最弱無敗の神装機竜~~黒き英雄と黒の王~~ 作:ユウキ003
ここでルクスの母親生存の理由が分かります。
ルインの1つ、ガーデンの調査が迫る中、
クルルシファーはルクスを恋人にしたて
エインフォルク家による婚約を破棄しようと
していた。だが、新王国四大貴族の血筋
であるバルゼリットが現れ、結果ルクス、
クルルシファーの2人はバルゼリットと
エインフォルク家から来た執事である
アルテリーゼの2人と戦う事に。
そして迎えた調査の日。クルルシファー、
バルゼリットの同行。ディアボロスの出現
などトラブルはあったものの、調査を
開始しようとした矢先、ルクスや黒鉄、
リーシャやクルルシファー、トライアド
の3人、合計7人が突如としてルインの
中に引き込まれてしまうのだった。
ガーデン内部。強い光に包まれた7人
だったが、やがて光が弱まり、目を開けると、
そこに広がっていたのは、例えるのなら、
人の手が入っていない、そのままの森。
原生林、とでも言えば良い環境。
「ここ、は?」
周囲を見回しながら呟くルクス。
「ここはルイン、ガーデンの中だ。どうやら、
取り込まれたようだな」
そんな中で、黒鉄は黒龍を解除し、人型に
なりながら呟いた。
「取り込まれた、ってクロッち簡単に
言うけど、それってこれまでなかった
事でしょ?ちょっと怖いんだけど」
どこか周囲を警戒しながら呟くティルファー。
「……これまでに無い反応、と言う事は、
何かに反応したのだろう。例えば、
ルクスの持つ角笛か、或いは誰かに」
「ッ」
彼の言葉に、静かに息を呑むルクス。
ルクスはこの前の話し合いで、角笛が鍵
ではない事。鍵とは、特定のDNAを持つ
人間である事は知っている。だからこそ……。
『まさか、この中に、鍵になる人が?』
ルクスは驚きながらも、女性陣を見回していた。
その時。
「その誰か?って言うのは誰のことかしら?」
クルルシファーが黒鉄に声を掛けた。
だがその声色は、どこか焦っているようにも
感じられた。
『まさか……』
と、黒鉄は確信めいたことを感じながらも、
今この場で話す事ではないと考えた。
「確証はない。だが、可能性として
思った事を言っただけだ。或いは、
神装機竜に反応したとも考えられる。
元々、機竜はルインから発掘された物
であるのだからな」
「……そう」
黒鉄の言葉に、クルルシファーはそれだけ
言うと、周囲を見回している。
「それで、このあとはどうする?隊長」
そう言って問いかけるシャリス。
「うむ。我々の知る限り、門の開閉は一定
だが、ここに入るときはそうではなく、
クロガネの言うとおり、何か、或いは
誰かに反応して我々を引き込んだ。
そう考えると、普段と違って何か変化が
あるような気もするが……」
「だったら重点的に調べるべきよ」
リーシャの言葉にそう言ったのはクルルシファーだ。
「しかし、その変化が我々にとって危険
な物かもしれないんだぞ?ここは
ある程度調査を終えたら帰還するべき
だろう。予定では明日の昼過ぎ辺りが
帰還予定だが、正直、早めに切り上げた
方が良いと私は思う」
そう言ったのはシャリスだ。ティルファー
とノクトも、賛成なのか頷いている。
その発言を聞き、今後の対応を考える立場に
あるのはリーダーでもあるリーシャだ。
「……ルクス、クロガネ。お前達はどう思う?」
「僕は……」
ルクスは言いかけ、クルルシファーの方を
一瞬チラ見してから、またリーシャの方へと
向き直る。
「チャンスがあるなら、調べるべきだと思います」
その言葉に、クルルシファーは僅かに驚いた
表情でルクスの方を見ている。
「幸い以前の戦いで入手したこの角笛があれば、
アビスを追い払う事も可能でしょうし、
正直、他力本願になってしまいますが、
ディアボロスでさえ圧倒したクロガネさんが
いれば、大丈夫だと思いますから」
そう言って、隣の黒鉄を見上げるルクス。
そして、残った黒鉄は……。
「……調べる、調べたいと言う意思がある
のなら、その間の護衛は任せて貰う。
あの黒龍モードならば、並みのアビスと
