ぱあ。
画面左には口ノ助が立っていて、画面右には雫とリオが座っている。
「いや~ ようやくオープニングの自己紹介が終わった終わったあ! 思ったより長引いちゃったね~ なんと番組史上最長記録!」
「そんな記録いらなかったです」
のほほんとした調子の口ノ助に、リオはため息交じりの返事を返す。彼女はいくつかの試練を乗り越えたことによって、番組冒頭にも関わらず、既に達成感さえ感じるような精神的疲労を負っていた。
しかしそんなリオとは対照的に、隣で微笑んでいるのは夢野雫である。
「雫ちゃんは逆に楽しそうだね~」
「はい! リオさんの本物のゴリラが見れて感激です!!」
「それだと私がゴリラみたいですねw」
「じゃあ、、生ゴリラ最高でした!」
「新鮮になりましたねw」
生チョコ生ビール生ゴリラ
新 出 単 語
は~生ゴリ生ゴリ
そんなくだらない会話を合間に入れつつ。
「じゃあ早速、企画の方やって行っちゃおうかな!?」
おどけた調子の口ノ助の言葉によって、番組は進行される。
「さて、気になる今日の番組の企画は・・・!? でれでれでれでれでれ・・・
「何だろ・・・?」
「楽しみですね♪」
口ノ助の無駄に活舌の良いセルフドラムロールを聞きながら、二人は顔を見合わせて囁き合う。
誰がBANされるか選手権やってほしい
リオの握力を図ってほしい
爆発してほしい
「でれでれでれ・・・DEN! ずばり”箱の中身は何じゃろなっっ!”です!」
「「おお~」」
やたあああああ
絶対楽しいやつ
これは盛り上がる
口ノ助が張り切った声で発表し、二人は感嘆の声を漏らした。
「あ?どんなのか知ってる感じ?」
二人の様子を見て、口ノ助が尋ねる。
「まあ一応」
「私も知ってますよ~」
「そっかそっか それなら話が早い でも一応、視聴者さんの中にも知らない人がいるかもしれないってんで、説明すると・・・」
”箱の中身は何じゃろなっっ!”とは
「今から中身の入った箱が雫ちゃんとリオちゃんの前にやって来るわけですわ それで、その箱の中身は視聴者さんにしか見えない状態なので、二人には箱の両側面に開けられた穴から腕を通してもらって、箱の中身に触れてもらって、それが何かを当ててもらおうかっていうゲームですよーーーってねぇ!」
このゲーム、テレビをでバラエティを見ていれば誰もが一度は見るような有名なものである。そしてその手間のかからなさと盛り上がりやすさから、多くの人に親しまれているゲームでもある。
そのためリオと雫の二人も、そして視聴者の多くもこのゲームのことを知っているのは自然な事であった。
「ようし! ルールの説明も済んだし、とりあえず箱を乗せる台を呼ぶかなぁ! はい、それじゃ”台”かもおおおん」
口ノ助の意気揚々とした声に呼ばれると、黒子の衣装を着たスタッフが底面の四隅にキャスターが着いた、大人の身長の半分くらいの高さのある太っとい台をスタジオの中央へ運んできた。そうしてキャスターをロックしてその場に止めると、黒子の方は姿をスタジオから立ち去った。
「来た来た来たねえ」
口ノ助は台に近づくと、その上面に人差し指と中指を足のように見立てて歩かせる。何の意味があるのかと視聴者とリオ達の関心を寄せる。すると口ノ助は指の動きを止めてにやりと笑みを浮かべると、次には手を持ち上げて、台上を子気味良い音を鳴らすように叩いた。
\ぱああんっ/
「「わあっ」」
!?
!?
うぇ!?
