悲しませるのが嫌なので、防御力に極振りしたいと思います。   作:日名森青戸

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ここでやっとクエストへ。
かなり長かったなぁ……

因みに原作アニメだと……。


レイ達:山道の中腹。
メイプル達:貴族街前。


極振り防御と都市への道のり。

王都アルテア貴族街前 【盾士(シールダー)】メイプル・アーキマン

 

 

最初で最後のクエストを受けることとなった私達は、フレデリカさんが武器を新調してくれた後で彼女のパーティメンバーと合流した。

その人は金髪青目の長身の綺麗な人。装備は青いラインの入れた真っ白な鎧であるから、騎士系統であることは間違いなかった。

 

「あんがとねーペイン。そっちも夜通しで頑張ってたんでしょ?」

 

「まあな。【協会騎士(テンプルナイト)】のペイン・トーマスだ。道中よろしく頼む」

 

自己紹介を済ませると、さっそく依頼主が用意した荷車に私達は乗り込んだ。馬車のほうは依頼主さんの私物らしく、昔絵本か何かで見たような豪華な装飾が施された立派な馬車だった。

でも、馬車にしてはサイズが少々オーバーな気が?

 

「ええい、何をもたもたしておったのだ!こっちはすでに準備を整えてたというのに!」

 

「すみません。うちの連れがギデオンに行く用事のあるマスターも同行させたいと……」

 

「ふんっ、言い訳など見苦しい!お前達もとっとと荷物を載せろ!今日中にアルテアを立つぞ!」

 

そこに現れたのはずんぐり体系のナマズ顔の貴族風の男の人。

さっきのペインさんにも強く当たっていたが、さっきのクエストの依頼主のラングレイさんだろうか。

 

「んじゃあ後は……」

 

【フレデリカ・クーパーからパーティ加入要請が届きました】

【パーティに加入しますか? YES/NO】

 

私とサリーの目の前にウィンドウが現れる。

今回はレベル差もあってか、貢献配分というものだけど私には関係のない話だ。

 

「YES、っと」

 

サリーも私と同様YESを押下。

直後にパーティ用の簡易ステータス画面が開き、フレデリカさんの名前が加わった。

彼女のステータスはこんな感じ。

 

 

 

フレデリカ・クーパー

 

職業:高位召喚師(ハイ・サモナー)

 

レベル7(合計レベル227)

 

HP:1340

MP:4300

SP:743

 

 

 

「結構強いんですね」

 

「余計なお世話だよ!でも、2人ともこのクエストは私にドーンと任せなさい!」

 

「それ、死亡フラグって知ってます?」

 

 

 

 

同じようにサリーとパーティを組んで――ペインさんはクロムさんとカナデと組んだ――準備完了。

御者とラングレイさんが乗り込んで……そこで私は疑問を口にした。

 

「あれ?お馬さんは?」

 

御者が馬を用意する前に御者台に乗ってしまったのだ。それに、この荷車も馬車も馬が牽くには重すぎるような……?

ひょっこり荷車から顔を出した私にラングレイさんは多少の罵声を交えて説明する。

 

「無能めが。これは馬車ではない、竜車だ」

 

「りゅう、しゃ?」

 

「今からお見せしましょう。《喚起(コール)》――バルモス」

 

御者が呪文を唱えた後、右手に埋め込まれた宝石が発光し、名前を呼ばれたモンスターが現れる。

 

『VuWOOOOOOooo!!』

 

そこに現れたモンスターを簡潔に説明するなら、サイの姿をした四足歩行の竜だった。けど、現実で見たことのあるサイより2周り分大きい。

巨大な体躯を覆いつくす堅い外皮は外部からの隙を寄せ付けない姿はまるで重戦車。極めつけは鼻先から生えた角。円錐を形作りながらも内側へ僅かに反りつつ、本気の突進で城壁に風穴を開けるくらいは余裕だろう。

どう見たって私とサリーが手に負えるレベルを突破している。

 

「ふわぁ~。【獣角衝亜竜(ライノホーン・デミドラゴン)】か。これなら明日には到着するよ」

 

「強い、よね?」

 

「ざっくり言うと健康優良な【三角衝亜竜(トライホーン・デミドラゴン)】と同レベルってところかな」

 

