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エンドアの戦いから約半年、グレイ4のブレッグは惑星ホスから新共和国軍基地へ輸送船を操縦し、兵器の予備資材運搬の任務についていた。
ハイパードライブ航行をしようとした最中に、帝国軍に待ち伏せ攻撃を受けてしまう。
ブレッグは帝国軍の猛攻に必死に反撃し、自ら囮になってクルーを庇って脱出させようとするのだった───
──アウター・リム宙域──
帝国軍のTIE/インターセプター5機が、新共和国軍のガロフリー輸送船とBTL-S3 Y-WINGスターファイター二機に張り付いていた。そしてすぐ後ろには矢じり型のシルエットが特徴的な帝国軍のコルベット艦と丸い球体に板を二枚挟んだような宇宙戦闘機TIE/スターファイター部隊が迫っていた。
各帝国軍戦闘機から緑色の閃光が無数に放たれる。既に輸送船の偏向シールドは役に立っておらず、着弾して各所から火の手が上がる。自衛用のターボレーザーキャノンは4機のうち2機は敵機とコルベット艦による攻撃で消し飛んでいた。亜光速ドライブイオン・エンジンも辛うじて作動しているが、レーザー砲によるダメージは甚大で、いつ暴走して船体が吹き飛んでもおかしくない状態だった。
〈ブレッグ!!お前も脱出しろ!輸送船はもう持たない!〉
無線で、グレイリーダーのホートン・ソーム大佐が自分に脱出の指示を促す。
しかし、帝国軍はそんな暇をくれる程甘くはなかった。
〈そうしたいのは山々ですが、敵がしつこくてレーザー銃座から離してくれません!〉
船内はビー!ビー!ビー!と警告アラームが鳴り響き、脱出船に駆け足で向かう者。消火活動しようとするが、他のクルーに止められ無理やり持ち場を離される者。重症で周りのクルーにおぶられる者で、慌ただしく阿鼻叫喚になっていた。船内の整備に回っていた、ドロイドも同様にバタバタと脱出船に向かって行った。
既に本来の輸送船の船長は重症で、クルーと共に脱出船に行ってしまいオートパイロットモードになっていた。幸いにも名誉の戦死を遂げる者は居ないようだ。
〈敵の攻撃が激し過ぎる!自分の身を守るので手一杯です!グレイリーダー!〉
グレイ5が、自身の状況を敵機から放たれる幾つものレーザーを掻い潜って、執拗な追撃を必死に振りほどきながら悲鳴混じりに無線を飛ばす。
〈クソッ、奴ら俺達の情報を掴んで手薄の所を突いて来やがった!〉
Y-WINGスターファイターで持ち前の操縦センスで敵機を迎撃し数機撃墜すると、グレイリーダーは数で分が悪すぎる!と悪態をつく。
Y-WINGスターファイターでは高機動戦を得意とする、TIE/インターセプター相手に機動力での相性が悪いのだ。
完全な待ち伏せ作戦であった。
反乱同盟軍はエンドアの戦いに勝利した。その後、反乱同盟軍は新共和国に名前が変わった。だが、それ以降も星系で帝国軍残党との小競り合いは続いていたのだ。
新共和国の損失はけして小さいものではなく、デススターによる攻撃とスターデストロイヤー艦隊の連携攻撃で、幾つものスタークルーザーと戦闘機を失った。
そして名を馳せたエースパイロット達も惑星エンドアを周回していた第二デススター攻略の為に、勇敢に戦い命を散らしていった。
この輸送任務は、ホスの戦いで旧反乱同盟軍エコー基地で大量に破棄された、兵器を回収するという内容だった。反乱同盟軍設立直後からの慢性的な人員不足に重ね、先の戦いで更なる不足が深刻であった。その中での仕事であった為に護衛は薄く、輸送船1隻にBTL-S3 Y-WING二機だけだった。情報漏洩防止は万全と思われていたが、この任務が何処かで帝国軍に掴まれていたらしく、今の激しい猛攻に至っていた。
帝国軍は圧倒的武力と数の威圧による戦術を主としている。
本来ならば、過剰とも言えるスターデストロイヤー艦隊にそれに加えてTIE/スターファイター部隊で、数で押すと言う作戦に出るだろう。
情報を掴んでいるとなれば態々過剰な兵力を出す理由もない。此方の航行ルート、護衛兵力も把握済みなのだろう。そう考えれば合点が行く。
現時点で戦力と数は帝国軍が上。此方は大破寸前の輸送船一隻、数に押されるY-WING2機。援軍は見込めないし、要請出来たとしても全てが遅過ぎる。そうなれば手段は限られる。
