最弱無敗の神装機竜~~黒き英雄と黒の王~~ 作:ユウキ003
つつがなく試合が進む対抗戦。黒鉄やルクスの存在もあって、接戦を繰り広げる両チーム。そんな対抗戦の3日目は休日となっていたため、ルクスはルノに変装してセリスと共に町へ。黒鉄は疲れた女生徒達に菓子を振る舞っていた。そんな中、町中に突如としてアビスが襲来。偶然その場に居合わせたルクスとセリスだったが、アビスは突如として現れた女性によって討伐されてしまうのだった。
夜。ルノという女装姿から普段の姿に戻ったルクスは、黒鉄の部屋を訪れて居た。そしてルクスはそこでセリスの事を彼に話していた。
セリスが実は男嫌いではないこと。不器用であるが故に、男に接する態度が分からず、シヴァレスの団長としての毅然とした態度で接してしまう事などなど。
「成程。そう言う事であったか。……しかしルクスよ」
「はい?」
「お主、また女装したのか?」
「ぶっ!?えっ!?それ聞くんですかっ!?」
「いや、もしやと思ってな。聞いてみたかったのだが……。したのか?」
「うっ!し、しましたよ。女装。すっごい恥ずかしかったですけど」
顔を赤くし、恥ずかしそうに語るルクス。
「そうかそうか。しかし、バレていない所を見るに、やはりルクスには女装の素質があるのやもしれぬな」
「いやいやっ!いりませんよそんな素質はっ!」
顔を赤くして叫ぶルクスに対して、黒鉄は楽しそうにクツクツと笑みを浮かべていた。
「そ、それよりクロガネさんは、何してたんですか?」
ルクスは顔を赤くしながら、話題を変えようというのかそう問いかけた。
「ん?我はまぁ、生徒達に菓子を作って振る舞っておったぞ」
「え?クロガネさん、お菓子も作れるんですか?」
「長い旅の中で知識と技術を身につけてな。皆も連日の試合で疲れているだろうからと思い振る舞ったのだ」
「へ~~」
と、そんな会話をしていた時だった。
「っと、そう言えば先ほど、町中にアビスの気配を感じたのだが、大丈夫だったか?」
「あっ」
黒鉄に指摘され、ルクスは思いだした。町中で現れたアビスを、簡単に蹴散らした女性の事。そして彼女が黒鉄を王と呼んでいた事を。
「実はクロガネさん、その事でお伝えしたい事が」
「ん?」
ルクスは、黒鉄に対して起こった事や見た事を説明した。
「成程。オレンジ色の髪に我を王と呼ぶ女性か。それはおそらく『翼』であろう」
「つ、ツバサさん、ですか?」
「そうだ。我と同じ、というか、同等の存在だ」
「えっ!?く、クロガネさんと同等ってつまり……っ!?」
「左様。彼女は我と同じく悠久を生きるような存在だ。ロストエイジの時代から存在し、世界を見守って来た存在。確か、今は我と同じように世界各地を旅していたはず。まさかクロスフィードに来ていたとはな」
「そ、そうなんですか」
ルクスは苦笑を浮かべながら相槌を打った。
しかしルクスが苦笑するのも無理はない。何せ黒鉄のような規格外の強さと寿命、ロストエイジの知識を持った人間がもう1人いたのだから。
だがルクスは気づかない。あの女性が『恩人』である事を。
その後。
「しかし、街中にアビスとは。かなりきな臭いな」
「はい」
2人の話題は、今日街中に突如として現れたアビスの事になっていた。
「しかもルクスの話によれば、そのアビスはかなり特異な存在だったとか?」
「はい。高い再生能力に、死んだら灰になりました。……あんなアビスを見るのは、僕も初めてです」
「……そうか。この前の侵入者の騒動と言い、今回現れた未知のアビス、か。ルクスよ」
「はい」
「明日から再び試合があり、大変だと思うが、気をつけるのだぞ。未知のアビスの登場。どうにもきな臭い。ましてや試合の期間中ともなれば、生徒達の注意は試合へ向く。学園に奇襲を仕掛ける、絶好の機会であろう?」
「まさか、クロガネさんは試合の間に、敵が来るって言いたいんですか?」
「うむ。………と、そうだ。ルクスには話して無かったかもしれぬな」
「え?」
その後、黒鉄はルクスに、クーデター未遂事件やバルゼリットに加担していた謎の存在、謎の敵性国家Xがいるのではと言う推察だった。
それを聞いたルクスもルクスで……。
「実は、アイリが学園長から極秘に聞いた話なんですが、この前僕達が倒した男、バルゼリット卿が獄中で何者かに殺害されたそうです」
