荒野を駆ける灰色の流れ星   作:駄目人間A

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四話目です


空の駅ロータ

 飛行するT-47エアスピーダーのコックピットから広大な荒野を眺める。

 

 

「本当にここは何処の星だ…?」

 

 

 乾燥し埃っぽい赤土の大地。

辺りを見渡す限り見たことない地形が広がっていた。最初は惑星タトゥイーンかと思ったが、タトゥイーンは太陽が2つ斜めに並び地表を照らす。その気温は常時40℃を越える。

しかし、ここは太陽が一つで、気温が高くなく、直ぐに否定した。それに、ここがタトゥイーンだったなら苦労はしていなかった。

 

 飛行して1時間経つだろうか?暫くすると前方に何かを見つけた。

 

 

「あれは何かの施設と、…もしかして何かの発着場?」

 

 

 上空から見下ろすと小さい建物が2つ。それに平行するように道路が見える。

建造物が有るってことは、人がいるかも知れないってことだ。

ただ、どんな施設かまるで分からない。いきなり彼処に降りるのはリスクがあるかも知れない…。

 

 スピーダーは施設より進行方向少し手前で減速し低空で侵入。周囲は丘に囲まれ、大きい岩が点在していた。その発着場から死角になるように岩影に隠す様にホバリングして着陸した。

 

 

「とりあえず、あの施設が何か調べて見ないとな」

 

 

 スピーダーのキャノピーを開ける。後部銃座に詰め込んだ荷物の中からブラスターピストルとマクロキュラーを取り出すと、懐に忍ばせて施設に足を向け歩き出す。

 

 ゴツゴツした岩に石がゴロゴロ転がる地面に足が持ってかれない様に注意しながら施設に近付いて行く。

すると、施設から影が出てくるのが見えた。肉眼で見るには少し遠いが帽子を被った老人の様だ。

 

 

「見る限り非戦闘員、現地民かなぁ」

 

 

 マクロキュラーでも確認したが、持っていたのは建物の表を掃除する為の掃除用具だけだった。見張りとかでもなさそうだし見る限りは脅威になる要素は見当たらなかった。言葉が通じるか分からないが直接聞いたみた方が良いかも知れない。今は情報と何か食べ物が欲しい。

施設の滑走路に足を踏み入れた所で清掃している老人が此方に気づいた。

 

 

「ん?お前さんいったい何処から……服がボロボロじゃないか!」

 

「え?あぁ…あはは…」

 

 そう言われて服を見る。そういえば墜落してからそのままだったことを忘れていた。

 

「おじいさん、良かったら水と何か食べる物分けてくれないかな?」

 

 

 見ての通りこんな有り様でさ、と苦笑いする。背に腹は変えられない。可能性が低くてもやれる手段は取っておきたい。不安だったが言葉は通じるみたいだ。

 

 

「勿論だ、そんな状態の人間を放っておける程ワシは薄情じゃない」

 

「助かるよ」

 

 

 煤と埃で汚れた顔で感謝すればこっちだ、とおじいさんはその施設に手招きをする。

その手招きに少し安心しながら施設に向かうことにした。

 

──────

 

────

 

──

 

「ワシの服で悪いが、さっきのボロい服よりはマシな筈だ」

 

「いや、本当に助かるよ。此処までしてくれるなんて…この恩は必ず返すよ」

 

「何、老いぼれの気まぐれさ。ほら、暖かい内に食べなさい」

 

 

 この施設のおじいさんはとても暖かい人だった。最初の印象はおじいさんにしてみれば間違いなく不審者だった筈だ。この施設に着いて暫く数時間、時間的にお昼頃だろうか?

食べ物の提供迄してくれた。お下がりだが服も貰った。

ご飯は自販機から出てくると言う不思議なシステムだったが、その出てきた品カレー?と言うらしい中々旨かった。似た様な物は食べたことがあったがこれはこれで良かった。

 

 ご飯も美味しく頂いて一息ついた所で、助けてくれた老人が口を開く

 

 

「さて、落ち着いた所でお前さんは誰だ?」

 

「俺の名前はブレッグって言うんだ。おじいさんの名前は?」

 

「おーん?ブレッグか。俺は…ただのじいさまだ。まぁ空の駅ロータの駅長って所だ。で、お前さん何処から来た。しかも徒歩で」

 

 

 まあ、普通そう聞くよね。服も切れたり焦げたりボロボロ。俺だって同じだったら聞かずにはいられない。そう聞かれてスピーダーを停めて来た方向を指を差す。スピーダーの事は重要ではないので省く事にした。

 

 

「向こうの方から歩いて来たんだ。実は自分が乗ってた船が事故で墜ちちゃってね。で、歩いてたら此処を見つけたんだ」

 

