悲しませるのが嫌なので、防御力に極振りしたいと思います。   作:日名森青戸

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(;・大・)今年初の3連休最後が初投稿ってどういうこと……?



極振り防御と融合体。

 

ある〈超級〉の会話。

 

 

「あの2人、まるで僕とは正反対だね」

 

『お前とあの2人がか?』

 

「うん。あの2人はお互いが揃ってこそ真価を発揮する。対して僕は、敵以外の誰かが傍にいるとその実力が大幅に削がれてしまう。ユニークさならどっこいどっこいだけど、中々皮肉めいてるだろう?」

 

『確かにフィガ公とは正反対の逸材だな。1対1での手合わせの時の勝率が悪いのもそのせいか』

 

「一人だと無意識に片側の隙が露骨に現れるのも、多分そのことに甘んじているかと思うけれど……もしもの時の為に、ある程度単独でも倒せる――最低、合流までの時間稼ぎくらいはできないと、元も子も無いんじゃないかってチェルシーがアドバイスをしてたんだ」

 

『レイレイさん曰く、あの2人の〈エンブリオ〉は元々1つだったかもって推測していたらしい。今となっちゃハンプティ(ヤツ)に聞かなきゃ分からんが、会えないからどうにもできんな』

 

「そっか……。結局のところ、〈エンブリオ〉のルーツに踏み入るのは自分にとって暴かれたくない、知られたくない領域に踏み込むのと同じなのかもね。気を付けないと」

 

『フィガ公は一人で戦えば戦うほど強くなる一騎当千。ユイちゃんとマイちゃんはお互いを支え合う最強コンビ。《強さ》という括りの中と言えど、あり方は千差万別だクマ。俺の場合はコストがかさむのが一番の難点だけど』

 

「そうだね。……存外、あの〈エンブリオ〉のテーマは、『2人で一緒に戦う』って意味を持ってるんじゃないかな?」

 

『ハハハ。必殺スキルは融合でもするのか?』

 

「確証は無いけどね」

 

 

 

 

ニッサ伯爵領:サウダーデ森林

 

 

「――なぁにあれぇ?」

 

間の抜けた声を上げたのはフレデリカだった。

ベンジャミンを倒し、急いで駆けつけてみたらそこに姉妹の姿は無く、代わりに渦を巻いて溶け合う白と黒の光。それが消えたかと思えばそこには1人の少女が立っていた。

ユイとマイが12歳くらいなら、少女は14歳くらいだろう。ツインテールにゴスロリドレス風の衣装に身を包んだツインテールの少女は、エリックから見て右半分が黒、左半分が白という奇妙な姿だった。手にした得物は先端が白い棘付き鉄球、反対側は黒い斧という、少女にも引けを取らない奇妙な得物である。

 

「これは……」

 

「ひょっとして……」

 

我に返ったのか、少女がペタペタと自分の顔に触れる。そして数秒後……。

 

「「合体しちゃったあああああああああああ!?!?!?」」

 

――叫んだ。

 

「どういうことこれ!?お姉ちゃん何したの!?」「何したも何も同時にしたんでしょ!?こんなことになるなんて予想してなかったな……」

 

同時に右に左に身体を動かして叫ぶ様は姉妹で言い争っているようにも見える。

が、傍から見れば右往左往する白黒少女がマシンガンさながらの速度で独り言をしてるようにしか見えない。

シュールな光景ではあるものの、エリックとフレデリカがあることに気付くヒントとなった。

 

「ま…まさか……」

 

「そんな話、あり得んぞ……!?」

 

が、同時にうわ言のように呟くと頭を抱えて慌て始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()なんて聞いた事無いぞぉ!?」

 

 

 

 

ユニゾン――融合スキルとも呼ばれるそのスキルは発動までにある程度のチャージが必要となるが、エンブリオと一体になる事でそのステータスを一時的に追加できるのだ。

大半はガードナーに属する〈エンブリオ〉に発現し易いスキルだが、どうやらロッテとルイーゼの必殺スキルはそれに該当するらしい。

STRは《あなたに出会えた奇跡》、《あなたに巡り合えた奇跡》の最大距離と同様10倍で固定され、ロッテとルイーゼのスキルが使用できる。

つまり、この〈Infinite Dendorogram〉で唯一()()()()()()()()()()()能力である。

 

 

 

 

(〈マスター〉同士のユニゾンなんて、確かに聞いた事は無い。それ以前に他の〈マスター〉を要するってのも聞いてないわ)

 

フレデリカも姉妹の融合体を見て言葉を失っている。が、すぐに我に返ると《看破》でステータスを見る。

 

(――これはっ!?)

