最弱無敗の神装機竜~~黒き英雄と黒の王~~   作:ユウキ003

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ちょっと意欲がブーストしてるんでスピードが上がってます。
まぁ何時失速するか分からないんですけど……。



第11話 真夜中の戦い

ルイン内部へと取り込まれたルクス達は内部を

調査する事になった。初日はキャンプをし、

翌日の朝から調査を行った。そんな中で

クルルシファーは黒鉄が人外である事を知る

一方で、ルクスと黒鉄もクルルシファーの

出生の秘密を知るのだった。

そして無事探索から帰還し、2人は決闘に

望むことに。しかしこれ以上ルクスを

巻き込みたく無いクルルシファーによって

ルクスは催眠薬入りの薬湯を飲んで眠って

しまうのだった。

 

 

夜。決闘場所に指定された場所に彼女は

立っていた。そこは数年前、アビスの襲撃を

受けて廃れた教会の跡地だ。今は誰も

寄りつかない場所だ。

 

そして、そこでバルゼリットとアルテリーゼ

が待ち構えていた。

バルゼリットはルクスが居ない事を、半ば嘲笑

するように問いかけてくる。

 

「帰って貰ったわ。こんな下らない茶番に、

 これ以上彼を付き合わせたくないから」

 

そう言って彼女がソードデバイスを抜こう

とした時。

 

「ならば、我が代理でも構わぬかな?」

 

本来ここに居ないはずの男の声に、その場に

いた3人。特にクルルシファーは驚き、

声がした方向へと目を向けた。

 

すると廃墟と化した瓦礫の上に、いつの

まにか黒鉄が立っていた。

そして彼は常人離れした脚力でクルルシファー

の隣に着地した。

 

「く、クロガネさん。どうして来たの?

 あなたは何の関係も無いでしょ……!?」

「あぁ。関係無い。関係無いからこそ、

 我個人の意思で首を突っ込むだけだ」

「分かっているの?相手は新王国の貴族

 なのよ?下手に関われば……」

「問題無い。我は旅人。流浪の民だ。

 いざとなれば国を出て行く事に、何の

 躊躇いも無い。……それに、個人的に 

 あの男が気に入らないのでな」

「そ、それだけの理由で?」

 

黒鉄の言葉に困惑するクルルシファー。

 

「あの時、お主にルクスは言った。

 お主の仲間だと。だが、それはルクスだけ

 に限った話ではない。少なくとも我は、 

 お主を同じ学び舎で共に過ごす学友と

 思っている」

「ッ」

その言葉に息を呑むクルルシファー。

 

「さぁ、そういうわけだ。我が臨時の

 助っ人として参加しても構わぬだろう?」

「ッ!?そんなことは……」

咄嗟にアルテリーゼが何かを言おうとするが……。

 

「それとも、そちらの2人は、2対1の数的

 有利が無ければ決闘も出来ない臆病者の

 チーム、と言う訳か?」

「ッ!くっ!」

黒鉄の言葉に唇を噛むアルトリーゼ。

 

ここで黒鉄の参戦を断る事は普通だ。

そもそも決闘は、ルクス達とバルゼリット達

のもの。部外者である黒鉄が参加するのは

おかしい。

そして先ほどの煽りと言える言葉は挑発。

 

ここで黒鉄の参戦を拒否すれば、そして更に

万が一その話が広まれば、2人は家や自分

の名声に泥を塗ることになる。

 

かといって彼の参戦を認めてしまえば

2対2になるのは確定。

しかも黒鉄の事は2人ともある程度知っていた。

その戦闘力を考えれば彼との試合は

パワーバランス崩壊どころではない。

 

だが……。

 

「旅人の平民風情がっ!」

野心家でプライドの高いバルゼリットは額に

青筋を浮かべている。

「よかろうっ!ならば貴様も倒し、この決闘に

 勝利するだけの事っ!」

「ッ!?バルゼリット卿っ!それは……!」

「あなたも執事である前に1人の

 ドラグナイトでしょうアルテリーゼ殿。

 それを、あんな男に臆病者呼ばわりされて

 黙っているつもりですか?」

「ッ!?」

 

バルゼリットの言葉に息を呑むアルトリーゼ。

「……分かり、ました」

そして彼女も渋々と言った感じで頷く。

 

