5話目でございます
「チッ、バレたか」
4機の機影はこちらに気付いた様で、遠くの方で方向転換するのが見えた。
レシプロ機が横一線に背後に迫る。狙いを付けた1機が機銃掃射する。凶弾が迫ると紙一重で避けて倒れざまに、腰にぶら下がったブラスターを後ろに撃ち放つ。
しかし、無理な体制では当てるのは難しく赤い閃光が機体を掠める。
直ぐ上を4機が通り過ぎた。
〔奴攻撃してきたぜ?〕
〔くそ、仕留め損ねた!〕
〔へっ、下手くそが〕
〔さっきの弾おかしくなかったか?〕
敵は反転しまた此方を狙う様だ。
気付けば、スピーダーがある岩場付近についていた。残りの距離を一気に駆け抜けると死角にあるT-47エアスピーダーに乗り込む。
パネルを操作してキャノピーが閉まり機体はゆっくり空に上がる
彼方に先に襲った4機が確認出来た。
〔おい、なんか妙なのが浮いてるぜ?〕
反転した4機が此方に気付いた様だ。次は逃さない。
機体は上空に留まり、4機にブラスターキャノンの砲口を合わせる。
「グレイ4、ステンディバイ───」
此処では別に言う必要はないが仕事の癖で抜けない言葉が思わず出てくる。
横一線の4機の端1機に照準を合わせてトリガーを引く。
〔くそが!?ヤツが墜ちた!!〕
〔今の攻撃はなんだ!?〕
〔落ち着け、此方はまだ3機だ。よく分からないが奴を仕留める〕
赤い閃光が数発、敵機に飛んで行くと火だるまになり地面に墜ちて行く。敵機は1機墜ちると散開して此方に各々機銃掃射しながら迫って来る。
「…ッ!」
スロットルレバーを全開に倒せば、を矢じり型の機体は急加速し機銃攻撃を避ける為に旋回する。機銃の砲火を紙一重で避けると、銃弾が機体をなぞる様に接触して、明後日の方向へ散って行った。
〔あり得ねぇ…空中停止からの急加速だと!?〕
〔そもそもあれは飛行機なのか?〕
敵は此方の機動と機体のシルエットで少し怯む。
「この傷跡は実弾!?」
キャノピー越しに機体サイドについた弾痕を見る。先のロータの襲撃といい、追われてる時の攻撃といい、妙だなとは思ってはいたがまさか実弾だとは思わなかった。
実弾系の武器は銀河系では一部の兵器に限定される。スターファイター等の機銃は殆どブラスター等の光学兵器だからだ。戦闘中だが
少し驚いてしまった。
だが、敵が怯むのは見逃さない。3機が一瞬隙を見せれば、一気に背後に周り込む。その内の1機に狙いを定めれば、敵機体を照準内から外させない。
〔くそ、俺は魔物を相手にしてるのか!?〕
〔俺が奴の背後に付く!〕
振り切ろうとする敵機にそうはさせないと、レーザーを浴びせる。
〔ダメだ!振り切れ───〕
敵機体は翼がレーザー砲火により火を吹き、折れて地面に叩きつけられる。
〔調子乗りやがって!!〕
背後を見れば墜ちたヤツの仇だと言わんばかりに敵レシプロ機が機銃掃射して迫る。
「しつこいッ!」
コントロールレバーとスロットルレバーを同時に弄れば、矢じりの機体は少し傾くだけで空中で横にスライドする。敵機が放った銃弾をキャノピー横から見送ると、一気に減速する。当然遅い物体と速い物体は前後に入れ替わる。
〔なんだよその動き!?〕
「さぁ攻守逆転だよ!」
そんな動きに対応出来るはずもなく、スピーダーを背後に付かせるとレーザー砲が火を吹く。
〔あんなのあり得───〕
また敵機が火だるまとなる。残りは1機だ。残りを墜とす為に正面から来るレシプロ機に向き合うと再びスロットルレバーを押し倒し加速する。
〔野郎、やりやがって…なんだ?〕
「…行くぞ」
〔奴もしかして突っ込む気か!?〕
正面対正面での一騎討ち。敵は此方を近づけさせまいと、機銃を撃ち牽制する。
「それは当たってやれないよ」
〔冗談だろ!なんだその動き!〕
リパルサーエンジンの特性を生かした水平上下スライドを組み合わせ。機銃掃射を機体に掠めさせて避け続ける。一瞬だけ自身の機体と敵機の射線が重なる───
ブレッグ「さよならだ」
〔あの動き、飛行機じゃ──〕
その刹那、荒野を赤い閃光が射抜くと最後の敵機は火を吹きクルクルと地面に墜ちて行った。脅威はなくなった。
「戻ろう」
ロータの上空を機体をヒラヒラさせる。もう安全だと知らせて駆け抜けて一週回る。最後に他の機影が無いか確認すれば、ロータの滑走路にホバリングして着陸する。施設入り口前には、駅長が呆然とするも出迎えてくれていた。