 

「馬鹿が。甚振って余計な時間を与えてどうする」

 

「言ってろ!奴らに《死告》を与えた。あと100秒もすれば死ぬ!」

 

「100秒もあれば身体をバラバラに吹っ飛ばされるっての。こっちだって妙にイライラしてるんだ。手落ちはこっちで晴らしておくから、テメェはあのガキを始末しとけ」

 

揚げ足を取るような発言の後、ベンジャミンはストレージを操作してククリ刀を2つ合わせたような巨大なハサミ型の武器を出現させる。

 

「――《霧の中で嗤う殺人鬼(ジャック・ザ・リッパー)》!」

 

必殺スキルを呟いた次の瞬間、ベンジャミンの姿が霧に包まれて消えた。

 

 

 

 

【霧幻牢ジャック・ザ・リッパー】の必殺スキル《霧の中で嗤う殺人鬼》。それは霧を身にまとい、霧の中にいる人間範疇生物及び非人間範疇生物に対し、使用者――即ちベンジャミンの感知が完全に不可能となる。敵味方どちらからも。

その効果時間は数分と短いが効果はすさまじく、霧の中限定とはいえ後にルークと対峙するある〈マスター〉の必殺スキルと同等のレベルである。敵からも味方からもその存在を消してしまう。決闘場の結界すら容易にすり抜けられる。

通常のスキルでも探知できないというのに、必殺スキルは視界からも消え失せる。並大抵の相手では探知スキルはおろか、気配で位置を気取る事すら不可能。視界からも消え、声を発さない限りは気付かれることはない。

 

(たとえ合体スキルを使おうが所詮はSTRバカの《破壊者》!首を落せばそれで終わりだ!)

 

シャキン、とハサミを開いたベンジャミンは合体した姉妹に背後から迫る。あと数秒もすれば首を撥ねられデスペナルティとなるだろう。

 

「一体どうしたの?」「何がどうなってるの?」

 

慌てる姉妹が周囲を見渡すが、その姿は見えない。

 

「とっ、とにかく――」「早く逃げないと――」

 

姉妹が動こうと踏み出した。

――左右両方の。

 

「「へぶっ!?」」

 

上体が倒れ、思いっきりずっこける。その瞬間ハサミがジャキンと首のあった場所を挟み込んだ。

 

「何ッ!?」

 

その直後、ごろりと転がった矢先にハンマーがベンジャミンの横に迫る。

そして――、

 

 

 

 

 

 

――パンッ!

 

 

【PTメンバー<ベンジャミン・バウザー>が死亡しました】

 

【蘇生可能時間経過】

 

【<ベンジャミン・バウザー>はデスペナルティによりログアウトしました】

 

 

「――はっ?」

 

いきなり現れたウィンドウの文字に思わず間の抜けた声を上げるエリック。何かの間違いかと思ったが、霧が晴れていく様を見てそのウィンドウが事実であることを顕著に物語る。

それはそうだ。ハンマーが触れた瞬間に上半身が粉々に砕け散り、一気に蘇生までのタイムラグがほぼゼロで粉砕されたのだ。こんなタイムラグの無い粉砕は、【凶城】潰滅にあたったフィガロくらいだろう。

 

(どうなってやがる!?幾ら紙耐久の【兇手】でも小突かれただけでデスペナとか【破壊王】か!?)

 

信じられないように《看破》を発動する。

が、視界に映った結果は更に困惑する要因となる。

 

(――筋力値(STR)が10万オーバー!?何の冗談だ、こんな数値レベル500でも無理だぞ!?)