「ッ、何?」
「更に、捕縛されていたラグリードも行方を眩ませたとか。特にバルゼリット卿は、笛の入手経路について聴取をしようとしていた矢先だそうです」
「その話を聞いたのは何時だ?」
「ちょうど僕たちが学園長室で先輩と在学を掛けて試合で、って話をした後のことです」
「そうだったのか。……もしかすると、そのバルゼリットを殺した者が、我の考えている敵国Xの回し者やもしれぬな」
静かに腕を組み、眉をひそめる黒鉄。
「それと、他にもいくつか伝えておきたい事があって。王国の執政院がヘイブルグにいる石化中のラグナレクを監視するために斥候部隊を送ったそうです。監視と、あわよくば撃破のために」
「成程」
「それと、数日前に密入国者が新王国領内で数十人、確認されたとか」
「何?」
彼はルクスの言葉に、更に眉をひそめた。
学園への謎の侵入者、クロスフィードの町中に突如として現れたアビス。現在選抜戦の最中で学園は外への注意が薄い。更にラグナレク監視で兵力が減少している中、正体不明の密入国者。
これだけピースが揃えば、黒鉄も警戒心を強くせざるを得ない。
「ルクス、明日以降我は試合には出ず、学園全体の警戒に当る」
「え?」
「どうにもクロスフィードできな臭い事が起こっている。兵力が低下している上にアカデミーでは生徒の集中が選抜戦に向いている。そもそもあの侵入者が何故アカデミー内部に入り込んだのかも不明だ。……仮にアカデミーで何かを探しているのだとしたら、敵がこの機会を逃すとは思えんのでな」
そう言って真剣な表情で窓の外、夜空を見上げる黒鉄。
「……油断は出来んよ」
「クロガネさん」
警戒心を強める彼に、ルクスもまた、静かに表情を真剣な表情を浮かべるのだった。
そして選抜戦の4日目。幸い4日目は、何事も無く試合はつつがなく進行した。点差は僅かにセリス率いる3年生チームがリードしているが、それも僅差だ。明日の決戦の内容如何では、十分にルクス達のチームが勝利する可能性がある。
しかし、肝心の黒鉄は4日目から試合に参加していない。黒鉄はその事を、相手側へのハンデだとした。彼が出る試合は全て全戦全勝だからだ。また、当事者であるセリスとルクスが戦う確率を上げるためだとも言った。また黒鉄とセリスが当って、セリスが負ければ元も子もないからだ。しかしそれはもちろん、彼が学園の外を警戒するための嘘ではない。
黒鉄はレリィとアイリだけには、この事を伝えた。しかし他の面々には選抜戦に集中して欲しい、と言う事と無用なパニックを避けるために伝えていないのだ。
そして、ついに幕を開けた最終日、5日目の試合。今回の注目の試合は、セリス&シャリス対ルクス&フィルフィの戦いだ。
両チームのリーダー的存在の戦いとあって、試合は白熱した。黒鉄は、それを人気の無い通路から見つめていた。
そんな中でセリスは宣言していた。『自分にはこの学園を守る義務がある』と。『世の中にはまだ女性を虐げる男達がいて、自分は彼女達を守る剣であり盾でなければならない』、と。
「……やれやれ、堅物、と言う奴かな、これは」
それを聞いていた黒鉄はポツリと呟いた。
彼の目に映るセリスは、確かに強い女性には思えた。だが、最強であるがゆえに、その立場ゆえに他者に頼る事が出来ない彼女を、黒鉄はどこか『堅い』と感じていた。
「……確かにお主は強い。が、人が1人で成せる事など、高がしれているのだぞ、セリスティア・ラルグリス」
彼はリンドヴルムを纏う彼女を見上げながら呟いた。
かつて、彼1人では黄金の三つ首龍に勝てなかった事を。人との協力の果てに勝利した事を。結束の力が大いなる力であることを、思い出しながら。
と、その時。
「ッ」
黒鉄は不気味な気配を感じて振り返った。場所は学園の敷地内とクロスフィード各地。妙な微かな彼が眉をひそめた直後。
「ッ!?下っ!?」
彼は地中から迫り来る気配に、更に眉をひそめた。次の瞬間。
「ちっ!?」
彼はすぐさま闘技場の中へ飛び込んだ。
「ッ!?クロガネさんっ!?」
「えっ?」
突然の乱入者に、ルクスとセリスは戦いの手を止める。生徒達も何だ?と首をかしげる。
「双方今すぐ戦闘を停止せよっ!敵が来るっ!全生徒は今すぐこの場から退避せよっ!」
