悲しませるのが嫌なので、防御力に極振りしたいと思います。   作:日名森青戸

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(・大・)<多分今年最後のデンドロ二次の投稿。




極振り防御とUBM。
極振り防御とUBM。みつけたい。


 

 

 

アルター王国 決闘都市ギデオン・冒険者ギルド 【城塞盾士】メイプル・アーキマン

 

 

 

「…何、だと……!?」

 

ギルド内のカフェスペースの一角のテーブルで私達の話を聞いたクロムさんが、驚愕のあまり硬直する。

 

「お、お前ら本気か……?」

 

肘を杖代わりに、何とか上体を起こしているクロムさんが大声を張り上げた原因は分かっている。私が昨日、理沙と――サリーに宥められてからの話し合いで決めたことだ。

 

「古より続く伝説の力を求めるか」

 

「……古代伝説級〈UBM〉に挑む、って事で合ってるね?うん。そのつもり」

 

「うん。そのつもり――じゃあないよ!!本格的に頭のネジがぶっ飛んじゃったんじゃないの!?」

 

クロムさんの隣で、平静を装いながらもいかにも絶句してますよ的な顔をしているジュリエットの独自の言葉を解読しながら肯定。そこにチェルシーが激しいツッコミを入れてきた。

この〈Infinite Dendorogram〉に1体しか存在しない空前絶後のボスモンスター、〈UBM(ユニーク・ボス・モンスター)〉の攻略。

挑むのはランクの中でも上から3番目、古代伝説級のUBMに、だ。

 

「メイプル、お前は5日くらい前まで下級の【盾士】だったんだ。それが古代伝説級に、サリーと一緒に挑むなんて正気の沙汰じゃないぞ?」

 

「古の力は〈超級(スペリオル)〉すらその手を煩わせる。枷を外した6人の同志とて、討ち倒すは至難」

 

「古代伝説級から倒せるのかどうかわからないレベルになってきてるのよ?あたしらも、この前のドラグメイルはシオン共々で苦戦したんだけどさ」

 

「ああ、確か鎧竜王ってのは子連れのドラゴンだよね」

 

「で、外竜王がそのシオンって人がMVPになったと」

 

現実の時間で昨日、私とサリーは大事を取ってあれからログインしなかった。

その間にギデオンはちょっとしたテロ――もとい、UBM種族間の争いが起きていたのをギデオンに到着したマリーさんから聞いたのだった。

メイル・ドラゴンのUBMがアーマード・ドラゴンの住処を奇襲し、護衛と鎧竜王の奥さんを殺したらしく、それがギデオンに場所を移して戦いに発展していった。〈従魔師〉用のモンスターも暴れさせて、9番街はかなり混乱意包まれていたから相当な戦闘だったんだろう。

最終的には……あー、曼殊沙華(まんじゅしゃげ)死音(しおん)…だっけ?その【闇姫(ダーク・プリンセス)】って人が使った奥義と自分の〈エンブリオ〉のスキルのコンボで閉じ込め、結果討伐に至ったのだ。

クロムさんはギデオンにいた〈マスター〉達と一緒にモンスターの鎮圧に勤しんでいたらしい。まあ、ティアンの人の要望もあって、「討伐」じゃなくて「鎮圧」に苦労したらしいけど。

というか、「鎧竜王(がいりゅうおう)」と「外竜王(がいりゅうおう)」って、呼び方が同じで紛らわしくない?

 

「……理由はリベンジか?」

 

クロムさんが察したような声の質問に、私は再度頷いた。

トラウマから復帰した後、私は王都に残ってくれたルークと共にギデオンへと戻り、マリーさんにあの鎧の詳細を聞いてきた。

奴が常に身に着けている鎧は伝説級〈UBM〉の特典武具【撃鉄鎧マグナムコロッサス】という。

かなり素人意見かもしれないけど、つまりは私も特典武具を最低でも1つは手に入れなければならない。

そこで目を付けたのが、マグナムコロッサスよりもランクが1つ上、〈UBM〉全体から見て中位の古代伝説級に挑むことにした。

 

「で、当てはあるの?遭遇自体稀だし」

 

「賞金首リストを見て、ピンと来たのを選んだの。ほらこれ」

 

賞金首リストを広げ私が指したのは《霊峰山亀グランディオス》。古代伝説級のモンスターで一番ピンときた相手だ。

私の狙っている〈UBM〉を見て、更にクロムさんはがっくりと項垂れる。

 

「あのなぁ……そいつの場所は解ってるのか?」

 