 

あり得ない数値だった。

本来レベル500のかつ攻撃力上昇系スキルをフル装備、更に【破壊者】であるなら筋力は5万強。とてもじゃないが【破壊王】の半分程度の力にすら及ばない。

しかし、目の前の相手はそのあり得ない数値を叩き出している。

 

「(だが、それでも奴は今の身体に慣れていないらしいな……)《喚起:【グラッジストーム・アンデッド】》、《【マンティス・アンデッド】》、《【デススクリーム・アンデッド】》、《【レギオン・アンデッド】》!」

 

右手の甲から3体のモンスターを呼び出す。

ドーベルマンくらいのサイズで、首に農紫の宝石が埋め込まれた獣型アンデッド。それが3体。

人型のゾンビをベースとし、両腕の肘から先が鋭利な鎌となったアンデッドが3体。

その後ろで腕の無い瘦せ細った体躯に目と口はそれぞれ帯と猿轡で縛られ、額には黒い宝石が埋め込まれているゾンビ。

更には100体近い体躯が大小さまざまなゾンビがその3体の前に軍隊の兵士の如く並び立つ。

 

「こいつらはステータスだけなら純竜級すら軽くいなすレベルだぞ!行け!」

 

エリックの命令に呼応し、無数のゾンビが双子の融合体目掛けて突進していく。

 

「やばい……ッ!」「――避けないと!」

 

咄嗟に回避しようとした融合体は、突然手足を大の字に広げる。当然それで避けられるはずも無く、ドーベルマン型ゾンビの《グラッジストーム》――簡易版《デッドリーミキサー》――をまともに食らって吹っ飛ばされ、地面に激突する。

 

「「ふげぇっ!?」」

 

「何やってんのよアンタらぁ!?」

 

ツッコミ交じりのフレデリカの怒声と共に、《ヒートジャベリン》にを加えて放ち牽制する。

 

「なんで左に避けなかったの!?」「いや右に避けるべきでしょ!?」

 

「大体さっきもなんで左に武器を振り回そうとしたのさ!?」「いや、右のほうが良かったよ!」

 

「なんでさっきから同じタイミングで動くのさ!?」「なんでって身体が動かせたからに決まってるでしょ!?」

 

右に左に向き直り、一人コントもどきの喧嘩を始める融合体。

まるでお互いに身体の主導権があるかのように言い争いを続ける融合体。

敵の前だというのにエスカレートしていく喧嘩に六本腕のアンデッドも「どうすりゃいいの?」と主人に答えを求めるかのように振り返る。

 

「待った待った!あのさ、今気づいたんだけど――」

 

そんな中フレデリカが仲裁に入りながら気付いたことを伝えに来る。

 

「ひょっとして……その身体って、主導権が右と左で別れてるんじゃない?」

 

「「え?」」

 

フレデリカの言葉に素っ頓狂な声を上げる2人。試しに左右でそれぞれ手を握ったり開いたりを繰り返し、グー、チョキ、パーと繰り返し指を動かす。

バラバラに動かしてももたつくことはない。

 

「どう?」

 

「――確かに」「片方だけ感覚が無い感じがしますね」

 

そんな感想を漏らした融合体にフレデリカは「やっぱりね」と返答が予想していたように返す。

 

「――っと。そろそろ来るよ。デカいのはあたしがやるから、あいつをお願い」

 

「「わかりました!」」

 

杖を構え、キャスパリーグが巨大ゾンビと対峙する。融合体もエリックの方へと覚束無い足取りで向き直り、武器を構える。

 

「――やれ!」

 

叫ぶと同時に大量のゾンビが、目の前の生命を絶たんと呻き声を上げて襲い掛かってきた。

 

 

 

 

〈ニッサ伯爵領:サウダーデ森林〉【高位召喚師】フレデリカ・クーパー

 

 

「さぁて、どうやって倒そうかな――おぉっとぉ!?」

 

あたしが請け負った4体のゾンビ――《グラッジストーム・アンデッド》2体、《マンティス・アンデッド》と《デススクリーム・アンデッド》それぞれ1体――の攻略を思案していると《グラッジストーム・アンデッド》の咆哮と《デススクリーム・アンデッド》の絶叫が襲いかかる。

間一髪、キャスパリーグに乗って回避する。けどそれは、どうやらグラッジストームの攻撃だけらしい。

急にキャスパリーグの身体がぎこちなくなり、思わず落下しそうになる。

 

(【恐怖】の状態異常!?あのアンデッド、悲鳴を聞かせた相手に状態異常を与える能力を持ってるの?)

 

何とか持ち直して冷静に状況を見る。

キャスパリーグだけが状態異常を受けて、あたしは何ともない所を見ると、判定によるものかも。

なんて考えてるあたしに2体のドーベルマンゾンビが咆哮代わりにグラッジストームを放ち、そして腕が鋭利な鎌になったアンデッドが合間を縫って襲い掛かる。今のキャスパリーグでも躱せるんだけどねぇ!?

考える暇も与えないって――あれ?

 

(そういやなんであんなに連発してるの?)

