最弱無敗の神装機竜~~黒き英雄と黒の王~~   作:ユウキ003

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アニメ第2話の後半ベースのバトル回です。



第5話 二匹の黒龍

改めてアカデミーで暮す事になった黒鉄は

生徒達からの依頼を受けたりしていた。そんな

中で彼は、理想の王女について聞かれた

ルクスに対して、自分なりの言葉を贈るの

だった。

 

人生相談をした翌日の朝。黒鉄はいつも

の日課となっているトレーニングに勤しんでいた。

『ゴォォォォンッ!ゴォォォォォンッ!』

だが、突如としてクロスフィード全体に

鐘の音が響き渡った。

 

「む?」

それを聞いて黒鉄は鍛錬の手を止めると

塔の方を見つめ、次いで『南西の方向』へ

と目を向けた。

「来たか」

そして、ポツリとそれだけ呟くと、彼は

すぐさま汗をタオルで拭き、上着を

羽織ると駆け出した。

 

そして、黒鉄は人の気配の多い場所へと

向かい、アカデミーの敷地内にある第四

機竜格納庫へとたどり着いた。

「あっ、クロガネさん」

中に居たアイリが黒鉄に気づいて声を掛け、

更に教官のライグリィから説明を

受けていたリーシャやシャリスたちが

振り返った。

 

「む?クロガネ。何故ここへ?」

「『何か』が近づいてきているのは

 あの鐘の音で何となく察していた。

 アビスか?」

「……あぁ」

ライグリィはしばし間を置いてから

静かに頷いた。

「そうか」

そして、黒鉄は静かに頷くと、外に出て

行こうとした。

 

「待て黒鉄」

それをライグリィが止めた。

「お前、どこへ行くつもりだ」

「決まっている。アビスを仕留めに行く」

彼の言葉に、集まっていた者達が驚く。

しかし彼女達の大半は黒鉄がガーゴイルを

素手で倒した事を知っていたため、すぐに

その驚きは収まった。

「……何故お前が行く必要がある?

 お前は兵士ではないのだぞ?」

「アビスは、破壊を振りまく存在だ。

 倒す以外に止める方法は無い。

 ……一刻も早く、倒すべき存在

 のはずだが?」

「それは言うまでも無い。問題は

 お前が行く事だ。……忘れたのか?

 黒鉄、お前は今、我々に監視されている

 立場にある。妙な動きは控えろ。

 これは、お前のためでもある。良いな?」

「アビスと戦える存在は、1人でも

 多い方が良いと思うが?」

「だが、お前のその力は明らかに普通では

 無い。それ故に、お前は他国からの

 スパイとして疑われている現状、

 忘れた訳ではあるまい?」

「だから大人しくしていろと?」

「そうだ。今お前が動けば、あらぬ誤解

 を招きかねない。だから大人しく

 していろ」

「……分かった。ならば、今はその

 命令に従おう」

そう言うと、黒鉄は格納庫の壁に背中

を預けた。

 

そしてライグリィから今現在確認されている

状況が伝えられた。

 

侵攻しているアビスは大型が一匹。

既に警備部隊の機竜が迎撃に出ているが、

それが突破されることを警戒して戦闘準備

をする事など。

 

そして生徒達が準備を始めた所でルクスが

やってきた。

「アイリッ!それにクロガネさんも!

 ここに居たんですか」

「うむ。それにしても、シャリスたちまで

 戦闘準備とは。まさか出撃するのか?」

黒鉄はルクスの言葉に頷いた後、シャリス

達の方に歩みを進めた。

 

「あぁ。我々は『騎士団(シヴァレス)』だからな」

「シヴァレス?」

「YES。簡単に言うと、アカデミーの生徒の

 中でも、優れた成績を持つ者で構成された

 特殊部隊です」

「特殊部隊?とは言え、皆はまだ候補生の

 立場であろう?」

ノクトの言葉に首をかしげる黒鉄。

 

「いや~。それもそうなんだけど、実際

 問題足りないんだよね~人手が」

そう言って肩をすくめるティルファー。

「そうであったか。……我もついて行ければ

 良かったのだが」

「そう心配するなクロガネさん。何も私達

 だけで戦う訳じゃない」

「いや、それはそうだが……。前回の

 ガーゴイル襲来と良い。何か作為的な物

 を感じる。……敵はアビスだけと

 思わない方が良いだろう」

と言う黒鉄の言葉に、シャリスたち3人は

顔を見合わせた。

「そうか。まぁクロガネさんの言葉、

 念のため覚えておくよ」

半信半疑、と言う感じは拭えないが、

3人は黒鉄の言葉を胸の内に留めておく

事にした。

 