言えど一撃で屠る自信はあるからな」
そう言って、握りこぶしを作る黒鉄に、
先ほどの殺気を思いだしてシャリスたちは
苦笑を浮かべていた。
「そうか。ならば、今日はとりあえず
周囲を散策してキャンプをする場所を
発見し、そこでキャンプする。ここに
入ったのは昼過ぎだし、早めに休んで
明日の朝一番で周辺を探索。昼頃まで
探索したらここを出る。皆、これで
良いか?」
リーシャの言葉に、皆が頷いた。
と言う事で、機竜を解除した6人と黒鉄
は周囲を探索しながら、キャンプに適した
場所を探した後、飲み水として使える
湧き水がある場所から水を採取。これは
以前の調査を元に作られた内部の地図に
記されていたので問題なかった。更に
火を起こすためにあちこちから薪を
集めてきた。
そして、時間が過ぎていくにつれてガーデン
の内部が暗くなっていく。
「……ここってルインの中なんだよねぇ。
何で暗くなるのかなぁ」
すっかり暗くなった天井を見上げながら呟く
ティルファー。
「恐らく、中で生活する人間の事を
考えているのだろう」
たき火の様子を見ながら、持ってきていた
食材で温かいスープを作りながら黒鉄が
答えた。
「外の様子と連動させる事で、内部で生活
する人間の時間に対する感覚を狂わせない
ためだろう。一日中明るいままでは、
例え時計があっても今を夜と感じる事は
出来ぬからな」
「成程。確かに、ずっと明るいままでは
時間の感覚がおかしくなってしまいますね」
黒鉄の発言に頷くノクト。
「……かつて、ここにも人が居たんだな」
そう言って、シャリスは周囲を見回す。
そして……。
「かつての文明の人は、何を思い、こんな
物を作ったのだろうな」
ポツリと呟くシャリスの言葉に、皆が
黙りこくる。
やがて……。
「さぁ、出来たぞ」
黒鉄のスープが出来た。持ち込んでいた
食料、黒パンと干し肉にスープを加えた
簡単な夕食を取った後、警戒の観点から
交代で火の番と周囲の警戒をする事になった。
この番については、黒鉄とルクスが交代で
やる事になった。
そして、夜中。火の番をしていた黒鉄。
「クロガネさん」
そこにルクスが起きてきた。
「そろそろ変わりますよ?」
「あぁ、すまぬ」
立ち上がり、テントに戻ろうとした黒鉄だが……。
「何か、悩み事か?」
「え?」
「いや、何やら考え事をしていたような
表情だったのでな?話ならば聞くぞ?」
と言う黒鉄。やがてルクスはしばし迷った後。
「実は……」
と言って話し始めた。
たき火を挟んで向かい合う2人。
ルクスが話したのは、クルルシファーが
ルインに拘る事への疑問だった。
「なんて言うか。焦ってると言うか。
どうしてもここを調べたいって言う強い
意思があるように思えて」
「確かにな。それは我も思っていた。彼女は
普段から冷静な感じがあったが、今日は
どこか、急いでいると言う感じであった」
「ですよね。……あの、黒鉄さん。
やっぱり僕達の中に、鍵となる人が
居るんですよね?」
「恐らくな」
と、黒鉄が頷いた時。
「やっぱり、大体知ってたのね」
「え?!」
不意に聞こえた声。慌ててテントの方に
振り返るルクス。するとテントから
現れたのはクルルシファーだった。
「く、クルルシファーさん!?まさか、
今の話」
「えぇ。聞いてたわ。……それで、どうして
ルクス君やクロガネさんが、鍵は人だと知って
いたのかしら?」
どこか警戒するような視線に言葉を詰まらせる
ルクス。すると……。
「ルクスに教えたのは我だ。彼を責めて
やるな」
そう言って黒鉄が彼を庇った。
「教えた?じゃあクロガネさんは何故、
鍵が人だと知っていたの?」
「簡単な事だ。ルインを築き上げた太古の
文明、ロストエイジの世界に、我は
生きていた、と言う事だ」
「……。え?」
流石の彼女も、いきなりの発言に驚いて
面食らった様子だった。
「それは、どういうこと?それって
つまり……」
「まぁ、簡潔に言えば我は、お主達よりも
何万歳も年上という事だ」
「……それを、信じろ、と?」
クルルシファーは、冗談みたいな彼の発言
