ゴリラじゃないからっ!   作:もぐら王国

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夢野雫とコラボだ! [6]

リオは手足から感じる冷たい感触で目を覚ました。

開けた視界には病院の天井が広がっている。

空気が薄暗いことから、周囲に明かりは無いことが分かる。

背中に感じるのは柔らかい感触。ベッドだろうか。

リオは起き上がろうと手足を動かそうとした。

しかし、甲高い音が響き手足の動きが止まった。

見れば手足それぞれの首に金属の輪っかが通されていて、さらにそこから伸びた金属のチェーンがベッドと繋がっていた。

リオは先ほど助けた牛の映像が頭に浮かんだ。

事情は分からないが、今度は自分が鎖につながれたらしかった。

リオは何とか拘束から逃れようと身体を動かすが、もがいても、もがいても金属の空しい音が響くばかりである。

 

「やあ、ご機嫌ようお嬢さん 調子はどうですか?」

 

不意に視界の横から眼鏡ゾンビがぬるりと現れ、リオを見下しながら言った。

 

「ここどこだよ! これ離せっ! おいっ!」

 

リオが噛みつかんばかりの勢いでまくしたてるが、眼鏡ゾンビは聞いているのかいないのか何も答えない。

 

「おいっ! 人の話聞けやっ!」

「本日はお友達も一緒に遊びに来ていただいたようで誠にありがとうございます」

「は?」

 

眼鏡ゾンビの物言いがまるで理解できなくて、リオは首を傾げた。

しかし”お友達”という言葉にすぐに雫の存在を思い出した。

リオは首をひねり、横を見た。

そこにはリオと同じようにベッドに拘束されている雫の姿があった。

 

「雫さん!」

「リオさん、おはようございます よく分かりませんが激やばですね」

「マジヤバです!」

 

生きてたーーー

リオはともかく雫ちゃん生きてたーー

まあ、リオは死なんやろ・・・

全く心配されてなくて草

 

雫がいつもの調子でマイペースに語り掛けてきたので、リオは少し安心を覚えた。

しかし今の状況は雫の言う通り間違いなく激やばだろう。

手足を一切動かすことが出来ないという状況もさることながら、眼鏡ゾンビがいつの間にかでかいチェーンソーを片手に持ってリオを見下ろしているという事実である。

 

「さてさておしゃべりもそのくらいにしていただいて、本日の商品をご紹介いたしましょう」

 

そう言うと眼鏡ゾンビはチェーンソーに電源を入れた。

リオの目の前でチェーンソーがバリバリと音を立てて回り始める。

リオの額から冷や汗が流れ始めた。

 

「皆さんに体験して頂く前に、この商品がいかに優れモノであるかをご紹介しましょう」

 

チェーンソーの電源が切られた。

眼鏡ゾンビは視界から外れると、どこからかワゴンを転がしてきてリオと雫のベッドの間のスペースまで持ってきた。

ワゴンの上を見れば、そこには皿とソレに乗せられた肉がある。

肉は横長の四角い形をしていて太く、弧を描いている骨がいくつか規則的に並んで肉からトサカのように突き出していた。

 

あ、これは牛のリブステーキ(背中の肉)だ 背骨が出まくりだわ

 

肉好きなリオはすぐに察した。

雫も首を横に向けてじっと肉を見ていた。

二人に肉を見せつける眼鏡ゾンビは、チェーンソーの電源を入れた。

再び耳障りな音を立ててチェーンソーの刃が回り始める。

 

「ではご覧ください これがこの商品の切れ味です」

 

眼鏡ゾンビがそう宣言して、チェーンソーの刃を上から肉に当てた。

赤身が勢いよく飛び散って顔や体に飛び散ってくる。

刃が骨にぶつかってがりがりと音を立てている。

やがてチェーンソーは、骨ごと肉をバッサリと切った。

 

「ご覧いただけましたか? これがこの商品の実力です」

 

眼鏡ゾンビは得意げに二人に話しかけてくる。

雫はそんなゾンビの様子をじっと見つめているし、リオもギッと睨みつけていた。

眼鏡ゾンビはそんな二人を見下ろしながら言った。

 

「まあまあそんなに焦らないでください しっかりお二方には体験していただきますよ」

 

眼鏡ゾンビはリオの足元へと移動してリオの片足を見下ろす。

そしてチェーンソーを持つ片手を持ち上げると、その片足に狙いを定めるように刃を向けた。

リオは目を丸くした。

刃が回っている。

 

\ぶいいんっ/ 

 

リオは確信した。

 

このゾンビ、私の脚ぶった切ろうとしてる!? 体験ってそういうことなの!?