──やることは一つしかない
〈自分はここで出来るだけ帝国軍を惹き付けます!大佐、グレイ5はガロフリー船クルーの脱出ポッドの保護を最優先して下さい!!〉
〈グレイ4!?それじゃ──〉
〈これが現状最善だ!この戦力じゃこのままだと、全滅は目に見えてる!なら俺が囮になって少しでも皆が離脱出来る様に時間稼ぎをした方が良い!〉
グレイ5の言葉より先に今すべき最善の捨て身の策を言い放つ
〈…分かった〉
〈隊長!?〉
〈ブレッグの言う通りだ…。今の現状では帝国軍のコルベット艦と多数のTIEファイターに対抗出来ない。それに、グレイ5も分かってる筈だ…〉
〈クソッ!!〉
グレイリーダーが部下にこれしか方法がない、という非情な現実を突きつける。グレイリーダーも分かっているのだろう。苦渋の選択なのは無線の越しからトーンで理解出来た
〈泣き言言ってる暇は無いぞグレイ5、生きてこそ希望があるんだ。グレイリーダー、早くこの宙域から離れて下さい。クルーの脱出船を頼みます!〉
悔しそうに暗いトーンで無線を飛ばすグレイ5にフォローを入れる。
〈…あぁ、分かったよ!やってやる!!お前は英雄だよ、ブレッグ!全く!!〉
〈あぁ、勲章ものだ。脱出船は任せろ。帝国軍機には腕一本触れさせやしない〉
ソーム大佐とグレイ5の言葉を聞いて安心する。
大佐の腕なら言葉通り、脱出船はキズ一つ付かないだろう。
大佐はエンドアの戦い以前から目覚ましい活躍で英雄に上りつめた人物だ。
自分自身も手解きは受けてきたし、操縦技術と戦術は全て盗んできたつもりだ。
しかし、未だに演習では勝てずしまいだった。正直言って化け物だ。それに、グレイ5もエンドアの戦いで生き残ったエースの一人だ。悪い結果にならない筈だ。
〈冥土の土産としては最高級ですね。グレイリーダー…いえ、ホートン・ソーム大佐。グレイ中隊に所属出来たことを誇りに思います〉
〈グレイ5、ソーム大佐。希望を未来に繋げて下さい、後はお願いします〉
既に船内には自分しかおらず、ガロフリー輸送船クルーは脱出船に無事に着いた、と連絡が入っていた。クルーからは別れを惜しむ言葉が幾つも贈られた。
そう、恐らく帰還することは無理に等しい。
最後の言葉、遺言になるだろう。
しかし、最後だと言うのに恐怖はなく、不思議と笑みがこぼれる。それと同時に表れるのは、必ず最後まで自分に課せられた仕事をこなすと言う強い使命感だ。その強い意思を抱きながら、輸送船に装備されている脱出船へつながる、パージ装置のレバーを強く引っ張る。
〈──脱出船パージ!!〉
───ガチャン!
と、ブリッジから脱出船への連動音が響き渡る。船体側面から、脱出船数隻が射出されるのが確認出来た。グレイリーダーとグレイ5が乗るY-WINGからも射出されるのが確認出来た様だ。
Y-WING2機は輸送船の足を稼ごうと、コルベット艦にイオンキャノンを発射する。レーザー銃座の窓からその攻撃を見ることが出来た。
コックピット上面に取り付けられたキャノン砲から、特有の砲撃音が宇宙空間に響きわたると青白い閃光が帝国軍コルベットに向かって輝き、駆け抜けるとコルベット艦側面に着弾。船体は青白く帯電し、一切の電子危機が無力化され行動不能になった。
イオンキャノンはターゲットにに外見的ダメージではなく電子機器を一時的に機能を停止させる効果を持つ兵器だ。銀河系を航行する艦船はほぼ全て、電子制御によって操作されている。それは銀河帝国軍も例外ではない。
コルベット艦の足止め効果は大きく脱出船とY-WINGは戦闘区域を離脱しかけていた。しかし、戦闘機部隊の追撃を止めさせることは出来なかったみたいだ。烏合の集の様にTIEファイターとTIEインターセプターが迫っていた
「おっと、君達の相手はこっちだ!」
離脱しようとする仲間にそうはさせないとボロボロのガロフリー輸送船から、向こうに張り付こうとするTIEファイター数機にターボレーザー砲を浴びせる。赤い閃光が6点、宇宙空間を射ぬくと敵機から火を吹き瞬く間に、大破して撃墜させる。1機、2機と落とすと、此方にまだ戦力があると見なし、向かって来た。思惑通りになった様だ。
「そうそう、それで良い」
まるで、仲間を呼び寄せたかのような言葉が出てくると、銃座の標準器を見据え直し向かってくるTIEインターセプターに狙いを定める。
