悲しませるのが嫌なので、防御力に極振りしたいと思います。 作:日名森青戸
(;・大・)<前回投稿しようとしたら2千字にも満たないからびっくりした。
決闘都市ギデオン 3番闘技場。
「……クランって、あのクラン?」
「そうなの。実はイズさんから勧められてね。目標の事もあったし、色々聞きながら作ってみようって思ったんだ」
クランの活動という、サリーからすれば突拍子もない事だった。
殆どが未だに要領を掴めていないのか、呆けている面々にイズが説明を入れる。
「この特典武具を渡した時に、メイプルちゃんが目標の先について考えていたのよ。それでクラン活動を提案したら結構乗って来ちゃったのよ」
「クラン活動に興味を持っていたのね」
〈Infinite Dendorogram〉でのクランの活動は様々だ。
《集う聖剣》のような王国警護、《ロウ・オブ・ザ・ジャングル》のような傭兵稼業、各国家に所属する《Wiki編集部》のような攻略サイトの編集を生業とするクランと様々だ。
勿論、メイプル自身が嫌悪するPKを生業とするクランも。
「けど、イズさんってクランに所属してたんじゃなかったっけ?」
「誰が加入するって言ったのよ。クランの複数加入はできないから、私は提案しただけ」
呆れたように返すイズ。彼女自身、今のクランから異動する気は無いらしい。
「それで、クランに入りたい人を探してたんだけど……」
「なら私は入るべきね」
早速サリーが名乗りを上げる。
「僕も参加して良いかい?」
「私も参加させてもらおう」
次いでカナデとカスミ。
「俺も良いか?」
「私達も」
「お願いします!」
そして、クロムとユイ、マイ。
合計6人がメイプルのクランに参加を名乗り出た。
「一気に7人か。クランを起ち上げて早々にしては好調だな」
「これがクラン結成の瞬間ですか。なんだか感慨深いものを感じますね」
「すっごーい!クラン結成なんて初めて見た!」
ルークもバビもクラン結成の瞬間に立ち会って興味津々な様子だ。
『そういやレイ、お前は参加しないのか?』
「ああ。まだクランに入ることはないよ」
「まだお互いいきなり戦争を始めようという訳ではないからの。自分のペースでランカーを目指すつもりだ」
レイはまだクランに入らないと、明確に兄に伝えた。
しかしこの日から現実世界で2か月後、自らクランを作り上げることになるとはこの時はまだ誰も――レイ本人も思っていなかっただろう。
†
善は急げと言わんばかりに、メイプル達7人はクラン結成届を提出する為にギルドへと向かった。
本拠地などは結成時には必須となる項目ではなかったので、現在拠点の無いメイプルにとってはありがたいことであり、用紙の作成にもさほど困ることは無くサクサク進んでいった。
「……あ。クランの名前ってもう決めてあるの?」
ふと思い出したようにカナデがメイプルに質問してきた。
クラン名はいわばクランの看板。最重要項目と言っても過言ではない。現に、クラン結成の届け出の際、記入したクラン名は変更することはできない。
よく考えてみれば、トリックスターな【
……ここまでくると「個性的」という言葉が可愛く思えてくるのも強ち間違いじゃない。
しかしメイプルはどや顔気味に「ふっふっふ……」と含み笑いをしてきた。
「もう決めてあるよ。とびっきりの名前」
「なるほどなるほど。でも気を付けてくださいよ、名前が被ってしまってクラン名にできなかったってのはよく耳にしますから」
「なるほど。だったらクランの情報に詳しい人に相談でも……」
割り込んできた声の主に頷きながらも、言い終わる前に「ん?」とメイプルは眉を顰める。
何事かと振り返ると……。
「マリーさんじゃないですか」
「取材が終わったのでクエストでも行こうかと思ったのですが、こんな所で会うとは意外ですね。どうかしたんですか?」
「クランを組むことになったんですよ」
サリーからの説明にマリーは思わずおぉ、と声を上げた。
もっと話を聞こうと傍のテーブルにみんなを集める。
「メイプルちゃんがクランを作るなんて、想像しませんでしたよ」
「おいコラ、それってどういうことだ?」
「こらこら喧嘩を吹っかけない」
喧嘩腰になるヒドラを抑え、メイプルが話を続ける。
「イズさんからの提案だったんです。私の目的を終えたら、今度は自分のしたいことに全力を尽くそうかなって。それで、まずはクランを作ってみるのも面白いかなって」
「なるほどなるほど」
「それで、マリーさん」
「なんですか?」
「マリーさんって、デンドロの情報に詳しいんですよね?クランの名前とか」
「ええ。〈Wiki編集部〉よりは劣ると思いますけど」
「ちょっとクラン名の事で相談したいんです。被ってるかもしれないって思って……」
「ええ。ボクの知る限りとはいえ、お手伝いしますよ」
「良かった。それじゃあクランの事なんですけど……」
ごにょごにょとマリーにだけ聞こえるように囁いてクラン名の筆頭候補を告げるメイプル。
候補の名前を聞いたマリーからは。
「なるほど、そのクラン名はボクも聞いた事はありませんね」
「本当ですか!?じゃあ早速登録しに行ってきます!」
跳ね上がったメイプルは早速カウンターへと走って行く。
「それで、クラン名はどうなったんですか?」
「あー、それはですね……」
マリーが答える前に、メイプルから「許可が下りたよー!」と元気な声が帰ってきた。
クランの結成にはクランリーダーとサブリーダー、そしてそのクランのメンバーの名前を記入する必要もある。
それぞれが自分の名前を書き終えると、最後にメイプルが自らクラン名を書き込む。
受け取ったギルド委員はそのクランの最終確認を取る。
「クラン名は〈楓の木〉で間違いありませんね?」
「はい!」
力強く返答したメイプルに、メンバーもマリーも納得したように頷いた。
「なるほど。メイプルから取ったのか」
「良い名前じゃないか」
「僕も賛成」
メイプルの提示したクラン名にクロムやカスミを始め、高評価だった。
しかし、事情を知っている〈マスター〉が1人……。
「……あのさ。そのクランの名前って、本人のリアルネーム使ってるんじゃないの?」
「気にすんな。被ってなけりゃ問題ねぇ」
「そうですよ。黄河やアルターにも人物名の入ってるクランはありますから。それくらいは妥協案って奴です」
乾いた笑いを上げるサリーに、ヒドラはしれっと答え、マリーも同乗するのだった。
そのセリフにヒドラとメイプル以外のクランメンバーが思わず「いや、それはそれで大問題じゃないのか?」と思ったのだった。
†
こうして〈楓の木〉が誕生することとなった。
構成人数はたった7人。まだクランホームも無い少人数クランは、珍しいものではない。
しかし後に、このクランはPK〈マスター〉を標的とするPKクラン――所謂PKKクランとして活動していき、アルター王国付近を活動域とするPKの〈マスター〉からは「金をつぎ込まれても辞退したい」、「毒竜だのゾンビだの鬼だの化け物だらけの訳分らん所」などと呼ばれるのはもう少し後になる。
(・大・)<なんか無理矢理繋げた感があるけど、〈楓の木〉の誕生です。
(・大・)<見たらわかると思いますが、こちらのクランでは原作と違いイズは加入していません。