 

「やばいやばいやばいやばいやばいやばい」

 

リオは急激に心拍が上がり始めるのを感じながら、呪文のように焦りの言葉を口から吐き出す。

 

「まじで駄目だって!本当に駄目だって!痛いじゃんだって!!」

「リオさん、頑張ってください!!」

「何をだよ!?」

 

手足は自由が利かないままで、刃が徐々に足へと近づけられる。

 

「それでは体験していただきましょう」

「したくないですううううううう」」

 

まずい

こいついつも叫んでるな

痛い痛いの飛んでけ

おまじないで草

 

リオが叫び声を上げても、近づく刃は止まらない。

そしてもう足に触れそうである。

リオが覚悟して歯を食いしばる。

ああ、だめだと思ったその瞬間、眼鏡ゾンビが横に吹っ飛んだ。

 

「へ!?」

 

眼鏡ゾンビを視線で追えば、壁に身体を打ち付けて痙攣していた。

そして代わりにその場に立っていたのは、、

筋肉だるまだった。

 

「何で筋肉だるま!?」

 

\ぶいいいんんn/

 

「ひいっ!?」

 

筋肉だるまの登場に驚いていると、先ほどまで眼鏡ゾンビが持っていたチェーンソーが顔に向かって飛んできていることに気づいた。

どうやら突き飛ばされた際に、眼鏡ゾンビの手元を離れて吹っ飛んできたらしい。

 

宙を舞うチェーンソー君。

回転するチェーンソー君。。

ぶっ刺さるチェーンソー君。。。

 

リオがギリギリで顔を背けると、そのすぐ横にチェーンソーは垂直に落下してベッドを切り裂いていった。

 

「助かったあ・・・」

 

色々助かった。

リオは深く息をつく。

気付くと手足の鎖も外れて自由に動かせるようになっていた。

雫を見れば同じように鎖が外れている。

二人は急いでベッドから降りた。

筋肉だるまは何故か倒れている眼鏡ゾンビに馬乗りになり、激しく殴りつけている。

この間にリオ達は逃げることにした。

 

部屋を出た先には奥行きのある別の部屋があった。

窓際にはたくさん並べられたベッドがあり、その上にゾンビとも人間ともつかない中途半端な姿の生き物が寝かせられている。

このベッドはゾンビになりきれていない者が集まる場所のようである。

二人はとにかくゾンビから距離を稼ぐために、ベッドの横を駆け抜けていく。

 

「おいっ」

 

不意に二人を呼び止める声がした。リオが声のした方向を向くと、ベッドに転がる男が体だけ起こしてこちらを見ていた。

黒目があり、皮膚がある。

このゲームで初めて見た普通の人間である。

しかし今は気にしている余裕はない。

 

「すみません 急いでるんで」

 

リオはそう言って先に進もうとしたのだが、男が尚も呼び止める。

 

「待て、話を聞けって 財宝の話だ?興味ないか?」

 

男がにやりと笑みを浮かべて問いかける。

リオは少しの間考えた。

ゲームシステム上、その財宝が手記である可能性も否定できなかった。

リオは雫とともに一応話を聞いてみることにした。

 

「すみません手短にお願いします」

「むかーし昔、あるところにおじi」

「急げや」

「おじいさんはこの病院の地下に財宝があると言いました」

「グッド」

 

男が言うにはこの病院の地下に財宝があり、自分はその場所を知っているという。

ただ自分は身体がゾンビになりかけていて今は動けず、リオ達にゾンビ進行を止めるため、筋肉だるまが持っている薬を取ってきてほしいと。

そうすれば財宝の元まで案内するとのことだった。

 

「薬取って来いって言ったってそんな・・・」

「難しいですね・・・」

 

筋肉だるまが怖くて逃げてるのに、筋肉だるまに近づけるわけがない。

二人が方法に悩んでいると、二人がこの部屋に入ってきたときに使った扉が開く音がした。次いで足音。

筋肉だるまである。

リオは急いでこの男のベッドの下に隠れた。

雫も隠れた。

同じベッドに。

 