「足止めとか小さいこと言わないで、全部落としてやる!」
TIEインターセプターが一瞬だけ直線的に向かってくる。その瞬間を見逃さない。ターボレーザーが火を吹くと敵機は回避行動に出る。しかしもう遅い、光速で飛ぶレーザーは機体に直撃。また一機撃墜することが出来た。
よし!とガッツポーズをとった矢先、船体が激しく揺さぶられる。
正面から来る敵機は対処出来たが、側面から回り込まれた攻撃には対応出来なかったのだ。側面から向かって来るTIEインターセプターから緑色の閃光が放たれると、亜光速イオン・ドライブエンジンに直撃し爆発を起こす。
それと同時に電子制御の中枢もやられた様で、レーザー銃座も動かなくなり完全に機能を失った。
「此処までだな…」
気付けばY-WINGと脱出船はこの宙域から消えていた。俺が出した作戦は成功したみたいだ。必死になっていたから気づかなかったが、体も至る所に傷があった。最後の最期までやったんだ。悔いはない。そう思うと敵の目の前だが、優越感と疲労感が同時に出てきた。銃座から疲労感が溜まる重い体で立ち上り、どうせならブリッジで、最期を遂げようと足をブリッジに向けた。
ブリッジまでは回線が至るところでショートして火花を散らしたり、船内の壁が激しく損傷していたりと、先の戦闘の激しさを改めて認識出来た。まだ帝国軍の攻撃は続いているが、船体が星の海の藻屑になるのは時間の問題だろう。
ブリッジにたどり着くと船長が座る椅子に深く腰掛けた。
優越感と疲労感に浸ったまま意識が深く沈む。
死は一度しか味わえないが、仲間の為に必死になって、やれることを全てを出しきったなら、色んな死に方が有る中で、死の在り方としては悪くないなと思えた。
今まであった色々な出来事を走馬灯の様に振り返る──
──ビー!ビー!ビー!ビー!
─なんだ?
さっきから警告アラームは鳴り響いているが、それとは別のアラーム音がブリッジ内を鳴り響かせた。
最期位もう少し静かになっても良いだろうに。この状況だが、苦笑いしてしてしまった。
〈〈ハイパードライブを起動します、座標コード未入力。未入力の場合、異次元空間からの脱出困難。警告、航法コンピューターに座標入力──〉〉
船内に響いていた警告は、ハイパードライブに突入する際に座標が未入力だと危険だ、と言う内容だった。先の亜光速ドライブにレーザーが着弾したと同時にハイパードライブジェネレータにもダメージを負いショートして、暴走して起動した様だ。
ハイパードライブ航法は、宇宙空間を光速以上の速さで航行するテクノロジーで星系間を移動する上でとても重要な役割を果たす。
今では当たり前の様に宇宙船に付いているが、異次元空間に突入し目的地にたどり着くには緻密な計算が必要だ。それを計算も座標も入力せずに、ハイパードライブを使用するのは危険と誰もが思う常識であった。
そんなとても危険な、有難い警告によって思わず意識が引き戻されてしまった。
〈〈ハイパードライブ、スタンバイ─3、─2、─1〉〉
「…え?」
思わずすっとんきょうな声が漏れる。
待て待て待て!確かに死は覚悟してた。だが、この結末は考えてない!
そんな思考の中、カウントされた3秒はあっという間に流れ──
〈ハイパードライブエンジン、起動──〉
「おい!?嘘だ───」
暴走したハイパードライブは言葉より、光より速く、輸送船を異次元空間に突入させる。ブリッジからはハイパードライブ突入時に、特有の無数の星が点から線に引き伸ばされ、集中線の様に見える光景が窓一面に広がる。
凄まじい加速力に疲労感が溜まる体がGに耐えきれず、意識が後ろに持っていかれる感覚に陥ると視界は真っ暗になる。
プツン、とブレッグの意識はそこで途切れた。
暴走したハイパードライブによりブレッグが乗るガロフリー輸送船は、ブレッグの声と光を置き去りにしてアウター・リム宙域から姿を消したのだった───
あれ、読む作品間違えた?と思う位、コトブキ飛行隊のコの字も出ないプロローグでした。
時系列で言えば旧三部作の後に起きた出来事、といったところです。
ちなみに、物語に出てくるワード、設定は正史とレジェンズを都合良く混ぜたものとなります。
タグの追加等は必要に応じ随時追加していきます