最弱無敗の神装機竜~~黒き英雄と黒の王~~   作:ユウキ003

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書き上がっているので投稿します。


第1話 出会い

夜。日も暮れて夜のとばりが世界を覆い尽くす。

そんな夜。黒鉄は昼間の一件における身の

潔白を証明するために、城塞都市クロス

フィードの王立士官学園の牢屋に入っていた。

 

寝息を立てて眠っている黒鉄。

「……む?」

その時、彼は接近してくる複数の足音に

気づいて目を覚ました。

 

夜のこんな時間帯に、それも牢屋に近づく

足音だ。警戒もしていた。寝たふりを

しながらも、外套で顔を隠しつつ外の様子

をうかがう。すると……。

 

「む?お主らは……」

現れたのは、昼間に接触したノクト、

ティルファー、シャリスの3人だった。

「夜分にすまないクロガネさん。悪いのだが、

 しばらくここに彼を置いておくのを

 許して欲しい」

鍵を使って扉を開けたシャリス。すると

後ろのティルファーが担いでいた何かを

牢屋の一角に下ろす。

 

見るとそれは人だった。如何にも『男』、

と言った感じの黒鉄と対照的に華奢な

少年だった。

「この少年、何かしたのか?」

「あぁ、覗きだ。何でも女子風呂に天井から

 落下してきたらしい」

シャリスの言葉に、黒鉄は『は?』と首を

かしげると、呆れを含んだ表情で少年に視線を

向ける。

「仮にもここはドラグナイトを育成する

 場所だろう?この少年は何を思ってこんな

 所に忍び込んだのやら」

「全くだ。しかし、すまない。ここは牢屋が

 殆ど無くてね」

「良い。我とてこんな華奢な少年に敗れる

 ほど弱くは無い。それより、我の身の潔白

 の件、急かすようで申し訳無いが頼むぞ?」

「あぁ。分かっている。明日の内には

 何とかなるだろう」

「そうか。では、おやすみ」

「あぁ。おやすみ」

「おやすみなさい、クロガネさん」

「じゃあね~クロっち~!」

シャリス、ノクト、ティルファーの3人が

各々な挨拶と共に牢屋を後にする。

 

ちなみに……。

「クロっち。……我の事か?」

と、黒鉄はそこが気になるのだった。

 

それから数時間後。

「う、う~ん。あ、あれ?ここは……」

黒鉄が眠っていると、少年が目を覚ました。

それに気づいて目を覚ました黒鉄は

少年の事を観察する。そして……。

 

「ここは王立士官学園の牢屋だぞ、少年」

「えっ!?」

突然の声に少年は驚いて振り返る。

「あ、貴方は!?」

黒鉄は顔を覆っていた外套のフードを後ろに

下げると素顔を晒した。

 

「訳あってここに入っている者、とだけ

 言っておく。それより、お主は

 何者だ?華奢なのぞき魔よ」

「ち、違いますっ!?僕はのぞき魔じゃ

 ありません!ただちょっと、猫を追いかけて

 天井に上がったら、踏み抜いちゃって。

 気づいたら女子風呂の中にいて。

 慌てて逃げ出したら下着ドロだとか

 覗き魔って噂が広まっちゃって」

話しながらも、次第に落ち込んでいく少年。

「あ~も~。どうしてこんな事に~」

若干涙目の少年に、黒鉄はククッと笑みを

浮かべる。

 

「猫を追いかけてか天井へ、しかもそこが

女風呂の真上か。災難だったな少年」

「本当にもう今日は厄日ですよ」

黒鉄の言葉にため息をつく少年。

『って?あれ?普通に信じてくれた?』

少年はふと、そんな疑問を持った。

「まぁ、そんな日はさっさと寝るに限る。

 それに夜は眠る時だ。今は寝て、明日に

 備える事だな。何事も体力が無ければ

 話しにならんぞ、少年。どうせ、ここに

 いる以上他にやることも無いからな」

「あ、は、はい」

黒鉄は、少年にそれだけ言うと、すぐに寝息

を立てて眠ってしまった。

それを見た少年、『ルクス・アーカディア』

もしばし迷ったが、確かに寝ること以外

何も出来そうに無いと思って、冷たい床

に身を置き、眠りについたのだった。

 

 

それから数時間後。朝。

「う、う~ん」

ルクスは目を覚ました。重い瞼を開け、

周囲を見回したルクスが体を起こそう

とした時。

「あれ?」

彼は自分の体に外套が掛けられている

事に気づいた。

「これって。……あっ」

ふと、同じ牢屋にいる黒鉄に目をやると、

昨夜は纏っていたはずの外套が無い。

同時に露わになる逞しい肉体。

肝心の黒鉄は壁際で胡座を掻いて腕を

組んだ状態で眠っていた。

「これ、掛けてくれたんだ」

ルクスは、自分に掛けられていた外套

を見て、少しだけ笑みを浮かべた。

 