をいきなり信じることは出来なかった。
まぁ、普通に考えて今の言葉を信じられる
人間はそうそう居ないだろう。
すると、彼は……。
「これでもまだ、信じられぬか?」
そう言って右腕の、肘から先を黒竜のそれ
に変化させた。
「ッ!?腕が……!?」
更に黒鉄は肘の部分を見せた。そこを境目
にきっちり残りの腕は、普段通りであった。
それに更に驚くクルルシファー。
「クロガネさん。あなたは、一体」
「今言った通りだ。まぁ『何者か』、と
聞かれれば、『人の姿をした全く別の
生き物』、としか答えられんな。今は」
そう言いながら、腕を元に戻す黒鉄。
「……正直、常人離れしてるとは思ってたけど」
そう言って、クルルシファーはため息をついた。
「本当に人間を凌駕する存在だったなんてね」
「それで?我の言葉は信じて貰えただろうか?」
「えぇ。そして、出来れば話して欲しいわね。
知ってる事を」
「……良かろう。夜も長い。少し話しをしよう」
そう言って、黒鉄はルクスとクルルシファー
に話し始めた。まずは遺跡の鍵が人である
云々だ。最初に、鍵となる人物が特定のDNA
を持っている事や生前に調整を受けた人間で
ある事と、そのDNAについて簡単に説明をした。
「つまり、鍵となる人は、さっきクロガネさん
が言ったように生前、何らかの調整を
受けていた、って事?」
「うむ。当時の技術であれば、その程度の事は
造作もなかった。加えて人であれば
他の多数の人間達の中に隠すことも出来る。
仮に捕まっても、自害という選択肢もある。
それ故に、人に調整を施し、ルインの
鍵にした、と言う事なのだろう」
「……驚かされるわね。過去の人間たちの
技術には。ところで、質問なんだけど、
クロガネさんは古代の文字とかって
知ってる?」
「あぁ、もちろんだ」
「って事はつまり、クロガネさんは古代の言葉
も話したり読んだり出来る訳ね」
「その通りだ」
クルルシファーの言葉に頷く黒鉄。
「それにしても、なぜ古代の人達は、
人に手を加えるような事を」
と、小さく呟くルクス。
「……かつて存在した文明において、
体を弄る事に抵抗する者達が
居なかった訳ではない。だが、それが
有用だと判断されてしまえば、
その人体を弄る行為は瞬く間に許容され
て行った。それが、鍵を人にした事の
始まりかもしれぬな」
「有用だからって、そんなことをするん
ですか?」
「それがロストエイジの文明の発展の元
だからなのだよ、ルクス」
「え?」
「今よりも生活しやすい環境。暮しやすい
社会。『今よりももっと』、そんな言葉を
実現するために、人間の技術は進歩して
いった。神との戦争で文明が崩壊した、
ロストエイジの末期。その頃の文明の
発展スピードは、一言で恐ろしいと表現
出来る程であった。およそ100年の間に、
人類の技術は発展した。そしてそれは、
兵器も同じ事。当時夢物語だった、
それこそ空想の産物であった類いの兵器が
次々と開発、生産されていった。
……機竜も、その類いの兵器だった」
「じゃあ、もしかして、その今よりも
もっと良い生活のために、当時の人は
何でもしたって言うんですか?」
「何でも、と言う訳ではないが、技術を
前進させる事に停滞がなかったのは
事実だ。数年ごとに技術が更新されていき、
少し前まで最新の技術だったものが、
10年と経たずに古い技術呼ばわりされて
いたのは、よくある事だった」
「……当時の文明が如何に凄かったのか、
少し分かってしまうわね」
驚嘆とも、呆れとも取れる発言をする
クルルシファー。
「まぁお主達が驚くのも無理はない。
しかし、犠牲がなかった訳ではない」
「「え?」」
彼の言葉にルクスとクルルシファーは同時に
首をかしげた。
「文明発達の影で、この世界は汚染されていた。
海も、空も、大地も。それら全てが人間の
手によって汚染されていった。
豊かだった大地はひび割れた荒れ地へと変わり、
澄んだ空気は汚染されてしまった。
海には人間が無造作に捨てたゴミが浮かび、
そして陸海空で生きる、他の動物たちを
