ゴリラじゃないからっ!   作:もぐら王国

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”ぶいぶいっ!”だ![2]

「そんじゃ、改めまして 本日のゲスト、夢野雫ちゃんと時雨リオちゃんでーす」

 

口ノ助は張り切った声で二人を紹介した。

二人の登場から今までのちょっとした会話と比べて、より張りのある引き締まった声を出している。それは今からが本格的な番組の始まりであり、口ノ助が司会として気合を入れたということの表れだろう。

 

「よろしくお願いします♪」

「よろしくお願いしまーす!」

 

口ノ助の紹介を受けて雫は穏やかな笑みを浮かべて、リオは陽気に明るい声で、それぞれの人柄を露にしながら挨拶をした。

その雰囲気を見れば、二人とも緊張していない事が分かる。雫は3D配信を既に何度か経験していることによる慣れである。リオは・・・持ち前の胆力である。(放送事故が友達)

 

「にしてもよく来てくれたねお嬢さん方~」

 

口ノ助がにやりと笑みを浮かべながら、少しおどけた様子で言う。

 

「マネージャーからは、いつもより大人しくしているようにって言われてますよw」

「私は緊張せずにいつも通りにって言われてますね」

「え・・・真逆じゃないですか羨ましい~」

「きっと日頃の行いですね♪」

 

さらりと言う雫である。

 

「べ・・・別に、警戒されるようなこととか、、してないはず、、、なんですけど・・・」

 

リオは言葉を若干詰まらせながらぼそりと呟いた。そのリオの瞳を、雫が真っ直ぐ綺麗な瞳で見つめるのだ。

 

\じーっ/

 

「え・・・えへへっ?」

 

\じーっ/

 

「・・・」

 

リオは表情筋を引きつらせて不自然な笑みを浮かべていたが、やがて雫の視線に耐えられなくなって、逃げるようにそっぽを向いてしまった。

 

図星だよー^^

リオー^^?

分かりやすくて草

嘘下手すぎの極み

 

雫さんの瞳は真実の口(格言)

 

そこへニヤニヤしながら遠目で立って見守っていた口ノ助が口で参戦する。

 

「あはあっ 実は俺もリオちゃんの配信を何度か見たことがあるのよなあ 確か俺が見た時は・・・料理配信で火災報知機が鳴ってたなぁ」

「う゛っ゛」

 

リオに25のダメージ!

 

出たあwww

肉を焼く配信→家を燃やす配信

ゴリラに火は早かったな・・・

ただハンバーグ作ろうとしただけなのになwww

あれは悪い夢だったw

 

雫も追加攻撃をひとつ。

 

「私がリオさんの配信で最近見たのは・・・中古のパソコンがウイルスだらけで、視聴者さんと一緒に戦って惨敗してましたね」

「く゛っ゛」

 

リオに30ダメージ!

 

「あの後、マネージャーさんに”危ないPC使わないでください!”って怒られたんですよね?」

「ま゛っ゛」

 

おまけに50ダメージ!

 

「あ、すみません! これあんま喋っちゃうと・・・」

「ダイジョブダイジョブデスヨ、シズク=サン、時効デスヨ時効、へへへ・・・ お゛え゛っ゛」

 

リ オ は 力 尽 き た

 

可哀想にwww

ほんまポンコツやな

まあ全部リオが悪いしww

取れ高の方から寄ってくる配信者の鑑

リオの配信はドキュメンタルだからww

 

椅子の背もたれにもたれかかりぽっかりと口を開け、魂の抜けかけているリオである。

その悪運や貧乏神の如し。積み上げた事故は山の如し。生み出した取れ高は海の如し。

 

怒られた回数は数え難し!

 

本人も意としていないのにイベントの方からやってくるのが、リオクオリティーである。それは視聴者を軒並み喜ばせ、無数の切り抜きを生み出す。

リオのライフという代償を払いながら・・・。

 

「さてここらへんで早速なんですけどもー、知らない人ももしかしたらいるかもしれないってことで、自己紹介の方してもらおうかなー?」

 

口ノ助は力尽きたリオを横目に番組を進めるべく、次の話題へと話を進めた。

自己紹介。

この番組ではどんなゲストが来ても最初に行われる企画の一つで、まずはここから、まだ知識のない新規の視聴者にゲストの情報を発信するのである。

 

「んじゃあ、雫ちゃんからいってみよーか?」

「はい、わかりました!」

 

口ノ助に促され、雫は元気よく返事をした。そこへカメラが寄って行って、配信画面には雫の顔がいっぱいに映る。

絹のように細く艶やかな銀色の長髪に、宝石のような真っ赤な瞳。

雫もカメラが寄って来たのに気がついてカメラに向かってニコリと微笑めば、視聴者の視界には笑う天使がドアップで映ることとなり、それはもう天界に召される視聴者の数々ががが・・・