そして、出撃していく機竜たちの背中を

見送った黒鉄は、まだ格納庫の中にいた

ライグリィの元へと向かった。

「ライグリィ教官、少し良いか?」

「クロガネ。何だ?」

「先に行っておく。万が一の時は、我も

 前線に出る」

「ッ。……先ほどの説明は聞いていた

 だろう?今お前が動けば余計な疑いを

 持たれるのだぞ?」

ライグリィはため息をついて眼鏡の

ブリッジを中指で押し上げながら語る。

 

「構わない」

「何?」

そして、黒鉄の言葉に驚いた。

「黒鉄、お前は謂われの無い罪で犯人 

 扱いされるのを嫌っているのでは無いのか?

 であれば、下手に動けば……」

「それも承知している。だが、そうも

 言ってられる状況ではあるまい?

 先ほど、シャリスたちにも言っておいたが、

 今回の襲撃、何か作為的な、人為的な 

 物を感じる。万が一の時、悪いが我は、

 そちらの命令の一切を無視して、独自

 に動くだろう」

「……そうまでして、なぜお前が動く?」

「理由か。そうさな。このアカデミーで

 出来た友を守る為、と言ったらお主は

 信じるか?」

 

そう言って小さく笑みを浮かべる黒鉄。

「普通は信じられない。が、お前は

 何というか、真っ直ぐな男のようだ。

 それにお前は単独でガーゴイルを

 撃破出来る力を持っている。

 ……分かった。まぁ、万が一の時は、

 好きにすれば良い。ただまぁ、

 学園長から小言か何かは言われる事を

 考慮しておくように」

「うむ。その程度ならば、お安いご用だ」

 

そう呟く、黒鉄は遠くの空を見つめた。

 

そして、彼の嫌な予感は的中してしまった。

 

討伐に向かったリーシャ達は、巨大な

スライムのようなアビスと接触し、これ

を攻撃するも、アビスを操る笛を持った

旧帝国の残党であり、王国に仕えたふりを

していたドラグナイト、ラグリード・

フォルスによって、スライム型アビスは

爆発。しかしその内部から数十匹という

数のガーゴイルが出現してしまった。

 

そして、ガーゴイルと交戦を開始する

リーシャだが、如何に神装機竜と言えど

数に差がありすぎ、彼女はガーゴイルの

群れに追い詰められていった。

 

そして、その知らせを持って格納庫へと

帰還したノクト。

 

「やはりか」

静かに呟く黒鉄。そして話を聞いた彼の

傍では、出て行こうとするルクスを

アイリが止めていた。

 

「ルクス」

そんな彼に声を掛ける黒鉄。彼の方に

視線を向けるルクスとアイリ。

「我は先に行く。これがもし、旧帝国の

 残党の仕業であるのなら、それに同調

 するドラグナイトが現れる可能性もある。

 そうなれば敵はアビスだけではない。

 ただでさえ不利な数の差を、更に

 開けられる形となる」

黒鉄の言葉に、その場に居たアイリや

ノクトが絶句し、近くにいたライグリィの

表情が険しくなる。

 

そして……。黒鉄は腕を組んだまま

南西の空を見つめる。

「……使う事は無いと思って居たが。

 使うか」

 

そうポツリと呟いた黒鉄にノクトが

首をかしげた直後。

 

『ブワッ!!!!』

黒鉄を中心に、青白いオーラが周囲に

広がりを見せた。

暴風の如きスピードで広がるオーラに、

その場に居た皆が驚いて腕などで顔を

庇った。

「ク、クロガネさんっ!何をっ!?っ!!」

 

驚きながらも彼の方に目を向けたノクト

だが、彼女は更に驚いた。

なぜなら、黒鉄の足下に、巨大な青い

魔法陣が現れていたのだ。

 

そして、それがゆっくりと上昇していく。

魔法陣が黒鉄の足先から頭の上まで、

その全てを通過した時。そこに黒鉄の

姿は無かった。

 

いや、正確に言えば、黒鉄は普段と

全く異なる姿に『変わっていた』のだ。

 

