暗闇の深まってきた時刻。
駅前ではあちこちに並ぶ飲み屋から、淡い光と賑やかな喧騒が漏れ出ていて夜の街を明るく彩っている。時々道に転がっている酔っ払いは、さしずめ街の装飾品といったところか。
リオはそんな楽しげな景色を横目に、ポケットに片手を突っ込みながら駅の通りを歩いていた。
目指しているのは一軒のお店。名前を”オ・カマバー”という。
片手に持ったスマホの画面には、表示された駅前の複雑な地図の上に、丸印と共にその名前が示されている。
リオは場所を確認してスマホから顔を上げると、建物に挟まれた路地裏へと曲がった。
伸びていたのは狭い一本道。
建物の影が被さっていて暗闇も一緒に伸びていた。視線で辿ればゴミ袋やポリバケツが道なりに置かれているのが分かる。地面にはチラシが散らばり、壁からはダクトやパイプが生えていた。
”乱雑”という言葉が似合う。
路地の奥には再び光が見えていて、人と車と道とが横に流れている。ここには先ほどまでとは正反対の静けさが広がっているのも相まって、まるでこの通りだけが街から切り離されたようである。
暗闇の途中には、何かの光源に照らされているのか淡い光がぼんやりと見えた。
恐らくはそこが目的地か。
リオは街の喧騒を背後に置き去りにして、路地裏を進んでいく。
何匹かの野良猫とすれ違えば、リオは光源の元へと到着した。
「秘密基地みたいだな・・・」
リオは思わずつぶやく。
眼下にあるのは地下へと続く階段と、その先の低い天井に貼り付けられた看板。
書かれているのはネオンで光る”オ・カマバー”の文字。
まさしく目的の場所である。
地下にあるタイプとか、かっけえ~
リオはちょっとはしゃいだ気持ちで階段を降りて、現れた店の扉を開いた。
店は四角い部屋の形をしている。店の奥には部屋を横切るようにカウンター席が伸びており、その向こう側には酒が並んだ棚が置かれ、人が通れる余裕のあるスペースがある。店主はそのスペースで棚を背後にして立ちながら客と向かい合う。今はカウンターに肘をついて顎に手を添えながら、カウンター席に座っている客と会話に興じていた。
リオは店内に足を踏み入れると、”おお・・”と感嘆の息を漏らす。
店は全体的に薄暗いのだが、その奥の棚の並ぶスペースだけが青白い光に照らされていて、いくつもの酒ビンが光を反射してきらめいていた。酒好きなリオとしては何とも蠱惑的な景色である。
また店内にはラテン系のノリの良い音楽が流れていて、あちこちには異国のよく分からない民族チックなオブジェが見受けられる。それ以外にもよく分からない雑貨がごちゃごちゃしているが、その混雑具合が楽しげな雰囲気を醸し出している。
店主はリオの来店に気づくと、客とのおしゃべりを一旦中断して顔を上げた。
「あらあ~ いらっしゃ~い」
笑みを浮かべながら粘り気のある高い声を発する。
見れば青い口紅に坊主、耳にピアスとなかなか特徴的な顔つきである。また下半身はカウンターテーブルに隠れて見えないが、そこから覗く上半身はピアスをしたへそとすらりとした腕を見せつけるような短いTシャツを着ていて、日焼けした褐色のつるつるの肌が外気に晒されていた。
光を返すプロモーションはまるでモデルようである。
店名通りなら、この店主がオカマなのか・・・
目が合うと店主は投げキッスをよこした。
リオはそれを見てひとりの先輩Vtuberを一瞬想起したが、そんな偶然は無いだろうと頭の中ですぐに否定する。
リオは店主に会釈で返すと、カウンター席に座る何人かの客の中から、既に来ているであろう武士の背中を探した。
スーツ・・・アロハ・・・スーツ・・・和服。
はいダウト。