「敵っ!?」
「何を言っているのですか、彼は」
まさかの事に驚くルクス。しかしセリスは、黒鉄の言葉が突拍子もなさ過ぎて、信じられずにいた。
と、その時。
『『『『『ガタガタガタッ!!』』』』』
突如として演習場が酷い揺れに襲われる。生徒達がそれに戸惑っていたその時。
『ゴバァァッ!!!!』
演習場中央の大地を割って、何かが現れた。更に無数の触手が割れた大地の中から現れ、周囲の石壁などを破壊していく。
「きゃぁぁぁぁっ!」
「な、何あれっ!!?」
瞬く間に悲鳴と混乱が女生徒達の間で伝播する。何人かは機竜を纏って武器を手に応戦しようとした。だが、無数の触手に瞬く間に武器を奪われ、戦意を喪失してしまう。
更に、現れた烏賊のようなラグナレク、ポセイドンはその触手で生徒を捕え、捕食しようとする。だが。
「ずあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
飛び込んできた黒鉄の拳がポセイドンの顔面を大きく殴りつけ、その巨体を傾かせた。更に殴られた衝撃で拘束が緩むと、少女が落下する。黒鉄はポセイドンの体を蹴って彼女の方へと飛び、彼女を回収すると後ろへと下がった。
更に、彼に守って貰おうと言うのか、多くの女生徒達が、恐怖に怯えた表情で集まってくる。
如何にドラグナイトとして日々訓練をしている彼女達でも、圧倒的な存在の前に、完全に怯えきっていた。彼女達を前に、黒鉄は抱えていた少女を下ろす。
「大丈夫か?」
「は、はい」
「動けるのなら今すぐ学園の方へ逃げろ。皆もだ」
「く、クロガネさんは?どうするんですか?」
不安そうに問いかけてくる1人の女生徒。黒鉄は、それに答えるように振り返り、今にも起き上がりそうなポセイドンへと目を向ける。
「あのデカブツを倒す。皆も学園の方へと逃げろ」
「そ、そんな無茶ですよっ!相手はラグナレクなんですよっ!それを……っ!」
恐怖から来るネガティヴな意思。それが口から出てしまう。すると黒鉄は……。
「大丈夫だ」
優しく笑みを浮かべながら、怯える少女を抱き寄せ、あやすように優しく頭を撫でた。更に他の生徒達の頭を撫で、彼女達を落ち着ける。
「我はあんなデカいだけの烏賊風情には負けぬ。守ると、必ず守り抜くと決めた友たちがいるのだ。負ける道理など無い」
「クロガネさん」
優しい微笑みに、彼女達はこんな状況だというのに頬を赤く染めていた。
そして黒鉄は彼女達に背を向け、ポセイドンを睨み付ける。すると彼の足下から魔法陣が浮かび上がり、彼は黒龍モードとなる。
「さぁ行け。ここは我が引き受ける。今のうちに逃げよ」
「は、はいっ!」
黒鉄に促され、彼女達は退避を始めた。
彼女達が去った後。
『さて、どうしたものか』
黒鉄は数秒、思案していた。目の前にはラグナレクのポセイドン。更に学園に向かってくる謎のドラグナイト部隊の気配も気づいていた黒鉄。どちらを優先するか、と考えていた時。
「おぉいっ!クロガネ~!」
そこにティアマトを纏ったリーシャとファフニールを纏ったクルルシファーが現れた。そして彼女達を見た瞬間、黒鉄は行動を決定した
「リーシャとクルルシファーか。良い所に来た。すまないがしばらく、あれの足止めを頼む」
「あ、足止めっ!?あの化け物をかっ!?」
「あぁ。どうやらあれ以外にも所属不明のドラグナイト部隊が来ている。我はそれを片付けたら戻ってくる。その間、あれの動きを止めておいてくれっ!数分で戻るっ!」
そう言って駆け出した黒鉄。そして、大きく跳躍すると、周囲に目を向けた。上空には無数の飛行型機竜が屯し、地上でも数体のドラグナイトが逃げようとする女生徒達の前に立ち塞がっていた。
そして、黒鉄の優れた聴覚が地上にいた男の下卑た言葉を聞いた。聞いてしまった。
「いろいろと『使い道』は豊富だぜぇ」と。
その言葉を聞いた瞬間。
『ブチッ!』
黒鉄の中で、堪忍袋の緒が切れた。いや、『怪獣王』たる彼らしく言えば、『逆鱗に触れた』と言う事だ。
そして、次の瞬間。
『ゴアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!』
凄まじい怒気を内包した咆哮が響き渡った。その咆哮に、誰もが体を震わせ、ラグナレクでさえ、動きを止めた。