「はい。確か〈ノヴェスト峡谷〉です」

 

賞金首のリストにはあの場所から動いていないとのこと。

一番乗りして倒してしまえば手に入れられるかもしれない。

 

「……なぁ、変じゃねぇか?」

 

「どした?」

 

怪訝そうな顔をするクロムさんに毒液入りジュースを飲んでいたヒドラが訊ねる。

 

「あそこはもう生物が住み着くような場所じゃない筈だ。前の戦争の後に見に行ったが、丸ごと消え失せたはずだぞ?」

 

「「「消え失せたぁ!?」」」

 

今度は私とヒドラ、サリーの素っ頓狂な声がギルド内に響いた。

そんな話、私達初耳なんですけど?どんだけ広範囲な殲滅戦したんですか皇国は?全然関係ない場所じゃん。

 

「ああ。といっても、その前のグローリアで生物が住めるような環境じゃなくなったからな。あの時は本当に酷かった……。クレーミルが完全に消えちまって……。なあ、ちょっと見せてくれ」

 

「あ、ああ」

 

「どれ……なるほど。確かにノヴェストにいるみたいだな」

 

ティアンのギルド員が記録したから、多分間違いは無いと思う。

けど、クロムさんが嘘を言っているとは思えない。

 

「……多分だけど、この〈UBM〉は各地をあちこち巡っていて、観測員が見た時にはノヴェストにいたけど、今はもう別の所にいるって事じゃないかな?」

 

つまり、決まった縄張りを持っていないから、観測した場所は偶然って事?

 

「でも、手掛かりがある以上私は行ってみたいと思います」

 

「……無駄骨になるかもしれないぞ?」

 

「それでも、動かないよりはマシかもしれません」

 

「そうそう。それに、1人より2人でしょ?」

 

元々同行する予定だったサリーが椅子から立ち上がる。

そんな彼女に対して異議を唱えるかの如く、ヒドラがサリーを睨んだ。

 

「待てよ。勝手に1人減らすな」

 

「ああ、ごめんごめん。ヒドラも入れて4人ね」

 

「たった4人……正直倒せるかどうかっていうと無理だな。俺でも8人前後で挑んで、そこから乱入した4人でやっとってくらいだ」

 

「逸話級は10人単位がノルマって訳?」

 

そう考えると、私が相手にする古代伝説級は30人……いや、100人でも足りないかもしれない。

クロムさんは更に「古代伝説級は戦闘特化の〈超級〉でも手を焼くレベル」とのこと。いかに自分が無謀かを思い知らされる。

だけど……。

 

「だけど、私はこの〈UBM〉の討伐は止めませんよ」

 

「……そこまで頑固ならもう俺が何言っても無駄だな」

 

そこでついにクロムさんも折れた。

そうと決まれば早速準備しに行かなければ。道具屋へと足を運ぼうとした時、思い出したように私は声を上げた。

 

「早速二人に声をかけておくよ。ノヴェストって西側で合ってるんですよね?」

 

「ああ。西にまっすぐ行けば見つかるよ。渓谷って呼べる代物じゃなくなってるがな」

 

「……あれ?さっき5人って言わなかった?」

 

チェルシーさんがようやくそこに気が付いた。私、サリーを含めて後3人。

今言った人数で、狩りにヒドラをカウントに入れなかったとしても2人。あと2人分足りなくなってしまう。

けど、私達にはすでにその当てはある。

 

「じゃあ、私達はアレハンドロさんの所に行ってくるから。30分後に西門で合流しよう、ジュリ!」

 

「わ、我承諾せり!」

 

ジュリに一言伝言を残して私達はアレハンドロ商会へと足を運ぶ。

本当に幸いに思えるのは、自分のステータスが戦闘以外には意識しない限り影響しないということだ。

 

 

 

 

 

 

「……あれ?ジュリ、いつの間に漆黒の盟友を手に入れたの?」

 

 

 

 

あの後、ジュリと別れた私は、サリーとヒドラを連れてアレハンドロ商会に足を運んだ。

理由は当然、装備品の購入だ。私もサリーも、下級職のころに買った物を今の今まで使っていたからだ。早速武具コーナーへと向かう。

 

「えーっと、金属系の防具が良いんだよね?」

 

「当然防御力も高いだろうからな。ENDも高いほうが良いからな」

 

などとヒドラと会話しつつ、職業上壁役という立場の私が選んだのは【リザード・ラメラーアーマー】という、トカゲの鱗を生かしたラメラーアーマーだ。今まで使っていた「ライオットシリーズ」とは比べ物にならないほど防御力が高く、スキルも〈魔法防御Lv1〉と〈HP増加Lv3〉で長く使えそうだ。試着で装備してみたけど着心地は良かった。

トカゲというと「スワンプ・リザード」を思い出すが、このアーマーに使っているのは「メイル・リザード」だという。トカゲに縁があるというかなんというか、どうなんだろう?

