「――え?」

 

直後、盾から何かを弾いた感触と甲高い金属のぶつかったような効果音を感じた。

足元を見てみると、鋭い錐のような針が落ちていた。

 

『馬鹿、何ぼさっとしてるんだよ!?』

 

「え、え?今の何!?」

 

「――来るぞ!」

 

私が現状を把握する前にヒドラとレイさんが叫ぶ。

次の瞬間、大蛇の背中から再び何かが飛んできた。

 

「レイさん、伏せて!」

 

言うや否や、弾丸のようなスピードで何かが―多分さっきの針が高速で飛んできた。

全て防ぎきった――というのは当然なく、脚の所々に掠り傷ができていた。

 

「……ぅ!?」

 

直後に私の身体がずっしりと、鉛にでもなったかのように重くなる。

ステータスを見ると、【衰弱】と【麻痺】という状態異常が表示されていた。

 

「こ、これって……!?」

 

急いで【快癒万能薬(エリクシル)】を飲んで状態異常から復帰する。

あの大蛇からだろうけど……。

 

『どうした?』

 

「うん、あの針って本当にあの蛇が出したものなのって思って……?」

 

「針……?」

 

ルークが私の言葉に眉をひそめながら大蛇を見る。

何か気付いたのかと後目に彼を見た途端、彼は右手を掲げる。

 

「《喚起(コール)、オードリー、マリリン》」

 

2匹の従属モンスターを召喚し、直後にルークはオードリーの背に乗る。

 

「オードリー、ヴァイパーの頭上へ。マリリンはヴァイパーの側面を攻撃。針の攻撃が来たら全力で防御を。バビはマリリンの援護」

 

その時、悶えるようにミィさんと炎羅さんを相手にしていた大蛇がこちらに気付いて再び突進する。

さっきより速くて、レイさんのスキルが間に合わない……!

意を決した私は思い切り足を踏ん張り、腰を低く落として《第1の首(メナスティル)》での迎撃に備える。

その意図を読み取ったレイさんと人型に戻ったネメシスは私の肩を掴んだ。

 

「ぴゃっ……!?」

 

「来るぞ!」

 

次の瞬間には大蛇の突進の衝撃が、私達3人の身体に走る。

昔アニメで見た、海を走る列車を巨大なカエルが受け止めるという話があったが、それに違わぬ衝撃に吹き飛ばされそうになる。

ひょっとして、ユイちゃんたちの攻撃ってこれ以上?

 

「ぅおご……ッ!!」

 

「た、耐えろ……ッ!!」

 

ずるずると15メートル先まで後退された。

このまま吹き飛ばされるんじゃないかと思っていたが、やがて突進の勢いが収まってくるのを感じた。

――今だッ!

 

「《第1の首は猛毒滴る竜鱗の盾(メナスティル・ヴェノム)》!!」

 

咆哮と共に毒液が放出され、大蛇を浸食する。突進の時点で減少した毒耐性は60%削った。大抵なら【猛毒】に陥っているはずだけど……。

見た目感じあまり効いていないみたい。《看破》持ってないからわからないけど、多分削ってる量はたいして問題は無いようだ。

 

『にゃろぅ……毒が全然聞いてねぇみたいなツラしてやがる』

 

「レイさん!」

 

苦虫を噛み潰したようなヒドラの声と共に、オードリーが下降して、その背からルークが声をかける。

 

「ルーク、どうした?」

 

「あのモンスターの背を見てみたのですが、植物型のモンスターが何匹か生息しているのを発見しました。さっき針も、それを飛ばすタイプのモンスターからです」

 

なるほど。さっきの針攻撃はその植物モンスターによるものだったのか。

1匹に見えていたけど、その背には何匹もの植物型モンスターが苗床にしているらしい。

 

「あれには少なくとも、状態異常兼遠距離攻撃、迎撃、バフ3種類が生息しています。道中に見た奴らと同じ奴です」

 

「オナモミのように人や動物にタネをくっつけて遠くに生息する植物のようなものか。チャンスがあれば1撃叩き込められれば勝てる見込みはあるが……」

 

何か策は無いか考えを巡らせる。

 