T-47の特徴的な角ばったキャノピーを開いて、機体から降りる。駅長は依然して口が開いたままだ。先の戦闘と、目の前のT-47エアスピーダーの事で理解が追い付いてないようだ。
「お前さん、本当に何処から来た…」
「うん、その話は中でするよ」
駅長の言葉は尤もだ。あの様子じゃホバリング出来る機体はそうはないようだ。
出来ればバレたくはなかったが、こうなったら仕方ない。そう思いながらとりあえず中に入ろうよ、と苦笑いして答えた。
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「さて、何から話そうか───」
襲撃で穴が空いた建物の中に入りボロボロになった椅子を起こして腰掛ける。駅長に自分が何処で生活しているか。此処に来た経緯、目的。今住んでいる情勢等をかいつまんでだがある程度話した。
「信じられん…。ユーハング人だったらまだ分かるが…」
まさか空の遥か上で他の星から来たなんて、と駅長は半信半疑の様子だ。さっきの話でこの星は宇宙に行くビークルが無い事は分かっていた。そんな事いきなり言われたらそんなリアクションするのも無理はない。
「無理に信じなくても良いよ、話を押し売りする気はないから。今証明出来るのはあの外にあるスピーダー位だしね」
「いや、あれを見せられちゃ納得するしかないだろう」
滑走路が要らない機体なんざ聞いた事ないわい、と心底驚きながら、窓から見える矢じり型の機体に指を差した。
「ブレッグ。お前さんの正体、バレない方がいいかも知れんな」
再び向き合うと駅長が、口を開いた。
「それはこっちも都合が良いね。でも、何でだい?」
「お前さんのスピーダー?って言う飛行機。ここじゃ、おそらく誰も飛ばしておらん筈だ。」
わしも初めて見た、と付け加えて話の続きをする。
「あれはイジツにしてみりゃ未知の技術の塊だ。誰かが話を嗅ぎ付けたら面倒な事になる。空賊相手なら最悪蹴散らせば良いが、あれが評議会とかの耳に入ってみろ。イジツの果てまでお前さんをおってくるぞ」
評議会は分からないけど、それは面倒だ。
「それは遠慮したいなぁ…。スピーダーを没収とかされたら堪ったもんじゃないよ」
最悪なシナリオは避けたいなぁ、と顔が引き吊る。しかし、駅長が言うのは尤もだ。こっちとしても時間は誰にとっても有限だ。厄介事は避けたい。
「それで、ブレッグ。お前さんこれからどうする?」
そう言って駅長が厄介事の話からこれからの話に切り替える。確かに今後の動きはかなり重要になる。此処に居ればリスクは無いが何も始まりはしない。何より駅長に迷惑かける訳にもいかない。
「そうだね。此処にずっと居てもしょうがないからね。まずは帰れる為にアクションを起こしたいね」
とりあえず、駅長は話をしてもちゃんと分かってはいないだろうけど理解は得られた。
次に必要なのは、自衛の能力の確保だ。体一つじゃ簡単に死ぬ世界だと言う事はさっき嫌と言う程味わった。T-47で敵機全て落としたが、レーザーのエネルギー残量問題があった。此処での戦闘事情は全く分からない。
帝国軍相手に何時もの立ち回り方をした場合なら、戦闘は残り二回が限度だろう。
エネルギー問題を解決するには電力供給とティバナ・ガスが必要不可欠だ。ティバナ・ガスは銀河系において、生活に身近にあるものだ。レーザー兵器の威力増幅、暖房、加工してハイパードライブジェネレーターの冷却等に使われる。元々はベルドンと言うクリーチャーの排泄ガスだ。滑走路に停めてあるスピーダーもレーザーキャノンを積んでいて例外では無い。しかし、此処では武器が全て実弾だ。レーザー兵器は無い。
もしかしたら実弾兵器の確保も必要になるかも知れない。
「駅長、イジツってティバナ・ガスってあるかい?」
「ティバナ…なんだって?」
「ティバナ・ガスだよ。聞いたことあるかな?スピーダーの武器に必要な物なんだけど…」
「いや、知らんなあ」
「…O.K.知らないなら大丈夫だ」
知らないと言う事はベルドンはいない。ティバナ・ガスも無いと言う事だ。
大丈夫と返したが、大丈夫ではない。内心ガッカリする。しかしそうなったら代用が必要になる訳だが…。