それから頭装備ということで小さい十字のヘアピンの【ミカルのペンダント】を買った。これは〈破損耐性〉と〈精霊の加護〉を持っていて……。要は、壊れにくく、かつ状態異常になり辛くなっているというヘアピンです。

合計で15万はしたけど、賞金に加えてジョブクエストで得た報酬で蓄えは十分だった。

 

そしてアレハンドロ商会で買い物を済ませた後、サリーと別れた私は中央闘技場前広場でその人――ベヘモットの〈マスター〉を探し当てた私は早速相談してみた。

結果は――。

 

「お断りします」

 

――速攻で断られた。

 

「なっ、なんでですか!?」

 

「パーティを組む気は無い。そして面倒そう。私にとって貴方達は邪魔」

 

「ガーン!!」

 

凄まじい言葉の3連パンチに私のハートがTKOされました。多分傍から見たら今の私は「OTL」のようにがっくり膝をついているだろう。

というか、私が邪魔になるってどういうこと?

 

「とまあ、〈UBM〉はまた今度ということで」

 

「ったく、ノリの悪い奴だな」

 

「まあ、行きたくない人を無理矢理連れてくわけにもいかないよね……」

 

「それに、そろそろ時間じゃないか?」

 

見ると、こっち側に合わせた時間がもうすぐ30分の経過を示していた。

 

「本当だ。それじゃあまたあとで!」

 

そう、彼女に告げて去って行く。

言い出したのは私なんだし、遅刻したら話にならないよ。

 

 

 

 

メイプルがレヴィと別れ、彼女が見えなくなった後。レヴィは忌々しい相手が消えたと言わんばかりに深く息を吐く。

 

「……全く、正気の沙汰とは思えませんね」

 

『yup』

 

『全くだクマ』

 

女性に続き、巨大なクマが頷く。

いきなり現れたクマに対して女性――レヴィと呼称する――は大したリアクションも取ることなく、振り返ることなくクマに返す。

 

『例え知らなかったとしても、お前を誘おうなんて思わねぇよ』

 

「随分呑気な事をしているのですね。あなたらそこらの雑魚を潰していたほうが楽なのでは?」

 

『いやいや。お前らと違ってこっちは日々の備蓄が大切クマ』

 

見れば、シュウは普段の着ぐるみではあったが、エプロン姿と中々ファンシーな出で立ちだ。中身が27の成人男性でなければの話だが。

 

「建前は結構。私達の監視が目的なのでしょう?」

 

レヴィの一言に、クマ――シュウ・スターリングは先程までのフレンドリーな雰囲気が消えた。

傍から見れば雑多な人通りの中の会話でしかない。

しかし、彼らと同じ領域に立つものならば、今最もヤバい相手が、フランクリンのテロ以上ヤバい状況になりかねない。最悪、幾多の住民(ティアン)の犠牲が出てもおかしくないレベルの場外決闘が始まりかねない。

 

『お前こそ、毎日物見遊山をしてるとはな。強者の余裕って奴か?【物理最強】さん』

 

「……そうですね。皇国からの指示が無いのは残念です。もし指示が下されたのであれば、今すぐにでもあなたと戦いたいものです」

 

『せめて街中以外で頼むよ』

 

「それより、私はあの羽虫が煩わしいですね。この前の事といい、今回といい……」

 

レヴィの声色には、わずかに苛立ちめいたものが垣間見える。先程の羽虫と呼んだ相手は恐らくメイプルだろう。

カスミと会った際に出会ったのだが、彼女からすればレヴィはギデオンを拠点にしている〈マスター〉という認識をしているだろう。

その相手が皇国――即ち自分の国の敵であり、この〈infinite dendorogram〉最強の〈マスター〉であることも知らずに。

若干だが、彼女の声に苛立ちめいたものが感じられた。《物理最強》からすれば、メイプルは纏わりつく羽虫程度のもの。だが、気兼ねなく接している彼女に鬱陶しさを感じているのも事実。彼女の堪忍袋の緒が切れたが最後、このギデオンは〈Infinite Dendorogram〉の大陸から消え失せているだろう。

 

「この先、皇国が王国を和平したり吸収した後で彼女に会ったのなら、サンドバッグ代わりにつるし上げてやりますよ。頑丈さだけが取り柄のジョブなら丁度良いでしょう」

 

……一撃で潰れるのがオチじゃないのか?