そして剣を、ソードデバイスを抜いた3人が

パスコードを叫び、ファフニールを、

アジ・ダハーカを。そしてアルテリーゼ

は陸戦型のワイアームの強化型、

『エクス・ワイアーム』を纏った。

 

そして……。

「ふぅ」

黒鉄が息を吐くと、その体を魔法陣が通過

し、彼は黒龍を纏った。

更に両腕のブレードが音を立てて回転する。

 

『グルルルルッ』

 

黒龍は、獣のようなうなり声を上げながら腰

を落とし、両手を左右に広げる。

臨戦態勢の黒龍。

 

そして、戦いが始まった。

 

クルルシファーは初手としてアジ・ダハーカ

にダガーを投げつけた。それはダハーカの

障壁に防がれてしまった。しかし、その隙を

狙い放たれたフリージングカノンの一撃。

 

これこそがクルルシファーの得意とする

バトルスタイルである遠距離からの精密射撃。

 

しかし、フリージングカノンの一撃は、

近くにあった瓦礫を盾にする事で防がれて

しまった。

 

と、今度はそこにアルテリーゼのエクス

ワイアームがファフニール目がけて

襲いかかる、が……。

 

「ぬぅんっ!」

その間に割って入った黒龍のブレード

による一撃。アルテリーゼは咄嗟に回避

に転じた。そして、回避を選んだ事に

内心安堵していた。

 

まるで大気を切り裂いたかのような

風切音が響き、そしてアルテリーゼの

背中を冷たい汗が伝った。

 

『と言うか、彼はこれが決闘だと理解

 しているのか!?』

内心悪態を突くアルテリーゼ。

今の一撃は、防御していれば防御をも

砕いて自分をも切り裂いていたのではないか?

と言う疑問が彼女の頭の中で芽生える。

 

「この女執事は任せよ。お主は、あの

 ナルシストのキザったらしい男を

 仕留めてくると良い」

通信である竜声を通して聞こえる黒鉄の声。

 

「元から、そのつもりよっ!」

 

出力を最大にして前に出るファフニール。

「はっ!来るかっ!」

ダハーカは両肩の砲門から光弾を放って

それを迎撃するが、未来予知の神装である

ファフニールのワイズブラッドの前には

それも無力だ。軽々と砲撃を避け、

ブレードを手にダハーカへと斬りかかった。

 

だが、それは腕を掴まれ止められて

しまった。と、その時。

 

「む?」

 

黒鉄、黒龍はおかしなエネルギーの流れを

感じ取り、ダハーカとファフニールへと

目を向けた。

 

『この感覚は……』

「どこを、見ているっ!」

 

よそ見をしている黒龍に斬りかかる

アルテリーゼのワイアーム。だが……。

 

『ガシッ!バキィィンッ』

「なっ!?」

そのブレードは左手で簡単に受け止められ、

すぐさま音を立てて握りつぶされた。

 

流石に歴戦のドラグナイトである彼女でも、

いや、歴戦だからこそその行為に驚き、

隙が生まれてしまう。

 

そして……。

『ドゴォォォォンッ!!』

「がはぁっ!?!?」

 

繰り出された右拳が腹部に命中し、彼女は

口から血を吐き出しながら吹き飛び、

廃墟の瓦礫に激突した。

 

何とか瓦礫から這い出るアルテリーゼ。

だが今の彼女は、黒龍のモーションから

今の攻撃が、彼の本気では無い事を理解し、

同時に戦慄していた。

 

『本気を出すまでも無いと。私程度、

 片手間で倒せる、とでも言うのか……!?』

 

ユミル教国でも、10本の指に入ると言われた

高いレベルのアルテリーゼをしても、黒鉄

にとっては少し強い雑兵の1人、と言った所だ。

ドラグナイトとしてのプライドがズタズタ

にされる一方で、彼女はある事を考えていた。

 

『こんなにも、強い人が、居たのか』

 

今正に戦うバルゼリットとクルルシファー。

そんな中で彼女は更に思った。

 

『彼とバルゼリット卿が戦ったら、一体

 どちらが強いのか』、と。

 

そして、そこで彼女の意識は途絶えた。

 

 