全体を覆う黒色。機竜の1.5倍はある大きさ。

強靱な爪を持った足。後ろに向かって伸びる、

腕に生えた刃。背中に生える鉄の背鰭と、

腰元から伸びる鋼鉄の尻尾。

 

(※見た目は『対G専用決戦兵器 紫龍』)

 

その姿に、皆が驚いていた。すると……。

「我は先に行く」

と、黒鉄の声がその黒い機械龍から響いた。

 

そしてその機械龍、『黒龍』を駆け出すと

大きく跳躍。そのまま飛行し、格納庫

から離れて行った。

 

そして、それを見送ったルクスもまた、

アイリの方に視線を向けた。

「アイリ、僕も行くよ。皆を、リーシャ様

 を助けに」

「無茶です!ワイバーンでアビスの相手を

 するなんて無理です!それに、クロガネ

 さんが言っていたように敵の増援だって

 ありえるのに!もう1本のデバイスは

 使えない今、あそこに行くのは、死に

に行くような物です!」

普段の余裕など無い。今のアイリは、妹

として、心の底から兄の事を心配

していた。

 

それでも……。

「大丈夫。僕は必ず戻ってくる。アイリを、

 1人になんてしない。それに、クロガネ

 さんだって居るんだ。僕達は、絶対に

 負けない」

 

そしてまた、もう1人の男も、戦場で戦う

友人のために、飛び立った。

 

 

戦場では、リーシャが獅子奮迅の戦いぶりを

見せていたが、既にシャリスやアイリ達は

損傷が激しく撤退を開始。もう残って

戦っているのはリーシャだけだった。

 

しかし、奮戦空しく、一瞬の隙を突かれ、

ラグリードの攻撃で吹き飛ばされ、地面に叩き

付けられてしまった。

 

と、同時にアビスが侵攻してきた方角から

100機近いドラグライドが現れた。その機体

カラーは、灰色。それはつまりラグリードと

同じ反乱軍を意味していた。

 

そして、ラグリードは倒れ伏しているリーシャ

に近づくと、その装衣を破き、下腹部を晒し、

そして、彼女に突き付けた。自分が、リーシャ

に刻印を刻みつけた者である事を。

 

その事実に、リーシャの瞳から涙が溢れ

出そうとしたとき。

 

 

『ゴアァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!』

 

 

爆音。そう表現するに相応しい程の、

大音量の咆哮が響き渡り、ラグリードを

始め、反乱軍のドラグナイト達も余りの

爆音に耳を塞ぎ顔をしかめた。

 

「な、何だ今の叫びはっ!?」

眼下のリーシャの事も忘れ、周囲を

見回すラグリード。その時。

ラグリードは気づいた。驚異的な速さで

こちらに接近する物体がある事を。

 

その物体の速度のせいか、それは砂塵を

巻き上げ、物体を正確に把握する事を

拒んでいた。

「なっ!?」

それが真っ直ぐリーシャとラグリードの

方に突進してきたのだ。

 

慌てて上昇するラグリード。しかし

リーシャは動けない。と、その時。

砂煙の中から何かが跳躍してきて、

リーシャの前に降り立った。

 

「な、何、だ?」

何とか動く首を動かし、相手の背中を

見つめるリーシャ。

そこにあったのは、龍を思わせる背鰭を

持った黒い鉄の人型。

「なっ?何だ、お前は……」

 

一般の機竜、神装機竜と比べても、それを

初見で機竜だとは思えなかった。と、その時。

「大丈夫か。リーズシャルテ・アティス

 マータ」

その相手から、自分を気遣う声が聞こえ、

リーシャは正直、混乱した。

そして数秒して、今の声に聞き覚えが

ある事を思いだした。

 

「お前、まさか、クロガネ、か?

 いや、しかし、その姿は……」

尽きない疑問を声に出してしまうリーシャ。

「すまないが話は後だ。敵が居るからな」

そう呟く黒鉄に、リーシャは今の状況を

思いだして小さく歯がみした。

 

「何だ貴様ッ!?その雌犬を助けに来た

 つもりかっ!」

「だったらどうする?本来なら、一気に

 頭である貴様を潰してから他を墜とす

 つもりだったのだが……」

 

やれやれ、と言わんばかりに首を左右に

振る黒龍。

「何ぃ……!?」

ビキキッとラグリードの額に青筋が浮かぶ。

 

「余りにも言動がクズ過ぎたのでな。

 怒りを抑えきれず、つい叫んで

 しまった」

「ぐっ、ぐくっ!」

黒鉄の言葉に、ラグリードは歯を食いしばる。

 

「負け犬が群れなければ何も出来ぬか?