「ッ!?な、何だあいつはっ!?」
「アビス、なのかっ!?」
そして咆哮を受けて黒龍の存在に気づいた空中のドラグナイトたち。だが、それだけだ。
背中の背鰭が青白い光を漏らす。そして……。
『ドゥゥゥゥゥゥンッ!!!!!』
放たれた極太の熱線が、空をなぎ払い、多くのドラグナイトを消滅させる。
「な、何だありゃっ!?」
「あ、あんなのがいるのなんて聞いてねぇぞっ!?」
仲間が消滅する様を地上から見上げていた男達。と、その時。
『ドズゥゥゥンッ!!!!』
空間を蹴って突進してきた黒龍が、女生徒達と男達の間に、地面を砕きながら着地する。
そして……。
「この、腐れ外道どもがぁぁぁぁっ!」
『ドゴォォォォォォォンッ!!!!!!!』
パンチ一発。それだけでドラグナイトが男ごと、跡形も無く、声の一つ発する事無く砕け散る。そこから数秒で、男達は塵も残さず砕け散った。黒鉄の登場で、僅か数人のドラグナイトは逃げていった。だが黒鉄は追わなかった。今の目的は、学園及び生徒の守護だからだ。
「ふんっ!!」
黒龍は怒りを滲ませながら鼻を鳴らすと、後ろの女生徒達の方へと振り返った。
「皆、大丈夫かっ!」
黒鉄は黒龍モードのまま、彼女達の傍に駆け寄る。
「は、はいっ、ありがとうございます、クロガネさんっ」
「そうか」
『幸い、怪我をした者はいない、か』
彼は手早く少女達の様子を見るが、怪我をした者はいないようだ。
「クロガネさんっ!」
そこに、先ほどの試合の途中で疲労困憊となったフィルフィに肩を貸したシャリスが小走りに近づいてきた。
「シャリスッ!無事であったかっ!」
「あぁ、何とかね」
と、シャリスが答えていると……。
「クロガネくんっ!皆もっ!」
今度は校舎の方からレリィが走ってきた。
「レリィ学園長っ!?何故ここにっ!?」
「何故って、私は学園の責任者ですからね」
黒鉄の言葉に、彼女は少し息を切らし、汗を浮かべながらも応えた。
しかし彼女はフィルフィの事に気づくと表情を少し強ばらせた。
「フィルフィッ!?大丈夫なのっ!?」
「大丈夫です。先ほどの試合で動けなくなるほど消耗しただけのようです」
レリィにシャリスが答える。
「そ、そう」
その言葉に安堵したレリィは、すぐに周囲の生徒達に声を掛ける。
「皆は今すぐ校舎に避難をっ!シャリスさん、妹は私が預かるから、あなたは皆の避難誘導をっ!」
「了解ですっ!」
すぐさまシャリスはレリィにフィルフィを預け、生徒達の避難誘導を開始した。
「それと、クロガネ君は……」
「皆まで言うな、学園長」
と、次の瞬間、黒龍の背鰭が不規則に、青白く点滅する。それは彼にとって攻撃色を意味していた。
「我はここでの生活を気に入っていた。皆に出会えた事も、とても感謝している。……それを壊そうとする連中に、容赦など出来ぬ……っ!!!」
怪獣王の怒りが頂点に達する。青白い炎が黒龍の口元から漏れる。
「連中は1人残らず、この手で後悔させてやるっ!誰を相手にしたのか、その骨の髄まで、教えてやるっ!!!」
そう言うと黒鉄、黒龍はポセイドンのいる演習場へと引き返していった。
一方、演習場ではセリスが辛勝ではあるが、ポセイドンを倒していた。だが、試合に続くポセイドン戦で、セリスの体力はもう殆ど残っていなかった。
だが、そのポセイドンも、突如として現れた謎のフード姿の人物が奏でた、あの角笛によって何と復活してしまった。
更に、『ヘイブルグのスパイ』としての本性を現したサニア、そして彼女の纏った『B-Bloodワイバーン』と呼ばれる謎の機竜がセリスを奇襲し、弾き飛ばした。咄嗟に彼女の周囲に集まるルクス、リーシャ、クルルシファー。
「な、何故ですかサニアッ!全て嘘だったのですかっ!」
妹のように慕っていた相手からの裏切りは、彼女に絶望を与える。
そして、サニアは彼女を無能と嘲笑し、襲いかかった。咄嗟に応戦しようとするルクス達。だが……。
「させはせぬっ!!」
「ッ!?」
突如として響き渡った怒号。咄嗟に後ろへ飛ぶサニア。直後、彼女のいた空間を熱線がなぎ払う。
そして、起き上がったセリスとその傍にいるルクス達の前に黒龍、黒鉄が降り立った。
「クロガネッ!もう戻ってきたのかっ!」
