最弱無敗の神装機竜~~黒き英雄と黒の王~~   作:ユウキ003

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大変お待たせしました。実は8割くらいまで書きあがった所でデータが吹っ飛んでしまったせいでやる気を失ってました。あと、中盤辺りから文章の書き方を変えています。ご了承ください。


第13話 校内選抜戦

バルゼリットとの戦いも一段落した学園。しかし

学園には変質者が出ると噂になり、黒鉄と

ルクスはパトロールをしていた。そんな中で

遊び半分のシャリスたちから女装をさせ

られていたルクスは、幸か不幸か、学園最強

にして大の男嫌いと噂のセリスティア・

ラルグリスと知り合い、しかも素性が

バレずに、『ルノ』という女生徒と偽って

知り合ってしまう。

そんな数日後、ティルファーに急かされ

ながらルクスと黒鉄は走っていた。

 

ティルファーが先導し、3人は学園長室に

向かっていた。そこに近づくと、

中からリーシャとセリスの言い合う声が

聞こえてきた。

 

中に入ると、セリスの、警戒心と

敵対心を合わせたような視線が、ルクスと

黒鉄を貫く。

 

「貴方たちが、ルクス・アーカディアと、

 クロガネ、ですね?」

「そうだ」

「は、はい」

セリスの言葉に応える2人。黒鉄は

毅然としているが、ルクスはどこか緊張

している様子だ。

 

「私の留守中に、何度か学園の危機を救って

 頂いた事は聞き及んでいます。ですが、

 それと貴方達が学園に居る事は別問題です。

 この学園は貴族子女たちのためのものです」

 

更にセリスは、『学園の設立後7年間は共学に

しない』という話しを覚えており、つまり

今の2人はその話を無視してここに居る事に

なりかねない。故に2人という特例を認める

訳には行かない、と言って断固として2人の

在籍を認める気はないセリス。

 

一方で、ルクスはセリスに対して、ラグナロク

の討伐隊を指揮して欲しいと言う。

元々、バルゼリットが行う予定だった

ラグナロクの討伐は今、新たに隊長を選定

している段階だ。そして学園最強とまで言われた

セリスは、当然隊長の候補となっている。

 

しかし、ラグナロク討伐の件はまだ一部しか

知らない情報だ。それ故に、周囲にいた

女生徒達は皆驚いている。

 

一方セリスは、元々話しが来ればラグナロク

討伐を請け負うつもりだったらしく、しかも

単機でこれを相手取ると言うのだ。

 

するとルクスは……。

「なら、僕とクロガネさんを、ラグナロク

 討伐に同行させてください」

その言葉にセリスは少し戸惑いながらも、

すぐに平静を装いそれを拒否した。

 

すると……。

「はいはい。2人とも落ち着いて」

 

2人の会話がヒートアップしそうだったので

レリィが止めに入った。

 

「2人の意見をまとめると、セリスさんの

 意見はルクス君の退校。そして彼はこれを

 拒否。対してルクス君の意見は、ラグナロク

 の討伐でルクス君やクロガネ君の援護を

 受ける事。そして彼女もこれを拒否。

 つまりお互いの意見を拒否している事

 になってるって事よね?そして、もう

 1人。クロガネさんの意見はどうなの

 かしら?」

 

と、ここで彼女はこれまで黙っていた

黒鉄に話題を振った。セリスやルクス、

更にはリーシャやティルファー達と

いった生徒達の視線が彼に集まる。

そして……。

 

「敢えて言わせて貰えば、我は『出て行け』と

言われたのなら素直にここを去ろう。それが

 生徒達の総意、そして学園側の決定であれば

潔く従おう」

黒鉄の言葉に、生徒達数人が戸惑う

ような、悲しそうな表情を浮かべる。

 

「だが、それはあくまでも学園や生徒達の

 総意だ。我の処遇をどうするかは、

 生徒達の投票か何かで決めて貰えれば

 我は潔くそれに従おう」

「つまり、クロガネ君の処遇については

 私達に一任する、って事で良いかしら?」

「うむ」

レリィの言葉に頷く黒鉄。

 

「そう。まぁ学園長としての私の本音を

 言わせて貰えば、クロガネ君がここを

 去るのは、正直容認出来ないわね」

「ッ。それはどう言う意味ですか?