だが、そうこうしている内に、何故か

クルルシファーの攻撃が当らなくなり、

逆にバルゼリットが全ての攻撃を避けるよう

になった。

 

「当らないっ!?それに、どうして予知が……!?」

「それはな、お前が俺の実力を見誤って

 いたからだっ!」

 

ワイズブラッドが使えなくなった事への戸惑い

から隙が生まれるクルルシファー。

そしてそれをチャンスとみたのか、ダハーカ

の両肩から極太のビームがクルルシファー

目がけて発射された。

彼女はそれを咄嗟に、オートシェルドで

ガードする。何とか防いだ。が……。

 

『ドガァァンッ!』

「きゃぁっ!」

その隙を突いて背後から叩き付けられた

ハルバードの一撃が、ファフニールを

吹き飛ばし、瓦礫に叩き付けた。

 

更にその衝撃で、彼女のファフニールが

解除されてしまった。

 

だが、その状況でも黒鉄はあまり動こうとは

しない。

 

すると、バルゼリットはクルルシファーとの

会話の中で、奴が、クルルシファーがルインの

鍵である事を既に知っていた事。だからこそ

アルテリーゼを通して婚約を持ちかけた事。

あのディアボロスの襲撃も、更にそれ以前の

賊による襲撃も、全て自分が関与している事を

ベラベラと口にするバルゼリット。

 

「分かっているなクルルシファー。この俺に、

 道具のお前如きが逆らってはならないのだ」

そして奴は、クルルシファーを『道具』と

語った。

 

戦いに敗れた彼女の中で、絶望が顔を覗かせ、

彼女を浸食していく。

 

エインフォルク家の人間になろうと、認めて

貰おうとしてもダメだった。

 

普通の人間だと信じていた願いも無残に

打ち砕かれた。

 

そして……。

「わかるだろう。お前を助ける人間など、

 この世界には居ない事を。そして

 受け入れろ。道具である自分は、俺の

 物になる定めだと言う事を」

 

その言葉が彼女を浸食していく。

 

と、その時。

 

『ドウッ!!!』

 

黒龍のヒートブラストがアジ・ダハーカに

向かっていった。だが、それを、ワイズ

ブラッドを使って回避するダハーカ。

 

「……外道もここまで来ればいっそ清々しい、

 かと思って居たが、やはり外道は外道。

 所詮は外道。魂の醜さもここまでか」

 

その口から、まるで怒気を現すかのように

煙が立ち上り、黒鉄の声も、怒気が

見え隠れする程、普段のそれよりも声の

トーンが低い。

 

黒鉄自身が最も嫌う人間の側面の1つ、

『傲慢』を現したかのような人間である

バルゼリットに、黒鉄はいよいよ我慢の

限界が近かった。

 

「ハッ!強がるな旅人風情がっ!貴様も、

 この女のように、俺の実力で

 ねじ伏せてくれるっ!」

 

「貴様の実力、だと?笑わせてくれる」

「なに?」

「他人から奪った能力をしたり顔で

 使っておいて、言うに事欠いて

 実力とは、滑稽の極だな。

 覇者とやら」

「ッ!?奪う、ですって?」

 

黒鉄の言葉にクルルシファーは戸惑った。

「先ほどアジ・ダハーカがファフニールを

 掴んだ時、妙な力の流れを感じた。

 そこから察するに、恐らくアジ・ダハーカ

 の神装か何かであろうが、能力は恐らく

 他の神装機竜の神装をコピーするか、

 或いは一時的にその機能を奪う事。

 奪う、と言うのであればファフニールが

 ワイズブラッドを使えなくなったのも、

 奴の回避性能が良くなったのも

 うなずける物だ。そして、そのアジ・

 ダハーカの神装を自分の実力だと

 勘違いしてる阿呆とは、実に

 滑稽だ」

 

「貴様、この俺を滑稽と笑うかっ!」

「笑うとも。機体の性能を自分の実力と

 勘違いした貴様など、阿呆以外の

 何者でも無い」

嘲笑とも取れる言葉。

「ッ!貴様ぁっ!」

 

それに激昂したバルゼリットのダハーカが

ハルバードを手に突進する。ワイズブラッド

の前には大体の攻撃はかわされる。

だが、それでも黒鉄は……。

 