「あぁ。雑魚連中は始末した。あとは、あのスパイと烏賊モドキをぶちのめすだけだっ……!」
黒鉄は、敵意と殺意をラグナレクとサニア、そして謎の人物にぶつける。
「チッ、もうやられたのか、役立たず共め……っ!」
すると、謎の人物が小さく吐き捨てる。
「あとは貴様等だけだ。貴様等が誰を敵に回したのか、教えてやるっ!!!」
黒鉄の怒号が響き渡り、ルクスもブレードを構える。
「リーシャ様、クルルシファーさんっ!2人は先輩をお願いしますっ!」
「しょうがないが、任せろっ!」
「仕方無いわね……っ!」
「ならば、我はあの烏賊を消し飛ばすっ!!!」
次の瞬間、黒鉄とルクスが前に出た。黒龍はポセイドンに、ルクスはサニアに向かっていく。
「はっ!来るかっ!」
サニアは凶暴な笑みを浮かべながらルクスと斬り合う。が……。
「おめでたい男だな、雑用王子っ!」
「何?どういう意味だっ!」
「知らないのなら教えてやるっ!あの女はお前の仇だという事をっ!」
「ッ!さ、サニアッ!それだけは……っ!」
セリスが止めようとするが、遅かった。
「かつて、自らの指南役だったお前の祖父にそいつは旧帝国の腐敗の事を話した。それを皇帝に進言した。だがその結果、投獄され獄中で死んだっ!そして、更にお前達にまで責が及んだのは、貴様自身が良く分かっているはずだ、王子様」
「ッ、じゃあまさか、ルクスが王族を追われたのは……っ!?」
話を聞いていたリーシャが声を荒らげる。
「そうだっ、お前が王族の地位を追われたのも、祖父が死んだのもその女のせいだっ!それを守るなど、道化だなっ!雑用王子っ!」
サニアはルクスを見下ろし嘲笑する。そして、ルクスはかつてサニア戦で見せた、相手の武器を破壊する極撃を使って彼女のブレードを破壊した。だが、何とブレードは再生し、彼女の一撃がルクスをセリスの傍まで弾き飛ばす。
「くっ!」
何とか着地するルクス。その時。
「ごめん、なさい」
セリスのか細い声が、ルクスの耳に届いた。と、その時黒鉄と戦っていたポセイドンが口から墨のように黒い霧が吐き出された。
「うっとうしいわぁっ!」
黒鉄は今もポセイドンと戦っていた。そのパンチが顔面の半分を消し飛ばすが、すぐに再生を始め、触手が黒龍を攻撃し再生する時間を稼いでいる。
「ちっ!何だあいつっ!おいサニアッ!お前もポセイドンに加勢しろっ!雑魚は後でゆっくり嬲れば良いっ!先にあの化け物をやれっ!」
「了解」
更にフードの人物の指示でサニアも遠距離からキャノンで攻撃を仕掛けて来る。
黒鉄はポセイドンとサニアを相手に、それを完全に抑え込んでいたが、彼も抑え込めるのがやっとだった。理由としては、ここでは全力を出せないからだ。全力の熱線、ヒートブラストは破壊力も高く、下手に撃てば学園やクロスフィードに被害を出してしまう恐れがあるからだ。
そして、その間、ルクスはセリスの前に立っていた。
「私、言い出せませんでした。ウェイド先生の事、あなたのおじいさんの事」
静かに、しかしこれまでよりも弱々しい声で語るセリス。
「幼かった私は、ラルグリス家で偶然聞いてしまった悪い話を、ウェイド先生に話してしまったのです。ただ、正しい事をすれば良いんだと、深く考えもしないまま。その結果、ウェイド先生は……」
「………」
ルクスは、前を警戒しながらも静かにセリスの言葉を聞いていた。
「先生は、私に『お前は間違ってないよ』と言ってくれました。でも、私は私を許す事は出来ませんでした。だから誓ったのです。私が先生の代わりに正しくならなくちゃいけない。男性に虐げられてきた女の子達を守り、先生の孫であるあなたのことも危険から遠ざける。それが、私の為すべき事だと思って居ました」
「……だから、ラグナロク討伐に僕を参加させたくなかったんですね?」
「でも、出来ませんでした。欺され、利用され、あなたを巻き込んで。彼にも負け、学園最強が聞いて呆れます。私は、ダメダメです」
諦観とも言える弱々しい声が響く。
「あなたも、きっと私を恨んでいますよね。でも、大丈夫です。私が、命に替えてもあなたを守って見せますから」
それはまるで贖罪だった。かつての自分の過ちを清算したいがための。
「勝手に決めないで下さいっ!」
「ッ」