 この学園は設立当時に少なくとも

 7年、共学にしないと決定していた

 はずです。それを学園長自らが

 反故にするおつもりですか?」

そう言ってレリィに反論するセリス。

 

「まぁセリスさんの言い分も分かります。

 ……でもね、クロガネ君の力は

 そのお話を覆しても欲しい程圧倒的なの。

 生身でもガーゴイル2匹を撃破する

 圧倒的な戦闘力。加えて、彼の切札を

 使った状態なら、ディアボロスさえも

 単独で圧倒する事も可能。……5年前の

 黒き英雄と比肩しうる圧倒的な力。

 それに世界各地を旅して得た彼の知識

 は、今正に学園の生徒達の指導に

 活かされている。現に生徒達や教官

 達の中から、クロガネ君を正式に

 教官として雇ってはどうかと言う

 声まで出ている程にね。そして

 何よりも危惧するべき事態は、

 クロガネ君の力が外に、例えば

 敵となる存在に渡ってしまうこと。

 と、まぁこれらの理由もあって私個人の

 意見を言わせて貰えば、クロガネ君

 には学園に居て欲しい、と言うのが

 私の本音ね」

「ですがそれは……」

 

「そう。セリスさん達の意見を無視した

 行動です。それじゃあ当然、セリスさん

 達は納得出来ないでしょう」

 

と言うと、レリィは小さく笑みを浮かべ

ながら『そこで』と呟いた。

 

「3日後に始まる校内選抜戦。ここを

 決着の舞台とします」

「え?!」

「それは、どう言う意味ですか?」

レリィの言葉に、ルクスもセリスも

戸惑った様子だ。

 

「今回の校内選抜戦は、チームを2分し

 戦います。そしてそのチーム分けは

 簡単よ。一言で言えば、ルクス君と

 クロガネ君を支持するか。逆に

 セリスさんを支持するか。このどっちかよ」

 

「成程。つまり我とルクス、更にそれを

 支持するチームと。セリスティア・

 ラルグリスと彼女を支持するチーム。

 その二つが戦い、勝った方の主張を

 受け入れる、と言う事か?」

「そうよ。流石クロガネ君は飲み込みが

 早いわね」

「そ、そんなっ!?」

「待って下さいっ!何を勝手にっ!」

しかし突然の事に戸惑うルクスとセリス。

 

だったが……。

「だって話し合いで解決しないんだし。

 それとも、こうする以外に何か良い解決方法

 が貴方達に思いつくのかしら?」

「う、うぅ」

「そ、それは……」

レリィの言葉にルクスもセリスも戸惑う。

 

「じゃあ、決まりね」

 

こうして、ルクスと黒鉄の在校の是非を問う

戦いが始まったのだった。

 

そして最後、セリスはため息をつきながら

この提案を受け入れた。だが……。

 

「私に勝てると本気で思っているのなら、

 大変な見込み違いです」

 

学園最強と言われるだけのことはある

プレッシャーがルクスと、彼の側に付くと

宣言していたリーシャに降りかかる。

だが……。

 

「ならば、試させて貰うとしよう」

そんな中で黒鉄が、同じようにプレッシャーを

発しながらセリスを見つめ返す。

自然と、互いの視線を交差させる2人。

 

「学園最強の力とやらを」

「……望むところです」

 

そうして、2人はバチバチと火花を散らした後、

部屋を後にした。

 

そして放課後から、早速始まった双方の支持者、

つまりチームメンバー集めだ。

そんな中で黒鉄は、いつも通り生徒達の指導に

当っていた。

 

そしてそんな指導をしていた時の事だった。

「よし。今日はこれまでだな」

夕暮れになり始めた空を見つめながら、

黒鉄はそう言って皆を集め、1人1人の

上達した点や、改善点などを最後にまとめた。

 

黒鉄はいつもこんな感じで指導をして、普段

通りならこれで終わり、なのだが……。

 

「あ、あの、クロガネさん。少し良いですか?」

「む?どうした?」

何やら彼女達が黒鉄の傍に集まってきた。

 

「あの、選抜戦の事なんですけど、私達は

 クロガネさんの味方ですからっ!」

更に彼女の言葉に同意するように、周囲の

女子達が頷く。

その言葉はつまり、彼女達が黒鉄とルクスの

チームに入る事に他ならない。

 