 

俄か知識ではあるが、《グラッジストーム》は怨念を使った攻撃魔法だ。

威力、範囲ともに上位互換の《デッドリーミキサー》に劣るものの、相応の怨念の量が必要とされる魔法な上に、怨念を魔力に変換するから撃ちまくることは難しい。早い話供給源が無ければ連発することができない魔法だってこと。

それこそどこかで、現在進行形で生物を生かさず殺さず嬲るかのようなマネでもしなきゃ連発なんて……。

 

「!――試してみるか。――《召喚》【アビス・バンシー】、【バルーン・ゴーレム】!」

 

すかさずあたしはキャスパリーグを送還し、別の召喚獣を2体召喚する。

1体はビスクドールの様な風貌のゴスロリ衣装のバンシー、もう1体は【召喚師】お馴染みのマシュマロマン風の巨大ゴーレム。

 

「バンシー、【怨念探査】!バルンバは少しこいつらの相手をお願い!」

 

ふわりとバルンバ――あたし命名のバルーンゴーレム――の背後で探る様にくるりと回転する。

くるくる回転するバンシーは急にある方向でぴたりと急停止すると、白目となった目を開けて見つけたと言わんばかりに金切り声で叫ぶ。

呼び出したアビス・バンシーは怨念に惹かれて群がる習性をもち、怨念を探す能力が高い。自信を中心とした数百メートル程度なら庭同然。

すぐさまバンシーを戻して再びキャスパリーグを召喚し乗り込む。

うん。状態異常は治ってる。

後ろでバルンバが鎌の腕のゾンビに苦戦を強いられている。早々に送還するとあたし達に標的を移したのか、一斉にゾンビどもが襲い掛かって来るのを置き去りにして走る。

――そして、見つけた。

 

「うわっ」

 

思わず声が出た。

それは人体のあらゆるパーツを無理矢理一つの塊にしたような出で立ちだった。木のように地面に根(?)を伸ばし、地面から伸びた触手に森の生物たちが串刺しになりながらも生きて――いや、生かされている。

時折動物たちを包む優しい光は……回復魔法?どれだけこの状態が続いているのかは知らないけど、傷が広がったり膿んだりしていない。回復魔法の影響なのかもしれない。

 

「ひど過ぎるでしょ……」

 

思わず口に出た。

わざと致命傷を外して時折回復を挟み、効率的に苦しみを長引かせ、怨念を『搾取』している。

 

(………あ。そっか……)

 

ふと、あたしの胸の内に妙なもの込み上がってくる。

 

――怒りだ。

 

利益の為に国を裏切ったペンドラゴンに対するものとは違う、『許せない』という感情で占められた強くて純粋な怒り。

ただただ怨念の搾取と言う理由だけで動物を嬲るこの光景をもたらした奴に対する、純粋な怒り。

 

「いくらそっちがNPCって呼んでる連中でもね……これは無いでしょ……」

 

動物にも、それこそ日常的に狩っているモンスターにだって命は宿っているってあたしは思ってる。

遊戯派からすればデータの塊に同情すんなと一蹴される理論だろうね。

だけどさ……、

 

「“それはそれそれ”って割り切れるほど、冷めてないんだよね!《召喚:フローティング・ソードダンサー》!」

 

魔法陣から呼び出したのは意思を持つ魔法剣。

グロテスクな塊を指すと、それに向かって一斉に飛行して斬りつける。

無数の斬り傷を受け、死体の塊もようやく放置したら自分がやられると判断したのか、地面から新たな触手を生やしてあたしを貫こうと伸ばしてきた。

 

「《装填:魔法多重発動:ファイアボール》」

 

キャスパリーグに乗りこみ、触手を回避しつつキャスパリーグの背に触れて魔法を送り込む。

 

「《射出:ファイアボール》!」

 

低く伏せたキャスパリーグの口から放たれる火炎の球体。まるでマシンガンのように断続的な射出音を響かせ、死体の塊を焼き尽くす。

あの塊目掛けて無闇矢鱈じゃなく、ある一転を狙って。

 

「GO!」

 

その合図と共にフローティング・ソードダンサーが一斉にそこ目掛け、弓矢の如く高速で飛来する。

狙う箇所は――地面と塊をつなぐ、触手。

一転を集中しての斬撃の嵐に、幹部分が徐々に切り口が深くなり、比例してそこから赤黒い血が流れる。

それだけで終わらない。斬り付けた魔法剣が旋回し、押し付ける様に死体の塊に突き刺さる。

木の折れる音と言うより肉と骨の千切れるような音を立てて死体の塊を支える幹が圧し折れた。

同時に動物を捕らえていた触手も干からびて消滅した。とりあえず動物たちが大事無くて良かった。

 