一人だけ、唐草模様の若草色の和服に紫色の帯を締めているやつがいる。
リオはそれの隣の椅子に腰かけた。その横顔に視線を向ければ、安定の髭面がグラスを口につけ酒をあおっていた。
「お久し武士」
「ああ~うまいのお~」
リオがこの場所に来るまでに考えついたとっておきのギャグである。
しかし武士はリオに目を向けることなく、間延びした声をあげた。
まるで嘲笑うかのようなリアクション・・・というか気付いていないだけである。お酒が美味しかったので、武士の口から自然と漏れ出た感想である。
ただリオは武士が自分の存在に気付いていないことに気付いていない。
なので無視されたこと(思い込み)に勝手に腹をたて、武士の肩を小さくパンチする。
「パンチッ」
\シュパ/
「ぬわあっ なんじゃあっ」
リオのパンチを受けて横を向いた武士は、リオの存在にようやく気が付いた。
「おお!来たかリオ!」
「来たさ」
「久しぶりじゃなあ!」
「パンチッ」
\シュパ/
「何でじゃあ!?」
武士の”久しぶり”に皮肉を感じてのパンチである。(思い込み)
武士の腕は意外に硬くパンチのし甲斐がある。パンチにハマったリオがシュパシュパやっていると、二人の正面に店主がやってきた。店主は興味深そうな目で二人を見下ろしている。
「あらあ~仲良いのね~」
「殴ってるだけです」
「いと痛し」
人型サンドバックですよこれ
「うふうっ 貴方初めての子よねえ~ 武士ちゃんのお友達い?」
「リオは友達ではない!!戦友なのだあ!!」
「ただの同僚です」
「”戦友”良い響きねえ~~~ 汗にまみれる肉体! お互いの荒い息遣い!! 極限状態で育まれるキズナ!!!」
「響き渡る銃声!」
「「ぬおおおおおおおおお」
「たぎるわあああああん」」
「うっわ こっちタイプか・・・」
二人は声を合わせて素敵なドゥエットを奏でている。
リオは武士と共鳴できる生き物がこの世に存在したことに驚くが、周りの客が慣れた様子で二人を眺めているのを見て”ここではこれが日常らしい”と若干顔を引きつらせながら目の前の非日常を受け止める。リオはまるで動物園に来たかのような感覚で二人の様子を眺めていた。
やがて店長は満足した様子でリオへと向き直った。
「それでリオちゃん 何を注文するかしら?」
「えっと、とりあえずハイボールで」
「
「キリンビールみたいだね」
「ビール某」
「芸名みたいだね」
「・・・ビールください」
「ビール3つみたいです」
「かしこま♡」
「いや1つ、1つじゃああああ」
武士が悲鳴にも似た声を上げる。
ウインクで注文を受けた店主はやがてビールグラスとハイボールグラスをそれぞれ1つずつ持ってきた。分量ぎりぎりまで注がれたハイボールからは氷がぱちぱちと鳴く音がする。
二人はそれぞれグラスを手に取ると顔を見合わせた。
「「乾杯」」
グラスをぶつけ合って乾杯。
リオはグラスに口をつけると顔を傾けながらごくごくと喉を鳴らして幸せそうにハイボールをあおった。周りの客はその飲みっぷりを感心したように眺めている。
「ぶはあっ」
\ガンッ/
半分まで量を減らしたグラスがカウンターに置かれた。
「リオちゃん、随分美味しそうに飲むわねえ~」
「CM狙ってるんで」
「お酒も喜んでるわあ もっと飲んで~って言ってるわよん」
「そうですかねえ じゃあカクテルのオレンジのやつください」
「どうも~♡」
「ああ~w 乗せられた~w」
店主の話術にわざと乗せられながら、リオも店主もその可笑しさに笑みをこぼす。
リオにとってハイボールは前菜のようなもの。他の酒も結局頼むので問題はない。