時には絶滅へと追いやった。文明や技術の
発達による暮しやすい社会を、光とする
のなら、その影で動物たちが死んでいく事
や、この大地を汚染している事は闇。
そして、人間はその闇の現実を直視せず、
自らがこの星の頂点だと驕るようになった。
結果は……」
「神の怒りを買い、戦いの果てに旧文明は
滅び、僅かに生き残った人々が、今を
生きる人々のご先祖様、って事ね」
「その通りだ」
と、クルルシファーの言葉に頷く黒鉄。
「じゃあ、私から質問。過去の文明で
人の体を弄るのって、結構あった事
なのかしら?機竜の適性とかで」
「うむ。その答えは、『頻繁に』、と言う
べきだろうな。と言うより、ドラグナイト
になる者はほぼ全て、機竜への訓練以前に
適合手術を受けていたようだぞ」
「え?ほぼ全員、ですか?」
「うむ」
ルクスの言葉に頷く黒鉄。
「病気などの理由がある者以外は、
適合手術を受ける事は、通過儀礼のような
ものだったようだ。するとしないでは、
稼働時間や相性の問題があるからな。
男女問わず、手術を受けていたと聞いた
事がある」
「じゃあ、その手術を受けた事による適性を
今に生きる人が受け継いだりはしてない
の?ご先祖様である彼等は手術を受けた
んでしょう?」
「確かにな。しかし現代までの間に
世代を跨ぎすぎている。加えて、当時
適合手術を受けた者の大半は、神との
戦いで命を落としているだろうしな。
生き残っていたとしてもごく少数であろう。
そしてそれゆえに、彼等の適合性という
形質は、今も受け継がれているかも
しれぬが、微々たる程度だろう」
「……そう」
小さく頷いたクルルシファーは、静かにその場
から立ち上がった。
「もう寝るわ。おやすみなさい」
彼女はそれだけ言うとテントに戻っていった。
それからしてしばらく黙っていたルクスと黒鉄。
「あの、クロガネさんも休んで下さい。
明日のこともありますし」
「分かった。ならば、お言葉に甘えると
しよう」
そう言うと黒鉄は立ち上がり、男子用の
テントに入って行った。
そして1人残されたルクスは、クルルシファー
の事や、明日の夜に迫る決闘の事に思いを
馳せるのだった。
翌朝。起床したメンバーは朝食を食べた後に、
二手に分かれて探索を開始した。
1つが、ルクス、クルルシファー、黒鉄の班。
もう一つが、リーシャ、シャリス、ノクト、
ティルファーの班。
この班になった意味は、今日の夜に決闘が
あるルクスとクルルシファーに、なるべく
楽をさせたいと言う黒鉄の提案だった。
どういうことかと言うと、黒鉄ならば
仮にディアボロス並みのアビスが出てきても
単独で撃破出来る為、不必要にルクス達が
戦う必要が無くなるから、と言う事だ。
そしてルクス達の班は、祭壇、と呼ばれる
中心部に向かった。リーシャ達は周囲を
探索している。
そして、黒鉄たちが歩いていた時だった。
「ねぇクルルシファーさん。黒鉄さんの前
だけど聞いて良いかな?」
「何かしら?」
「どうしてクルルシファーさんは、黒き英雄
を探していたの?」
「……同じよ」
「え?」
クルルシファーの言葉に首をかしげるルクス。
「私がここに来たのも、黒き英雄を
探しているのも、ある同じ理由から。
とだけ言っておくわ」
その言葉に、ルクスが首をかしげていると……。
「2人とも、見えてきたぞ」
先頭を歩いていた黒鉄の声に気づいてルクス
も視線を前に向けた。
彼等がたどり着いた祭壇、と言うのは、不思議
な円形の柱が並び、その中央にこれまた
不思議な形のオブジェクトが配された
場所だった。
そして、クルルシファーが静かに中央の
オブジェクトに近づいた時。
祭壇全体が光を放ち始めた。
「な、何がっ!?」
戸惑いながらも腰元のソードデバイスに手を
伸ばすルクス。
その時。
どこからかノイズ交じりの放送が入った。
しかし内容が分かるのは、古代語の
読み書きと会話が出来る黒鉄だけだ。
≪『鍵』の存在を確認しました。特殊コード
の解錠を行います。問題がなければ、転送
を開始します≫
「ッ!?クルルシファー・エインフォルクっ!