『ギギギィィィィィンッ!』

 

振るわれるハルバードの攻撃全てを、

弾き返して見せた。

振り下ろしても腕の刃で受け止め流し、

返す刀の切り上げも、ひらりと躱す。

「ぐっ!?バカなっ!?」

 

これには、未来予知で相手の動きを察知

出来るはずのバルゼリットも表情を

歪めた。

 

だが黒鉄にしてみれば、簡単な事だ。

彼の人外の能力を持ってすれば、相手が

攻撃モーションに入ってからそれを

受け流し避ける事など容易い。

 

如何にアジ・ダハーカの神装が優れている

とは言え、攻撃モーションに入ってしまえば

それをキャンセルする手段などない。

だからこそ黒鉄は簡単に受け流す。

傷をつける事など出来ない。

 

「ちっ!防御の才能はあるようだが、

 それだけだな貴様はっ!」

少しでも強気に見せるためか、額に

汗を浮かべながらもそう語るバルゼリット。

 

だが……。

 

「……貴様は何を勘違いしているか知らぬが、

 我はただの助っ人だ」

「ッ。まさか……」

黒鉄の言葉に息を呑み、目を見開く

クルルシファー。

 

そして……。

 

「貴様と決着をつけるのは、決闘をすると

 言っていた、彼女と彼以外に居るまい?」

 

黒龍がそう語っている背後の空。

 

いつの間にかそこには、月を背にした

漆黒の神装機竜、バハムートが浮かんで居た。

 

 

「すみませんクロガネさん。僕の代理を、

 押しつける形になってしまったみていで」

「気にするな。本音を言えば、あの男を

 我の手で八つ裂きにしたいくらいだが、

 これは元々ルクスと彼女の決闘。

 外野の勝手な手助けはここまでとしよう」

 

そう言うと、黒鉄は黒龍から普段の姿へと

戻ってしまった。

 

「そういうわけで、選手交代です。

 ルクス・アーカディア、現時刻をもって

 決闘に参加します」

 

そうして、決闘は開始された。だが、直後に

バルゼリットは、機竜を纏っていない無防備な

クルルシファーを敢えて攻撃する事でルクス

の隙を誘い、その隙にバハムートに触れる事で

その神装、リロードオンファイアを奪って

しまった。

 

そしてそこから押され始めるルクス。

 

「どうして?何の関係も無い私のために

 戦っているの?あなたにも、クロガネ

 さんにだって、何の得も無いのに」

 

彼女には、黒鉄が来た事も、ルクスが

現れた事も、理解出来なかった。

 

「貴様の目は節穴か、クルルシファー・

 エインフォルク」

 

その時、彼女の傍に立っていた黒鉄が

静かに語りかけた。

「我も、そしてルクスも、損得勘定で

 お主を助けに来たのではない。

 富や利益の為に、我らが戦うとでも

 思って居たのか?だとしたら、お主は

 ルクスや我のことを、何も分かっては

 居らぬ」

「え?」

 

「……奴は、貴様を道具と罵った。

 だが我もルクスも、お主を道具などとは

 思って居ない」

「どうして?私は遺跡の、鍵なのよ」

 

「……勘違いしているのではないか?

 クルルシファー・エインフォルク」

「え?」

「確かにお主には遺跡の鍵としての力が

 備わっているが、所詮力は力。お主の

 存在意義ではない。そんな事は、我らに

 とっては大して重要な事ではない」

「重要じゃ無いって言うのなら、どうして!?

 どうして、あなた達は……」

 

今も尚、圧倒されながらも戦い続ける

ルクスを見つめるクルルシファー。

 

「決まっている。仲間のため。友のため。

 自分が大切だと思う相手の未来を

 守るため。それ以外に、戦う理由など

 不要だ」

 

「仲間の、ため?」

 

「そうだ。我はお主という級友を、あの

 いけ好かない男から助けたかった。

 万が一決闘に負ければ、待っているのは

 奴との望まぬ結婚だからな。まぁ、我自身

 はルクスが来るまでの繋ぎ、だったが」

「でも、だからってなんで。自分から巻き

 込まれるような事を」

 

彼女にしてみれば、巻き込みたくなくて

睡眠薬を盛ったのだ。ならば、意図を察して

眠っていて欲しかったのだろう。

 

