時雨リオはとあるでかいゲーム会社の廊下を歩いていた。
目の前を歩くのはスーツ姿に眼鏡をかけた男性で、リオの横を歩いているのは夢野雫である。
壁とドアと壁とドア、同じような景色が横目に通り過ぎていく。
「ここです」
男性が急に立ち止まり男性はそう言った。
男性の視線の先にあるのはやはりドアである。
男性は自らのカードキーを使用すると男性は扉を開けた。
男性の正面には真っ暗な男性が広がっている。
男性に続き中へ入ると、男性が部屋の明かりをつけた。
男性が男性を見つめて、男性が男性で男性を示した。
男性が男性の男性は男性に。
強引に今月分の男性ポイントを消費したところで部屋の中央に目を向ければ、人が入れるサイズのでかいカプセルが2つ横たわっていた。
「随分変わった棺桶ですね」
「いいえ、フルダイブシステムマシーンです」
男性が眼鏡を指でくいっと上げながら答えた。
賢そうだな~
研究員だそうな。
さて、男性が言うにはこの2つのカプセルは要するに人間の意識をゲーム内の世界へ飛ばすための機械らしい。
これを使えばゲーム内で意識するだけで思うが儘に自らの身体を動かせるとのこと。
「噂には聞いていたけど本当にあったんだ・・・」
「私たちに宣伝してほしいみたいですよ」
「そんな影響力ありましたっけ」
「私にはあります!」
「Oh・・・」
夢野雫ははっきりと言った。
この夢野雫はアイドル系Vtuberの中でも相当の人気を誇っている。
彼女の影響力は測り知れない事だろう。
しかし、とリオは考える。
私の初めての企業案件が約数千万のとんでも未来科学だった件
リオはいろんなVtuberの案件動画を見ていた。
クソゲーを一生懸命アピールしたり、たまたまバグを見つけてしまったり、クソゲーを頑張ってアピールしたり。
ただ今のリオには、フルダイブなんちゃらのスケールのでかさに現実味がまるで湧かないので、気負いする気持ちがまるで無い。
雫ちゃんここまで考えてくれたんだろうな、優しい子・・・(遠い目)
「それでは早速ゲームの方をよろしくお願いします」
言われるがままに2人はそのカプセルの中に身体を放り込んだ。
カプセルが閉じられるとえんどう豆状態になる。
リオは気を付けをして仰向けの状態を維持する。
身体に様々な機械を取り付けられると、だんだんと意識が遠くなっていった。
リオは身体が小刻みに揺れる感覚で目を覚ました。どうやら自分は車の助手席に座っているらしく、横を見れば雫がハンドルを握っている。
車は山の中の道を走っていて、車の横を通ってたくさんの木々が後ろへと流されていく景色が見えた。
「おはよございますリオさん」
「おはよう」
「さっきタヌキさん轢いちゃいました」
「田舎じゃ轢きまくりですよ」
リオは横目に雫を見ながら、当然のように答えた。
始まったああ
リオと雫が同じ画面にいて笑う
痛いたぬ~
↑タヌキニキ成仏してくれ
↑ただの語尾が痛いやつだぞ
二人のゲーム配信画面にはたくさんのコメントが流れていた。
しかしそれを読み上げる者はいない。
現在ゲームの世界にいる二人にはそれを見ることは出来ないのである。
Out Start
それが二人のやっているホラゲーの名前であった。
一応存在するストーリーとしては、ある一人の記者がいた。
怪しい噂の立つ病院があった。
取材に向かい消息を絶った。
主人公たち後輩記者がそれを調べに行く、というものである。
そのため2人を乗せた車が現在向かっているのも、物語の舞台となる病院であった。
時刻は夕時。
車はやがて目的地に到着した。
車から降りた二人の正面には、夕日に照らされるでかい病院が建っていた。
その病院はよほど長い間放置されているらしく、その表面にはたくさんの木のつるが蜘蛛の巣のように蔓延っていた。
また所々にひびが入っているのも確認できる。
お化けでも出そうな雰囲気である。
「シンデレラ城ですかね?」