「そうか。それはありがたいが、良いのか?」

「え?」

黒鉄の言葉の意味が分からず、彼女は首をかしげた。

「いや。味方になってくれると言うのなら

 それは我も嬉しい。……しかし、その結果

 皆が友人たちと対立してしまう、と言う事

 にはならぬか?」

「そ、それは……」

言われ、彼女は少しばかり言い淀んだ。

 

「かつてこの国では男尊女卑が横行していた。

 それを考えれば、セリスティア・ラルグリス

 のように男を良く思わない女生徒たちも

 少なくはないだろう。そんな中で我を支持

 すると言い出して、お主等が友人達と

 対立する原因にはなりたくない。

 ……だから、もしもの時は我などよりも

 お主達の友情を護る事を第1に考えて

 ほしい」

 

「それで、黒鉄さんは良いんですか?

 支持者は多い方が……」

そう言って黒鉄を心配する彼女。すると……。

「良いのだ」

彼は笑みを浮かべながらそう言って彼女の

頭を撫でた。撫でられ、『あっ』と声を

漏らしながら顔を赤くする女生徒。

更に周囲で『あっ!?』と言いながら顔を赤く

する女生徒が数人。

 

「無論、我を支持してくれると言うのなら

嬉しい。だが、その結果皆の友情に傷が

つくのであれば話は別だ。……だからこそ、

もしもの時は本当に自分が大切にしたい

ものを優先せよ。我のことは、その次程度

で構わぬ」

そう彼女達に伝えると、黒鉄は『ではな』と

言ってその場を離れて行ってしまった。

 

残された彼女達は呆然と彼を見送っていた。

のだが……。

 

「ねぇ」

「え?」

声を掛けられ振り返ると、何やらそこには(怖い)

笑みを浮かべる女生徒達が。

 

「あなた、クロガネさんのチームに入るんでしょ?」

「え、えぇ、まぁ」

彼女は戸惑いながらも頷く。

「じゃあ私達は、セリスティア先輩のチームに入るわね」

「え、えぇ?皆クロガネさんの味方なんじゃぁ」

 

「「「「「「「でも頭撫でられて幸せそうだったあなたが気にくわないから」」」」」」」

「そんな~~~~~!?」

 

と、まぁそんな事がありつつ、試合に向けた準備は着々と進んでいった。

 

そして試合当日。ルールなどの説明のため、今黒鉄やルクス達は教室でライグリィから話を聞いていた。

 

選抜戦は事前に決められた通り、2つのチームに分かれて行われる。ルクス・黒鉄および2人の支持者チームと、セリスおよび彼女の支持者チームが、お互いメンバーを出し合って戦い、試合の勝利数を競う。また、試合に関しては一般生徒の部とシヴァレス、騎士団の部に別れている。シヴァレスの団員達は一般生徒と比べてレベルが高いためだ。また、シヴァレスの部の出場選手は試合に敗北した時点でそれ以降の参加権を失う事になる。

 

ちなみに、試合は1対1や2対2などがある。しかし、学園長からの指示で黒鉄はシヴァレスの試合の、ペアの試合以外に出場する事を禁じられていた。まぁ理由は言わずもがな。彼が他より頭1つどころか、数個は確実に飛び抜けているためだ。

 

しかし説明を受けても1、2年生の生徒達はやはり不安だった。セリス側のチームはセリス自身の人望などもあってか3年生が多い。練度で言えば3年生の方が彼女達より上なのは確かだ。数は少なくとも、全軍で真っ向から戦う訳ではないので数の有利は大して役に立たない。

 

それ故に不安な彼女達をリーシャが檄で勇気づけたりしていると……。

 

『コンコン』

「失礼するよ」

 

そこにシャリスがやってきた。

「む?シャリス」

それに黒鉄が真っ先に気づいた。

「え!?あ~~~!この裏切り者~~~!なんでこっちに付かなかったのさ~!」

するとそれに気づいたティルファーがそう言って頬を膨らませた。

 

そう、シャリスはセリスのチームに入ったのだ。まぁシャリスにも理由があって、3年生の情報を流せるから、と言うのと何か思うところがあるらしい。

 

「まぁ、それはさておき。今日ここに来たのはセリスからの言伝を頼まれてね」

「言づて、だと?」

シャリスの言葉に眉をひそめる黒鉄。

 