「ん、むぅ」

やがて、少しすると眠っていた黒鉄も目を

覚まし、クァアと欠伸をすると体をブルリ

と震わせた。

「あ、あの」

「む?あぁおはよう少年」

「おはようございます。あと、これ。

ありがとうございました」

そう言ってルクスはおずおずと畳んだ外套

を差し出す。

「なんか僕にかけてくれたみたいで、

 すみません」

「良い良い。この場所は少々肌寒い。

お主も震えていたようだったのでな。

風邪を引くと辛かろうと思ってな」

「あ、ありがとうございます。僕、色々

 仕事をしていて、簡単に休めない物で」

「そうか。その仕事はそんなに忙しいのか?」

「え、えぇ。便利屋みたいな物で家事の

手伝いから落とし物探しとか色々やっていて」

「うぅむ。若いのに仕事熱心なのだなぁ」

黒鉄は感心したようにうんうんと頷く。

 

しかし、その言葉にルクスの表情が陰る。

「そんな事、無いですよ。……これは、

 僕に与えられた義務ですから」

「……そうか」

ルクスの表情の陰りから、黒鉄は彼が『訳あり』

である事を察し、これ以上の詮索は止めよう

と考えていた。

 

その時、こちらに近づく複数の足音に気づいた。

「む?少年、誰か来るぞ」

「え?」

黒鉄の声に反応し陰っていた表情から復帰し

入り口の方に視線を向けるルクス。

 

すると、入り口に二人の人影が現れた。

一人はシャリスだったが、もう一人は

黒鉄には見覚えが無かった。

金色の髪に紅い瞳。身長は小柄なルクス

よりも更に小柄な程度だが、その体からは

かなりの存在感が放たれていた。更に黒鉄は

彼女がルクス以外眼中に無い事をその視線

から理解する。

 

「おはようクロガネさん。朝早くに悪いが、 

 学園長が君たちと話したいそうでね」

「ふむ。そうか。……しかし、君たち、と言う

 事はこの少年もか?」

「あぁ、彼もだ」

何やら隣で相手に驚いているルクスに

視線を送る黒鉄とシャリスだった。

 

その後、二人はシャリスと金髪の少女、

『リーズシャルテ・アティスマータ』に

連れられ、学園長室へと通された。

「さて、と。ルクス君には久しぶり、

 と言うべきかしらね」

「は、はい。お久しぶりです」

「そして、貴方には初めまして、と言う

 べきからしらね。クロガネ君。私は

 レリィ・アイングラム。ここ、

アカデミーの学園長をしている者よ」

「お初にお目に掛かる。黒鉄というものだ。

 それで、我の身の潔白についてはどう

なっておるのだ?」

「まぁまぁ。ちょっとだけ待ってちょうだい。

 まずはクロガネ君とルクス君がここに

 いる理由の説明とかからね」

「ふむ。分かった」

 

その後、まずは黒鉄が昨日街中で賊を

ぶちのめした経緯を。

次いでルクスが女子風呂に落下した経緯を

説明した。

 

ちなみに……。

「え~っと、貴方は素手でワイバーンを

 倒した、とかって聞いてるけど、

 どうなのかしら?」

困惑気味に呟くレリィの言葉に、隣に

いたルクスが驚き、壁際のルーズシャルテ

も眉をひそめる。

「ふむ。その件については語弊が

 あるな」

「そうなの?」

「我が倒したのはワイバーンの操縦者

 であるドラグナイトだ。機竜を

 纏っているとは言え、体は剥き出し

 であるからな。油断して何やら

 ベラベラ喋っていた所を、一気に距離

 を詰めて腹に一発ぶち込んでやった

 だけでのびてしまった、と言う

 のが正確な所だな」

「……えぇ?」

黒鉄の言葉に、隣に居たルクスは

訳が分からない、と言わんばかりの

表情だ。

「ちなみに、その賊は『装衣』を纏って

 いたかしら?白いスーツのような物

 なのだけど……」

レリィの言う『装衣』とは、一言で言えば

パイロットスーツだ。体にフィットする

スーツで、ドラグライドを纏った際には

機竜の核である『幻機核(フォースコア)』

からエネルギー供給を受け表面に障壁を

展開する機能がある、防護スーツの

ような物だ。

「いや。賊は普通の服の上に纏っていた

 だけだったな」

つまり、装衣を纏っていないと言う事は

纏っている状態と違ってドラグナイト

本人の防御力が低下している事を意味

する。

 

まぁそれでも一気に距離を詰めて

ドラグナイトをぶん殴って気絶させる

など容易ではないが……。

「そ、そう。まぁ貴方の協力的な態度から

 見て、悪人ではないと思いますが、

 とにかく事情は分かりました。では次に

 ルクス君。あなたについてよ」

 

そう言って、レリィはルクスと仕事の話を

し始めた。実は今日、彼はここに仕事が

あるとして呼ばれていたのだ。

 