 

あぁ・・・(尊死)

き゛ゃ゛わ゛い゛い゛い゛

好こ(直球)

ああああああああ

 

「はい、制限時間は一分だからね 二分じゃないよ三分じゃないよ一分だよ?ああ、三分と言えばカップラーメン、俺は最近辛いやつにはまっててさー ”南極ラーメン”てって言うの?あーれは美味かったねえってことでスタートォォ!!!」

 

謎の不意打ち。

 

「私の名前は夢野雫です 好きな動物はウサギd・・・」

 

流れるように始める雫。

 

唐突で草

不意打ち眼鏡

雫ちゃん普通に対応してるwww

全く動揺しないwww

 

「ウサギです 好きな色はピンクと白です 好きな映画はとなりのトロロ 小さい頃の夢はお嫁さんでした あとは」

「しゅうりょー!!!!」

\カンカンカンカン/

 

口ノ助がまだ喋ろうとしていた雫の言葉を遮るように声を上げて、どこからともなく台の上に取り出していたゴングを小さな木槌で打ち鳴らした。自己紹介終了の合図である。

 

「雫ちゃん 自己紹介やりきった?」

「そうですね ちょっと時間が足りませんでしたが、こんなもんだと思います」

 

それを聞いた口ノ助はにやりと笑みを浮かべた、

 

「ところがぎっちょん! 追加情報がありまあす!」

 

きたああああ

やたああああ

いええええええす

助かる

 

口ノ助は声高らかにそう言いながら、台の上にあらかじめ伏せておいたフリップを起き上がらせた。

 

「ドンっ! こちらっ!」

 

フリップには何やら文字が書かれている。

 

「”雫ちゃんはトマトが食べれない!?”でえす!」

 

口ノ助が両手に持って台に立たせているフリップには、”夢野雫はトマトが食べれない!?”とでかでかとした文字で書かれていた。これがこの番組名物の”眼鏡による追い自己紹介”である。あまり普段の配信では公言していないような情報も、このフリップによって明かされる。本人は恥ずかしい思いをすることもあるが、その意外性が視聴者に受けているとか。

そうして一つ目、”夢野雫、トマト食べられない件”。

 

「食べられないすか、トマト」

「食べられないです、トマト」

「なぜ食べられないですぅ?」

「なんか味が苦手で・・・」

 

雫が”えへへ”っと恥ずかしそうに苦笑いのようなものを浮かべていると、隣で死んでいたリオが蘇った。リオは口ノ助の持つフリップに目をやると、不思議そうな表情をして雫に声をかけた。

 

「意外ですね雫さん~ 私はトマトめっちゃ好きなんでバキバキ食べますけど!」

 

お か え り

トマトバキバキで草

バキバキっていう擬音語あるww?

リオのトマトは鋼鉄製なんやろ知らんけどw

トマトおいひいいいいいい

 

「あうぅ・・・リオさんトマト好きなんですか?」

「え?まぁ、好きですよ というか嫌いな食べ物無いんですよね、へへww」

「あ、じゃあ私もトマト好きです! 口ノ助さん、私トマト好きになりましたよ!訂正お願いしまーす!」

「おお、私のおかげですかね~」

 

雫が手をぴんと伸ばしながら、口ノ助に情報の修正を求めた。授業中、先生に発言を求める生徒のようである。その実、他人が好きという理由で無条件にそれを好きになるという超常現象が起きているわけだが、リオは気にせず関心している様子である。

口ノ助は雫の発言を聞くと、”それだ!”とばかりに雫の顔を指さした。

 

「雫ちゃん!良いこと言うねええ!! なんとですよ!なんとなんとなんとですよ!!こんな丁度良いタイミングでスタジオの方にはトマトが用意されております!」

「え・・・」

「好きになっちゃったんですよねぇ!あっはあ~~~!!!」

「・・・」

 

さっきまで元気のよかった雫であったが、急にしおらしくなってしまった。口ノ助の発言を聞けば誰だろうと、その次の展開を読めるものである。

すなわち・・・

 

「雫ちゃんには、今からトマトを食べてもらいましょおおお」

「うぅ・・・」

「そうしましょ!そうしましょ!ってことでトマトを呼びましょ! カモーン!」

 

\パチンっ/

 

口ノ助がリズムよくそう言って手を鳴らせば、黒子の衣装を纏ったスタッフが、手押しのワゴンテーブルをスタジオの中央まで連れてきた。そのテーブルの上には、白いお皿と、そこに等分された三日月状のトマトがいくらか乗っている。