リオと店主の愉快なやり取りを見た周りの客も”わはははは”と楽しそうに笑っていた。常連が多いのか客同士の距離が近く、初めてでも馴染みやすそうな居心地の良いバーである。
「それにしても珍しいのおお リオの方から飲みに誘ってくるとはのおお」
リオが片手に持ったグラスを揺らして氷をカラカラ鳴らしていると、武士が横から声をかけてきた。
相変らず声がでかい。
リオは手を止めて、武士の方に振り向く。
「そういえばそうかも」
「なんじゃあああ 某に会えなくてええええ寂しくなったのかあああ!?」
「あ?」
「怖いのおぉ・・・」
リオが睨むような目線を向ければ、武士は視線をずらし、威勢の良かった声はたちまち萎んだものとなった。最後が裏声になるあたりに、ビビリ度合いがうかがえる。
ちなみに威嚇するときは、”は?”ではなく”あ?”にすると、より喉の奥から重めの声が出て威嚇に効果的である。 情報提供 駿河武士対策本部
「まあでも武士と飲みたくなったのは間違いないよ」
「ほおおお某の時代かなあああ?幕府開いちゃおうかなああああ?」
「だって武士って馬鹿じゃん?」
やっべ、言葉のチョイスミスった
「馬鹿じゃと申す!? 馬に鹿が合わさって!!馬鹿じゃと申す!?」
武士喚く リオ息吐き出す トホホギス
歌人・清少
本当は”武士と飲むと何も考える必要無いから気楽で良いんだよね”なのだが、それを言う直前、武士がアホなことを言ったばかりに罵倒の気持ちが混ざって乱暴な言葉になってしまった。
リオはとりあえず修正を試みる。
「ああ・・・えっと・・・良い意味だよ」
「良い意味とな?」
「うん、そう! 武士は良い意味で馬鹿!良いうましかだよ!!」
「それはそれは! 良きかな!良きかな!」
いやまじで うましかってなに? 最上川?
歌人・紫ぶーぶー
多少強引だったが武士は納得したらしかった。リオは心の中で一息つく。
「それはあれじゃな 良薬は口に苦し、みたいなことじゃな」
「ええ、ああ、うん そんな感じ」
反対な意味の言葉が合わさってるという意味では一緒かもしれない。
「なるほど、ブスじゃな!それはつまり良いブスじゃということじゃな!」
「・・・は?」
「ブスじゃ!ブスじゃ!良いブスじゃ! ブスじゃ!ブスじゃ!良いブスじゃ! ・・・」
武士は独特な抑揚を織り交ぜながら、まるで昔の狂言のように歌い上げる。
酒が回り陽気になった武士はその語感がえらく気に入ったようで、頭を揺らしながら同じフレーズを何度も繰り返している。
しかし反対に、全く楽しくないのはリオである。
リオは目の前で、ゆらゆら揺れる髭面を歯をギチギチ言わせて睨んでいた。そうしてとうとう苛立ちが自制を超えると片腕を伸ばし、武士の両頬をぐっとつまんでその口を黙らせた。
「おいこら髭 ブスにブスと馬鹿に馬鹿は言っちゃいけないんじゃ馬鹿 分かったら武士武士言うとけ武士」
「ん゛ん゛~~~!! ん゛ん゛~~~!!」
リオの冷酷な言葉に、武士は抗議するように挟まれた口から鳴き声を漏らしている。するとそこへリオから注文されたカクテルを持って店主がやって来た。店主はをフラスコみたいなグラスをテーブルに置くと、二人を交互に見比べた。
「あらあ~駄目よ~ ケンカしちゃあ」
「違うんですよ この髭がブスって言ってきたんですよ」
「んん~~!! んn~~!!」
「そりゃあ私はブスかもしれませんけど、だからってブスブス言わなくてもいいですよね!?」
「あらあそうなの~? むしろあたしからするとリオちゃんは、イケメンよりの美少女に見えてすんごいタイプでうふふふふふっ」
「んん~~~!! んん~~~!!」