だが……。

「元より覚悟の上であろう。ルクスも。

 そしてもちろん我も」

「え?」

 

「単純な話だ。クルルシファー・エインフォルク。

 我もルクスも、諦めが悪い、と言う事だ」

 

静かに戦いを見守りながら語る黒鉄。

 

 

しかし、そんな中で戦いは、端から見ても

バルゼリットが優勢だ。

そんな戦いの中でバハムートに暴走の予兆が

現れ始めた時、バルゼリットは笑みを

浮かべながら語り始めた。

 

自分が、この国に迫る危機である終焉神獣、

『ラグナロク』と呼ばれる化け物と戦おうと

している事。そのために、遺跡から新たな力、

武装や技術が必要であること。そのために

クルルシファーが必要である事を。そして、

異国の女、つまりクルルシファー1人で

『国が守れるのなら、安い物だろう』、と。

聞かれてもいないのに偉そうにベラベラと語る

バルゼリット。

 

「もう良いわルクス君。あなたは十分、

 私の恋人役を果たしてくれた」

 

その時、クルルシファーが弱々しい声で

彼を止めた。

 

「まだ終わってません……!」

「無理をしなくて良いのよ。私はあなたを

 利用していただけ。私にとってあなたは

 ただの道具。だからあなたもそう言って。

 私をただの『道具』だと」

 

肩をふるわせるクルルシファーを傍で

見下ろしながら、静かに2人の会話を

見守る黒鉄。

 

「最初からそう割り切ってくれたら、

 『もしかして』なんて期待せずに

 済むから……。こんな思い、しなくて

 済むから」

 

涙を流すクルルシファー。

 

そして、それゆえに……。

 

今この場に居る2人の心に、『炎』を

灯してしまう。

 

「あなたは僕の恋人ですよ。だから、

 必ず助けます」

 

確固たる信念の表情で、ルクスは

バハムートのブレードを握る。

 

「はっ!その状況で何を言うっ!

 この没落王子めっ!よしんば俺に

 勝てたとして、ならばラグナロクは

 どうするつもりだっ!貴様程度に、 

 あれが止められるとでもっ!」

 

偉そうに、自分ならばラグナロクを

倒せると言わんばかりの自信を見せる

バルゼリット。

 

だが……。

「何を勘違いしている。このド阿呆が」

その時、黒鉄が前に出てルクスのバハムート

の隣に並んだ。

 

「2人だ。我ら2人で、貴様の代わりに

 ラグナロクなど、討伐してくれる」

「はっ!何を言い出すかと思えばっ!

 相手はあのラグナロクだぞっ!貴様等

 如き、勝てる訳がないっ!」

 

「自分の物差しで相手を測るなド阿呆めが。

 そして、貴様は我ら2人の事も何も分かって

 はいない」

 

「何っ?」

 

「確かに、驚異的な存在であるラグナロク

 から国を守るのならば、と。大半の

 人間は、先ほど貴様が言った、他国の

 女1人を云々という言葉に同意せざる 

 を得ないだろう。……だが、それは

 数多の一般人の考えだ。そして……」

 

ルクスも、彼が何を言おうとしているのかを

察したのか、小さく笑みを浮かべる。

 

そして……。

 

「我ら2人。彼女のために高々

 ラグナロクに挑む度胸と覚悟も無い

 ひ弱な軟弱者と一緒にして貰っては

 困る。それだけの事だ」

 

「はっ!何が挑むだっ!夢想家の愚者共がっ!」

 

「ふんっ。その言葉、貴様にそっくり

 そのまま返してやろう」

 

「何ぃっ!?」

 

「神装機竜、アジ・ダハーカの性能と神装に

 頼った貴様がラグナロクに挑む、だと?