 貴様等は彼女を雌犬と罵っていたが、

 ならば貴様等は狼にもなれぬただの

 愚かな負け犬だ。……さっさと来い。

 相手をしてやる」

「ッ!ほざくなぁっ!」

 

ラグリードは笛を手に、アビスを操ろうと

した。だが、ラグリードは気づかなかった。

黒鉄の咆哮を聞いてから、ガーゴイル達

が震えている事に。そして……。

 

『ギェェアァァァァァァァァッ!』

ラグリードが笛を吹くよりも先に一匹の

ガーゴイルが飛び出した。

「なっ!?待てッ!俺の命令を聞けっ!」

それに驚き笛を吹くラグリード。しかし、

その一匹に続くように、次々とガーゴイル

が指示を無視して黒鉄に向かっていく。

 

「ふんっ」

それを前にして、黒鉄は鼻を鳴らすと、

後ろに向いていた両腕のブレードを180度

回転させ、戦闘態勢を取る。

 

「どれだけ時が経とうと、『かつての我』

 を倒せと言う最優先命令は覚えて居る

 か。そして、我の咆哮で我が『誰』か

 察したと言う訳か」

と、リーシャにも聞こえないように小さく

呟く黒鉄。

 

と、次の瞬間、彼も大地を蹴って前に出た。

そして、その腕に装備されていた刃が

接近していた1匹目のガーゴイルの胴体を

捉えた。

 

『ブシュッ』という音と共に、刃が簡単に

ガーゴイルの肉体を刺し貫く。

黒龍は腕を振って貫いたガーゴイルの死骸

を投げ捨てると、向かってくる群れに

切り込んだ。

 

突進してきたガーゴイルの噛みつきを刃で

受け止め、反対の手で頭を握りつぶす。

後ろから向かってきた個体を、尻尾で

ぶった切る。

殴って倒した個体の頭を、爪付きの

足で踏み潰す。

両手両足を塞がっている所に来たのは、

噛みついて喉を潰した後、首を振って

地面に叩き付けた。

 

その戦い方は、動物的であった。今の彼は、

人としての戦い方を捨て、『かつての自分』

のようにパワーで相手を圧倒する戦い方を

繰り広げていた。

 

そしてその戦いは、見る者を魅了した。

一匹で上級ドラグナイト3人に相当する

ガーゴイルを、次々と葬っていく姿に

ラグリードや反乱軍の男達は驚き、愕然

とし、その場を動けなかった。

 

そして、リーシャもだった。

『……敵わぬな。やはり』

 

圧倒的な存在と言われていたアビスを、

悉く瞬殺していく黒鉄の姿を見て、

リーシャは腕を振るわせた。

 

そして更に思い出す。ここ数日とは言え、

出会い見てきた黒鉄の事を。

試合やガーゴイル戦で見せた力も。

パーティーの時に見せた、ティルファー

を気遣う品格も。

多くの生徒の力になり、彼女達を

惹きつけたカリスマも。

どれもが、彼女から見れば、王に

相応しい物であるように見えたのだ。

 

「やはり、私じゃ無理なんだ」

 

あの日、黒鉄がルクスに、要求された理想

が呪いや重しであると言ったように、今の

彼女は、その重さに負けようとしていた。

その時。

 

『リーシャ様!聞こえますかリーシャ様!』

竜声を通してルクスの声が聞こえた。

黒鉄に遅れてワイバーンで飛び出してきた

彼が追いついたのだ。

「ルクス?」

『リーシャ様!あと少しだけ意識を

 保っていて下さい!すぐに僕も!』

「良いんだルクス」

『え?』

 

「最後まで、王女らしい事なんて、

 出来なかった。お姫様の振りをするのも

 辛かった」

彼女は静かに、自らの胸の内をルクスに

語った。

「でも、本当はそうなりたかった。

 今のみんなが、好きだから。今度こそ、

 認められたいと思った」

 

彼女は、天を仰ぎながら静かに語った。

 

と、その時。

『リーシャ様。僕は多分、リーシャ様に

 正しい王族の姿について語る資格なんて、

 きっとありません』

「え?」

不意に聞こえた言葉に、リーシャは小さな

疑問符を浮かべた。

 