「あぁ。彼女は今日、シヴァレスの部のペアに、妹分のサニアとペアを組んで出るそうだ」

その言葉に、ルクスやリーシャと言った者達が息を呑んだ。

これは言わば、宣戦布告。挑む気があるのなら、掛かってこいと言わんばかりだ。

 

その強気な姿勢に、周囲の、特にシヴァレスに属する生徒達は戸惑う。

「初日から出てきたか。学園最強め」

そう言って小さく悪態を付くリーシャ。

「もちろん、誰が当るかは運次第です。が、かといって出る以上当る可能性は確実にある。出場する気があるのなら人選を考えた方が良いですよリーシャ様」

「分かっているさ。相手はなんて言っても学園最強なんだからな」

リーシャはシャリスの言葉に頷く。

 

と、その時。

「いや、これはむしろ僥倖であろう」

突然聞こえた黒鉄の声に皆がそちらに視線を向けた。そして、彼は徐に座っていた椅子から立ち上がった。

 

「向こうからわざわざ出てくる時間を教えてくるとは。結構ではないか」

「く、クロガネさん?」

笑みを浮かべる黒鉄に、声を掛けるルクス。

 

「ルクス、リーシャよ。今日のペア、我も早速出るぞ」

「え!?クロっちが!?」

「うむ。抽選は運任せとは言え、出ればそれだけ当る確率もある。それに、ここで我が奴らを倒せれば、こちらのチームも勢いに乗れるであろう?」

「それはそうだが、クロガネ。勝算はあるのか?お前は彼女の神装機竜について何も知らない。もちろんお前の力を疑う訳ではないが……」

 

「案ずるなリーシャ。……どんな敵が立ち塞がろうとも……」

 

『ドォォォォォォンッ!』

 

突如黒鉄は拳をぶつけ合い爆音を鳴らした。それだけで教室がビリビリと震え、皆が戸惑う。

 

「我はそれを粉砕して進むだけだ」

 

 

力の真っ向勝負で相手をねじ伏せると言わんばかりの宣言に、彼女達は苦笑しながらもどこか頼もしさを感じていたのだった。

そして、更にルクスやリーシャ、クルルシファー、フィルフィも今日は出場する事になったのだが、リーシャ達3人は皆ルクスと出たいので喧々囂々。終いにはティルファーが作ったくじを使って決める事に。そして決まったのは、ルクス・フィルフィペアと、リーシャ・クルルシファーペアだった。

 

そして、それぞれ出場に必要な申請書類を提出した彼等は対戦表の張り出しを待った。それから約1時間後。張り出された表によって……。

 

黒鉄と、セリス・サニアペアの対戦が決定した。

 

それから数十分後。ルクスやリーシャ、アイリやノクト、大勢の観客達が見守る中、演習場に黒鉄と、セリス・サニアのペアが入場した。

 

そして、審判であるライグリィの指示が飛び、まずはサニアがワイバーンを纏う。

 

更に……。

「降臨せよ。為政者の血を継ぎし王族の竜。百雷を纏いて天を舞え!≪リンドヴルム≫!」

 

セリスが黄金の神装機竜、リンドヴルムを纏った。

 

「……行くか」

そして黒鉄も、足下から青白い紋章を出現させ、それを透過すると黒龍モードとなった。

 

 

多くの観客が、彼等の姿を前にして固唾を呑んだ。そして今か今かと試合の開始を静かに待つ。

「試合、開始っ!」

 

次の瞬間、ライグリィの言葉が響き試合が開始された。

『『ババッ!』』

直後にサニアのワイバーンとセリスのリンドヴルムが飛び上がり黒龍から距離を取る。これは黒龍の腕力とブレードを警戒しての事だ。しかし黒鉄、黒龍は動かず2人を見上げるだけだ。と、その時黒龍は大きく息を吸い込み……。

 

 

『ゴアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!』

 

 

大音量の咆哮が叩き付けられた。あまりの音量に顔をしかめるセリスとサニア。ビリビリと空気さえも震わせる声の暴力。しかしそれは観客席の生徒達をも震わせた。敵チームの生徒達には畏怖を与え。味方のチームには勇気を与えた。

 

それこそが、怪獣王の咆哮。聞く者の魂さえ震わせる声が響き渡る。

 