思わず情けのない声を漏らす雫である。

 

間が悪いwww

雫ちゃんどんまい

まあ、隣にリオがいますしお寿司

とりあえずリオのせいってことで

いと哀れ

 

コメント欄では雫の不運を嘆くと共に、リオの悪運が発動した説が騒がれた。

 

リオが悪い(暴論)

 

「さあさあ立って立って!寄って寄って!」

 

口ノ助が急かすように囃し立てるので、雫は遠慮がちながらも立ち上がって、トマトの元へと近づく。リオも雫の後に続いて、立ち上がった。

カメラはトマトの映像を映す。

 

「どうですかこのボディ!素晴らしいでしょ!!今ならなんとこれが1980円!1980円!お安いでしょ!!でもこれだけじゃないんです!今ならなんとこちらのお塩をつけて3980円!!大変お買い得価格となっております~~」

 

口ノ助もスタジオ中央まで歩いてくれば、トマトのことを腕で指し示しながらふざけた調子で通販番組を真似事をしていた。

 

「どうぞ”ジャバジャバネット口ノ助”を今後ともよろしくお願いいたします」

 

お前向いてるぞwww

そっちやれよ

怒られろwww

 

「さてぇ? 雫ちゃん、ここにあるトマト、美味しそうなトマト 食べたいよね?」

「あ・・・うぅ・・・」

「割りばしもあるよ~、塩もあるよ~ ね?」

「んん・・・」

 

雫は見るのさえも嫌そうに顔を歪めながら、言葉にならない苦の感情を吐息交じりの声に漏らしていた。その独特の香りで既に、雫は白旗を上げている。

 

「どうするどうする雫ちゃーん」

「い・・・今、お腹減ってないです」

「ならばこれは仕方ない! 雫ちゃんは、仲良しのリオちゃんが好きなトマトでもさすがに好きなれなかった、ということで先にいきまっしょい?」

「それも嫌ですぅ・・・」

 

雫はトマトが嫌いなのは事実であるが、それでも強情に食い下がる。彼女をそうさせるのは”リオの好きなもの=トマト”という図である。

雫はトマトを好きなりたい。それはひいてはリオと好きなものを共有できるという喜びに繋がるのである!

そしてこういった雫の様子こそが、雫とリオを同時にオファーした番組制作の狙いでもある。すなわち、仲のいい時雨リオと絡ませて、”何か雫の新しい表情を視聴者に見せて、雫の可愛さ増し増し作戦だぞ!”である。

 

・・・このトマト、やはりリオが引き寄せていた(諸行無常)

 

せめて1つでもトマトを食べたい雫であるが、なかなか決心がつかない様子で、まるで因縁の敵のごとくトマトを見下ろし、睨んでいる。視聴者には一切の動きを止めた棒立ちの雫と、その視線を受けて一切動けないトマトの絵面が映っている。そして両者の間に火花を散らすような映像加工を施しているのは、ただのスタッフの悪ふざけである。

 

可愛い

遊ばれてて草

食わんでいいのにww

何が雫ちゃんをそこまでさせるのかww

 

達人の間合いで睨み合っている雫とトマトであるが、不意に横から手が伸びた。

 

「一個もーらいっ」

「あっ」

 

リオがトマトを一切れ掴んで、そのまま口へとぱくり。

 

\もぐもぐもぐ/

 

雫に見つめられ中、リオも雫のことを真っすぐ見つめ返しながら口だけを小動物のように動かして、やがてごっくん。飲み込んだ。

 

「あっはあ~おいっしい」

 

リオが歯が見える程に口を横に開いた笑みを雫に見せた。雫はそれを見ると、心が締まるような何とも言えない羨ましさを感じた。

トマトに。

 

リオさんをあんな笑顔にできるなんて!私も食べてほしいかも・・・

 

「”あっはあ~”ってそれは俺のセリフだぜリオちゃん!!」

「えへへ~ うつっちゃいましたね~ あはあっ~」

「”あはあ~”じゃないな~”あっはあ~”だな~」

「”あはああ~”ですか?」

「違う違う”あははあ~”だ  ありゃあ?」

「あはあーー」

「あはははああー」

「「あはああーーー」」

 

なんだこいつらwww

仲良しで草

男子小学生かな?

