荒野を駆ける灰色の流れ星   作:駄目人間A

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二話目になります


暴走した先に

(此処が天国ってやつかな?なんとも、天国ってのは随分床が硬いんだな。)

 

 

 意識が途切れてどれくらい経っただろう。ぼんやりと、思考することが出来た。天国とは床が硬いという思考も出来るのか、と目を開ける

 

 

「くっ…、何が起きたんだっけ…」

 

 

 気付けば床に寝ていた。床は冷たく、無機質で、よく知る物だ。

 

 

「此処は、輸送船…?」

 

 

 まだ疲労感が取れない体で周囲の物にしがみつき床から起き上がる。そうか、俺は輸送船で1人残ったんだったと、思い出す。

此処は天国ではなく、輸送船の中だ。先の戦闘から俺はまだ生きているのかと、まともに働かない頭でとりあえず納得する。

 

 船体はまだ揺れている。ブリッジ内を見渡せばボロボロだが、操作パネル等もまだ光っている。この感じはまだ何処かを航行しているのだろう。じゃあ今は、何処を航行しているのか?ブリッジから窓の外を見る──

 

 

「……」

 

 

──真っ赤であった。

 

 

 正確には窓越しにガロフリー輸送船が火を纏い始めている。

ゴォォォーッ!!と船体の装甲が焼かれている音がブリッジまで伝わっていた。

更に、船体の揺れが徐々に激しくなっている。何が起きてるんだ?と相変わらずぼんやりとした思考で考えていると、答えは直ぐに返ってきた。

 

 

〈〈大気圏に突入します。全クルーはシートベルトの着用を推奨──〉〉

 

 

 船内の安全装置による警告アナウンスがブリッジに響き渡った。

本来なら、大気圏に突入する際、偏向シールドがあれば船体が真っ赤に燃え上がることはない。惑星に着陸する際、大気圏突入時に発生する空力加熱による船体へのダメージをシールドが保護するからだ。これのお陰で、着陸直後に熱くて船体に触れる事が出来ない、何らかのトラブルで空中分解、と言うことも無いのだ。

 

 先のアナウンスを信じるなら、意識が無い間に暴走したハイパードライブのジャンプで奇跡的に、何処かの宙域に出れたと言うことか、とアナウンスに耳を傾けながら考える。

異次元の狭間で永遠に抜け出せない、と言う最悪の事態は免れた事に少し安堵する。

窓を見れば、何処かの惑星の地表が確認できた。しかし、如何せん、船体のスピードが速すぎる…何故こんなにも速いのか?と引っ掛かった。何か大事な事を忘れている気がする…。少し考えて纏める。

船内は自分1人。

意識が戻るまではオートパイロット。

船体は戦闘でボロボロ。

亜光速ドライブも作動しない、電子制御は半分イカれてる。

シールドも機能していない。

それを思い出し、そこから導き出される答えは──

 

 

「──ヤバいじゃないか!?」

 

 

 ──後数分も掛からない内に凄まじいスピードで地面に叩きつけられ木っ端微塵になるか、大気圏へ侵入する際に発生する空力加熱で燃え尽きるか、今度こそ本当の天国に逝くと言う結末だった。

一難去ってまた一難、安心するのはまだ早かった。

 

 ぼんやりとした思考が、一気に覚醒する。此処からの行動は早かった

。疲労で重い体に鞭を入れ、急いで操縦席に座りシートベルトを着用する。目の前に設置されているコントロールパネルに触れる。先の戦闘でダメージを負い、パネルにヒビが入っているが辛うじて操作は可能の様だ。

 

 

「くそ、動くのはこれだけか!緊急フラップ展開!エアブレーキ最大!リパルサーエンジン逆噴射、フルスロットル!」

 

 

 船体が空力加熱で真っ赤に染まる。各所から異常が発生しているという警告アラームが鳴り響き、大気圏へ無理に突入する。船体からはギシギシッ!、ミシミシッ!と、軋み音が発生する。

コントロールパネルで、船体のダメージ状況を改めて確認する。

大気圏でエンジンが効かなくなった時に使う、緊急フラップとエアブレーキは電子制御が途中でショートし、半分しか機能していない。

少しでも船体を軽くしようと、輸送していた資材コンテナをパージしようとしたがコンテナ接続部分に異常があった為に切り離しは出来なかった。

反重力物質を利用したリパルサーエンジンも先の戦闘のダメージで半壊し満足に動かせない状態であった。

コントロールパネルで操作して、減速出来る操作は全てフルパワーで作動させる。

殆ど詰みじゃないか!と悪態を付きながらも、船首を持ち上げようと操縦管を目一杯、力の限り手前に引く。

 

 

「…ッ!上がれッ!」

 

 

 船体は徐々に減速し、水平に保つ様に動き始めていた。必死の努力のお陰か、窓の外を見れば火は纏っていなかった。大気圏内には突入が成功出来たよう様だ。恐らく中間圏より下の成層圏位の高度だろう。

しかし、問題はまだ残っていた。減速こそはしたが、これ以上は何を試しても減速しなかったのだ。

現在の輸送船の速度は約時速500km。

不時着するには速すぎる速度が出ていた。地表はどんどん近づいて行く。

パネルの高度メーターを見ると気付けば高度3000mを切っていた。やれる事は何も無かった。

これ以上の減速も望めない。後は運がどれだけあるかに掛かっていた。

 

 

──墜落する!!

 

 

 そう脳裏によぎり、目を思わず瞑り、衝撃に備え頭を守る為、屈み込む

 

 

その瞬間──

 

───ズズゥゥーンッッ!!!

 

 

 90mあるガロフリー輸送船は凄まじい速度で隕石の如く、辺りに地響きをさせ地面に激しく接触。船体は一回バウンドして1km弱、夜の暗い荒野を地面を激しく削り土煙を上げ疾走。周囲にありとあらゆる部品を散らばらせながら、やっと静止したのだった──

 

 

────────

 

──────

 

───

 

──輸送船が大気圏に突入し墜落する数分前──

 

墜落地点より遥か離れた場所に輝くとある街の酒場。

 

 

SIDE?

 

1人の少女が空を見上げ何かに気付き指を差す

 

 

「あっ!見て、流れ星!!」

 

「何いってんの?バカチー、そんなのあるわけ無いじゃん」

 

「あら、ロマンチックですわね」

 

「ほぉ、珍しい事があったものだ…」

 

「あら素敵。流れ星って輝く間に願いを三回唱えると、叶うって言い伝えがあるみたいよ?」

 

「ユーハングの逸話…」

 

「え!嘘!?パンケーキ!パンケーキ!パンケーキ!」

 

「もう遅い」

 

「本当現金だよね~!私の時はあるわけないって言ったのに!」

 

「うるさいなー、良いじゃん!パンケーキは正義だよ!」

 

「はぁ!?意味わかんないんだけど!」

 

「止めないか、二人とも!」

 

「あらあら」

 

「ふふ、相変わらず賑やかですこと」

 

 酒場でお酒を傾け、好きなものを食べる女性6人が流れ星を見て和気藹々としている。

街も賑やかでその声は喧騒にかき消される。こうしてその街は何事もなく夜が更けていった──




二話目に来て、知ってるであろう方達の登場でした。
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