そして、黒龍の背鰭が青白く発光する。

「ッ!?サニアッ!回避をっ!」

「はいっ!」

それがブレスの予兆だという事はシヴァレスの友人から聞いていたセリス。だからこそすぐに回避に出た。

 

だが、音速で飛行する戦闘機さえ迎撃出来るゴジラの対空迎撃能力の前には、彼女達程度の回避機動など何ら役には立たない。

 

『カッ!』

一瞬の閃光。放たれる奔流。

「ッ!?」

狙いはサニア。彼女は息を呑むが、それだけだ。

 

『ドォォォォォォォォォンッ!』

熱線は寸分違わず彼女に命中した。爆煙が彼女のワイバーンを覆い隠す。

「ッ!?サニアっ!」

叫ぶセリス。直後、爆煙の中から現れたサニアのワイバーンが落下し、そのまま動かなくなった。

 

「サニア機!行動不能!」

それを見たライグリィが咄嗟に宣言を行う。これでサニアは戦闘不能だ。

 

「まずは、1人」

そして黒龍はセリスのリンドヴルムを正面から睨み付ける。

「くっ!よくもっ!」

 

セリスはリンドヴルムを加速させ黒龍に突進する。

「はぁっ!」

そしてその手にした特大の槍、『雷光穿槍(ライトニングランス)』を繰り出した。だが……。

 

『ドゴォォォォォォンッ!!!!』

黒龍の繰り出された拳が真正面からランスの穂先とぶつかり合った。

「ッ!?」

これには戸惑うしかないセリス。

 

『バリィィッ!』

「む?」

しかし直後、黒鉄もランスから迸る雷撃にひそかに眉をひそめた。そして黒龍は一度大きく後ろに跳躍する。そして彼はいささか痺れている自分の右手に目を向けた。即座に右掌をグーパーさせて感触を確かめる。

 

「成程。雷撃を放つ槍。神装機竜の特殊武装か」

黒鉄は即座に分析し、そして両腕のブレードを起立させ迎撃の構えを取る。

「行きますっ!」

直後、セリスのリンドヴルムが突進してくる。

 

再び振るわれる刺突。

「むぅんっ!」

それを迎撃するように黒龍の右手のブレードが放たれた。

 

『『ガキィィィィィンッ!』』

そして穂先同士がぶつかり合い火花と金属音が響き渡った。

「くっ!?」

しかしパワーでは相手が上と悟ったのか、セリスはすぐに距離を取った。彼女は距離を取り、ライトニングランスから雷撃を放つ。本来なら、それを食らうだけで機竜の内部システムやパイロットであるドラグナイトにもダメージが通るような攻撃だ。

 

しかし、黒鉄には意味をなさない。幾分かその体を痺れさせる事は出来るが、所詮その程度。彼にとって、かつて『ロストエイジ時代に戦った三つ首の黄金龍が放つそれとは比べ物にならない』からだ。

 

黒鉄、黒龍はセリスを追いかける。そして、あと少しで黒龍の手がセリスに追いつくと思われたその時。不意に彼女のリンドヴルムを中心に、光の領域とでも呼べるようなものが広がっていった。

 

『何だ?』

黒鉄は内心首をかしげながらもその広がり続ける領域に突入し、その手を振ってブレードをリンドヴルムに叩きつけた。しかし、直前までそこにいたはずのリンドヴルムの姿は一瞬で消え、ブレードが空を切る。

『ッ』

突然の相手の消失に黒鉄は一瞬息をのむ。しかし直後、背後から迫る殺気を感じ取り咄嗟に右足による蹴りを後方に放った。

 

『『ガキィィィィィンッ!』』

直後、後ろに回り込んだセリスのライトニングランスと黒龍の足の爪がぶつかり合い火花を散らした。

 

黒龍は咄嗟にライトニングランスを蹴ってセリスより距離を取った。そして彼は冷静に相手の攻撃を分析する。

『……先ほどの光と行動からして、おそらく奴の神装か何かであろうが、可能性として考えられるのは短距離空間跳躍、テレポートやワープの類か』

 

黒鉄の予想通り、先ほど攻撃を回避し黒龍の背後に回ったのは彼女のリンドヴルムが持つ神装、『支配者の神域(ディバイン・ゲート)』の力だ。これは、最初に広げた光の範囲内にある物を、同じく範囲内の好きな場所に転送できる代物だ。