今すぐそこから離れろっ!別の地点に
転送されるぞっ!」
「えっ!?」
黒鉄の言葉に、ルクスは驚き彼を見て、
直後にクルルシファーの方へ視線を向けた。
「クルルシファーさんっ!」
咄嗟に呼びかけるルクス。しかし彼女は
ただ呆然と立っているだけだ。
「くっ!ルクスっ!」
「あっ、はいっ!」
黒鉄に続いて、咄嗟に駆け出すルクス。
そして2人が彼女に触れようとしたその時。
眩い光が3人を包み込んだ。
突然の光に3人が目を閉じ、そして光が
収まると目を開いたが、転送の言葉通り、
3人は祭壇からどこかの回廊らしき場所へと
移動していた。
そしてそこには、無数のカプセル型の箱が
辺り一面に存在していた。
「ここって……」
ルクスは周囲を見回しながら呟く。
「……恐らく、何らかのデータの保管庫で
あろう。これらはさしずめ、金庫と言った
所か」
その問いに答えたのは、この中で唯一旧文明
を知る黒鉄だ。
その時、クルルシファーがそのボックスの
前に屈み込んだ。
「昔、こんな形の箱の中から、幼い私が
発見されたそうよ」
「それって……」
戸惑うルクス。そして、そんな彼に対して
クルルシファーはゆっくりと話し始めた。
自分がユミル教国にあるルインの1つ、
『坑道(ホール)』と呼ばれる遺跡から
発見された事。その調査を行っていた
エインフォルク家の家長である義父に
拾われ、養子となった事。しかし、その
出生からか周囲との溝があり、それを
埋めるために努力した事。しかし、
それが仇となり、神装機竜を与えられた
結果、兄や妹には疎まれる結果となって
しまった事。その現実が、彼女と
エインフォルク家の人間の溝を逆に
大きくしてしまった事を。
そして、自分が遺跡の生き残りである事
を否定する為に、自分がエインフォルク家
の人間である証明を探すために、遺跡の
調査へ拘っていた事。
そして更には、今回の一件で、自分が鍵、
即ち遺跡の生き残りである事を確信して
しまった事。
それを聞いたルクスは、まだ他のルインも
調べようと言うのだが……。
肝心の彼女は、「もう良いの」と、呟いた。
「怖くなってしまったのよ。遺跡を探し
続けて、仲間も私を認めてくれる人も
居なかったら……」
そう、彼女はどこか悲しそうな表情で
呟いていた。
「クルルシファーさん」
そんな彼女に声を掛けるルクス。黒鉄は、
黙ったまま腕を組んでいる。
「ごめんなさい。私の我が儘に付き合わせて
しまって。こんな、誰でも無い人間の
ために……」
「そんな事ないっ!」
自虐的な笑みを浮かべるクルルシファーの
言葉を、ルクスが否定した。
そして、彼はクルルシファーの手を取る。
「ユミル教国もエインフォルク家も関係
ないっ!クルルシファーさんは僕達の
仲間で、今は僕の恋っ、パートナー
でしょっ!?だからそんな、そんな
寂しい事、言わないでよ」
お互いに顔を赤くするクルルシファーと
ルクス。
しばしお互い黙っていたが……。
「クルルシファー・エインフォルク。
我からも1つ、言っておく」
黒鉄が静かに歩み寄り、優しい声色で
語り始めた。
「この世の中に、誰でも無い人間など