しかし、彼女の言葉をルクスが遮る。
「命に替えても守るって、僕はそんなの嬉しくもなんともないですよっ!僕は誰かに守って欲しい訳じゃないっ!誰かに死んで欲しい訳でもないですっ!」
「ルクス、アーカディア」
そしてルクスは漆黒のソード・デバイスを抜く。
「ッ、それは確か、ルノが持っていた」
彼女はそれを見たことがあった。だがそれは、ルクスがルノであった時に、だ。彼がそれを持つ意味を理解した彼女は、少しして驚いた様子だった。
「すみません。先輩には、謝らないこと、たくさんあると思います。でも、今はごめんなさい。先に、あっちを片付けてきますから」
そう言ってルクスは、どこか申し訳なさそうに笑みを浮かべながら纏っていたワイバーンを解除すると、ソード・デバイスを抜きはなった。
「顕現せよ、神々の血肉を喰らいし暴龍。黒雲の天を断て!≪バハムート≫!」
ルクスの呼びかけに応じるように、漆黒の鎧、神装機竜バハムートが姿を現した。
「ッ!?そ、それは、まさか、あなたが!?」
「……セリス先輩。僕は、あなたを恨んでなんかいません。それよりも、強くて、優しくて、でも不器用なあなたのことが、好きですから」
「ッ」
ルクスの言葉に、こんな時だというのにセリスは頬を赤く染める。そして、ルクスはリーシャ達の方へと目を向ける。
「リーシャ様、クルルシファーさん。僕とクロガネさんで彼奴らを倒してきます。セリス先輩を、お願いします」
「任せろルクス!」
「分かったわ」
ルクスは2人にセリスを任せ、黒鉄の方へと飛んでいった。
「ルクス・アーカディア」
そんな彼を見送るセリス。ちなみに……。
「なぁ、クルルシファーよ。あいつの事をどう思う?」
「落ちたんじゃない?文字通り」
2人は2人で、セリスに気づかれないように小声で話をしていた。そして2人は思った。
『『ルクス(君)のバカ』』、と。
そして、黒鉄の元へと飛んだルクス。
「ずあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
黒龍のブレードの一撃がポセイドンの触手の大半を切り裂く。だが、襲いかかってくるサニアの一撃を防ぎ、後ろに飛ぶ。
すると……。
「クロガネさん」
「ルクスか」
並び立つ2匹の黒龍。その前には巨大な烏賊型のラグナレク、ポセイドンと異形の機竜とも言えるB-bloodワイバーンを纏ったサニア。
中でもサニアは勝ち誇ったような笑みを浮かべている。どうやら、黒鉄でもポセイドンには勝てない、とでも考えたのだろう。
まぁ実際には被害を恐れて黒鉄が全力を出してないだけなのだが。
そんな中でルクスと黒鉄は……。
「さて、どうやって連中を始末するか」
「あのラグナレクの再生能力は厄介ですね」
戦う闘志を失わず、むしろ勝つ気満々だった。
「それについてだが、ルクス。我に提案がある」
「と言うと?」
直後、黒鉄は手短に、通信である竜声で作戦を伝える。
「やれるか?ルクス」
「はい。それくらいなら僕でも十分です」
「はっ!作戦会議は終わりかぁっ!やれっ!ポセイドンっ!」
すると、フードの人物が2人を舐めているのか。それまで沈黙していたポセイドンが、笛に操られ、2人に襲いかかった。
それに対して前に出るルクスと少し後ろに下がる黒鉄の黒龍。
「おぉぉぉぉぉぉっ!」
ルクスのバハムートは凄まじい勢いで、既に半壊した演習場を駆け巡りながら無数の触手を切り捨てていく。だが、それも瞬く間に再生が始まる。
「無駄だっ!如何に神装機竜と言えど、ラグナレクには勝てないっ!」
サニアは勝ち誇った笑みを浮かべながら叫ぶ。
「ん?」
しかしふと、彼女は黒鉄が後ろに下がったまま動かない事に気づき、その行動を訝しんだ。
と、その時。
『ゴアァァァァァァァァァァッ!!!!!』
後ろに下がっていた黒龍が咆哮を上げた。その背鰭は青白い光の明滅を繰り返す。更に体全体が圧倒的な熱量を持っているのか、装甲が赤みを帯び、背鰭がまるで炎のように赤くなっていく。光もそれに合わせて青から赤になっていく。
それは、かつて偽りの王との戦いの中で発揮した力を再現し、制限したものだ。
かつて黒鉄は、まだゴジラであった頃に一度だけ自爆の危機に瀕したことがある。大きすぎるエネルギーが、彼の体に収まりきらなかったのだ。
