FGO/Cosmos_in_the_Lostbelt《BFG_Edition》 作:変種第二号
『しかし、それ以上の悪になれ』
『切り裂け、全てが終わるまで』
《ARC放送、公共ニュースです。これよりARC臨時総司令官、ブルーノ・J・ブラスコビッチ氏によるスピーチをお送り致します》
天空より地球を見下ろす中軌道。
其処に浮かぶ、凡そ宇宙空間に似つかわしくない中世の如き城塞。
その中枢部となる
《……デーモンの地球侵略撃退より4年が経過し、地球圏の復興は当初計画の90%を達成しました。一方で欧州復興委員会の一部と人権連合は、過剰な再軍備計画が復興を妨げていると主張、防衛政策の抜本的な見直しを要求しています。現実を顧みる事なく、人類側の過敏かつ攻撃的な自衛反応が
岩と城塞から成る外観とは裏腹に、その内部に構築されたシステムは極めて高度な機械文明によるもの。
しかし、地球圏にとってのオーバーテクノロジーすら含むシステムとは裏腹に、特殊合金に混じって石材や木材がふんだんに使用された内装は、現代の地球の感性からすれば違和感が拭えないものだ。
それでいてコンソール等は、非常に無骨な合金製かつホログラムまで用いた先進的なものであるから、その違和感たるや並々ならぬものである。
それらを照らし出すのはコンソールのホログラムが放つ青い光と、防護スクリーンと篝火が放つ禍々しい赤い光。
青と赤の光が混じるその空間に立つのは、無骨な
《……これに対し我々ARC執行部は、次期防衛関連予算の更なる増額を検討中であると回答しました。事実、地球衛星軌道から土星までの防衛ライン構築は、星系内残存デーモンの散発的な襲撃により遅滞を余儀なくされており、建造予定である37基の【BFG-10000】の内、稼動にまで漕ぎ着けている数はフォボス基地の初号基を加えても13基と……》
『
否、鎧と形容するには、些か近代的に過ぎる。
ARCにて採用されている強化外骨格にも似たそれは、極めて高度な科学技術を用いて製造された事が一目瞭然だ。
よって装甲服と形容すべきなのだろうが、だとしても常人が着用するにしては重厚に過ぎる上、二の腕の一部が剥き出しになるという奇妙な設計であった。
だがそんな違和感も、その剥き出しになった腕の丸太どころか巌の様な頑強さと太さ、皮膚に刻まれた無数の古傷、血管の浮かび上がる異常なまでの密度を誇る筋肉を見れば、忽ちの内に消し飛んでしまうだろう。
単なる強靭さに止まらぬ絶対的な力の存在、それを人体の内に見出させる程に完成された肉体。
戦い、殺す。
ただそれだけの為に昇華された、絶対なる暴力の具現。
《……火星静止軌道上のポータル・ステーション【アルファ】の正式稼働後、初の実戦使用となる本日の攻撃は、
『人工アージャントの生産、供給インフラはほぼ完成した。地球圏のエネルギー供給問題が解決した以上、人類が守勢に甘んじる必要性は無い。今日の人類初となる次元間砲撃によって、アージャント・エネルギーへの変換を免れていた犠牲者達は、無限の苦痛より解放される……こんな形ではあるが、犠牲となってしまった君の民の魂が救われるものと信じたい』
装甲服の左腕、その側面に接続されたパーツから瞬時に展開されたのは、刃渡り50cmを超えようかという直刃のブレード。
鈍い光を放つその刀身は厚く、斬り裂くのみならずあらゆるものを叩き割る用途に適している形状。
一通り刀身を眺め回し、刃を収縮させて格納する。
《……また、旧UACの一部職員を含むカルト信者の妨害については、ARCによる掃討がほぼ完了しつつも予断を許さない状況であります。アルファ最高責任者であるマルコム・ベトルーガー博士の要請により、ARC火星駐留艦隊による施設の周辺防衛強化と海兵隊の配備を実施し万全の防衛体制を……》
『無論、ネクラヴォルとアーダックの痕跡を消し去ったとして、それで終わりではない。地獄そのものは健在であり、デーモンによる他次元への侵略が止まる事はないだろう。痕跡すら残さず、奴等を地獄ごと消し去る必要がある。今日の攻撃は、正しく人類による反攻の狼煙となるだろう』
装甲服の人物はコンソールに歩み寄り、そのホログラム上に指を滑らせる。
其処に表示されていた
新たに表示された世界地図は、この世ならぬ土地のもの。
コンソールの左上に表示されていた【
表示された幾つかの地名の内【
《……そして本日0645時を以って、地球は