『僕は失敗した王子なんです。あの日、

 皆を救おうとして、出来なかった。

 でも、それでも僕は皆を救いたい。

 ……昨日、黒鉄さんが教えてくれました。

 今のリーシャ様は、周囲が求める王女に

 なろうとして、その期待の重さで、

 苦しんでいるようだって』

「あぁ、あぁ。そうだな。私は、確かに

 みんなの言うような王女になりたかった。

 でも、自分にその資格が無いって、

 分かってた。私は一度、旧帝国の烙印

 を押され、そして全てを捨てて旧帝国

 の人間になろうとしたんだ。

 そんな私に、王女である資格なんか……」

 

そう語っていた時。

 

『それは違います』

ルクスが、それを否定した。

 

『資格だとか、そんなの関係無い。今も、

 こうしてたった1人になっても

 逃げずに戦ったリーシャ様を、僕は 

 凄いと思います』

「ッ!ルクス……!」

彼の言葉に、リーシャは涙を流す。

 

周囲に認められたいと思って居たリーシャ。

そして今彼女は、ルクスに認められた

のだと、分かったからだ。

 

 

「こうなればぁっ!雌犬の首だけでもぉっ!」

その時、アビスを相手に無双していた

黒鉄に危機感を覚えたラグリードは、

せめても、と考え動けないリーシャに

狙いを定めた。

 

「ッ!」

「死ねぇぇぇっ!雌犬がぁぁぁっ!」

大剣を振り上げ迫るラグリード。

その行動を視界の端に収めた黒龍。

しかし、彼は動かなかった。

『動く必要が無い』と、分かっていたからだ。

 

『ガキィィンッ!』

 

振り下ろされた大剣を、ルクスのワイバーンが

受け止めた。

 

「そして、僕はそんなリーシャ様に、

 この国の王女として相応しいあなたに、

 認めて欲しいっ!そして、同じように、

 苦しんでいるリーシャ様の助けになりたい!

 僕は、そう思ってます!」

「ッ!」

ルクスの言葉に、リーシャの頬を更に涙が

伝う。

 

「何を世迷い言をぉっ!」

すると、ラグリードが叫びを上げながら

ルクスのワイバーンの右腕を切り飛ばした。

だが左腕に展開された魔法陣を警戒し

ラグリードは下がる。

 

そして、それを確認した黒鉄は

アビス殲滅を一旦止め、2人の傍に

着地した。

 

「ルクスよ。まだ行けるか?」

「はい。クロガネさんは?」

「ふっ。まだまだ余裕だ」

「分かりました。僕も、これを使います」

と、短い言葉を交わすと、ルクスは

黒いソードデバイスを抜いた。

 

そして……。

「顕現せよ、神々の血肉を喰らいし

 暴龍。黒雲の天を断て!≪バハムート≫!」

パスコードを叫んだルクス。

 

直後、現れた漆黒の機竜がルクスの体を

包み込んでいく。

 

「ルクス、お前、まさか……」

リーシャは、呆然と黒い神装機竜、

バハムートを纏うルクスの後ろ姿を

見つめていた。

 

そして、二匹の黒龍が並び立った。

 

「……ルクス、行くぞ?」

「はい」

 

短く会話した2人。

「相手はたった2人だ!囲んで

 嬲り殺せぇぇっ!」

部隊の後方で叫ぶラグリード。

それに従って反乱軍のドラグライドが

飛び出した。

 

ルクスと黒鉄に、3人ずつ斬りかかった。

 

ルクスは、バハムートは目にも止まらぬ

速さで3体の機竜をバラバラに切り裂き、

黒鉄は……。

 

『ガキキキィィンッ!!』

敢えてその装甲で攻撃を受け止め、

驚愕する左右の2人を両腕のブレード

で真っ二つに切り裂き、目の前の1人の

首にその顎で食らい付いた。

 

「あぁぁぁぁぁぁっ!?」

そして、逃れようと叫ぶ反乱軍兵士。

だが、無意味だ。

『ボキッ!!』

 

顎に力を込めた黒龍が男の首を

へし折ったのだ。首を振って動かなく

なった死体を投げ捨てる黒鉄。

そして、黒龍は飛び出した。ルクスは

飛翔型の、つまりは空の機竜を

墜としている。黒鉄は陸戦型の機竜と

アビスを討つため、大地の上を駆けた。

 