ミィさんの火力で焼き払う――却下。下手したら〈レ―ヴ果樹園〉そのものが〈ノズ森林〉の二の舞になる。

【魅了】によるテイム――却下。巨大ボスにはあまり通じるとは思えないし、純竜相手には効かないと断言している。

レイさんの《復讐するは我にあり(ヴェンジェンス・イズ・マイン)》を叩き込む――困難。あの動きに加えて植物モンスターの迎撃があるとなると近付くだけでも困難だ。

 

せめて、動きさえ止められれば何とかレイさんの攻撃を叩き込められそうなんだけど……。

 

『メイプル、1つ良いか?』

 

「今度は何?」

 

『確かお前、さっき麻痺毒持ってたよな?』

 

麻痺毒?

ああ、それならウツボカズラ型のモンスターが落としたのを拾ったけど……。

 

「それがどうしたの?」

 

『とりあえず解析率は70%といった所だが、読める部分を自分なりに理解してみた。で、装填するところに毒を入れた瓶を入れることは分かった』

 

「瓶っていうと……これ?」

 

取り出した毒入りの瓶にヒドラは「それだ!」と興奮したように言い放つ。

そこまで言われて、私もなんとなくあのスキルが分かった気がする。

 

「レイさん、何分か時間を稼いでください!」

 

「任せろ!」

 

私の言葉に応じたレイさんが前に出る。

あの人ももっとダメージを受けて、《復讐するは》のダメージ合計値を加算しておきたいのだろうけど、だからといって私もぼさっとしてる訳にはいかない。

毒瓶の中身を、装填してあった瓶へと移し替え――案外移し替えは楽に済むよう設計されていた――、再び盾の中に戻してガゴン、と閉じる。

瞬間、盾から白煙が噴き出す。

 

『解析100%になった!』

 

「本当!?」

 

『説明は後だ!もう一度《第1の首(メナスティル)》をあいつに叩き込め!!』

 

「OK!」

 

なんでかわからない。だけど、なぜか私の中で確信を感じた。

この一撃を叩き込んで、一気に倒せると。

 

 

 

 

「2人とも!」

 

大蛇の前へと前進したレイが、空と陸で応戦していた2人に呼び掛ける。

 

「レイさん、どうかしたんですか?」

 

「メイプルが何かするつもりだ。俺も合計値(ダメージ)を貯めてカウンターを叩き込むから、2人は援護してくれ」

 

どうやら今の突進だけでは倍激にしても足りないと感じたのだろう。

メイプルの作戦で動きが止まれば、《復讐するは我にあり》を叩き込める。幾ら相手が純竜だろうともこれを受ければ致命傷は免れない。仮に倒しきれなくてもミィの追撃で討伐できる。

それにはまずダメージ合計値を更に加算させて確実性をより高める事が必須だ。

しかしそれにはリスクもある。

ネメシスのスキルは基本、「何度でも立ち上がり、自分を傷つけた相手に応報を与える」という強敵打破のスキルを特徴としている。

半面、群れを成して襲い掛かる相手や、模擬戦で戦ったライザーのように強大な一撃を持たない相手との長期戦を苦手としているのだ。

彼らが相手にしている【フォレスト・キングヴァイパー】がただの大蛇であったのなら、【聖騎士(パラディン)】が覚える回復魔法とネメシスの補正による高HPで、長期戦に持ち込んで耐え続けていれば、純竜相手とはいえさほど苦戦する相手でもなかっただろう。

しかしその【フォレスト・キングヴァイパー】は背中に生やした植物モンスターで、一種の要塞と化している。

 

「分かりました。背中のモンスターの相手は僕たちに任せてください」

 

それでもレイの言葉を信じ、ルークがオードリーを駆り火炎放射で大蛇の背中をあぶる。

フランクリンのゲームとは異なり、燃え広がらないよう加減はしているとはいえ、背中の植物モンスターが悲鳴を上げるかのように悶えて、次々と灰になって消滅していく。

 

「んじゃ、私も行ってこようかしら」

 

炎羅も屈伸をした後、地面を少し抉るほどの脚力で駆けだす。

その先はまっすぐ【フォレスト・キングヴァイパー】を――目指さなかった。

彼女の先には【フォレスト・キングヴァイパー】突進する【三重衝角亜竜】のマリリンだ。

 

「VAMO!?」

 