内容は、怪我の恐れもある重労働で過酷な

ドラグライドの整備、と言う物だった。

5年前のクーデターでドラグナイトの数が

大半が死亡してしまった現在、人手が足りない

のだ。それはこの女学園でもあるアカデミー

も同様で、レリィ曰く、『不本意だが男性

の協力も必要』、との事で、『最弱の無敗』

の異名を持つドラグナイトであるルクスに

話がきたようだ。

 

『しかし、アーカディア、か。まさかこの

少年が旧帝国王族の生き残りとはな』

黒鉄は話を聞きながら頭の片隅でそんな事を

考えていた。

そして、ルクスの話がまとまり掛けた時。

 

「学園長。少し良いか?」

今まで黙っていたリーズシャルテが口を開いた。

彼女はルクスの話を全く信じて居らず、逆に

ルクスが学園で仕事をする事に反発していた。

 

そして更に、彼女の疑いの矛先は黒鉄にも向く。

「それに、その男もだ」

「む?我もだと?」

いきなり話を振られた事に首をかしげる黒鉄。

「賊に襲われたアカデミーの生徒を助けた

 とあったが、それは果たして真実か?

 アカデミーの実情を知るために何者かが

 送り込んだスパイという可能性もある」

「……つまり、貴様は我を嘘つき呼ばわり

 すると言うのか?」

彼女の言葉に、黒鉄が僅かに怒りのオーラを

纏う。

 

「違うのか?大体、機竜を生身で倒すなど

 ありえん。作り話に決まっている。

 私は、この男もそこの旧帝国の王子と

 同じように牢屋にぶち込むべきだと

 提案する」

「ま、待って下さい!」

そこに声を荒らげたのはルクスだった。

「た、確かに僕は女子風呂に飛び込ん

じゃって色々しましたけど、クロガネ

さんは僕と何も関係無いじゃないですか!」

「何だ?罪人同士、互いにかばい合うか?」

「ですから、それは!」

自分の事とクロガネの事を含めて反論

しようとするルクス。

 

しかし。

「まぁ待て少年」

それを黒鉄がルクスの肩に手を置いて止める。

「我の事を嘘つきと言ったな。ならば、

貴様の前で実際にワイバーンを倒せば、

貴様は我の言葉を信じるのか?」

「何だと?」

怪訝そうな表情を浮かべるリーズシャルテ。

 

「実際に力を見せ、我の言って居る事が嘘

で無いと証明すれば良いのかと

聞いている。『百聞は一見にしかず』、

と言う諺もある。言って聞かせるより

見せた方が早かろう?」

「ほう?それはつまり、貴様が生身で

ワイバーンと戦うと言う事か?そう

なれば、最悪死ぬぞ?」

「それでも構わん。我は生身だろうが

 量産機に負ける気など無い。仮に命

を落としたとしても、ならば所詮我

がその程度だったと言う事。

……それで、どうなのだ?」

鋭い視線で問いかける黒鉄。

「危険ですよクロガネさん!生身で機竜

 に挑むなんて!」

「嘘つき呼ばわりされては我も黙っている

 訳にはいかん。ならば力を証明するだけの

 事だ」

止めに入るルクスを制する黒鉄。

 

すると……。

「ふっ。良いだろう」

リーズシャルテは不敵な笑みを浮かべる。

「ではこうしよう。そっちの旧帝国の王子は

 私と機竜で勝負だ。貴様が勝てば今後

 学園に通うことを認めよう。逆に負ければ

 牢屋行きだ。加えてそっちの大男は、

 ワイバーンと生身で互角以上に戦えば

 話が嘘では無いと認め嘘つき呼ばわり

した事に対して謝罪しよう。これでどうだ?」

「ふむ。良かろう。我はその提案を受ける」

リーズシャルテの提案に、黒鉄は一切迷う事

なく頷く。

「少年、いや、ルクス・アーカディア。

 お主はどうする?」

「……受ける受けないの選択権は、僕には

 無いんですよね?」

「無論だ。拒否するならば即刻牢屋行きだな」

勝ち誇ったような笑みを浮かべながらの彼女の

言葉にルクスはため息をつく。

 

「分かりました。やります」

「ふっ。良かろう」

そう言うと、彼女は扉の方に歩み寄り、その

ドアノブを捻って扉を引いた。

「「「きゃぁっ!?」」」

すると、扉の外で聞き耳を立てていた

であろう女生徒達が部屋の中になだれ込む

ように倒れ込んだ。

 

「そう言う訳だ。学園の皆に伝えろ。観客は

 多いほど良いぞ。新王国の姫が、旧帝国の

 王子をやっつける見世物と、嘘つき大男の

 戦いが見られる、とな」

彼女の言葉に、生徒達は楽しそうな声を

上げるとリーズシャルテと共に学園長室

を後にした。

 

その様子に絶句しているルクス。

「な、何か、話が大きくなって……」

「ふんっ。言ってくれるでは無いか」

戸惑うルクスの隣で、逆に黒鉄はやる気

満々だ。一方、傍で事の次第を見守って

いたシャリスは深々とため息をついた。

 