リオは未だに騒ぐ武士を見ると、その掴んだ顔を横へ振ってシェイクした。すると声も一緒に揺れ動き変わったオモチャのようで少し面白くなる。
リオが武士の顔で遊んでいると、二人の会話を遠くで聞いていたスーツの男性客が顔を伸ばして、カウンターに座る客越しにこちらを覗き込んだ。
「あの~ もしかしたらその人は、毒を意味する附子(ぶす)のことを指しているんじゃないでしょうか?」
「え?」
その客は丸眼鏡を指でくいと持ち上げながらそう言った。いかにも知的な雰囲気を放っている。
リオはその男性の言葉を聞くと、顔を押さえつけていた指を離した。
武士はふう~と息を吐き、整えると口を開いた。
「あちらの旦那の言う通り!! 某は狂言・附子のことを言っていたので候!」
「はあ」
「良い附子、つまり良い毒という事じゃな!」
「じゃあ最初からそう言えば良かったじゃん」
「武士たるもの古風な言葉を使う生き物なのだ!!」
「だっる」
堂々と宣言する武士にリオはげんなりとした表情を向けた。
武士は酒を飲んで一息つくと、思い出したかのように言った。
「そういえば昨日と今日と、リオは夢野雫とコラボしておったな!!」
「ああ、見てたんだ」
「楽しそうでいと羨ましかったでそ~ろ~」
武士は悔しそうな表情を浮かべながら、拳で机を軽く叩く。
「武士も雫さんのファンだったっけ?」
「左様 そういうリオもか」
「左様」
「やはり夢野雫の可愛さは圧倒的ゆえに、老若男女関係なく全ての人間を虜にしてしまうのだな!」
武士は力強く言う。
「まずは何といってもあの声じゃ!鈴を転がすような声じゃ!たまらんのお~ それにあの姿!あまりにも美しい銀の長髪!!幼く愛おしい顔立ち!!いとおかし!!いとおかしじゃあ~~」
「なんかきもい」
武士はまるで呪文のように早口でまくしたてた。リオは髭面の男が一人の女子の魅力について熱く熱く語っている様に多少見苦しさを感じつつも、武士の意見には大体同意であった。
夢野雫はやはり可愛い。
配信で見ていても可愛いが止めどなく溢れているわけだが、リオはコラボをして配信では分からない仕草なども見ることが出来た。
散々に抱き着かれたり、微笑みかけられたり、くすぐられたり・・・そしてそれが毎度毎度飽きずに可愛いわけだから、もはや可愛いの擬人化である。
雫ちゃん可愛いやったー。
よって武士のキモさは納得のキモさと言える。
「ところで武士はどの配信が好き?」
リオは雫のコメント欄で毎回自然発生して、何故かその返信で毎回荒れるランキング上位の質問をした。
”なんでコメントって揚げ足取りばっかりするんだろう・・・
みんな足無くなっちゃうよ・・・”とはリオの言葉である。
「いくつがあるが・・・まずは語尾がすべて”うさ”になる”うさうさ配信”だな!」
「分かるわ~」
「語尾がウサギ化するだけでさらに可愛くなるのはやばいのお!」
「うさうさ言い過ぎて、国旗当てゲームでアメリカ出た時に条件反射で”うさ!”って言ってたの可愛かった~」
ちなみにウサギ化するなら”~~だぴょん”が正しい。いやぴょんじゃない。ウサギ化ってなんだ?(すぬーぴー?)(あれうさぎ?)(違うか)
「ちなみにリオはなんかあるか?」
「カラオケで80点取るまで辞めれない配信」
「あれも良いのお!!」
「雫さん、音程が絶望的過ぎて70点がやっとだったよね・・・」
「それがまたいとおかし!」
その配信ではあまりの下手さにミュートにして、口をパクパクさせている雫を楽しむというニッチな楽しみ方が考案された。
ちなみにやっとのことでクリア出来たときの曲は吉幾三の”俺ら東京さ行ぐだ”である。
しかも一回じゃない。20回程東京さいっだ。参勤交代かな?