 止めておけ、殺されに行くようなものだ。

 そして、その程度の貴様だからこそ、

 考えも所詮二流」

 

そう言って、バルゼリットを鼻で笑う黒鉄。

 

「我々の選択はただ1つ、クルルシファー

 ・エインフォルクを助け、且つ、この国

 に迫る危機、ラグナロクを倒す。

 それが我らの選択だっ!」

 

威風堂々とした姿で、バルゼリットを

睨み付ける黒鉄。

 

「と、まぁ勝手にお主込みで語って 

 しまったが、構わないか?ルクス」

「ふふっ、大丈夫ですよ黒鉄さん」

 

ルクスは、額に汗を浮かべながらも笑みを

浮かべている。

 

「なぜなら、僕も同じ気持ちですからっ!!」

 

そして、次の瞬間、ルクスは飛び出した。

 

「愚かなっ!神装も奪われ、機竜も

 暴走寸前の貴様に、何が出来るっ!」

 

バルゼリットは、障壁を展開しこれで

ルクスの攻撃を受け止め、ハルバードの

一撃で彼を屠る気だった。

「死ねっ!英雄気取りの没落王子めっ!」

 

だが……。

「リコイルバーストッ!!!」

ルクスは自身の持つ奥義の1つである、

『強制超過(リコイルバースト)』を発動させた。

 

そして、バルゼリットに向かっていく刹那。

 

「僕は英雄になんてなりたくない。それでもっ。

 帝国を滅ぼすと誓ったあの日から、戦う

 覚悟は出来ているっ!!」

 

ルクスの全力が、障壁を突破し、その一撃は

アジ・ダハーカを『撃破』した。

 

地面に倒れ伏す、壊れたアジ・ダハーカと

バルゼリットを見下ろしながら、ルクスは

自分の意思を伝えるように叫ぶ。

 

「僕の大切な人は、僕が守るっ!」

 

そして、月下の空の下、自らの思いを叫ぶ

ルクスを、クルルシファーは静かに、頬を

赤くした姿で見つめていた。

 

 

こうして、勝負は決着が付いた。

 

ちなみに、バルゼリットは諦めが悪く

人払い、と言う事で周辺に配置していた

機竜によってルクスを屠ろうとしたが、

その手を読んでいたルクスの策略によって

奴の手下たちは、リーシャやフィルフィ、

シャリスたちによってあえなく御用となり、

更にバルゼリットも、クルルシファー

への恐喝。盗賊の私的雇用の容疑。

更に決闘のルール違反及び、故意の

殺害未遂などなどの結果、逮捕された。

 

こうして、バルゼリットの失脚は確実と

なり、クルルシファーの婚約も、無事

破棄される形となったのだった。

 

 

そして翌日。ルクスはクルルシファーと共に

アルテリーゼに会いに行っていた。理由は

婚約の話についてだ。

 

その時黒鉄は、まぁ当事者ではないのでいつも

通り生徒達に勉強や技術を教えていた。

 

そして、ちょうど戻ってきたルクス、

クルルシファー、それと護衛という名目で

付いていったリーシャの3人とばったり

遭遇した黒鉄なのだが……。

 

何やら疲れた様子のルクス。

どこかイライラした様子のリーシャ。

そして妙に肌つやが良くなったように見えるクルルシファー。

 

「……。お主等、何があったのだ?」

 

開口一番に首をかしげた黒鉄。

後々、ルクスから話を聞くと、アルテリーゼは

バルゼリットの思惑を見抜けず婚約者として

決定していた事を反省しているらしく、更に

それに変わってルクスの実力等々を見た

結果、何とまぁルクスをクルルシファーの

婚約者としてエインフォルク家に全力で

推すと言って帰って行ってしまったらしい。

 

「良かったではないかルクス。これで

 将来、少なくとも独り身の未来は回避

 出来たのでは無いか?」

そう言って笑みを浮かべる黒鉄。

ちなみに今は黒鉄の部屋でお茶をしながら

話をしている所だ。

 

「うぅ、からかわないでくださいよ~」

そう言って項垂れるルクス。

「まぁ、彼女がそう思うようになったのも、

 ルクスが自分の信念に従って行動した

 結果だろう。ルクスは英雄になりたくない、

 と言っていたがお主が周囲から好かれる

 のも、お主自身の輝きのおかげだろう」

「僕の、輝き、ですか?」

「うむ。人と人が惹かれ合うのは、時に

 相手の行動や姿に感銘を受けたりする

 からであろう?まぁ、端的に言って

 しまえば、彼女達にとってルクスの

 言動や行動が『カッコいい』と思える

 物だったのではないか?だからこそ、

 お主は好意を持たれたと言う事であろう」

 