「そうですね悪魔城ですね」
ノールックで草
雰囲気あるね
もう怖い
間違っても姫は住んでいないだろう
病院は非常に敷地が広いようで、正面玄関の前に大きな庭が広がっていた。
そしてその庭を囲うように、鉄格子の柵が広がっている。
二人はその柵の一部が扉のようになっているのを見つけた。
二人は砂利をじゃりじゃり言わせながら柵に近づくと、扉を開けて庭へと踏み入る。
\がんっ!/
「ひっ!」
後ろから金属を叩きつける音が聞こえて、リオは飛び跳ねた。
振り返れば開けたままだったはずの扉が完全に閉まっていた。
押しても、引いてもガチャガチャと金属音が鳴るばかりである。
「これは閉じ込められましたね」
「ということはこれから一生リオさんと二人っきりでここで暮らしていけるわけですね!」
「ギャルゲーかな?(すっとぼけ)」
「これホラゲーですよ」
「でしょうね!?」
雫ちゃんは天然煽りすこ
間違えちゃ駄目だぞ♪
雫ちゃん偉い
これがギャルゲーなら世も末である。
外に出ることは諦めて庭の様子を見渡せば、中心に噴水が置かれていることが分かる。
その手前に何やらでかい十字架も刺さっているが。
というか私ホラー苦手なんだが。
あれ完全におっさんが十字架に磔されてるんだが
身体でTの字描いちゃってるんだが。
私ホラー苦手なんだが!
「浮いてますね」
「刺さってんだよ」
「死んでますね」
「分かってんだよ!」
キレ気味で草
びびってんねえ!
雫ちゃん煽ってるww
おっさんの頭と手足には釘が打ち付けられていた。
更にその頭の釘にはメモ用紙に記された手記も一緒に刺さっている。
この手記には先輩記者がこの病院を調べた内容が書かれている。
このゲームでは病院に散らばる手記を何枚か集める事によりゲームがクリアされる仕様である。
二人は早速その手記を回収しに向かった。
目の前で絶賛磔状態のおっさんは、リオ達の先輩記者らしかった。
「これどうやって取るんでしょう・・・」
「肩車とかどうすか?」
「いいですね肩車 肩車しましょう肩車!」
手紙の位置はだいぶ高い位置にあり、手を伸ばしても届きそうになかった。
「どっちが上になりますか? やっぱり私が上、いや、下も捨てがたい・・・」
「どっちでもいいですよ」
「上ならリオさんに肩車してもらえます 下ならリオさんの股に挟んでもらえます ああ、悩みます・・・」
「・・・」
何言ってるか聞こえん
どっちでもいいじゃん
下になればリオのパンツが!?
おまわりさんこいつです
小声で雫がなにやらぶつぶつ呟いていたが、リオは聞かないことにした。
「まずは私が下になります!」
「まずは・・・?」
雫の言葉に従い”まずは”雫が下になりリオを肩車することになった。
「乗りますよ ほいっ」
「んふうっっ」
「それ何の声ですか!?」
雫がやけに色っぽい声を出すのを聞きながら、リオは雫の首に両足をかけた。
雫が立ち上がると、高さは充分といったところである。
「もうちょい前です」
「こうですか」
「少し左です」
「はい」
「それ右です」
「ええと9時方向です」
「ふいい」
「それおやつの時間です」
まるで噛み合わなかった。
めっちゃふらふらじゃんww
リオが重すぎる可能性がある
ありえるなwww
「そんなことないわ!!」
コメ見えてんのか!?
リオさんぱねえww
地獄耳ゴリラで草
実際は見えてるわけがない。
リオの勘である。
「すみませんリオさん、交代してもらってもいいですか?」
「ああ、はい 分かりました」
「ありがとうございます♪」
何故かやたらに嬉しそうな雫の言葉に若干の違和感を感じながら、リオはポジションを交代する。
下になった。めちゃめちゃ簡単だった。
「取れました!」
「やりましたね」
リオは”どうやら雫さんはめちゃくちゃゲームが下手らしい”と心の中で思った。
雫は”計画通りやったー”と心の中で思った。