「ハァ。正気かクロガネさん。相手は機竜だぞ?」

「先ほど言った通りだ。我に負ける気は

 無い。仮に負けて屍をさらすのならば、

 我もその程度だったと言う事だ」

「ハァ。分かった。……それにしても

 学園長。クロガネさんの相手は誰に

 任せる気ですか?」

「う~ん。そうねぇ。ここにちょうど

 シャリスさんがいる事だし、貴女に

 お願いしようかしら」

「えぇ!私ですか?!」

「一応、学園にクロガネ君を連れてきたのは

 貴女たち何だし、お願い出来ないかしら?」

「は、はぁ。確かにそうですが……。

 分かりました。彼の相手を引き受けましょう」

そう言うと、シャリスは黒鉄の方を向く。

 

「申し訳無いが、しばらく待っていてくれ。

 用意があるのでな」

「うむ。分かった」

部屋を後にするシャリスを見送る黒鉄。

 

「さて、時間までどうした物か」

腕を組み悩む黒鉄。

「あぁ、それなら隣の応接室で待っていれば

 良いわ?それと、ルクス君もね」

「え?僕もですか?」

「えぇ。と言うかお隣にはルクス君の

 妹さんがいるから」

「え?」

レリィの声に戸惑うルクス。

 

ルクスと黒鉄はレリィに言われるがまま、

応接室へと通された。

 

「もう、兄さんは何をやっているんですか?

 呆れました」

そこには、黒鉄の見知った顔であるノクトと、

ルクスと同じ銀の髪を持つ少女、

『アイリ・アーカディア』がソファに

腰掛けていた。

そしてアイリの兄に対する第一声がこれである。

 

その後、互いに自己紹介をする事になった。

「では、まずは我からだな。我は黒鉄という

 者だ。世界各地を旅する放浪者でな、昨日

 このクロスフィードに来たばかりなのだ。 

 よろしく頼む」

そう言って、アイリとノクト、更には隣の

ルクスにまで軽く頭を下げる黒鉄。

それは、彼の見た目からはあまり想像も

出来ないほど、礼儀正しい物だった。

 

これには3人とも驚きだ。しかしすぐに

3人とも自分の自己紹介を始める。

「では次は私です。1年生のノクト・

 リーフレットと申します。以後、よろしく

 お願いします」

「私も彼女と同じ、1年のアイリ・アーカディア

 と申します。初めまして、クロガネさん」

「えっと、じゃあ僕も。改めまして、

 ルクス・アーカディアです」

 

そして、自己紹介が終わった後は主にルクスと

アイリの話になったのだが、ルクス達は旧帝国

の生き残りとして、アイリは人質。ルクスは

国民から雑用を引き受けていると言う話を聞く

黒鉄。しかもルクスは国家予算の5分の1に

相当する借金を返済するため仕事をしている事

や、ルクスが働けなくなるとアイリが困る

事などなど。

 

「むぅ。そうであったか。すまないルクス。

 我が手前勝手に彼女に実力を証明するなど

 と言ってしまったが故に、お主にも

 迷惑をかけてしまった」

そう言ってルクスに頭を下げる黒鉄。

「そ、そんな!頭を上げて下さいクロガネさん!

 僕は気にしてませんから!」

「そうですね。これは良い機会ですし、

 思い立ったら即行動の悪い癖、痛い目に

 あって反省して貰う良い機会です」

「それは酷くない!?」

アイリの言い分に反論するルクス。

しかし口喧嘩ではアイリに分があるようだ。

すぐに負けてしまうルクスだった。

 

「全く。兄さんが捕まって苦労するのは

 兄さんだけじゃ無いんですからね?

 私や『お母様』の事も少しは考えて

 下さい」

「ご、ごめんなさい」

そう言ってアイリに頭を下げるルクス。

「ルクスよ。お主にはアイリの他に家族が

 おるのか?」

「えぇはい。母が一人。と言っても、王都で

 殆ど軟禁状態で。僕達も許可が無ければ

 会う事も出来ませんが」

 

「そうか。……母子が会うのに他人の許可が

 必要とは、何とも度し難い事だ」

黒鉄はどこか苛立ちを含んだ声色でそう話す。

「それは、仕方がありませんよ。

 僕達は、かつて圧政を敷いた皇族の

 生き残りですから」

「ふむ。……では聞くがルクスよ。お主は

 その圧政に加担していたのか?」

「え?……いいえ。僕が7歳の時、母方の祖父が

 父、皇帝に諫言した事がきっかけで宮廷を

 追放され、その後は帝都の外れで暮して

 いました。裕福ではありませんでしたが、

 それでも僕は満足していました」

ルクスは、どこか懐かしむような表情で語り、

アイリも静かに目を閉じ、過去を思い返す。

 

「そうか。……であればこそ、お主も

 アイリも、お主の母も、罰を負うと言うは

可笑しいと我は思うぞ」

「え?」

黒鉄の言葉は、ルクスにとって意外の

一言に尽きた。

 