存在しない。お主は間違い無く、
クルルシファー・エインフォルクだ。
例え家名が、飾り程度の物だったとしても、
お主は間違い無く、ユミル教国で生まれ、
今と言う時間、我々と行動を共にする仲間だ。
そして、仲間という定義は曖昧だ。
だからこそお主と同じ存在だから
仲間という定義はおかしく、そして
同時に、我々もまた、十分にお主の
仲間となれる存在なのだ」
「ルクス、君。クロガネさん」
クルルシファーはしばし呆然とした様子だが……。
「ふ、ふふふ」
不意に笑みを浮かべ始めた。
「え?え?」
それに戸惑うルクス。すると……。
「ルクス君。1つ忠告しておいてあげるわ。
女の弱音を、あんまり本気で受け取らない
方が良いわよ?」
「えぇっ!?さっきのは嘘だったのっ!?」
そうやってやり取りをする2人を見守る
黒鉄。しかし彼には、先ほどのクルルシファー
の言葉が、とても嘘の類いには思えなかった
のだ。最も、それをこの場で言う程彼は
野暮では無かったので、普段の感じに
戻った彼女を前にして静かに息をつくの
だった。
「でも本当に、どうしてそんなにお人好し
なのかしらね?」
やがで話題は、ルクスの事となった。
「あの悪名高い旧帝国の王子様だったのに」
その話を聞いた時、ルクスはどこか遠い目
をした。
「元々お人好しだった訳じゃないと
思うけど、ある出会いがきっかけ、
なのかな」
「出会い?」
「うん」
そう言うと、ルクスは近くにあった瓦礫に
腰掛けて話し始めた。
自分と母、妹のアイリは、母方の祖父の皇帝、
つまりルクス達の父親に対する諫言が元で
皇帝の怒りを買い、宮廷を追い出されたこと。
そして土砂降りの雨の中を進んで居た馬車が
崖下に滑り落ち、ルクスは大した怪我も
無かったが、御者は死に、ルクスの母親も
瀕死の重傷を負ってしまった。
ルクスは崖の上を行く人々に助けを求めたが、
旧帝国のやり方に虐げられ、皇族に恨みを
持っていた人々から返ってきたのは罵詈雑言。
「その時僕は、全てを恨みそうになった。
皇族も、国民も。誰も僕達の事なんて、
どうなろうと知った事じゃないと
言わんばかりの態度。怒りと絶望で、
頭の中がグチャグチャになりそうだった」
静かに、あの時の事を思い返すルクス。
今思い出すだけでも、決して小さくない怒り
が巻き起こる。だが、それでも……。
「でもね、その時。『天使様』が現れたんだ」
「え?天使、様?」
クルルシファーは耳を疑った。普通に考えれば、
天使など神話の存在だ。
「土砂降りの雨の中、死んでいく母さんを
前にしながら、泣いていた時だった。
ふと、自分に降り注ぐ光に気づいて上を
見上げた時、『光』が雨雲を消し飛ばした
んだ」
『ピクッ』
その話を聞いた黒鉄は、2人に気づかれない
ように眉を動かした。
「そして、晴れた空に、天使様が浮かんでいた。
その体から光を放ち、大きな翼を羽ばたかせ
ながら、僕らを見下ろしていた。その時
だった。天使様から降り注いだ光が、母さん
を癒やした。でも母さんだけじゃなかった。
僕もその時、怪我をした。それすらも
天使様は治してくれたんだ」
「それは、その、本当にあった事なの?