あの時は、彼の大切な存在の、命と引き換えに力を制御する事が可能になった。だが今は、進化した彼ならば、ある程度『あの時の自分』を再現する事が出来る。
だが、だからといってすぐに使える訳ではない。チャージが必要だ。
「ッ!何をしようと、無駄な事をっ!」
その姿に危機感を覚えたのか。サニアはキャノンからエネルギー弾を放った。だが……。
「おぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
それを、ルクスのバハムートが『投げたソード・デバイス』が、黒龍を守る盾となった。だがそれはバハムートのソード・デバイスではない。ポセイドンが現れた直後、戦おうとした女生徒達が落とした物だ。
「ッ!?このっ!」
ルクスの妨害に舌打ちしながらもサニアは更にキャノンを放つが、それら全て、ルクスが投げた無数のソード・デバイスや武器に阻まれてしまった。
これは、バハムートが持つ特殊武装、≪共鳴波動≫、『リンカー・パルス』のおかげだ。この特殊武装は周囲にある物体に干渉して動かす物だ。早い話が、サイコキネシスである。だがこれで重い物体を浮かせたり動かす事は出来ない。精々機竜用の武器やソード・デバイスと言った、小物を浮かせたり引き寄せたりが関の山だ。
だが、それでルクスには十分だった。
ポセイドンの触手を躱し、切り裂きながらも手元に引き寄せた武器で黒鉄を攻撃しようとする、サニアの攻撃を防ぐ。
そう、ルクスがしているのは、エネルギーチャージ中の黒鉄を守る事だった。
「ば、バカなっ!?」
まさかの行動、常軌を逸した行動にサニアは冷や汗を流す。
それは、ルクスの編み出した奥義、『永久連環』、エンドアクションと呼ばれる技だ。
動作と言うものには、始まりと終わりがある。そして攻撃が終わった瞬間、隙が出来るのはよくある事。戦闘ではその隙を突かれた方が負けと言っても良い。
だがルクスは、機竜の肉体操作と、精神操作を交互にこなす事で、動作の終わり、つまり隙を消しているのだ。前の動作が終わる前に次の動作に入る。こうすることで圧倒的なまでの連続攻撃を可能としているのだ。
「くっ!?だ、だがそのような高速戦闘っ!いつまで持つっ!貴様の体力とて無限ではあるまいっ!」
負け惜しみのように叫ぶサニア。だが……。
「残念だけど、僕はただの前座ですよっ!」
「何っ!?」
ルクスの言葉の意味が分からず狼狽するサニア。と、その時。
「ルクスよっ!下がれっ!」
「はいっ!」
響き渡る黒鉄の怒声。次いで、攻撃を止めたルクスが黒鉄の更に後ろへと下がる。
「時間稼ぎご苦労っ!さて、行くとするかぁっ!!!」
『ゴアァァァァァァァァァァァァァッ!』
今度は入れ替わるように、全身が赤く赤熱化した黒龍が前に出る。
「そんなもんで何が出来るっ!」
フードの人物が笛を操り、ポセイドンの触手が黒龍目がけて殺到する。
だが……。
『『『『『『『ジュボォォッ!』』』』』』』
「何っ!?」
黒龍に近づいた途端、触手が燃えてしまったではないか。更に、よく見れば黒龍が踏みしめている大地まで溶けている。フードの人物が狼狽する。
「ずおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
灼熱の盾を纏った黒龍がポセイドンに突進し、掴みかかった。
その爪が掴んだ場所が、瞬く間に燃え上がる。
『ギェェェェェェェェェッ!!!!』
ポセイドンが不快な声を上げる。だが、本当に驚くべきはここからだ。
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅんっ!!!!!」
黒龍は、掴んだポセイドンをゆっくりと持ち上げ始めた。埋まっていた触手部分が大地を割って現れ、ポセイドンの全体が地上に姿を現した。
ポセイドンは黒龍から逃れようとするが、触手は黒龍の熱量に焼かれて、灰と消え、再生してもまた灰になるの繰り返しだ。
持ち上げた黒龍の足元が音を立ててひび割れ溶けていく。
ポセイドンが『持ち上げられた』という現実に、ルクスやリーシャ、クルルシファーにセリス。更にフードの人物やサニアまで、驚き硬直していた。そして……。
「ぐぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
黒龍が雄叫びと共に、何とポセイドンを空中に投げてしまったではないか。音を立てながら空に向かっていくポセイドン。
「な、何あれっ!?」
「う、嘘でしょっ!?」
空に向かって投げられたポセイドンは、避難していた生徒達も見ていた。
誰もが空を舞うポセイドンに驚き、目を向けていた。
『バチバチバチィッ!』
そして、その隙に黒鉄、黒龍はため込んだエネルギーを解放しようとしていた。背鰭がバチバチと青白い火花を散らす。口を開け、上を向く。尻尾をアンカーのように地面に突き刺す。
口元から真っ赤なエネルギーが顔を覗かせる。そして……。
『ゴアァァァァァァァァッ!!!!』
その口元から、極太の光の柱を思わせる熱線が放たれ、空を舞うポセイドンへと命中した。
それは、ヒートブラストを越える一撃必殺、地獄の業火にも等しい熱量で、相手の全てを焼き尽くす熱線、『インフェルノブラスト』。
そのインフェルノブラストが、ポセイドンを飲み込んだ。そして、ポセイドンは悲鳴一つ上げる事無く、最後は塵となって消滅した。
こうなっては復活も出来ない。ポセイドンだった物が、周囲に舞い散る。
すると、黒龍から大量の煙が吹き出す。余剰エネルギーをそうして放出したのだ。
「ほ~~。こいつは予想外だ」
すると、ローブの人影が2人に声を掛けた。
「あぁホントに、予想外だぜクソ野郎共がっ!よくもやってくれたなぁ!黒の英雄に、訳もわかんない化け物めっ!良いかっ!お前達は完全に俺を怒らせちまったぜっ!」
叫ぶローブの人影。だが……。
「……怒った、だと?笑わせるなよゲスが……っ!」
「く、クロガネさんっ!?」
ローブ姿の言葉に、黒鉄はこれまでルクス達が見た事も無い敵意と殺意を滲ませる。その敵意と殺気の濃さに、ルクスや離れていたリーシャ達でさえタジタジだ。更にこれを直接ぶつけられているサニアなど、顔を青くして微かに震えている。
「それはこちらも同じだっ!生きて、ここから帰れると思うなよ下郎どもがぁっ!!!!」
『ゴアァァァァァァァァァァッ!!!』
怒号と咆哮が響き渡る。それに呼応して背鰭が青白く光る。直後、放たれた熱線。だが、それはローブの人間を焼き払う事は無かった。直前でサニアがその人物を回収したからだ。
だが、今の攻撃の余波でローブ姿の人物の、顔を隠していたローブが後ろにずれた。
その下から現れたのは……。
「ッ、フギル兄さん、じゃない?」
ルクスは当初、相手が銀髪であることから、自らの兄であり、そして今彼が追いかけている相手、『フギル・アーカディア』ではと考えていた。だが、銀髪以外は何も似ていない女性だった。
だが、その人物は女性には似つかわしくない凶暴な表情でこちらを見下ろしている。
「覚えておけよ新王国の偽王子に化け物めっ!俺の名は『ヘイズ』ッ!テメェ等をぶっ殺す女の名前だっ!」
「戯れ言をっ!言ったはずだっ!貴様等は、逃がさんっ!」
第2射をチャージする黒龍。だが、それよりも先にヘイズが角笛を吹いた。
『『ギィェェェェェァァァァッ!!!』』
すると、どこからともなくアビス、それもかつてガーデンで戦ったディアボロスが2体も現れた。
「ッ!?ディアボロスっ!?」
「まさか、あんなのまでっ!?」
突然の登場に驚くリーシャとクルルシファー。ディアボロスは真っ直ぐ黒龍へと向かっていく。が……。
『ドウゥンッ!!!』
放たれた熱線が瞬く間にディアボロス2体を飲み込む。これで邪魔物は居なくなった。だが……。
既に、ヘイズとサニアの姿は消えていた。
「逃げられた、か」
あの2人が逃げた事を確認すると、黒鉄は人型へと戻った。だが、彼はどこか悔しそうな表情を浮かべるのだった。
こうして、ポセイドンとドラグナイト部隊の奇襲を受けながらも、ルクス達や黒鉄の活躍もあって奇跡的に死傷者を0に抑える事が出来た。
だが、ヘイズの宣戦布告とも取れる最後の言葉。それがルクスと黒鉄の肩に重くのし掛かるのだった。
第15話 END
最近リアルが忙しかったりで遅くなってしまいました。
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