あ、そういや、と駅長が口を開く
「ガスってことは燃料の事に聞こえるんだがガソリンの事か?」
「ガソリン?」
「あぁ、レシプロ機には燃料にガソリンを使う。そのガソリンをレシプロエンジンに入れて燃焼させて動かすんだ」
「それは気体かい?」
「いや、液体だな。だが、揮発性は高いぞ」
「なるほど…ガソリンか…」
顎に手をやる。知らない物質だが、何もしないより遥かに良い。ティバナ・ガスの代用が効くかも知れない。やる価値は有りそうだ。
「それはどこで手に入るかな?」
「そうだな…。ガソリン自体を手に入れるならナンコーだが、近い場所ならラハマだろうな」
彼処は飛行船の基地も有るからな、と駅長は付け加える。また地図を広げ、現在地のロータから指を指してこの方角だ、と方向を教えてくれた。
ラハマ…。知らない場所だ。
「所で、ガソリン手に入れるって方向みたいだが、お金持ってるのか?」
「クレジットは使えないよね…」
駅長の思わぬ言葉にあっ…と声を漏らす。ここ数日の出来事が濃すぎてすっかり失念していた。銀河系で使用する通貨は使えない。此処ではポンドと銭と言う通貨が流通している。
駅長は、自分の反応を見てやっぱりなぁ、と言う顔をした。
「お前さん、凄いんだか凄くないんだから分からんな…」
「俺は超人じゃないからねぇ」
お金の事を忘れる位だし、と頭を掻いて苦笑いする。しかし、お金がないなら話が進まないな。生きるだけなら、お金は要らないが売買するなら絶対に必要だ。
うーん、と唸り考えていると駅長が俺にほれ、と自身の手にクシャ、とお札を渡してくれた。
「これは?」
「お前さんは無一文だろう。少しばかりの気持ちだ」
手を広げればポンド札があった。用心棒の仕事は果たしてくれただろう、と駅長は言って笑う。
「そういえばそうだったね」
依頼完了かな、と言って笑う。半ば押し売りだった気もするが、駅長の粋な計らいだ。有り難く受け取り感謝する。
とりあえず、これでお金の面はなんとかなりそうだ。
「それで、ラハマに行くのか?」
「うん、ずっと此処に居るわけにもいかないからね」
駅長にお世話になりっぱなしも悪いからさ、と苦笑いする。駅長はこれから忙しい筈だ。ロータの営業は勿論、襲撃によってダメージを受けた施設の修復。壊れた家具等の調達が急務だ。
なんだったら俺が修復する為の材木やら、釘、工具等をT-47に備わってるカーゴキャリア機能を駆使して運搬しなければいけないくらいだろう。
短い間だが、ロータは良い場所だと感じた。それは駅長の人柄と心の広さがデカイだろう。広大な荒野でポツンと一軒、錆びれずに今に続く秘訣とも言える。
「今度此処に寄る時は材木とかを運んで来るよ」
「そいつは悪いな。でも良いのか?」
「ロータは長く続いて欲しいからね。此処は良い所だ」
じゃあそろそろ行くよ、と挨拶する駅長に挨拶して外に出ると
「ブレッグ、ちょいと待った」
行く前に駅長が声を掛けて止めた。すると奥の部屋からあるものを持ってきて俺に渡した。
「これは、シート?」
畳まれているが結構デカイ。何故こんな物を渡すんだろう?
「この大きさなら、お前さんの乗る戦闘機も隠せるだろう?」
なるほど、確かにこれなら機体を隠すのに丁度良い。俺の正体をバラさまいと言う駅長の気遣いだろう。
「それがあれば材木を包むことが出来るだろ」
いや、こっちが本音か。ロータの駅が長く続くのはこの辺も理由になりそうだ。
抜け目ないね、と笑って返せば滑走路に停めたスピーダーのキャノピーを開けて後方の銃座にシートを詰め込み乗り込む。
エンジンを始動させれば機体は垂直に空を上がって行き、ロータの駅長が手を振る姿が小さくなっていく。
小さくなる姿に手を振り返せば、コックピットに向き直る。
レーダーはまだ調子が悪く使えない。貰った地図を広げ、印を付けた場所をなぞる。
「ラハマか…」
駅長の話では小さい街らしい。一体どんな場所だろう。少しの不安と、期待を胸にスピーダーは、ラハマを目指した。
読んでる人はそんな多くないと思いますが、この作品ライトサーベルは出る可能性はかなり低いです。ブレッグはジェダイではありませんからね。
雰囲気はローグ・ワンといった所でしょうか?(再現は出来ない)