カナデからのざっくりとした説明の間にもバルモスと呼ばれたモンスターの体躯と竜車がつなぎ終えた。

そして御者の一言と共に、短い間お世話になったアルテアを後にした。

それからしばらく、山道に入るまで私は離れていくアルテアを見ていくのだった。

 

 

 

 

サウダ山道 山頂

 

山道の道中は本当に楽になった。 ギデオンに戻るつもりだったラングレイさんには感謝している。

モンスターは主にクロムさん達がやっつけてくれたらしく、御者さんがバルモスと呼んだ【獣角衝亜竜(ライノホーン・デミドラゴン)】も、ボス級の熊モンスターを倒したら周りのモンスターも下手に襲い掛かる事も無くなったらしい。

“らしく”とか“らしい”というのは、その間私は荷車の隅で震えていたからだ。

このエリアが怖い。あの鎧、バルバロイというプレイヤーが契約書を使ってここでのさばることは無いと言われても、サリーが死んだこのエリアにまた奴らが来ると思うと、私は自分を抑えるので精一杯だった。サリーとフレデリカさんが傍にいてくれなければ、私は自分を見失ってパニックになっていたかもしれない。

襲い来る吐き気が収まったのは山頂付近に到着してからだった。

 

交代制で野生のモンスターが襲ってきたならペインさんのパーティで各個撃破ということで、私達は山道で一夜を過ごす。

けど私は眠る気にはなれなかった。気分を変えようと森を背にして外に出る。

月明かりに照らされて光を反射する私の〈エンブリオ〉。いまだに孵化の全長らしきものは感じられない。

 

「どうして……孵化しないの……?」

 

ふと、孵化しない自分の可能性に怒りを覚えた。

僅かな火の粉だったそれは、まるで油の中にでも飛び込んだかのように燃え上がる。

足元に目をやると拳大の石が転がっていた。

それを掴み、左手の第0形態の〈エンブリオ〉目掛け叩きつける。

 

 

――第0形態の〈エンブリオ〉に攻撃しても、ダメージはマスターに入るよー。

 

 

チェシャからの言葉の通り、叩きつけた衝撃が自分に痛みの無い衝撃となっていくのを感じる。

構うものか、それでもガンガンと石を叩きつける。

 

「なんで、なんで孵化すらしないの!あの時孵化してれば理沙を守れたのに!あいつから理沙を助けられたのに!!私がこんなに苦しむことも無かったのに!!!」

 

衝動任せに思いの内を叫ぶ。

だけどどれだけ叩いても卵型の宝石には傷一つ付かない。

 

「何やってんの!?」

 

その時、私の後ろからの声で我に返った。

振り返るとそこには、巨大な影。

私の友達を殺した、畏怖の存在。

 

「ぁ……」

 

怒りが、急に恐怖に変わった。

逃げなければ殺される。

それだけが頭を支配し、私は逃げだした。

直後、身体が突然の浮遊感に包まれた。

 

 

 

 

鋼鉄魔術師(メタルマンサー)】カナデ・ベアトリス

 

 

今僕は、見張りをしながら星空を特等席で眺めていた。

ギデオンに拠点を移そうとした時にペインさんからクエスト同行の許可を貰えたのはラッキーだった。

〈ノズ森林〉での〈超級殺し〉と【破壊王(キング・オブ・デストロイ)】の対決は、森林を丸ごとを消し炭に変えるほどだった。近衛騎士団は森林火災を鎮めるため、ペインさんも同行して鎮火に当たっていたらしく、山道のふもとまでの道のりは荷車で熟睡していた。

 

「ま、ドライフ以外だってのは見当ついてるんだけどね……」

 

まるで自問自答するようにつぶやく。

僕がデスペナルティでログアウトされた後、掲示板では例のPKテロが話題になっていた。彼らの中では、ドライフ暗躍説が濃厚だった。

僕もデンドロ時間で半年前の戦争は知っている、というか、初ログインがまさにドライフとの戦争の真っただ中でドライフとアルターをスタート地点に選択できなくて、担当したジャバウォックがレジェンダリアを勧めたから、渋々同盟国のレジェンダリアに拠点を置いたのは今となってはもういい思い出だ。

 