「向こう?そりゃ大変だったろ…。もしかして空賊に襲われたか?」

 

「空賊?」

 

 

 聞き慣れない単語が出てきたな。さっきの空の駅も知らないし…

 

 

「何だ、違うのか。」

 

「いや、敢えて言えば技術トラブルかなぁ」

 

 

 まぁなんにせよ生きてて良かったな、と肩を叩かれた。あ、重要な事を忘れていた。現在地が何処か分からないままだった。

 

 

「そうだ、じいさま…いや、ロータの駅長。地図あるかな?此処の現在地が知りたいんだ」

 

「地図かい?」

 

 

 駅長が確かあっちに…と言って席を外し暫くすると、デカイ地図を持って来て机に広げた。

 

 

「この地図に印があるだろ?此処がロータだ」

 

「……」

 

「どうした?」

 

 

 うーん、地図は地図で確かに合ってはいる。

墜落したガロフリー船もこの地図の中に収まってはいるだろう。けど…俺が知りたいのはこれではない。

 

 

「駅長、星域地図は無いのかい?」

 

 

 今知りたいのはどの星で自分が何処に居るかだ。そう言うと駅長から変な回答が返ってきた。

 

 

「星域地図?…天体地図のことか?何で今それを言うんだ」

 

 

 首をかしげながら、お前さんもしかして天文学者か?と訳の分からないことを聞かれた。…おかしいぞ。言葉は通じてるのに微妙に噛み合ってない。

 

 

「ほれ、持ってきたぞ。これで良いか?」

 

 

 と、言って先に広げた地形図の上から天体地図を広げて見せた。

 

 

「…何だこれは」

 

 

 持って来た天体地図を眺めるが、全く分からなかった。本来ならホログラムで立体的に映る物だ。この施設の雰囲気からしてホログラム技術等が無いのはなんとなく察しがついてはいた。だから、出される物も紙の媒体で有ることも分かってはいた。

この地図は地上から見てそのまま星の位置を描いた平面的な天体地図だ。俺は腐っても新共和国軍パイロットで多少読みづらくても、知ってる星があれば何処に居るかなんとなくでも見当が付く。

しかし、この地図はそれ以前の問題だった。知ってる星系、星の配置が無いのだ。それどころか知ってる星すら載っていない。

何より参ったのは、銀河公用文字のオーラベッシュとは全く違う文字が羅列されていた事だ。

最初は駅長がふざけてるのかと思ったが、そうではない事は直ぐに分かった。

 

 

「駅長。此処は何て言う星だい?」

 

「んん?変な事を聞くな。此処はイジツだろう、もしかして墜ちた時に頭打ったのか!」

 

 

 心配そうにするロータの駅長の言葉を他所に考える。

イジツ…?そんな星は聞いたことがない。どうやら自分の生活圏のリアルスペースより離れたアンノウン・スペースに行き着いてしまったらしい。

 

 

もしかして──

 

 

「因みにこの地から空より上を目指した人って居るかな?」

 

 

「空より上?お前さん面白いこと聞くな。それが出来たら記録の樹立だ。今のレシプロ機ですらたどり着いたことはないよ」

 

 

──やっぱりか…。

 

 

 俺は暫くこの星で生きるしかないらしい。このイジツと言う星は宇宙進出する技術はまだ無いようだ。当然他の星への連絡船も無い。

とりあえず分かったことは、此処が何処か分からないと言うことが分かったと言うことだ。

 

 

思わず頭を抱えた。

 

 

「ブレッグ、お前さん本当に大丈夫か?ベッドなら奥に──」

 

「いやいや、違うよ。大丈夫だ」

 

 

 余計な心配をされてしまった…。

とりあえず、人が居ると言う事が分かってだけでも運が良いと思っておこう。

 

 

「駅長。俺はこの辺の情勢と地理にとても疎いみたいなんだ」

 

 

 さっきから、字もそうだが空賊もイジツもレシプロと言うものが全く分からなかった。

 

 ロータの駅長はきっとこの地での生活は長い筈だ。

良かったら教えてくれないかな?と聞けば、お前さん何処の田舎から来たんだ…と呆れられつつも丁寧に教えてくれた。

 

 

駅長さんが言うことをかいつまむとこうだ──

 

 

 此処はイジツで、70年前に空に穴が開いてユーハングと言う人々が来て色んなテクノロジーをもたらした。

そして再び穴が開くとユーハングの人々はそのテクノロジーを置いて帰って行ったそうだ。

そのテクノロジーでイジツの世界はガラッと変わった。特にユーハングがもたらしたレシプロ機と言う航空機の普及で町同士の交流、流通が盛んになった。

しかし、それと同時に空賊と言う商業船や町を襲う輩増えて人々の生活を脅かし、治安が悪くなった。

現在はそれを防止する為に用心棒、傭兵飛行集団が日々、人々の生活を安定させているという。

因みに此処、ロータはレシプロ機パイロットが長距離航行する時に休憩する施設らしい。

 

 

話を聞き終ると少し考える。

 

 空に穴が開いて、と言うのは時空に穴が開くと言う風に聞こえる。もしかして俺が此処に来た原因はその穴にあるのではないか?