「僕が好意を……。そう、なんですかね?」

「何だ?自信が無いのか?だが、心配する

 必要は無いと思うぞ?ルクスの行動や

 言動は、人を引きつける類いの物だと

 我は思っている。そして、それ故に我は

 ルクスのやっている事は間違いではない

 と思うぞ?」

「そう、なんですかね?」

苦笑を浮かべながら首をかしげるルクス。

 

「あぁ。少なくとも我はそう思うぞ。

 そして、だからこそ時に人を惹きつける

 魅力なのだろう」

「僕の、魅力、かぁ」

 

そう呟きながら、ルクスはお茶に口をつけた。

 

それからしばらく、談笑していた時。

 

「と、そうだ。折角、と言う訳でもないが、

 ルクスが昨日の昼、遺跡で話してくれた

 天使様について、少し話をしておくか」

「え?もしかしてクロガネさん、天使様の

 正体を知ってるんですか!?」

 

「あぁ。何せ我はその頃より生きていたの

 だからな。……『彼女』の名は、

 『モスラ』」

「も、モスラ。それが天使様の名前なん

 ですか?」

「あぁ。しかし、天使様というのは些か

 正しい表現ではない。正確に言うので

 あれば、彼女は『女神』だ」

 

「め、女神?」

「ルクスには以前、神と人の戦争の話を

 したな?」

「え、えぇ。文明崩壊の戦争の事、ですよね?」

「うむ。その戦争の折、人が戦ったのは

 神だけではなく、神の相棒とも、パートナー

 とも呼ぶべき存在だった『女神』。そして

 神を王と崇める、『怪獣』と呼ばれる存在達だ」

 

「かい、じゅう?」

「うむ。人が栄える以前からこの星に

 生きていた、巨大な獣たち。その巨体は、

 有に数百メートルを超える」

「えぇっ!?そ、そんな大きな生き物が

 存在してたんですかっ!?」

「もちろん」

 

『まぁ、今はまだ、ルクス達には

 『自分もその1人、いや1匹だ』とは

 言えんか』

 

などと考えながら彼は話を続けた。

 

「かつての戦い、神はモスラを始め、

 多くの怪獣を率いて人間達と戦った。

 当時の人間の力もあって、何体かの

 怪獣を倒す事は出来た。だが、

 長い戦いの中で、神格を得た神と

 モスラの前には、無力だった」

「神格を、得た?」

 

「そうだ。かつての文明を滅ぼした神も、

 最初から神だった訳ではない。実際

 には、ロストエイジよりも更に昔、

 この世に人族と呼べる存在が生まれる

 よりも前に存在した種族の生き残りだ。

 しかし、長き戦いの中で神は人からの

 畏怖と信仰心から、神としての格、

 即ち神格を得た訳だ。モスラも同様にな。

 神となる前から、人知を越えた力を

 持っていた『それ』を前に、人類が

 勝てる訳も無く、争いは終わった」

 

「過去に、そんな戦いがあったんですね。

 ……あ、それにしても、僕が出会った

 女神様にモスラという名前があるの

 なら、その神様にも名前があるんですか?」

 

「あぁ。例えばモスラは、以前『怪獣の

 女王』とも呼ばれていた。神格を

 経てからは、主に女神モスラと呼ばれて

 いたがな。そして、神となる前の

 それは、人々からこう呼ばれ、恐れられ、

 時には信仰の対象となった」

 

この世界の誰もが知らぬ真実。

旧文明を崩壊へと導いた神の名。

それを知る機会とあって、ルクスはごくりと

唾を飲み込んだ。

 

「怪獣達の王、『怪獣王ゴジラ』、と」

 

「怪獣王、ゴジラ」

 

ポツリ、とその名を呟くルクス。

彼はまた、この世界の歴史の1つに触れた。

 

だが、彼に知る由も無かった。

 

今正に自分が、人の姿を借りて顕現した神、

黒鉄と名乗る、怪獣王を前にしている事を。

 

彼、そして学園で生活する彼女達は

知る由も無かった。

 

今、自らの傍に居る男こそが、神であると。

 

『今は』、まだ。

 

     第11話 END

 




って事でクルルシファー編は終わりで、次回からセリス編です。

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