デスペナ中にその掲示板に『そもそもドライフどんだけ財力凄いの?』と疑問を提示したところ、彼らも『ドライフは相当な財力を持ってる!』説が浮上しだしたが、ある人物がそれを遮った。

 

 

『いやいや、自分ドライフの者ですけど正直苦しい状況ですよwあと2回やったら余裕で破綻しまーすwww』

 

ふざけ半分のその書き込みは、当然ドライフの財力目当てだったらしい彼らによってその書き込みは炎上してしまったが、僕個人としては納得できるものだった。

あの戦争は、本来ドライフの破格の褒章は完全にアルター王国を潰す為のもの。だが三巨頭が出てしまった為に本土の警備も手薄になった所をカルディナに突かれて止む無く痛み分けとなった。

それなのに王国PKクラン連合を纏め上げて、相当な額の報酬を提示する余裕なんて、果たして経済破綻寸前の皇国にあるのだろうか?

 

「……ん?」

 

けど、その考えは何かを叩く音に中断された。

起き上がってその正体を見ると、メイプルの後ろ姿を見つける。自分の左手の宝石目掛け、石を叩きつける姿を。

 

「何やってんの!?」

 

思わず叫んだ。彼女も気付いて振り返ったのだが、様子がおかしい。

まるで目の前に強大な力を持ったモンスターとでも鉢合わせしたかのように、顔が恐怖で塗りつぶされていたから。

その疑問が頭の中で膨らむ前にメイプルは逃げだした。

待て待て待て待て。あの先は崖……!

 

「ッ!距離設定3メテル、《スチールウォール》!《サンダーショック》!」

 

彼女が中空に放り出されたと同時に、僕は魔法を発動。僕の正面3メートルの位置に地面から鉄の壁が出現する。

同時にエンブリオも起動して鉄の壁に電気を流す。これで条件は達成した。彼女の盾は背中に背負っている。いける。

 

「《起動(アクション)》!」

 

メイプルが落下する直前に僕のエンブリオ、《【磁界空域】スタージャン》を起動。

直後、崖下に転落するはずだったメイプルの身体は鉄の壁に吸い寄せられた。

いや、正確には電磁石となった鉄の壁がメイプルの木の盾の留め具に使われた金属を引き寄せたのだ。

 

「ったく、何考えてるんだよ!?危うく死ぬところだったじゃないか!」

 

「え?あ、か、カナデ!あの鎧が!あの鎧のPKが森にいたんだよ!」

 

「はぁ!?」

 

壁に捕らわれたままメイプルの支離滅裂な言葉に思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

頭痛のする頭を押さえ、今も激しい発作に襲われる彼女の肩に手を置いて説得する。

 

「あのねメイプル。契約書ってアイテムは条件を書き込んでサインした後でその条件を破ると、破った側がマイナス効果を受けるの。分かる?例え契約書の契約が不成立だったとしても、ギデオンとの交通を遮ってまであいつやそのクランがここでPKをして入るメリットが存在しないの」

 

そんなことをしたらまたフィガロさんにデスペナを受けかねない。僕ならあんな残虐ファイトに参加されるくらいなら大人しく身を引くに決まっている。

説得が効いてきたのか、メイプルもやっと大人しくなった。それを見て僕は《アイアンウォール》を解除する。

 

「ご、ごめん……」

 

呼吸を整えてやっと荷車に戻るメイプル。

これは相当拗らせてる。厄介な事にならなければいいと思っていると、クロムが入れ替わりにやってきた。

 

「交代だ」

 

「おっけー。で、聞いてたの?」

 

了承と共に飛ばした質問にクロムは沈黙。

つまり肯定でいいですね?