 

このため、この光の領域内に居る限り彼女の対戦相手は『間合い』という物が取れない。どれだけ距離をとっても一瞬で詰められ、詰めたと思えば逃げられる。相手は好きなタイミングで仕掛け、逃げる事が出来る。

 

そして今、放たれた光の範囲は演習場を覆いつくしている。つまりこの限られた空間に黒鉄が逃げるスペースは無い。ルクスたちも心配そうに黒鉄、黒龍を見つめている。

 

「……それが、どうした?」

しかし黒鉄はポツリと呟くと浮いていた空中より緩やかに降下し、大地に足を下ろした。そして黒龍は上空のリンドヴルム、セリスを睨みつける。更に彼は、何と両腕のブレードをパージしてしまったのだ。音を立ててブレードが地面に突き刺さる。

 

「……どういうつもりですか?」

突然の武装解除を訝しむセリス。

「なに。こいつは些か重い。……こっちの方が、動きやすいのでな」

そう言って両手を構える黒龍。

 

対して、セリスはしばし思案した直後、攻撃に出た。熱線を警戒して空中を飛び回りながらライトニングランスより雷撃を放つ。放たれた雷撃が黒龍の周囲に着弾し砂煙を発生させる。そして彼女は更に武装の一つである短剣、ダガー数本を彼目掛けて投げつけた。

 

そして、ダガーが命中する寸前に、ディバインゲートで空間跳躍を行い黒龍の背後からランスによる刺突を行った。

 

たった一人で多角的な攻撃を行えるのは、ディバインゲートと言う神装とセリスの天才的な技量があっての事だ。ほかの誰にも真似できない。だが……。

 

「……面白い技を使うな。セラスティア・ラルグリス」

「ッ!?」

 

セリスの放った刺突は黒龍の尻尾の先端が受け止め、投げたダガーは、黒龍の装甲を貫徹できず、キィンキィンと甲高い音を立てながら地面に転がった。

 

黒龍は、指一本動かす事無くセリスの『重撃』と呼ばれる同時攻撃を防いで見せた。これには観客席で試合を見ていたセリス派の少女たちも驚愕せざるを得ない。そして黒龍がゆっくりと振り返り背後のセリスを睨みつける。

 

『ゾワリッ!』

それだけでセリスの背筋を悪寒が走り抜ける。恐怖が彼女の中で顔をのぞかせる。しかし彼女もまた、腐っても学園最強。咄嗟に距離を取り黒龍の間合いから出ようとする。すると黒龍が大地を蹴って突進してきた。

「ッ!」

彼女は咄嗟にディバインゲートを発動しその間合いから逃れた。

 

リンドヴルムを掴もうと伸ばされた黒龍の手が空を切る。そして黒龍が着地したその時。彼の背後で光が生まれた。

 

それは、リンドヴルムが持つ、巨大な砲身を持つもう一つの特殊武装、『星光爆破(スターライトゼロ)』から放たれた光球だった。

 

圧縮されたエネルギーを球状にして発射し、着弾と同時に周囲を薙ぎ払う範囲殲滅兵器。それがスターライトゼロだ。セリスは、周囲の観客に被害が及ばないギリギリの威力の光球を発射した。爆炎と光が黒龍を飲み込む。発生した爆風と爆音に、観客席の少女たちは悲鳴を上げる。

 

『確かに直撃した。これなら……』

と、セリスはそう考えていた。これなら確実に倒せただろう、と。

 

だが……。

「まだまだだな」

「ッ!?」

突如背後から声が聞こえた。咄嗟に振り返るセリス。だが直後。

 

『ガッ!!!』

「ぐっ!?」

いつの間にか背後に回り込んでいた黒龍の手が、セリスの頭を鷲掴みにする。更に黒龍はそのまま加速し、セリスのリンドヴルムを地面に叩きつけた。

「あぁっ!」

 

悲鳴を漏らすセリス。しかし彼女はすぐに逃れようと、右手でランスを振ろうとした。しかしそれも黒龍の左手に押さえつけられる。

パワーにおいては、黒龍モードとなった黒鉄の方が数段上だ。彼女がどれだけ力を込めても、黒龍の拘束はビクともしない。

 