「まあでも一番と言ったらアレかのお?」
「アレだよね」
「「今何を飲んでるか当てるゴクゴク配信!!」」
ゴクゴク配信とは雫が何の飲み物を飲んでいるかを、その喉を液体が通っていく音と飲み終わった後の雫の息の吐き出し方だけで当てるという、視聴者参加型の画期的かつ激ムズな遊びである。
なお途中でコメント欄に現れた何人かの名(迷)探偵により推理が入り混じり、意見は分かれ、カオスな様相を呈していた。
「一番盛り上がったよね」
「江戸探偵を名乗っていたのは某よ」
「え!一番正答率が低くて皆から”あいつのおかげで四択問題が三択問題になって嬉しい”って言われてたあの江戸探偵!?」
「・・・左様」
ちなみに珍しく正解したときは鉄のごとく叩かれていた。刀に成れて良かったね。
「いやあ~ こうやって好きなことを共有してみると楽しいねえ」
「うむ これもラビッツ(雫ファンの総称)の楽しみで候」
リオは仮にもそこそこの数字を持っている配信者であるために、配信中に他の配信者のことを熱心に語ろうとはしない。それはあくまでリオが主役である事の自覚と、そのリオを見に来た人に対する配慮、そして単純にコメント欄が荒れる可能性があるのを気にしてのことである。
そのためこうして他の配信者のことについて共有することは、仲の良い配信者が少ないリオにとっては珍しいことであった。
リオは鼻歌を歌いながらカクテルを飲む。
「しかし・・・しかしのお・・・」
リオはグラスを傾けながら横目で武士を見る。
先ほどまで楽しそうに喋っていたのとは一変して、突然武士は悩ましげな表情を見せた。
「何急に?」
リオはグラスを置きながら尋ねた。
武士はカウンターテーブルに突っ伏すと、顎を持ち上げてテーブルの上にちょこんと乗せた。
「夢野雫がコラボをしてくれないで候・・・」
武士は元気のない声でつぶやく。
話を聞くと、どうやらLIMEで誘いの文を送ってもやんわりと断られてしまうらしい。
リオは自分が雫なわけではない事を理解しながら、もしも初めてコラボするとして武士のどこが嫌かを想像してみた。
「髭を抜け」
「嫌で候」
「怖がられてるかもしれないよ」
「アイデンティーの消失で候! ていうか某が抜いてもヴぁーチャルは抜けないで候!」
武士は顔を持ち上げると、リオに抗議した。
「じゃあ、抜いても問題ないじゃん」
「そういう話じゃないわっ!」
さりげなく武士を小奇麗にしようというリオの計画だったが失敗である。
「同期なのに断られてるの草」
「笑い事ではない!」
「はいはい 私からもさりげなく話をしてみるから」
「ありがたき幸せ! 喜ぶこと山のごとし!」
「ちょんまげ断髪コラボいかがですかーって」
「悲しむこと海のごとし!」
雫と実際に接したリオからすると、外見以外に何か理由がある気もしたが流石に分かりようが無かった。
武士は気持ちを切り替えるように酒を煽ると、グラスを置いて再び顎を机に乗せた。
「まあそんなことよりも・・・ 某はリオが普通そうで良かったのお」
「は?」
武士は視線を正面にある自らのグラスに向けたままに言った。
リオは武士の突然の気遣いの言葉に、気味の悪さと困惑を覚えて声が上ずる。
「なにそれ?」
「いや リオがここに来たときに少し浮かない顔をしておったからな 心配というか、もしかしたら悩み事でもあるのかと思ったので早漏」
「いま最後ふざけたろ」
「候」
武士は少し恥ずかしくなって言葉を乱したが、その気持ちは紛れもなく本心であった。
「別にいつも通りでしょ」
「左様 だから良かった」
「・・・キャラ間違えてるぞ」
「某はあああああああ江戸のおおおおお」
「うるさい」
少し沈黙。
リオは変に気恥ずかしくなって、残っていたハイボールを全て飲んだ。
そうして顔を下げてテーブルに向けながら、横目で武士の頭を見た。
「その・・・ありがとう」
「うむ」
謝るのはすっかり慣れたけど、お礼を言うことは慣れてない
リオは視線をテーブルに戻す。
腕を頭に回して、自分の髪の毛を撫でつけた。