IQが低いwwww

 

リオと口ノ助は波長が合うのか、ふざけ合って笑いあっている。雫はそれを尻目に何とかトマトを攻略できないかと考えていた。

 

トマトはこの短時間じゃきっと嫌いなままです  でも、それを上回る好きがあれば・・・

 

雫は考える。

 

好き・・・好き・・・

 

「あっ!」

 

雫は思考の中である名案を思い付いて、思わず声を漏らした。雫の声に反応した二人が、雫の方へと振り向く。

雫のその表情は先ほどまでの苦悶したものとは違い、自信に満ちた晴れやかな表情である、それは雫の心中を分かりようもない他の人の目からしても、明らかに良い考えが浮かんでいるのが分かるほどの変わりようであった。

 

「どうしたんですか?雫さん?」

 

リオが尋ねる。

 

「私、いい方法を思いつきました!」

「いい方法?」

「はい!それはリオさんが私にトマトを食べさせていただきたいのです!」

 

属に言う”あーん”である。

 

「へ?」

「あーんしてくださいリオさん!」

「あーんですか?」

「あーんです」

 

リオが”ん?”と疑問符を浮かべて、笑顔で首を傾ければ、鏡のように雫もこてんっと首を傾げた。

 

Let's あーん

 

きたああああwwww

百合いいいの華があああ咲いたよおおおお

良いイベントだ

さいこおおおお

 

雫は好きという言葉から当然のようにリオを連想して、さらにそこからリオの表情を連想して、さらにそこから雫を見つめるリオの顔を連想した。雫はリオに見つめられると得も言われぬ幸福感を味わえるのである。そうして、トマトを食べながらもリオに見つめてもらえる”あーん”こそ最強の方法であるという結論に達したのだ。(迷推理)

 

「さあ!盛り上がってきたああ!!!実況は俺こと吹聴口ノ助(ふいちょうこうのすけ)がお届けしますぅ!」

 

口ノ助は画面左、本来の立ち位置へと戻り、意識を実況モードへと切り替える。

百合の間に雑草(男)が紛れ込んではいけない、とは彼の持論である。

 

「さああどんな展開が見れるのでしょうか嗚呼」

 

口ノ助を煽りを受けて、そして正面の雫の期待する笑顔を見て、逃げ場が無いことを悟ったリオである。正直、あーんは恥ずかしいが、この前の雫とのポッキーゲームと比べたら幾らかましという思いがあった。

 

あの時は最後、緊張で私バグってたしな・・・ アーカイブ未だに見たくない・・・(遠い目)

 

リオは苦い思い出を一瞬思い出しながら、トマトを一切れお箸でつまむ。そうしてそれを持ち上げて、雫の口の前に運ぶ。

 

お箸の持ち方綺麗

箸の使い方が上手いゴリラ

トマト来たああ

入場です

 

「きたあ!トマトが雫ちゃんの口元までやって来たあ!」

 

「雫さん、口開けてください」

「はいぃ」

「はい、あーん」

「あーん」

 

雫が素直に口を開けた。そしてリオもそれに釣られて口をあーんと開けていた。しかし本人は無自覚なので気付いていなかった。

 

リオも口開いてないかwww?

可愛い

なんだこの可愛い生き物

二人とも可愛い

雀みたい

 

「お口が開いている! これが無自覚の力! そして雫ちゃんもやはり可愛い!キュート!ベリーにキュート!」

 

「ほい、いきまーす」

「あーーー」

\ぱく/

「偉いですねー雫さん」

「むぐぅ!むぐぅ!(リオさん!リオさん!)」

 

雫はトマトの味は気に入らないままであるが、それよりもリオに褒めてもらえたことにより、幸せホルモンが脳内よりドバドバ分泌され雫の心を潤わせた。そのため、トマトが口にいるので喋ることが出来ないが、たまらずに声にならない喜びを不思議な鳴き声で表していた。

 

「雫ちゃんが鳴いている!何とも至福の表情だ!そこまでトマトが美味しかったのか!?一方でリオちゃんは満足げな表情だ!」

 

ああ^~

癒し

神回

仕事がんばりゅうう

 

やがて雫はトマトを飲み込んだ。

 

「リオさん見てください!トマトが無くなりました!」

 

口をパカリと開ける雫。リオはそれをどんな表情で見ればいいのかと困った様子である。

 

「あ、はい、そうですね すごいですよ雫さん」

「もっと!もっと褒めてください!」

「雫さんすごいです!日本一! よ、トマトクイーン!」

「ああ~~」

 

トマトクイーンとは?

 

「掛け声のことならこの口ノ助にお任せ!!」

「がるるるるr」

「怖いねえ」

 

口ノ助は条件反射のように飛び出してきたが、わんこ雫によりすぐに撤退した。

 

「リオさん撫でてください」

「うぇ?」

「リーオさん」

「あ、はい」

\ナデナデ/

「うへへへへへ~」

 

雫はわんこ雫となりて、頭わさわさで頬の緩み切った幸せな表情を見せた。

 

・・・トマトクイーンて何?

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