「あ、ごめんなあ~ ちょっと叩いてみただけだから~ごめんなあ」
口ノ助が笑いながら視聴者とリオ達と何故か台にも謝る。
そして実はこの時、
\ぬうっ!/
\ガタッ/
という声と台が揺れる音が微かにしていたのだが、それに気が付いたものは誰もいない。
「ほらでもあれだねえ~ これ、ほんっと良い音するねえ~ ね?どうよ?ね?」
口ノ助が楽しげにそう言いながら再び”バンバンっ”と手の平で台を叩く。いっぱい叩く。すっごい叩く。憑りつかれたように叩く。何かメロディーのようなものまで奏で始める。その表情にはおなじみの胡散臭い笑顔が浮かんでいて実に楽しそうでもある。
知 育 楽 器
急に台パンに目覚めた男
台ソムリエ
トントントン^^; トントントントントン^^;
雫とリオはそれを遠巻きに見つめる。
\先輩、疲れてるんですかね?/
\いっぱい喋ってましたからね~/
\まさか今度からあの音でコミュニケーション図る気なんじゃ/
\ばんばんばん!(こんにちわ!)/
\ばんばんばん!(コッペパン!)/
\\あははははwww//
こそこそ談義。
wwwww
新言語で草
意味わからんww
「皆あ!これが”なんじゃろ箱”を乗せるための台だよ! ほら、お二人さん!そんな座ってないで一緒に叩こうじゃないか!!いい音がするぜ~ まるで中身が空洞みたいだあ! あっはああああ」
口ノ助が手をちょいちょいとやって手招きをした。座ったままで完全に傍観者を決め込んでいた二人だったが仕方なく立ち上がり、台へと近づいた。
「そら叩いて叩いてっ」
口ノ助は急かすように手の平で再び台を叩いて見せた。リオも雫もそれを見て最初は笑みを浮かべながら躊躇いを見せていたが、
「ほれほれっ」
と口ノ助が繰り返しつぶやくので、ゆっくりと手を伸ばし台に触れた。
\こんこん/
リオがノックの要領で台を叩く。
「ああ~確かにい音がしますね^~」
「だろ~ ほらもっともっと」
\こんこんこん/
「おお~」
リオは感心したような声を上げ、気に入った様子で台を繰り返し叩き始める。そしてそれを見ていた雫もまた、リオに誘われるようにして台を叩けば、やはりその気持ちのいい音に気が付く。叩き始める。
口ノ助もそこへ加われば、3人のVtuberがただ台を夢中で叩いている姿がそこにはあった。
台 が ひ た す ら に 叩 か れ て い た 。
これ何見せらてるんだwww
なんか召喚しそう
儀式かな?
ドラミングやろ?
さてこの混沌とした事件現場。
主犯:ニヤニヤ眼鏡、口ノ助。台パンの衝動に駆られたヤバい奴ではなく、この一大ポコポコブームを引き起こした理由はしっかりと存在する。
それは、台の中にある。
Vtuberがいる。台の中にVtuberがいる。そしてそれを映しているカメラもまた台の中にある。(それはいずれ番組で使われる)口ノ助はそれを知っていた。そのためその”何事かと恐がっているであろうリアクション”を引き出すためにわざわざポコポコしていたわけである。
そして途中の胡散臭い笑顔も、”台叩くの楽しーーーー”ではなく”中身のリアクション想像するのおもれーーーーー”の笑みであった。
詰まるところこの男、良い感じに性格が歪んでいるのである。
「あっはあーー もう十分楽しんだよね! それじゃあそろそろ本題の”箱の中身は何じゃろなっっ!”をしようかあぁ?」
口ノ助は手を止めて、二人に言った。
「あ、そういえばあったなそれ」
「忘れてましたねぇ」
台トントンにすっかり夢中で、その事をすっかり忘れていた二人である。二人とも口ノ助の言葉を聞くと台から手を離した。