「ごめんね、背中借りるよ」

 

マリリンの背に乗ってぐっと身を屈めて、脚にありったけの力を込めて、押さえから解放されたばねのように跳躍する。

綺麗な放物線を描き、着地先は【フォレスト・キングヴァイパー】の背中にすたりと着地する。

着地と同時に出迎えたのは、ウツボカズラ型、ハエトリソウ型、テッポウユリ型のモンスターが一斉に炎羅を取り囲む。

毒液、噛みつき、針飛ばし多種多様な攻撃が襲い掛かる。

 

「あら、熱烈な歓迎ね」

 

「オードリー、バビ!」

 

「KIEEEEEEE!!」

 

「《リトルフレア》!」

 

一斉攻撃を、炎羅を巻き込みながら怪鳥の吐く灼熱と淫魔の小さな火球がはじき返す。

これだけの炎、普通の〈マスター〉ならデスペナになってもおかしくないだろう。

普通なら。

 

「ハッハー!良い炎使ってるじゃない2人ともぉ!!」

 

炎羅は炎の熱量を糧に、強化されていく。当然ルークもフランクリンのゲームで炎羅の力を見ていたので、この戦術は織り込み済みだ。

植物モンスターの一斉攻撃の直後、手足のみをガーディアン形態にして、灼熱を宿した鋭利な鉤爪で茎を切り落とし、ハエトリソウの口を受け止めると同時に灼熱で焼き払う。

 

「ほらほらまだまだぁ!」

 

その後も次々と襲い来る植物を焼き払う。

まるで舞い踊るように、焼き尽くされた植物が、舞い散る火の粉が舞い踊る彼女を更に美しく引き立てる。

 

『GASHAAAAAAAA!!!!!』

 

背中の植物が焼き尽くされたことで大蛇が暴れだし、炎羅を振り払う。

そして背中からブスブスと黒煙を上げながら、ギラリと目を輝かせて正面にいる敵を見据える。

そして全身の筋肉を極限まで縮め、ばねの如く前方へと飛ぶ、先程以上の突進を繰り出した。

 

『来るぞレイ、分かっているな?』

 

「応!」

 

「『《カウンターアブソープション》!!』」

 

再びの突進に合わせて、バリアが展開される。

これは先程と同じような展開だが、そうはいかない。

 

(攻撃に対して並行に展開するんじゃなくて、こちら側を坂道のようにすこし傾けて――)

 

バリアに阻まれた体当たりはその角度から軌道を変えられ、レイの奥で既に準備を終えて構え、死毒海域を展開していたメイプルの上へと落下する。

 

『やるぞ、メイプル!』

 

「うん。一か八かだけど……」

 

『ぼさっとすんなよ!下顎に潜り込め!』

 

落下してなお標的をレイからメイプルに変え、丸呑みにしてやろうと大口を開く。

その攻撃をヒドラの指示の元回避し、下顎に潜って体当たりを防ぐ。

そう、防いだのだ。

 

「『《第1の首は猛毒滴る竜鱗の盾》!!』」

 

再び放たれる、毒液のカウンターが、鱗に覆われていない腹部へと叩き込む。

巨大な地響きと共に巨体が地面に打ち付けられる。

7人が煙の先の大蛇の容態を見やるが、直後に土煙を突き抜け、巨体が起き上がる。その顔は先程と同じく、「何かしたのか?」とでも言わんばかりだ。

ルークとミィ、炎羅が大蛇を見て迎撃を仕掛けようとした時、大蛇に変化が起きた。

巨体が痙攣を起こし、金縛りに遭ったかのように硬直し、再び地響きを上げて倒れ伏す。

 

「こ、これは……?」

 

【フォレスト・キングヴァイパー】の近くまで飛行し、オードリーから降りたルークはオードリーとマリリンと共に【フォレスト・キングヴァイパー】の様子を見る。

目は見開き、森の一部を抉り飲み込まんとした巨大な口をわずかに震わせているが、それでも今すぐ襲い掛かる様子は無い。

 

「これは……【麻痺】?」

 

「凄い……。あ、でもこれって死毒海域の影響なの?」

 

『まあな。肉体が溶けるとかより影響力に関係するから、前に残ってた分も合わさって影響が出たんだろう』

 