「だから何で一緒に隠れるんですか!?」

「寂しいからです」

「絶対ばれますって 足が出てるんですから」

「出てないあしぃ~」

「ん~パンチッ!」

「あうっ!」

 

\ズシンッ/

 

リオが次の言葉を言いかけたところで、筋肉だるまの大きな足音が響いた。

ベッド下から視線を向ければ、血色の悪い筋肉だるまの足がすぐそばで見えた。

リオは息を殺した。

 

「おい、お前 ここらへんで人間を見なかったか?」

 

リオは耳を疑った。。

聞きなれない甲高い声が聞こえた。

すっごい高い声。

しかしこの声を発した人物は間違いなく、、

筋肉だるまである。

 

声細すぎwww

どうぶつの森出身かな?

これはF#

↑絶対音感の無駄遣いで草

 

リオは笑いを必死にこらえた。

 

「見てないです」

「本当に見ていないのか?」

「見てないです」

「正直に言ったらお前を助けてやろう」

「ベッド下におじいさんがいます」

「この足か」

 

や っ ぱ り ば れ た

 

リオが隠れるのを諦めて雫の手を引っ張りながらベッド下から這い出る。

 

\ドゴーンッ/

 

筋肉だるまが拳を思いっきり振り下ろして嘘つき男ごとベッド下の地面まで拳を叩きつけるのはそのすぐ後だった。

相変らず恐ろしいパンチである。地面に拳埋まってるし。

二人は再び逃走を始める。リオが後ろを振り返れば、筋肉だるまがこちらを怒りの形相で睨みつけながら、地面から拳を抜こうと頑張っている。

その隙にと二人は走る。

ベッドの部屋を出た先は、途中に部屋のないただただ長い廊下だった

二人はひたすらに走った。

しかし筋肉だるまは足が速い。

リオが後ろを振り向けば、既に筋肉だるまが距離を縮めて来ていた。

 

「来てる来てる来てる」

 

焦りは動揺を生み、動揺は失敗を生む。

 

「あっ」

 

突然の浮遊感。

リオは自らの足につまづいて転んでしまった。

 

「リオさん!」

 

先を走っていた雫が振り返って声をかける。

リオはすぐさま立ち上がって再び走り出すが、この逼迫した状況では少しの時間の無駄が命取りとなってしまう。

筋肉だるまはリオとの距離をあっという間に縮めて、もう追いつくのは時間の問題だった。

リオが近くなる足音を聞き後ろを振り返る。

すぐ目の前に筋肉だるまがいた。

 

「ふふっw」

 

リオはそのあまりの絶望に、乾いた笑いを漏らした。

もう数メートルもない。

 

筋肉だるまが腕を伸ばす。

伸ばされた腕がリオの肩に迫る。

筋肉だるまが不気味な笑顔を浮かべる。

 

全てをスローモーションで見ていた。

逃げきれなかったことを悟った。

 

その時。

 

\ドガーーーーーンンッッッ/

 

!?

!?

なにい!?

ふぁ!?

 

リオと筋肉だるまの横にあった壁が突然大きな音を立てて壊れた。

もくもくと砂煙がたつ。

ここにいた全ての者の注目を集めると同時に、それは壁から飛び出してきた。

 

「ぶもおおおおおお」

「ぐう~~~~~~」

 

現れたのは、”牛”とそれにロデオする”ぐう”であった。

 

きたあああああああああ

何で乗ってんだwwww

でたああああああ

これはあつすぎる

タイミング神

 

二匹はそのまま勇敢な声を上げながら筋肉だるまへと突っ込んでいく。

牛の角が筋肉だるまの半身を貫き、ぐうが両手に持った絵画を武器にして頭を激しくひっぱたく。

筋肉だるまはたまらず動きを止めた。

その隙にリオは逃げていく。

 

「ありがとう皆あああああっっ」

「ありがとうございますっ!!」

「ぶもおおおおおおおおおっっっ」

「ぐうう~~~~っっっ」

 