「驚く事では無かろう?確かに圧政を

 敷き、民を苦しめたとあればそれは

 背負うべき罰だ。だが、お主達は

 民を苦しめた訳ではない。罪を

 犯した訳でも無いのに罰を科される、

 と言うのは可笑しな話だ」

ルクスとアイリにとって、その言葉は予想外

であり、驚きだった。

 

「真に罰を背負うべきは、罪を犯した者だ。

罪人の親族だからと罪無き者を罪人、

咎人として扱うなど言語道断だ」

 

そう言って鼻を鳴らす黒鉄にその場にいた

3人は戸惑いを、更にルクスとアイリはどこか

満足げに、小さな笑みを浮かべた。

 

「ありがとうございます、クロガネさん。

 そう言って貰えると、ありがたいです」

そう言って笑みを浮かべるルクス。

「ただ、僕達は今、一応新王国の保護下

 みたいな物で、何の後ろ盾も無い僕達

 にとっては例え咎人とは言え、その

 保護を受けている状態だからこそ、

 その、皇族に恨みを持つ人達に襲われないで

 済む、と言いますか」

「む?そうか。……確かにそう言う考え方も

 ある、か。すなないな。こちらの意見を

 押しつけるように言ってしまった」

「い、いえ!まぁ確かに保護下みたいなの

 は良しとしても、でも……。嬉しい

 です。そう言って貰える人に、僕は

 会った事が無かったから」

そう言って苦笑を浮かべるルクス。

『でも、罰を受けるべき者は罪を犯した者、

 だと言うのなら、やっぱり僕は咎人だ。

 だって、僕はあの日……』

そう、ルクスは心の中で『あの日』の事を、

多くの人を『殺めた』事実を思い出すの

だった。

 

「そうか。……お主達も、若いのに苦労 

 しているのだな」

「大体は兄さんのせいですけどね」

「酷くないっ!?」

どこか父性を感じさせる黒鉄。

ポツリと呟くアイリと、意識を戻して反論

するルクス。

ノクトは笑みを浮かべながらそんな様子

を楽しそうに見つめていた。

 

その後、試合の為に機竜のチェックに

向かうルクス達。暇だったので黒鉄も

それに同行した。

 

そして、ルクス達が格納庫で機体の

チェックを行っていた時。

「クロガネさん」

「む?」

ルクス達の様子を見物していた黒鉄に

シャリスが歩み寄る。

 

「お主か。何か用か?」

「ハァ。今ならまだ試合の取り消しが

出来る。ドラグナイトとして警告

するが、今すぐ降りるべきだ。本当に

命を落としかねないぞ」

「忠告には感謝しよう。しかし、我は

嘘つき呼ばわりされるのが我慢ならん。

ならば本当の事を証明するだけの事」

「……本当に命を落としても学園は一切の

責任を負わないぞ?」

「構わん。ここで倒れるならば我はその

程度だったと言う事だ。お主らが責任

を感じる必要は一切無い。これは我

自身が望んだ戦いなのだからな」

シャリスの脅し文句のような言葉にも、

黒鉄は毅然とした態度を崩さない。

 

「はぁ。分かった。クロガネさんは強情だな」

そう言ってシャリスはため息をつく。

「それで、試合を行うわけだが、何か欲しい

 物はあるかな?武器とかなら、衛兵用

 の剣や槍があるが?」

「ふむ」

黒鉄は頷き、周囲を見回す。

すると彼の目にドラグライド用の剣が映る。

「……では、あそこの剣を借りたい」

「え!?い、いや、あれは機竜用の剣

 だぞ?普通の人間が使えるような

 代物ではないぞ」

シャリスの言葉を聞くと、黒鉄は無言で

壁に立てかけられていたドラグライド用の

剣の柄を片手で握り……。

 

『ブォンッ!』

片手のまま思いっきり横に振り抜いた。

そして倉庫の中を、一陣の風が舞う。

 

彼の姿と風に、ルクスやアイリが作業を止め、

ノクトとシャリスが唖然となる。

「忘れたか?我は『普通』では無いぞ?」

 

そう言って、黒鉄は片手で大剣を肩に担ぐ。

その場にいた4人は、黒鉄の剛力に唯々

驚く事しか出来ないのだった。

 

そして、試合の時が来た。

 

まず行われるのが、黒鉄VSシャリスの

戦いだ。

 

腰にソードデバイスを携え、白いドラグナイト

用のスーツ、装衣に身を包んだシャリスに対し、

いつも通りの姿に加えて肩にドラグライド用

の大剣を担ぐ黒鉄。

 

戦いの舞台となっている演習場の観客席には

大勢の生徒達が集まっており、彼女達は

シャリスに声援を送る。

 

かつての旧帝国では男尊女卑の思想が蔓延

していたため、新王国の男に対する評価は

あまり良い物ではない。

 

「それでは、シャリス選手は機竜の展開を!」

審判役の教官の女性の言葉が響く。

「では、行くとしよう」

そう言ってシャリスは腰元の鞘からソード

デバイスを抜き、転送のためのパスコード

を叫ぶ。

 

「来たれ、力の象徴たる紋章の翼竜。我が

剣に従い飛翔せよ!≪ワイバーン≫!」

彼女の呼びかけに答えるように、汎用機竜

であるワイバーンが展開され彼女の体を

覆う。

 

展開と同時にシャリスは右手にドラグライド

用の剣を抜く。それを見て黒鉄も肩に担いで

いた剣を構える。

「それでは、これより試合を開始します!