「と、言いますと?」

 

『要は俺の能力は毒の影響を強めて、肉体的には影響を及ぼさない。ほら、【麻痺】が消える前にとっととトドメ刺しちまえよ』

 

「っと、すまんすまん」

 

『こんなオチになってしまうとは、どうも釈然としないのう』

 

ネメシスのぼやきにレイは心底同意する。無抵抗の相手に攻撃するというのは本当に釈然としないだろうが、戦いは戦い。

せめて動けない大蛇に一言「ごめんな」と謝罪した後に《復讐するは我にあり》を叩き込み、レイ、メイプル、ルークの初の純竜との戦闘は、呆気ない最後と共に幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

アルター王国〈旧レーヴ果樹園〉【城塞盾士】メイプル・アーキマン

 

 

【フォレスト・キングヴァイパー】を討伐した後、アイテムを回収する私達。

【フォレスト・キングヴァイパー】がドロップした【純竜森蛇の宝櫃】は、ミィさんから残したほうが良いとして、オープンさせずに回収した。

で、ここからが本題。

 

「で、今のはなんだったんだ?」

 

「待ってください。今スキルを……」

 

いかにも釈然としない顔のレイさんに促され、急いでウィンドウの〈エンブリオ〉の項目を開く。

 

 

 

第2の首は幾万もの毒袋(ディオセウス・オルガーナ)

 

アームズ形態にアタッチメントが追加される。

毒液、毒が混入された液体を入れた瓶を装填することで、このスキルと《死毒海域》、必殺スキルを除いたすべてのアクティブスキルを装填した毒の種類に応じて状態異常を変化させる。

短剣は納刀時、トリガーを引くことで刀身に毒を纏わせる事が可能。盾はスキル1回、短刀は10回攻撃を当てるかスキルを使用する、納刀時にトリガーを引き続けることで効果が切れる。

パッシブスキル。

 

 

なるほど。つまりはこれに装填された【麻痺】を伴う毒液を装填したから《第1の首は猛毒滴る竜鱗の盾》が【猛毒】から【麻痺】に変わって、【フォレスト・キングヴァイパー】が倒れちゃったんだ。

病毒系状態異常の耐性を下げられていたから、【麻痺】も大ダメージを受けたということだね。

……あ。

 

「そっか、これなら毒の性能を熟知していれば、ゾンビ相手にもある程度戦えるって事だよね?」

 

「ああ。【毒術師】を選んで正解だったな」

 

ヒドラの言葉に私もうんうんと自分の事なのに頷く。

病毒系状態異常にかかり辛くなる《病毒耐性》。

パーティメンバーが有毒モンスターを討伐すると、有毒アイテムをドロップしやすくなる《毒物摘出》。

毒を生成する《毒物錬成》や、おなじみ《鑑定眼》の他にも有益なスキルがあって、これに就く前と後で印象ががらりと変わった。物騒なジョブとか言ってごめんね?

ゾンビ相手なら溶解液系に変えればどうにかなりそう。ゴーレムやスピリットは……まあ、それは後で考えておこう。

 

 

 

 

あの後、私達は王都へと一直線に帰還。

クエストを受けたミィさんが〈旧レーヴ果樹園〉での出来事を報告し、その証拠の【純竜森蛇の宝櫃】を見せてクエスト完了。

あの昆虫型モンスターの大群は、巨大な脅威が消え去った後はまた森の奥に潜むことになるかもしれないが、これからは定期的に【偵察隊(リコノイター)】に就いているティアンが偵察に行くことになるとのこと。

クエスト報酬を貰った後、私は【純竜森蛇の宝櫃】をオープンする。

 

 

【【射針百合の銃器器官】を手に入れました】

【【噛潰植物の鋭牙】を手に入れました】

【【瓶液靭蔓の複合毒液】を手に入れました】

【【純竜森蛇の蛇皮】を手に入れました】

 

 

「4つとも素材アイテムか。4つとも売って、均等分配とするか?」

 

流石純竜ボスクラス。どれもこれも見たことないアイテムばかりだ。

素材だけなら売っても構わない。レイさんもルークもミィさんの提案に同意するようにうなずく。

けど……。

 

「……あの、私はこれを貰っていいかな?賞金は3人より少なくていいから」

 