その一言はシュウの中で留めておいた。存外、その言葉は軽い冗談ではないのかもしれない。

 

「それと、あなたからも今後私に近づくのは遠慮してほしいと言っておいてください。私にも我慢の限界がありますので」

 

『……そうだな。いずれお前とも戦り合う時は来るだろうし』

 

 

 

 

「お待たせー!」

 

「我が翼、馳せ参し刻は未だ遠きに在らず」

 

「で、どうだった?」

 

「……5人が4人になりました」

 

息を切らして駆ける私とヒドラが来た時には、すでにジュリエットとサリーが門の前で待っていた。

どうやらジュリは今さっき来た所みたい。

 

「あれ?サリー、乗ってるのって何?」

 

肩で息をしながら肺に新鮮な空気を送り込む中、サリーが乗っている何かに質問する。

その何かは全長は2メテル弱はあろう鳥型のモンスターだ。長い脚に短くてもふわふわな羽毛、そしてその脚ほどではないが羽毛に覆われた首。現実世界で言うダチョウそっくりだ。手綱を着けられているが暴れる様子は毛ほども感じられない。

 

「これはランドウィングっていうモンスターだって。レンタルしてるお店を見て借りてきたの」

 

ああ、所謂レンタカーやレンタル自転車みたいなものか。

借りてる人に何か起きても、ちゃんとギデオンに戻ってくるよう【従魔師(テイマー)】に訓練してもらったらしいから、王国内ならどこでも帰って来られるみたい。

――あれ?もしその人がわざとそのランドウィング殺しちゃったり借りパクみたいな事に遭ったらどうするの?

みたいなことが頭を過ったが、誰も答えない。

 

「そ、それよりジュリエットは良いの?1匹足りないみたいだけど……」

 

「我が持つは翼の加護」

 

要するにフレーズヴェルグがあるから移動も楽ちんだよ、か。

ちゃんとレンタルしたランドウィングは2匹いる。私の分も用意してくれたんだ。

 

「そうそう、メイプルはこれ持ってて」

 

「ん?」

 

そう言ってサリーがあるものを渡してきた。

羽を使った小さなアクセサリーだった。

 

「【騎馬民族の御守り】って言って、《乗馬》スキルが使えるのよ。前に現実で【城塞盾士】の項目見たけど《乗馬》とかのスキル無かったからね。2個手に入れられてよかったよ」

 

「……どこで手に入れたの?」

 

「…ブリディス領での、クエストで」

 

若干目が泳いでいたけど、まあ今回はそういうことにしておいてあげよう。

早速受け取った【騎馬民族の御守り】を装備して、ランドウィングに乗ってみる。

 

「お……おぉう……。本当に乗れた」

 

「鳥でもいけるんだな。《乗馬》なのに」

 

うん。そこは私も思った。

 

「それじゃあ早速――」

 

「おーい、待ってくれー!」

 

早速西へ行こうとした時、後ろから声をかけられた。

振り返ると、同じくランドウィングを走らせてこちらに一人の男の人が来る。

 

「嬢ちゃんたち、これから西へ行くのか?」

 

「はい」

 

「俺も西に用があるんだ。クエストでな。折角だし一緒に行くか?」

 

私達3人は顔を見合わせる。

別に急ぐ旅でもないし、相手のほうも目的が目的なので、邪魔にはならないだろう。

 

「それじゃあ、一緒に行きましょうか」

 

「女の子3人のハーレム状態だけどね」

 

「俺を除けばな。じゃあ俺は紋章に戻ってるから、着いたらよろしくな」

 

ヒドラが紋章に戻り、私とサリーはランドウィングに乗り、西へと駆けていく。目的は古代伝説級〈UBM〉。

無駄骨になるかもしれない。見つかっても倒せないかもしれない。けど、1%でも手に入れられる可能性があるのだったら、それに縋りたい。

当ての無い旅へ――クエスト、スタート。

 

 




(・大・)<了読ありがとうございました。

(・大・)<誤字を見つけたら報告お願いします。

(・大・)<これまで読んでくれた方はもう感付いていると思いますが、

(・大・)<まだこの時点ではメイプルは防御極振り状態じゃありません。

(・大・)<このUBM戦後にいつもの装備が手に入ります。
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