 模擬戦、開始!」

 

「さぁ試合開始だ黒鉄さん。まずはそちら

 に先手を譲ろう」

「ほう?何故だ?」

「正直な所、私は貴方に怪我をさせたくは

無いのでな。先手で実力差を理解し棄権

してくれればと思っただけの事だ」

そう言って、シャリスは余裕の笑みを浮かべる。

 

「そうか。……ならば先手を取らせて貰う

 としよう。しかし……」

『ドゴォッ!』

次の瞬間、黒鉄の足下が爆発したかのよう

にえぐれ、同時に彼の姿がぶれる。

 

「なっ!?」

息を呑むシャリス。そして、瞬きをした

一瞬で、黒鉄が彼女との距離を詰めていた。

「実力の差を見誤っているのはお主の方だぞ」

そして、シャリスの眼前で既に大剣を

両手で掲げている黒鉄。

「ッ!?」

 

しかしシャリスもアカデミーの3年生。

彼女は咄嗟に横っ飛びで振り下ろされる

剣を回避する。

『ドゴォォォンッ!!』

直後、黒鉄の剣が大地に激突し、まるで

大地が爆発したかのように砂塵と岩石片

が周囲に飛び散る。

 

その一撃で、あれほどまでに盛り

上がっていたギャラリーがシンと静まり

変える。

舞い上がった砂塵が次第に晴れると、

そこにはひび割れた大地に剣を振り下ろし

ている黒鉄の姿があった。剣はその刃の

部分が殆ど地面に埋まっている。

「ふんっ」

しかし、彼は剣を事も無げに抜き取る。

ズボッと言う音と共に抜けた剣を

彼は肩に担ぐ。

 

彼の足下の地割れは数メートルに及ぶ

大きさであり、それが彼のパワーの

大きさを物語る。

「嘘、だろ?」

それを一人、次の試合の為にと入場

ゲート付近で見ていたルクスは、冷や汗

を流しながら呟く事しか出来なかった。

 

そしてそれと同じようにリーズシャルテ

もまた、ルクスと反対側のゲートから

戦いを見ており、彼のパワーの前に戦慄

していた。

『ま、まさか本当に奴は……。生身で

 ワイバーンを倒したと言うのか……!?』

 

『何だあのクロガネさんのパワー。

 人間業じゃない。あの人は……』

『機竜用のソードを使ったとは言え、

胆力だけで大地を割るなど、人間の

出来る事ではない。あの男は……』

 

『『人間なのか?』』

 

奇しくも、二人は同じ事を考えていたのだった。

 

「……お主」

そして、呆然となっていたシャリスに

黒鉄が声を掛けた。

ハッとなったシャリス。

 

「まだ名を聞いてなかったな。出来れば

 名を聞かせて欲しい」

「う、あ。わ、私は、シャリス・バルトシフトだ」

「そうか。では改めて言おうシャリス・

 バルトシフト」

 

そう言うと、彼は剣の切っ先を彼女に向けた。

「我に手加減の類いは一切無用だ。殺す気で

 掛かってくるが良い」

次の瞬間、彼の体からとてつもない『圧』が

放たれた。

「ッ!」

それに気圧され、一歩下がるシャリス。

 

「どうやら、貴方の言うとおり手加減を

 している場合では無いよう、だなっ!」

次の瞬間、シャリスは剣を左手に持ち替え、

右手にブレスガンを召喚すると、それを

黒鉄に向けて有無を言わさず放った。

 

「ちょっ!?それはやり過ぎっしょ!?」

観客席で見ていたティルファーが叫ぶ。

しかし……。

『ガガキィンッ!』

肝心の黒鉄は放たれるエネルギー弾全て、

剣で『たたき落としている』では無いか。

「嘘ぉっ!?」

これには開いた口が塞がらないティルファー。

他の観客である女生徒たちも皆呆然となっている。

 

やがて撃ち続けられる射撃によって黒鉄の

周囲を砂塵が覆う。

シャリスは射撃を止め、砂塵の方を睨んでいる。

 

『ボウッ!』

と、その時『何か』が砂塵を突き抜けて現れた。

「そこっ!」

何かに向かって咄嗟に射撃するシャリス。

『キンッ!』

すると、甲高い音と共に『何か』が弾かれた。

 

しかし……。

「剣ッ!?」

それは黒鉄が使っていた剣だった。

 

『剣だけ!?では彼はどこに!?はっ!?』

 

何故剣だけなのか?何故剣を投げたのか?