夢とかじゃなくて?」
未だに信じられない様子のクルルシファー。
「僕も正直、目を疑ったよ。事故で出来た傷
が瞬く間に消えたんだから。……そして、
天使様が去って行く時、声が聞こえた
気がしたんだ」
「声?」
「うん。……『人は時にその内側の醜悪さを
見せるでしょう。でもどうか忘れないで。
それだけが、人の本質ではない』、って。
正直、あんまり覚えて無いんだけど、そんな
感じの事を、天使様に言われたような
気がしたんだ。そして……。フィルフィ
がその言葉を、証明してくれたんだ」
「あの子が?」
「うん。もう皇族としての立場も何も無い。
実際、僕が皇族であった頃は色々おべっか
を使ってきた人達も、大勢掌を返していた。
でもそんな中で、フィルフィだけが
ずっと傍に居てくれた。それで、
気づけたんだ。天使様の言葉の意味に。
……確かに人間は時に戦争を起こす。
誰かを憎む。誰かを見下す。でも、それが
人間の全てじゃないって、天使様と
フィルフィが教えてくれた。そして僕は
気づいたんだ。本当は、僕は誰も
嫌いになんてなりたくなかった。僕の
大切な人になるかもしれない人達を、
帝国のせいで嫌いになりたくなかった」
「それが、ルクスが黒の英雄として戦った
理由か?」
「はい。……好きな人を憎まずにいられる
国を作りたかった」
黒鉄の言葉に応えるルクス。
その時。
「あなたがもし新王国の王子様になっていたら、
私のことも助けてくれたのかしらね?」
「え?」
彼女の言葉が聞こえず、聞き返すルクス。
「何でも無いわ」
しかし彼女はそう言うだけだった。
すると直後。
『ドドドドドドドドッ!!』
天井の一部が崩落し、そこからドリルを
装備したリーシャのティアマトと更に
トライアドの3人達が機竜を纏った
状態で現れた。
そして結局、ルクスは最後に聞いた
クルルシファーの言葉の意味を聞く暇も
無く、探索は終了。夕方には学園へと
戻ってきたのだった。
そしてルクスと黒鉄は、クルルシファーが
鍵である事を、報告はしなかった。彼女に
迷惑を掛けないように、と男2人で決めた
事だった。
そして夕方。自室で休んでいたルクスは
アイリと話をしていた。そして彼女が
持ってきた薬湯を飲み、そのまま眠って
しまった。
それは、これ以上彼を巻き込みたくない、
と言うクルルシファーの意思によって、
彼女にお願いされたアイリが睡眠薬入りの
薬湯を飲ませたのだ。
そしてルクスの部屋を後にするクルルシファー。
だが、それを黒鉄が廊下の影から見つめていた。
そして彼の常人離れした聴覚は、彼女と
アイリの話を聞いていたのだ。
と、そこへリーシャが現れた。
「む?クロガネか?どうしたこんな所で」
「あぁ、リーシャか。我はルクスの様子を
見にな。それよりお主もか?」
「私は、まぁそんな所だな」
と言って若干顔を赤くするリーシャだったが、
何かに気づいたようにハッとなった。
「そうだ。折角だからクロガネにも
教えておくとしよう」
「む?何をだ?」
「実はルクスから依頼されてな。私の
顕現であのバルゼリット卿について
少し調べてみたんだが、少々、いや
かなり臭い奴だったよ、あの男は」
「と言うと?」
「調べてみた所、かなりの野心家で、
過去には何度か賊連中を私兵として
雇っていた可能性がある」
「……そうか」
それだけ聞くと、黒鉄は歩き出す。
「む?ルクスの様子を見に来たのでは
無いのか?」
「いや、急用を思いだした。今は他の
生徒達に教鞭を執っている都合上、
我も色々忙しくてな。これで失礼する」
「あぁ分かった。じゃあなクロガネ」
そう言って別れた黒鉄とリーシャ。
だが、黒鉄は学園を出て行くクルルシファー
を遠方から見つめ、そして……。
「さて、代理の助っ人ならば、問題無い
であろう」
何かを決心したようにそう呟くと、彼は
山々に沈み行く夕陽を見つめてから、
静かに歩き出すのだった。
第10話 END
まだ名前も出てませんが、天使様とは『彼女』の事です。
一応登場シーンをゴジラKOMのワンシーンに似せてみたので、
分かる人は分かると思います。
感想や評価、お待ちしてます。