「き、来たぞぉっ!」

アビスさえも簡単に倒す黒龍を前にした

反乱軍の兵士達は半ばパニック状態だ。

そして、それが命取りとなる。

 

『グサッ!』

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

腹部をブレードで貫かれた兵士の悲鳴が

周囲に木霊する。

更に、縦に振り下ろしたブレードが兵士

を真っ二つに引き裂き、周囲に男だった

血肉が飛び散る。

 

「ひぃぃっ!?」

それだけで兵士達は情けない声を上げる。

だがその怯えさえも命取りとなり、

黒龍の次のブレードの餌食となって

体を切り裂かれた。

「こ、この化け物めぇぇぇっ!」

何人かは、闘争心を失わず、黒龍に

挑みかかった。

 

だが……。

『バキッ!』

一発で殴り倒され……。

『ザシュッ!』

「げぼぉぉっ!?」

腹を足で貫かれ、血を吐き出して死んだ。

 

そして、黒龍の手足が血で真っ赤に

なった頃、黒龍である黒鉄は一旦

殺戮の手を止めた。

 

「何だ。この程度か。かつての旧帝国の

 残党というのは。……弱いな。

 肉体的にも、技の面でも、精神的にも。

 脆い。脆弱そのものだ。だが、

 容赦などしない。貴様等は戦争が

 したかったのだろう?そして

 お前達は戦場に居る。……当然、

 死ぬ覚悟程度、出来ていようなぁ?」

威圧感たっぷりに問いかけてくる黒龍に、

多くの男達は恐慌状態に陥り、

だらしなく涙を流し命乞いまでする

者までいた。

 

だが……。

「言ったはずだ。ここは戦場。

 死ぬ覚悟も無いなど、この我が

 許さん。お前達は、ここで死ね。

 さもなくば、疾く失せよ。

 逃げる者は殺さぬ。だが、次我の

 前に現れた時は、確実に殺す」

 

無慈悲に。冷徹に。黒龍はそれだけ

告げると再び反乱軍兵士達を殺し始めた。

しかし粗方の兵士は、血塗れで赤黒く

染まった黒龍を前に、完全にパニック状態

となり、複数の兵士達が我先にと逃げ出した。

 

それを叱責し、戦おうとした兵士もいたが、

しかしすぐさま黒龍のブレードに腹を

貫かれて殺された。

そして黒龍が粗方の、戦う意思のあった

兵士を殺し終えた頃には、殆どの兵士が

撤退していた。これで、反乱軍の

陸上部隊は壊滅だ。

 

それを確認した黒龍は視線を上に向けると、

口を開き、背鰭を青白く発光させた。

 

『ルクス。今から左の空を薙ぐ。そちらに

 行くなよ』

『了解です』

竜声を使っての短いやり取り。今の航空部隊

は完全にルクス1人に集中しており、

黒龍の動きに気づかなかった。

 

そして、それ故に命取りとなった。

 

黒龍の開かれた口元に高純度のエネルギーが

収束する。膨大なエネルギーから溢れ出た

プラズマが周囲の大地を溶かしていく。

そして、黒龍の瞳が瞬いた、次の瞬間。

 

『ドウッ!!!!!!!!』

 

世界が揺れた。

 

「ッ!?なん」

それに驚き、兵士が叫ぼうとした。

だが、出来なかった。

叫ぶ前に、向かって来た青い圧倒的な

熱量の塊。黒龍の全てを焼き払う必殺技、

『ヒートブラスト』によって蒸発して

しまったからだ。

 

極太の青白い光の光線が空を薙ぎ、

そこにいた機竜とアビスを、跡形も

無く蒸発させていく。

この一射で、残っていたアビスと、

航空部隊の半数が消滅した。

 

そして、ルクスに挑みかかったラグリード

もまた、彼の圧倒的な力の前に撃墜

されたのだった。

 

 

こうして、数十匹のアビスと、100機の

機竜という規模を誇った反乱軍は、

たった『二匹の黒龍』によって、壊滅

させられたのだった。

 

リーシャは、半ば呆然としながら、

 

空に浮かぶバハムートと。

大地に立つ黒龍。

 

二匹の黒龍の背中を見つめている事しか

出来ないのだった。

 

 

     第5話 END

 




黒鉄が変身した姿は、対G専用決戦兵器 紫龍というゴジラ対エヴァンゲリオンで作られたフィギュアの黒カラーに両肩のネルフマークを消した感じと思っていただければ大丈夫です。

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