私が真っ先に手を伸ばしたのは【瓶液靭蔓の複合毒液】という、2リットルペットボトルの形をした入れ物に入った毒液。それを聞いたみんなは当然素っ頓狂な声を上げた。

確かに他のもかなり魅力的だけど、私が思う報酬は、これだと直感したからだ。

 

「そういえば、受付が不思議がっていたな」

 

「何が?」

 

「あの【フォレスト・キングヴァイパー】は、真南のレジェンダリアと王国の堺の森に生息していたって。わざわざ北上する理由が見当たらないって言ってたわ」

 

炎羅さんが気になる事を言っていたが、それを考えるのは後にしよう。

それぞれ素材をアイテムボックスに戻し、売却しに行ってくる。

私のほうは3人が帰ってくるまで、アイテムの整理や新たに手に入れた毒液を使った先述の考察などをして待っていようっと。

 

――サリーのほうはどうしてるんだろう……?

 

 





(・大・)<やっと第3形態のスキル解放。

(・大・)<今見返したら1万字はいっていた。

(・大・)<って事でモンスター紹介~。


【フォレスト・キングヴァイパー】

蛇型の純竜級モンスター。
50メートル級の巨体を持ち、背中がコケで覆われており、これが鱗の代わり。
コケは植物モンスターが生成できるほどの栄養を備えており、何種類かの植物モンスターと共生している。これにより毒への耐性も数十パーセントはある。
ステータスはHPが30万、SPが25万、MPが10万、STR、ENDが5万と純竜の名に恥じないステータス。また、日光があればHPMPSPの自動回復スキルを持っている。
必殺の突進は壁役でもない限りは一撃でデスペナ寸前にまで追い込まれる。また、背中の植物モンスターの援護でそう易々と倒れない。
弱点は背中の植物モンスターを全滅させられると突進と丸呑みしかできないこと。宝櫃を入手した場合、背中に生やしたモンスターに由来する武器屋アイテムもまとめてドロップされる。
これでも純竜の中では中の下辺り。


【ベノムネペンテス】

【フォレスト・キングヴァイパー】の取り巻きその1。
バフやデバフ、状態異常を与える毒液を操るウツボカズラ型モンスター。
下級種はそれぞれ1種類しか使えないが、上位種だと最低3種類は毒液を保持している。
どうやって毒液を変えているかは突っ込んではいけない。
ドロップするアイテムは普通はそれぞれ取り分けられてあるが、稀に数種類の毒が混ざった混合毒液が手に入る。


【バレットリリィ】

【フォレスト・キングヴァイパー】の取り巻きその2。
錐状のタネを撃つテッポウユリ型モンスター。
【衰弱】と【麻痺】の状態異常を持つタネを飛ばすので、ティアン及び〈マスター〉共々蛇蠍の如く嫌われている。
レジェンダリアではドロップ素材を使った弩弓は一線級の武器になるらしい。
〈マスター〉曰く、自然界の重機関銃。


【ヴィーナスバイター】

【フォレスト・キングヴァイパー】の取り巻きその3。
近付くものを誰彼構わず噛み砕くハエトリソウ型モンスター。
皆無同然のAGIをMPとSTRに回したようなステータス配分。
魔力を口の中に溜めて魔法を噛み砕く【魔法粉砕】というスキルを持ち、《ファイアボール》等の射出系魔法をバリバリ噛み砕いてしまう。レジェンダリアではこいつがいる廃村は、ちょっとした植物の独裁国家になっている。
上位種は【ハーレム・ヴィーナスバイター】という名称になり、複数のヴィーナスバイターで不用意に近付いた者を貪り尽くす。こんなハーレム作者は絶対に嫌です。
頭(?)の部分は非常に重要な素材で、そこを使った武器は使用者の反応速度次第では、射出される魔法を片っ端から切り刻むなんてマネもできないことじゃない。
ただし原作の【地神】がやったように生き埋めにしたり、氷漬けや呪怨系の類には全く対応できていない。茎の部分が弱点なので、そこを断たれると一撃で消滅する。



(・大・)<感想をお願いします。

(・大・)<しっかし、長かったなぁ。

〈K&R〉の部隊として、どっちを出す?

  • 『thunder storm』
  • 『ラピットファイア』
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