二匹とは出会って短いが、かけがえのない友達であった。

彼らのことは今後絶対に忘れることは無いだろう。

二人は二匹に感謝しながら懸命に走り、ようやく適当な部屋を見付け、荒い息をつきながら中へと入る。

見事に筋肉だるまから逃げきったのだ。

二人は安堵の息を漏らしながら、お互いに笑いあった。

メデタシ メデタシ・・・とは残念ながらならない。

二人は完全に油断していた。

全く気が付かなかった。

いや、むしろこの状況でいったい誰が分かるだろうか。

たまたま入った部屋が、トラップの落とし穴部屋だと。

 

\ガチャ/

 

「「えっ」」

 

二人の足元の床が突然無くなった。

二人は真っ逆さまに下へと落ちていった。

 

 

落ちた先には大量の砂山があった。

リオは落ちる途中で、雫に背中から抱きかかえられてそのままの姿勢で落ちていったために、砂の上に落ちた今でも雫の抱き枕状態で横になっている。

雫がリオの顔を覗き込んできた。

 

「雫さんありがとうございます」

「リオさんは小さくて抱きしめがいがありますね」

「ちょっと馬鹿にしてません?」

「リオさんは小さくて素敵です」

「なんで言い直したんですか!?」

 

抱き枕状態での会話である。

リオは起き上がると辺りの様子を観察した。

遠くに大きな下水道が見えて、大量の水が流れている音がする。

その下水道の途中から垂直に伸びた曲がり道の突き当りにこの空間が存在する。

ちょっとした四角形の空間だ。

まるで落とし穴のためだけに作られたような場所。

だからこの部屋には特に何もな・・・?

この空間を見渡しながら言いかけた言葉だったが、途中で口を閉じた。

視線の先では宝箱が二つ、並べられて壁際に置かれていた。

見間違いかと思い近づいて確かめてみるがやはり宝箱である。

なんで病院の地下に宝箱があるのかはゲームなので今更考えない しかしさっき助けを求めてきた男の言った通りであるならばこの中には手記が眠っている可能性がある

リオは胸を高鳴らせた。

 

「雫さん、これ開けてみてもいいですか?」

「開けてみましょう!」

 

横に立って一緒に宝箱を見下ろす雫も、期待のこもった声で答えた。

リオはまず片方の宝箱を開けることにした。

宝箱の前にしゃがみ込む。

そしてゆっくり手を伸ばして箱を開けた。

中を見た。

いっぱいの緑。

 

\ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ/

 

リオは無表情で箱を閉じた。

・・・カエルのいっぱい詰まった箱だった。

 

きっも

げこげこー^^

全部カエルだあ・・・

メルカリで売ろう

 

 

「雫さんすみません、どうやらこっちは偽物の宝箱っぽかったです」

「宝箱じゃなくてカエル箱でしたね」

 

リオはカエルが苦手だった。

リオは今のを見なかったことにして、もう片方の宝箱を開けることにした。

再び宝箱の前にしゃがんで手を伸ばす。

開ける。

中身は・・・折りたたまれた小さな白い紙が入っていた。

 

やった!当たりだ!

 

リオは笑みを浮かべた。

勝ちを確信してその紙を取り出して、開いた。

 

ごめんね こっちがニセモノだよ

 

丁寧な字で書かれていた。

 

「あれ・・・?」

「カエルの箱に手記があるみたいですね」

「えっと・・・?」

「カエルの箱に手を突っ込むみたいですね」

「ほう・・・」

「カエル好きですか?」

「嫌いです」

 

リオは冷静に今の状況を分析した。

 

二つ宝箱がある。

片方は外れだと言う。

もう片方はカエルげこげこ

つまりげこげこの中にしゅきしゅきがある ━Q.E.D.━

 

リオはしっかりと閃いた。

こんな閃きならいらなかった。

 

「シズクサン、ワタシ、カエル、キライデス」

「私も苦手ですねー」

「ここはどうか雫さん、お願いします」

「ゲームで決めましょう!」

「嗚呼・・・」

 

リオは先ほどと同じように懇願し、同じように笑みで流され、同じようにゲームをすることとなった。

 

「今度は少しルールを変えてしりとりにしましょう なのでしりとりの語尾にNGワードをつくります ワードが”ら”なら、”リンゴ”に対して”ゴリラ”と答えると負けです」

「こんな単純なのに引っかかる人がいたら相当なバカですよね」

「バカワイイりおさんも素敵です♪」

「ううっ」

 

しずく の つうこんのいちげき!