何故あらぬ方向に向かって投げたのか?

シャリスの中で巡る疑問の数々によって、

彼女の対応が一瞬遅れる。

 

その『一瞬』を、彼が見逃す事は無かった。

 

剣に向かっていた視線を戻したとき、既に

黒鉄はシャリスの眼前に迫っていた。

 

そしてその距離は、武器を振るうよりも拳を

繰り出した方が早いほどの、超至近距離。

 

既に右手の拳は硬く握られ、放たれる寸前の

矢の如く、振りかぶられている。

 

『ッ!?間に合わなッ!』

 

思考すら追いつかない速度で放たれた剛腕は

シャリスの腹部に向かって突き進む。

『装衣を纏っていれば障壁が体を守ってくれる』。

だが、そんな考えは迫ってくる黒鉄を見れば

藁のように吹き飛ぶ。

 

まるで巨大な壁が迫ってくるかのような圧迫感。

シャリスの体から汗が噴き出す。

『やられるっ!?』

 

彼女がそう思い、目を閉じてしまった刹那。

 

『ゴウッ!!!』

 

盛大に何かが風を切る音がした。

 

『な、何だ?』

 

その風を切る爆音と、一切襲ってこない

衝撃にシャリスは恐る恐る目を開け、驚いた。

 

そこでは、黒鉄の拳が寸止めの状態で、

自分の胴の辺りで止まっていたのだ。

 

「まだ、やるか?シャリス・バルトシフト」

静かに問いかける黒鉄。

その問いかけを聞いた時、シャリスは

理解した。

『あぁ、クロガネさんはやはり、嘘を付く

 ような人では無かった。この強さを

 前にすれば、あの話が嘘だと、誰が言えるものか』

そう思うと、シャリスは『潮時だな』と

自嘲気味に小さく呟いた。

「……いや、止めておこう。どうあっても

 貴方に勝てるビジョンが見えてこない。

 ……私の、負けだ」

そう言って、武装を収めたシャリス。

 

彼女の宣言によって、静まりかえっていた

観客席がザワザワとざわめき出す。

「う、嘘。シャリスが負けた」

「YES。にわかには信じがたいですが、

 クロガネさんは本当に生身で機竜と

 互角に戦いました」

「まさか本当だったなんて。それにあの

 パワー、人間業ではありませんね」

ティルファー、ノクト、アイリの3人も

驚きを口にしている。

 

「あっ!しょ、勝者、クロガネ!」

そして、今になって勝負が付いたことから

審判役の教官が黒鉄の勝利を宣言する。

 

それを確認した黒鉄は、先ほど投げた剣

の回収に向かう。

そこに機竜を解除して歩み寄るシャリス。

「クロガネさん。最後に少し良いか?

 何故、あの時貴方は寸止めを行ったのかな?」

「寸止めの理由?決まっている」

黒鉄は、地面に刺さっていた剣を抜いて肩

に担ぐと振り返った。

 

「これはあくまでも試合だからだ」

「試合だから?」

「うむ。試合は試合。殺し合いではないのだ。

 それに……」

「それに?」

 

一瞬言葉に詰まる黒鉄に、シャリスはオウム

返しに聞き返す。

「……試合とは言え、美しい女性を殴る

趣味は我には無い」

「えっ!?」

予想外過ぎる答えに戸惑うシャリス。

『う、美しいって、そんな!えぇ!?』

内心戸惑いまくりのシャリス。しかし彼女

に構わず黒鉄はしゃべり続ける。

「最初に言っておくと、決して女性蔑視

では無いぞ?我も必要であればどんな敵

とでも戦おう。しかしこれはあくまでも

試合。不必要に他人を傷付けるのは我の

本意では無い。そう思っただけだ。

これで理由の説明には無かっただろうか?」

「あ、あぁ。十分だ」

咄嗟に頷くシャリスだが、後半の事は

殆ど頭に入ってこなかった。

 

すると、黒鉄は剣を左手に持ち右手を

差し出す。

彼女は黒鉄とその手を交互に見やる。

「我の我が儘に付き合わせてしまったな。

 改めて礼を言いたい。ありがとう、

 シャリス・バルトシフト」

その言葉に戸惑うシャリスだったが、彼女は

やがて笑みを浮かべた。

「ふふっ。こちらこそ、貴方のような

 びっくり人間と戦えたのは良い経験

 だった。ありがとう、クロガネさん」

そう言って、シャリスは彼と握手を交わして

別れた。

 

そして、黒鉄はルクスが待つ方のゲートへと

足を進めた。

「く、クロガネさん。あ、あの……」

ルクスは咄嗟に彼に声を掛けるが、先ほどの

戦い方を見ていたルクスは戸惑い言葉が

詰まる。

 