『アージャンタは動けまい。アーダックからのアージャント供給が途絶えた今、一時的とはいえ彼等の文明は旧時代に逆戻りだ。報復を目論んではいるかもしれないが、アーダックが滅び地獄との協定が崩れた今、デーモンによって滅ぼされるのも時間の問題だろう』
万雷の拍手と歓声。
眼下の地球を透過させていた防御スクリーン、その中央から左右に分割して映し出されるのは、巨大かつ不格好な2つの人工建造物。
巨大なリングを2つに分割した様な2基の宇宙ステーションと、砲身の其処彼処から緑の眩い光を零す余りにも巨大な旋回式砲台。
今や随分と数を減らし、それでも膨大な数の多言語の声が、熱狂と共に同一の意味を持つ言葉を叫んでいる。
4年前の絶望と悲壮に塗れたそれではなく、今にも爆発しそうな熱量と狂気を孕んだ咆哮。
戦いを、勝利を求めるそれ。
《警告。【BFG-10000】発砲60秒前……57、56、55……》
『奴等は脱出艇のバックアップデータを解析しているだろう。つまり、
《アルファ、ポータル展開》
2基の宇宙ステーション、その弧状構造物の間に生じる巨大な
其々のステーションがスラスターによって距離を置き始めると、外縁に青い光を纏う
やがて、その直径が1kmを超えようかという所で、各ステーションが動きを止めた。
《23、22、21、20秒前……》
《今日、この日を以って我々の戦いは、抵抗ではなく侵攻となる! 魔を打ち払い、邪悪を滅ぼす、
『そう、人類には君が必要だ』
《10秒前、8、7……》
巨大な砲身、その基部と底部から迸る、緑の閃光。
砲身の中程から砲口近くまで設けられた開口部からも、そして弾道となる中空にまで緑の光が浮かび上がる。
如何なる次元の存在であれ、絶対的な破滅を齎す、死と破壊の光。
膨れ上がったそれが、今まさに砲口から解放されようとしていた。
その様を前に、近未来的かつ重装甲のフルフェイス・ヘルメットを手にした
電子音と共にアクティヴとなる各種センサー、及び電磁装甲。
コンソール下部のガンケースより取り出すは、使い込まれたコンバット・ショットガン。
ヘルメット越しにポータルの先に存在する
『
《人類は、スレイヤーと共にある!》
艦橋に響き渡る、ショットガンのコッキング音。
それが、開戦の狼煙だった。
《3、2、1、
爆発する緑の閃光。
砲台を中心に膨大なエネルギーの爆風が巻き起こり、暴力的な光の奔流が宇宙空間を貫いた。
砲撃は瞬時にポータルに達し、その中心を射抜く。
コンソールの1つより出力されていた地獄の地図上、其処から【
人類史上に於ける大量絶滅の類似現象として、特に知られるのは以下の3事例である。
紀元前26世紀、西暦13世紀に発生した、中東、東欧、中央アジア全域に於ける人類を含む多種生物の大量死。
1世紀から2世紀に掛けての、ヨーロッパを中心とした大量死。
15世紀から19世紀に掛けて、ヨーロッパ全域から北アメリカ大陸まで、広大な範囲で持続的に発生した原因不明の大量死。
其々の大量死は発生時期と死者の分布地域から、凡そ6つの事象に集約する事が判明している。
紀元前26世紀、メソポタミアより始まる大量死。
1世紀、ローマ帝国内にて疫病の流行。
15世紀、フランスより拡大した治安の悪化と疫病の流行。
16世紀、大航海時代に於ける航路全般と船舶寄港地での虐殺と災害、疫病の発生。
18世紀、アメリカ独立戦争に於ける虐殺の横行、遺体の広域放置による疫病の拡散。
19世紀、大英帝国内のスモッグによる環境汚染と、全世界規模での公害による大量死。
人理継続保障機関フィニス・カルデアより齎された、人類史上に於ける特異点の発生年代。
これらと各大量死の発生時期が奇妙な一致を見せている点について、偶然と判断する事は極めて難しい。
この大量死が人理修復による修正力によるものと仮定した場合、各特異点に於いて膨大な死者が発生している筈である。
よって査問会に於いては過失か、或いは故意かを問わず、カルデアの行動を要因として大量死が発生したとの想定を基に、レイシフト当事者に対し厳正な聴取を行うものとする。
なお、聴取の際は施設内の全職員を隔離状態に置き、聴取対象は武装した2名以上の警備要員による監視下に置く事。
黙秘を含む非協力的意思を示した場合、現場判断に於けるレベル1~3までの措置の実施を許可する。
追記。
報告内に確認された【