「くっ。……ど、どうやってスターライトゼロの爆発から?」

「別に難しい事ではない。爆発直後のエネルギーに、別のエネルギーをぶつけた。そして爆炎や熱を外へ反らしただけの事だ」

「そ、そんな事が……」

「現実に出来ている。だから今、こうなっている」

 

そう言って黒龍の手に力が籠り、リンドヴルムの右手からミシッと言う否や音が響く。

 

「くっ!」

だが、彼女としてやられる気はない。空いている左手にダガーを取り出し、それを黒龍の顔目掛けて繰り出した。

 

黒龍は手を放し、咄嗟にリンドヴルムから距離を取った。その隙にセリスはディバインゲートで間合いを取った。しかし彼女は内心焦っていた。これまでの攻撃で、ライトニングランスも、ディバインゲートを使っての重撃も、スターライトゼロによる砲撃も、全て相手に決定打となりえていないからだ。

『……あのパワーを前に接近戦は避けたかったのですが、致し方ないですね』

 

彼女は、ここへ来て接近戦を仕掛ける決意をした。パワーも技術もある黒龍に対して接近戦を仕掛ける事は、下手をすればカウンターを喰らって一撃で撃破される恐れがある。なので当初彼女は、極力接近戦は仕掛けないように考えていた。しかしこうも遠距離攻撃が効かないのでは仕方ない、というのが彼女の結論だ。

 

そして、彼女はライトニングランスから雷撃を放ってゴジラの周囲に砂煙を発生させる。そのまま更に飛行しながら熱線を警戒しつつ攻撃を継続する。これは、ライトニングランスの雷撃で少しでも黒龍を痺れさせるためだ。

 

一方、肝心の黒龍はその場から動かず、ただ背鰭を青く発光させるばかりだ。

『まさか大技を使うつもりでは!?ならば……!』

そう考えたセリスは、大技を使わせるよりも先に叩く、という考えの元、ディバインゲートで黒龍の背後に跳躍した。跳躍直後、黒龍は振り向かない。

 

『取ったっ!』

黒龍の背中めがけて繰り出される刺突。それでも黒龍は振り向かず、セリスは攻撃が入ったと確信していた。

 

だが……。

 

『ゴアァァァァァァァァァァァッ!!』

 

直後に響き渡る咆哮。そして黒龍の体から、全方位に向かって放たれた高エネルギーの放射。その高エネルギーがセリスのリンドヴルムに直撃した。

 

『バチバチバチィッ!』

「きゃぁっ!」

短い悲鳴を上げるセリス。そしてリンドヴルムは各部より火花を散らしながら吹き飛んだ。

 

「な、何だ今の攻撃!?」

そして、その光景を観客席で見ていたルクスたちもまた、驚愕していた。

「今の攻撃、体から全方位にエネルギーを撃ちだしたように見えたが……」

攻撃を見て、リーシャは冷や汗を流しながらも冷静に分析する。

 

「あれは、確実に初見殺しね。相手の死角を突いたと思ったら手痛い反撃を喰らう。今の彼女がまさにそれね」

クルルシファーも、そう言って倒れているセリスを見つめながらそう語った。

 

「……学園最強も、クロガネさんの前では形無しと言う事ですか」

アイリは、黒龍を見つめながらポツリと呟いた。

 

 

そして肝心の黒鉄は、今の攻撃、『体内放射』の衝撃でセリスが手放したライトニングランスを回収すると、倒れていて、今にも起き上がりそうだったセリスの首元にその切っ先を突き付けた。

 

「……まだ、やるか?」

黒龍はそう言ってセリスの降伏を促す。

 

対してセリスは、悔しそうに唇を噛み締めている。が、やがて……。

「……参りました。降伏を宣言します」

黒龍、黒鉄に敵わないと判断したのか悔しそうな表情のまま降伏宣言を行った。

 

これによって勝者が確定した。

「勝者ッ、黒鉄!」

審判であるライグリィの言葉が響く。一瞬の静寂の後、観客席の生徒達はその展開に驚嘆の声を漏らした。

 

そしてセリスは、悠々と歩き去って行く黒龍の背中を悔しそうに睨みつける事しかできないのだった。

 

 

初日の初戦から大番狂わせな試合結果に多くの生徒達は沸いた。だが、数時間後、驚くべき発表がなされた。それは……。

 