 

 ハイパードライブは異次元に繋がる空間を往き来し、何パーセクを光速より速く移動するテクノロジーだ。

暴走して意識がなくなった時に、何らかの要因が重なってガロフリー輸送船ごと穴を通り抜けたとしたら…。座標だって入力してはいなかった。どんな事が起きるか誰も分からない。かなり無茶苦茶な話だが辻褄は合う様な気がする。

 

 そういえば、レシプロ機と言う航空機がこの星では主流になってると言っていたが…。

 

 

「なるほど…。所で、レシプロ機ってなんだい?」

 

「レシプロ機を知らない…?お前さん本当に何処に住んでるんだ」

 

 

 レシプロ機は此処では当たり前のテクノロジーらしい。駅長に少し呆れられてしまった。

 

 

「あー…、遠い生まれなんだ。レシプロ機がない位田舎でね」

 

 

 遠い場所なのは嘘ではない。きっと何千何万光年以上離れてるだろうし

 

 

「レシプロ機ってのはな───」

 

 

ブォォォォーー……

 

 

駅長さんの言葉に重なる様に遠くの方から妙な音がする

 

 

ブレッグ「この音は?」

 

じいさま「ああ、正にレシプロ機のエンジン音だ」

 

 

 お客様さんかな?と駅長さんが窓を見れば、それに釣られて窓を覗く。すると遠くの方に低空で機影が確認出来た。

 

 

1…2、3…4機…。あれがそうなのか。

 

 

 しかし、なんだろう。駅長の話の中にレシプロ機は滑走路が必要って盛り込まれてた気がしたが…。窓の目の前に横に伸びる滑走路で今見える方向であの高度…。とても滑走路を使う様に見えないんだよなぁ。

あの高度での侵入は、俺がよく知る体制と全く同じ……ッ!?

パイロットとしての第六感が思考に警笛を鳴らす。

 

 

「駅長、危ない!!」

 

「おわっ、なんだぁ!?」

 

 

 駅長を庇い、建物が横に伸びる方に勢いよく一緒に倒れ込む。

 

次の瞬間───

 

───ダダダダダダッ!!!

 

 

 4機の機影から火が吹かれる。機銃は滑走路を寸断する様に地面を抉り、そして建物を襲う

激しい銃撃。床の材木は銃弾で抉り取られる音が激しく響き、家具や娯楽の為のビリヤード台穴が空き、椅子も弾ける様に弾に踊らされていた。

振り向けば、屋内には弾痕が無数に出来、先程の自販機は一つを残して使い物にならない状態になっていた。4機はそのまま施設上空を通り過ぎて行った。

 

 

「くそう!奴ら空賊か!?」

 

「あれが空賊か!?全く厄介だね!」

 

 

 確かに駅長が言う通り治安は良くない。起き上がるとまだ、遠くからレシプロ機の音がする。まだ襲撃はこれで終わりじゃないらしい。

 

 

 

「これじゃロータが穴だらけになっちまう!」

 

 

 それより自分の命の心配をした方が良いんじゃないか?と思ったが、突っ込んでられる状況ではなかった。俺自身の命も危ない状況だ。

このままでは俺も駅長も体が穴だらけの未来しかない…。

 

恩は返さないとな。

 

 

「駅長」

 

「なんじゃ、こんな時に」

 

 

 駅長が実弾のライフルを手に取り弾の確認をしてる最中であったが声を掛ける。

 

 

「さっきの話、用心棒。やってみようかと思う」

 

「はぁ?!」

 

「服もご飯くれたんだ。言ったじゃないか、恩は必ず返すって」

 

だから今恩を返すよ、と言うと駅長は驚く。

 

 

「いや、お前さん空賊とどうやってやり合うつもりだ」

 

 

レシプロ機なんて持ってないじゃないか!?と言う言葉に

 

 

「大丈夫、策が無いわけじゃない。負けなければ良いんだから」

 

 

 そう返してニコッと笑うと、勢い良く扉を開ける。レシプロ機が旋回してる間を見計らい行動する。この距離ならなんとかなる、と頭の中で考えが纏まると今だ!とロータの駅を急いで離れ、自身が乗るスピーダーに向かって全力疾走した。




ロータの駅に居るじいさんと遭遇する回でした。ブレッグは服を貰っていましたが、服装は西武開拓時代の服装とハンソロの服装を足して2で割ったような格好だと思って貰えれば大丈夫です
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