 

しかしリオは成長する生き物である。

今度は負けない自信があった。

 

「じゃあリオさんがNGワードを決めてください」

「”る”でいきます」

「分かりました じゃあ私から始めますね」

「はい」

「まずはしりとりの”り”なので”陸”」

「”く”か・・・”クエ”」

「”えさ”」

「”酒場”」

「”バッハ”」

「”は”・・・ハイボっっ!?」

 

リオは”ボ”の口を開けたまま固まった。

 

危なかった! 今、反射的に大好きな”ハイボール”って答えようとしてた!! 

 

リオはギリギリで気付いた。

踏みとどまったことに安堵の息を漏らす。

 

こうやって考えないで発言するとこのゲームは負ける ゆっくり慎重にいかなくては!

 

リオは自らの行動を改める。

そして余裕をもって別の言葉を言うことにした。

間違いなく、自信をもって、堂々と言った。

 

 

「”はんぺん”でどうでしょう」

「”ん”がついたので負けです」

「くそおおおおおおおおおお」

 

wwwww

ざっこwww

も う 見 た

敗北しか知らない女

様 式 美

 

リオは膝から床へと崩れ落ち、悔しさに声を上げた。

リオは純粋にしりとりで負けたのだ。

悲しみのこもった声が地下中に響いていた。

 

「さ、リオさん頑張りましょう!」

「ほんとに無理い・・・」

 

雫がリオの隣でニコニコと笑みを浮かべながら励ましている。

リオは力なく腕を伸ばして宝箱の箱を開ける。

中を覗けば、やはりたくさんのカエルが蠢いていた。

 

「いいいいっっっ」

\ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ/

「うるせえよっ!」

 

リオは顔を引きつらせて箱の中身を見ないようにしながら、震える腕をゆっくりと伸ばして宝箱に沈める。

 

「ああああああっっ ぐうううううっっ いひいいいいい」

 

手先からぬめぬめとした感触が伝わってくる。

リオはその気持ち悪さに妙な奇声をあげまくり、表情もそんなにバリエーションがあるのかと見てる者を驚かせるほどに、様々な嫌悪の表情が現れていた。

それを優しく見守るのは隣に立つ雫である。

 

「あはぁっっ・・・ リオさん可愛い・・・」

 

雫は頑張るリオを見て、恍惚とした表情を浮かべていた。

雫には、今の苦悶を浮かべるリオの姿は何よりも愛おしく映っていた。

 

「あったあ! あった!」

 

リオは伸ばした手がとうとう紙の縁に触れるのを感じ、興奮気味に語った。

リオはその紙をしっかりと指でつまみ、引き上げた。

現れたのは折りたたまれた白い紙と、それに張り付く一匹のカエル。

 

「はあああああ君はいらない!君はいらないよ!!」

 

リオはそう言いながら、紙をぶんぶんと振ってカエルを落とそうとした。

しかし、ここでリオの悪運が発動する。

足場が不安定になったカエルはぴょんと飛び跳ねた。

着地した先は、、リオの顔である。

 

「くぁwせdrftgyふじこlp(あばばばっばばばああ)!!」

「出てきちゃったんですね~」

「くぁwせdrftgyふじこlp(とってくださあああい)!!」

「カエルさんこっちですよ~」

 

雫は手の平を足場になるように上に向けて、リオの顔の横に近づけた。

すると顔に乗ったカエルは、その足場へと飛び移った。

雫はそのまま丁寧にカエルを地面へと降ろした。

 

「あああありがとうごじゃーます雫さん おかげで何とか生きてます」

「それはよかったです」

 

震える口で感謝の気持ちを述べるリオの手にはしっかりと紙が握られている。

リオが紙を開いて見てみれば、それは間違いなく手記であった。

 

「やったああああ」

「やりましたね!」

 

二人は歓喜の声を上げた。

これでようやく全ての手記を集めきった。

これによってこの病院に来るときに通った庭を囲む柵が開き、脱出が可能となる。

ゲームクリアは目前である。

しかしいつまで喜びに浸っているわけにはいかなかった。

 

\ぐらぐらぐらぐらぐりぐらぐら/

 

「「!?」」

 

唸るような地鳴りを上げながら、建物が揺れている。

病院が崩壊を始めていた。

 

 

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