『セリス・サニアの両名は今後も試合参加を認める』という物だった。これに驚いたのはリーシャ達だ。セリスは一番の強敵。それを黒鉄が討った事は今後の事を考えてルクス・黒鉄チームの士気を上げるニュースだ。しかしセリスが今後も出てくる、というのだからリーシャ達が驚いたのも無理はない。

 

だから彼女たちが、ルクスやリーシャ、クルルシファー達がレリィの所へ抗議に向かったのは無理もない。のだが……。

 

「なぜですかっ!?納得の行く説明を要求しますっ!」

 

そこには先客がいた。当事者であり、リーシャ達以上に納得が出来ていないセリスだったのだ。そしてルクスたちが学園長室に入ると、そこにはレリィ、ライグリィ、セリス。そして黒鉄がいた。彼らに気づいて一瞥する黒鉄。しかし、彼も不服を申し立てに来た、という感じではなさそうだ。それを訝しむルクス。

 

「そうね。それじゃあ双方のチームの主要メンバーもそろった事だし、理由を説明しましょうか」

と、レリィが言うと、ここでセリスはルクスたちがやってきた事に気づいて彼らを一瞥した。しかしすぐ、レリィの方に視線を戻してしまう。

 

「実際戦ったセリスさんならわかると思うけど、クロガネ君の力はどうだったかしら?」

「ッ。それは……。圧倒的と言わざるを得ない物でした」

彼女は悔しそうな表情でそう語る。

 

「そうよねぇ。圧倒的よねぇ。でも、だからこそよ」

「……どういう意味ですか?おっしゃってる意味が、よく」

 

「クロガネ君の力は体験してもらった通り圧倒的。セリスさんをしても圧倒するほどの力だった訳だけど、じゃあ今のセリスさんチームに、セリスさん以上に彼と渡り合える存在は居ますか?」

「ッ、いえ。そのような人はいないと思います」

「そうよねぇ?つまり、クロガネ君が出る試合は彼らのチームの勝利が確定したも同然。しかも、シヴァレスの部では、負けた人は以後の試合の出場権を失う。これってつまりクロガネ君が勝った数だけ相手側の選手を出場停止に出来る事になる。でもそれってちょっとアンフェアじゃないかしら?だ・か・ら」

 

「彼との試合の敗者は、特例として出場権取り消しを、更に無かったことにする、と?」

「そう♪その通り」

そう言って手を合わせるレリィ。しかし、説明を受けてもセリスはまだ納得していない、と言わんばかりの表情だ。だが……。

 

「それにこれも、クロガネ君が了承した事なので。今更変更するつもりはありません。あしからず」

「ッ!?」

 

レリィの説明を受け、セリスは壁際で静かにしていた黒鉄の方へ視線を向けた。

「……どういうつもりですか?憐れみのつもりですか?」

そんな彼を睨みつけながら怒気を孕んだ声をかけるセリス。実際、これでは情けをかけられているような物だ。それが、舐められていると感じ彼女は怒っているのだ。

 

「憐れみではない。ただ、お主と戦うのは我だけではない」

「ッ、どういう意味ですか?」

「もう一人、我以外にもお主と剣を交える必要がある者が居る」

 

そう言うと、黒鉄はルクスを見つめ彼女も彼の視線を追ってルクスへと目を向けた。

ルクスとセリスの視線が交差する。

 

「今回の戦いは、お主たちの意思を貫くための物。しかしその二人が刃を交えぬまま外野の戦いで勝敗が付いてしまっては、後々禍根になりかねないと判断したのでな。リーシャやルクスたちには申し訳ないが、学園長よりの提案、我の方で勝手に同意させてもらった」

 

そう語る黒鉄に、ルクスとセリスは視線を向けた後、改めて向かい合った。

「良いでしょう。彼の言葉にも一理あります。ですが、勘違いされては困ります。あなたは私には勝てません。ルクス・アーカディア」

「……確かに貴女は強い人だと僕も思います。そして、僕にはクロガネさんほどの力は無い。けど、だからと言って僕も負ける気はありません」

 

お互い、闘志を燃やした視線を交わすルクスとセリス。

 

1戦目から大番狂わせの結果となったが、しかしセリスは再び戦う権利を得た。そして、彼と彼女の戦いの時は近い。

 

     第13話 END

 




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