 

「……結論を言うと、あの子にこのゲームはキツ過ぎる」

 

確かに。

リアルと寸分違わない人間との人付き合い、自分の身体を動かす感覚、その上での行動そのもの。それらが面倒になって辞めてしまう人もいるのは小耳に挟んだことがある。また、PKなどの悪辣な行為でトラウマを負ってしまったりとか。続ける人にはよくあることだ。

すぐに辞める人の理由は最初の戦闘の後。これはチュートリアルで視覚をリアルのままにしてしまった人が多い。

そして、ここではティアンの死は、マスターの死と違い永久ロスト。つまり死んでしまった以上二度と蘇生することは無い。現に戦争で王国は皇国に王と騎士団長、宮廷魔術師を筆頭に相当数を殺された。彼女のようなタイプには辛すぎるのも納得だ。

 

メイプルの場合、理由はトラウマ。今すぐ辞めても誰も文句は言わなかったのに、それでもあの子はここに足を踏み入れた。PTSDが悪化したり、人格障害を起こしかねないリスクを伴ってでも、友達を守りたいという理由で。

 

「先輩として、あの子の苦痛を少しでも和らげられればって思ってもいる」

 

「……ロリコン」

 

直後、クロムから拳骨を貰った。痛い。

 

「あ、クロムは〈K&R〉からPKされたんだよね?」

 

「まぁな。そのことに関してはあの子らほどの問題は無い。ただ……俺は別の問題が気がかりでな……」

 

〈K&R〉というと、東で〈月世の会〉の信徒を……あぁ、そういうことか。

 

 

 

 

ネクス平原

 

 

山道を抜け、平地へとやってきた一行。

ラングレイ曰く、この平原の道をまっすぐに進めばギデオンに到着する。

クエスト達成も目前に迫る中、ペインは荷車の屋根の上でクエスト画面を見ていた。

 

「やっぱり気になるの?」

 

「ああ。物資配達系のクエストの難易度は、余程捻くれた所じゃなきゃ精々難易度:二。それなのに今回は倍の難易度:四なのか気になってな」

 

「そこは私も思った。護衛でも難易度:三当たりくらいのはずなんだけどね……」

 

難易度:四のクエストは下級職1つカンストしてるパーティでも困難必須と言われている。だが、パーティの中に上級職が一人でもいればその難易度はグンと減る。

現にこのクエストに挑んだ六人のうち、メイプルとサリーを除けば全員上級職。失敗する要因は何一つない。

 

「……あー、訂正。なんとなくわかったかも、今回の難易度の理由」

 

「……みたいだな」

 

「……30人強か」

 

ふと、フレデリカとペイン、装備を血塗れの騎士のような風貌のものへと変えたクロムが東側の森林地帯に視線を向ける。各々武器を携えて。

 

刹那、御者目掛けて飛来した一本の矢が飛び出したクロムの盾に弾かれる。同時にそれに吊るしてあったのか、小さな布袋が音を立てて破れ、中の液体が大盾にぶちまけられる。

 

「な、なんですか!?」

 

「団体さんのお出ましだ!」

 

すかさずペイン、クロム、カナデが荷車から飛び降りる。

森林から現れたのは、数十人単位の山賊だった。

 

 




エンブリオ紹介。


《【磁界空域】スタージャン》

TYPE:テリトリー

到達形態:Ⅳ

能力:通電による電磁石化。

モチーフ:電磁石の発明家、スタージャン。

紋章:電磁石の磁界の断面図。

備考:
テリトリー内部の電気を帯びた鉄を電磁石化させる。現在の最大距離500メートルの半球型。
電磁石化した鉄は《起動(アクション)》の意思をトリガーに起動し、周囲の鉄を吸い寄せるほど強力な電磁石となり、《切断(クローズ)》でただの鉄に戻る。電磁石化した鉄は電気を流せば何度でも使用可能。その前に対象を選択することで一部だけに影響させることも。
解除しない場合、帯電している電気量に応じて電磁石となる時間が異なる。当然電気を流した量が多ければ持続時間も長くなり、所持者も微弱ながら電磁石の影響を受け、長時間その武器を手にしていると所持者にも【電磁石化】の状態異常に陥る。

弱点は一々鉄に電気を浴びせない限り効果を成さないことと、磁石に着かない金属には意味が無いし電磁石化も不可。当然布類などの鉄以外のものを直接電磁石化も不可能。
例として対象を選択しないことで相手の鉄製の武剣を電磁石化した場合、所持者は電磁石化しないがその分長持ちする。

カナデの場合、補給源の鉄は職業でほぼ無限に生み出せる上に、電気も【魔術師(メイジ)】の時に修得した下級電気魔法を使っているので他よりテンポが遅い分、詠唱省略しても強力な電磁石をもって制圧する。
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