「そうだな。お主が驚くのも無理はない」

しかし、黒鉄が先に口を開いた。

「我のあの身体能力は人間の持つそれを

 優に超えている。我を『何者か』と疑う

 のは当然だろう。……しかしすまない。

 我の正体について、まだお主に話す事は

 出来ない」

「……そう、ですよね」

黒鉄の言葉に、ルクスはどこか悲しそうな、

自虐的な笑みを浮かべる。

『出会ってたった1日程度の相手に、普通

 そんな事話せないよね。……何考えてる

 んだろう、僕』

彼は、心の中でそう呟いた。

 

彼の父、旧帝国の皇帝からルクスに対して

愛情が注がれると感じた事は、無いに等しい。

そんな中であった、どこか『年上の男』を

思わせる男、『黒鉄』。

幼い頃の彼の周囲には兄や年上の男は居たが、

はっきり言って、良好な関係を築けたとは

言えない相手ばかり。一時期は慕っていた兄

でさえ、今では『敵』と呼んで差し支えない

有様である。

 

はっきり言えば、彼の周囲に碌な男など、

あまり居なかったのである。

しかし、ここで出会った黒鉄という男に、

ルクスはどこか大人の風格や品格、魅力の

ような物を見いだしていたのだ。

そんな彼の今の言葉に、『自分はまだ

信用されてないから』かもしれないと

ルクスは思ってしまったのだった。

しかし……。

 

「ルクスよ。勘違いしないで欲しい。

 まだ我はお主という人間を見極めては

 おらん」

「え?」

「まして、我の正体について、それを他人に

話すと言う事は、最悪ルクスやその妹である

 アイリを危険に晒しかねないのだ。

 すまぬな、ルクスよ」

そう言って、軽く頭を下げる黒鉄。

「そ、そんな!頭を上げて下さい

 クロガネさん!人が誰かに言えない事

 なんて結構ありますし、僕の方こそ

 すみません。安易に聞こうとして

 しまって……」

「いや、その疑問は誰もが思う物だ。

 仕方の無い事であろう。

 ……ルクスよ、もし我がお主を見極め、

 信頼に足る人物だと思い、話す機会が訪れた

ならば、いずれ我の正体をお主とお主が

信頼を置く人物に話そう。それまでは、

待っていて貰えるか?」

「はい。今抱いた疑問は、しばらく胸の奥

 にしまっておく事にします」

「そうか。ありがとうルクス。

 ……所でルクスよ、そろそろお主の

 試合ではないか?」

「え?あぁ!そうだった!それじゃあ

 僕はこれで!」

そう言って駆け出そうとするルクス。

 

「あぁ待てルクス」

「はい?」

しかしそれを黒鉄が呼び止めた。

 

「お主、少し緊張しておるようだったのでな。

 少々アドバイスをしておこうと思ったのだ」

「アドバイス、ですか?」

「うむ。機竜使いのお主に言う必要は無い

かもしれぬが。ルクスよ、例え相手が神装

機竜で来たとしても、機竜は機竜。攻撃が

効かない化け物ではない。そしてどれだけ

強くとも相手は人間。必ず隙や弱点は存在する。

 疲れ知らずでも無い。機竜もまた、

 エネルギーが無限である訳ではない。

 そして何よりも、あまり緊張するな、

 とは無理な話かもしれぬが、緊張は

 体を硬くする。まぁ、『最弱の無敗』と

いうあだ名を持つルクスならば、問題

無いだろう」

そう言うと、黒鉄はポンッと優しくルクスの

頭に手を置き優しく撫でる。

「あっ」

その手は、無骨で大きいながらも、不思議

と温かい物であった。ルクスはその

温もりに顔を少しだけ赤くする。

 

「いつも通りのお主で行け。勝機は必ず

 ある。諦めなければ、そこに活路がある。

 自分の、そのあだ名を得るにまで至った

 腕を信じて行ってこい」

「ッ!はいっ!ありがとうございます!

 行ってきます!!」

黒鉄の優しい笑み、温かい手と共に送られた

エールに、ルクスは元気よく返事を返すと、

リーズシャルテの待つアリーナへと向かっていく。

黒鉄は後ろ姿に微笑みを向けながら彼を

見送る。

 

『ピクッ』

しかしふと、彼は一瞬だけ感じた『悪意』

に気づき、振り返る。

しかしそこには誰も居ない。黒鉄は悪意

の主を探そうと、周囲の気配を探る。

「ん?あぁクロガネさん。ここにいたか」

そこへ、制服に着替えたシャリスがやってきた。

「む?シャリス・バルトシフトか。何か

 我に用か?」

「次はルクス君の試合だからな。折角なら

観客席の方に案内しようとかと

 思ったのだが……。どうかしたのか?

 先ほどから随分周囲を気にしている

 ようだが……」

「いや、何でも無い」

それだけ言うと、黒鉄はシャリスに続いて

歩き出す。

 

しかし……。

『今の気配は……。何も無ければ良いが』

彼は、そんな一抹の不安を覚えるのだった。

 

     第1話 END

 




次回はもっとちゃんとしたバトル回です。
黒鉄がいるので、少し変更を加えて
あります。

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