「あとは……《対象:ヒートジャベリン。魔の猫よ、その力を解き放て(キャスパリーグ)》」

 

追いかけてきたアンデッドに、必殺スキルを発動する。

炎の虎の身体が膨れ上がり、口のすぐ近くで生成された火球が、空気を入れる風船のようにどんどん膨れ上がっていく。

すぐに火球と呼べるものではなくなる。まるで小さな太陽へと変貌した炎の球体は、追いかけてきたグラッジストーム・アンデッドやデススクリーム・アンデッド目掛けて放つ。

グラッジストーム・アンデッドがすぐに反撃に怨念の咆哮を放ったが……あたしには結果は見えていた。

炎は怨念を焼き尽くし、そのままアンデッドどもの肉体を焼き尽くす。

後に残ったのは、焦げた痕と腐肉を焼き尽くされ骨だけとなったアンデッド共の亡骸だけだ。

 

 

 

 

【霊獣甲冑キャスパリーグ】の特性は魔法装填と魔法射出。

こうなったのはフレデリカが原点のキャスパリーグよりも、某英霊のゲームに詳しかった為に、そのキャラクターの特性を模したものとなっている。

《装填》はフレデリカの取得している魔法と《詠唱》の付与効果を自身の中にストックすることができる。ただし、ストックできるのは攻撃魔法のみかつ、魔法隠蔽の付与効果は発動できない制約を持っている。

《射出》は読んで字の如く。《装填》で取り込んだ魔法を即座に発動する。本来の詠唱等の過程をすっ飛ばし、付与効果次第ではまるでマシンガンのように魔法を連続で放つことができる。

そのほかにも《変換》で装填した魔法を変換し、召喚の持続時間を延長させるスキルも存在する。

そして必殺スキルの《魔の猫よ、その力を解き放て(キャスパリーグ)》。最初に装填された魔法の中の1つを選択し、残る全てを魔力に変換。指定された魔法を通常の特化型魔法職を遥かに凌ぐレベルの威力を誇る魔法を放つことができる。

ただし、その能力には当然デメリットが存在する。

 

「――ゆっくり休んでて。キャスパリーグ」

 

労う様にフレデリカが焦げた鞍に言って、それを右手の甲に収納する。

その必殺スキルの代償は、デンドロ内時間で24時間の間、キャスパリーグを媒体にした召喚が不可能になる事。

基本フレデリカは自身のエンブリオによる召喚を主に使っていて、サブに幾つもの媒体を使っているが、主力として使っているのはキャスパリーグ以外には臨時で呼び出すエレメントくらいだ。現状、フレデリカは大幅な弱体化を受けたと言っても過言ではない。

 

「……大丈夫。怖くないよ」

 

傷ついた動物たちに、フレデリカは手にした杖を地面に突き刺し、何もないと手を広げて近づいていく。

動物達の中で狼のような大型犬は死に体に鞭打つかのように起き上がり、他の動物たちを守る様に前に出て警戒を露わに唸りを上げる。

1歩、また1歩近付き、ほぼ1メートルも無いほどまで近づいた時、大型犬がフレデリカの手に噛みついた。

激痛が手から襲い掛かって表情を歪める。

 

「……当たり前か。いきなり捕まって、痛い思いをして、ずっとずっと苦しい思いをさせられて……怖くて仕方なかったよね……」

 

それでも表情を悲しげなものへと変えたフレデリカは、そこから意を決した表情へと変わる。

 

「けど、あたしはあなた達を助けたいの。あなた達をこんな目に遭わせた人間の所為で人間を信用できないし、日常的に君らの命を奪う奴らだって思っている。だけど、あなた達をそのままにしておけないの」

 

沈黙。

やがて大型犬はフレデリカの意志を感じ取ったのか、口を放す。

下がっていた動物達に一声上げると、彼らも1匹、また1匹フレデリカに近付いてきた。

 

「待っててね。順番に治してあげるから」

 

早速ポーションや包帯を取り出し、治療を進めていく。

ユイとマイに合流するには、時間が掛かりそうだ。

 

 





(・大・)<8千字超えちゃったから次回へ続く。
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