「さてさてまずは一問目を運んできてもらおうかなっ!ってことで、お二人さん後ろを向いてもらえるかい?」
「あーい」
「了解です」
「あっはあーー なんじゃろ箱かもおおおん」
二人とも口ノ助の指示に従い台に背を向けたのを確認すると、口ノ助は何じゃろ箱をテンション高く呼び込んだ。すると、長方形な箱を手に持った黒子の衣装のスタッフが再びスタジオに現れ、その箱を台の上に置いていった。
これが何じゃろ箱である。
そしてこの箱、視聴者の方の面だけが透明なプラスチック板になっていて中身が透けて見えるようになっていた。
第一問目、箱の中にいるのは・・・酒の缶である。
それが箱の中に鎮座していた。口ノ助は覗き込むように顔を伸ばしてそのことを確認すると、”うんうん”と一人頷いた。
「よしよし んじゃあお二人さん準備が出来たんで、こっち向いて良いよ~」
二人を振り向かせた。
「おお~」
「わあ~」
「箱ですね」
「箱です!」
二人は台の上に置かれた目の前の箱を見て声を漏らした。
「先輩、これなんじゃろ箱って言うんですね 初めて知りました」
「ああ! 俺が今テキトーに名付けてみたんだあ!イカすだろお?」
「わーかっこいいー(棒)」
リオは台に目を向けながらそう言った。
テキトーで草
リオならウホウホボックスって名付ける
うちの子猫にも名前を付けてやってください
↑ウホウホボックス
↑ありがとうございます
リオはそのまま箱に近づいて、”この穴に腕突っ込めばいいんですか?”と箱のみ位側面に空いた穴を見ながら尋ねる。雫も雫で箱の左側面に空いた穴を気になっているように、じっと見つめている。
「そうだよぉお! ああ、でもその前に一つ言い忘れてたことがあったんだわ!」
口ノ助が思い出したかのようにそう言うので、リオも雫も疑問符を浮かべながら口ノ助の方へと顔を向けた。
「実は今回、これともう一つゲームをやるんだけど、どっちもポイント制なんだよねえ!そんで最後にポイントが多かった方にご褒美があるんだってな!」
「ご褒美・・・!?」
「良い響きですね!」
「だから、だからだよ! お嬢さん方、今からそれぞれの穴から腕を突っ込んでもらって中身が何であるかを答えてもらうけど、それを本気で勝負するつもりでやると良いよって話なわけさ!」
「勝負・・・!?」
「良い響きですね!」
そんな重大な言葉じゃねえよww
※リオは負けることに定評があります
これは火が付いちゃうねえw
「ご褒美・・・勝負・・・ご褒美・・・勝負・・・」
リオは少しうつむいて確かめるようにぶつぶつと呟く。そこへ口ノ助が近づき、耳元に口を近づける。
そしてコショコショと、
「しかも、すっごいやつだってさ・・・」
「すっごいやつ!?」
リオはがばりと顔を上げると雫の瞳を真っ直ぐ見つめた。そうして片腕を差し出す。
「雫さん、いい勝負にしましょう!!」
ただならぬ圧と気概を感じさせる声である。
「よろしくお願いします♪」
対して微笑む雫。
勝負大好きゴリラ
リオはポケモントレーナーだったのか・・・
尚、大体負ける模様
雫は差し出された手に自らの手を重ねた。
握手。リオが手を握る。
\ギュギュギュギュギュ/
握る。
「あっ!リオさんちょっとあの!」
「頑張りましょう!」
「あの、ちょっと痛いですっ いや、激しめなリオさんもまたっ あ、痛い!ああ」
「あ、ごめんなさい!!」
め っ ち ゃ ギ ュ ウ ギ ュ ウ し て た。
リオは慌てた表情で手を離した。
さすがゴリラ
気合入りまくりだなww
これで手の感覚を失くす作戦
先制攻撃やめろwww
リオは負けず嫌いの魂ゆえに、「勝負」「ご褒美」という単語を聞いて異常に気合が入ってしまったのだった。
「はいはいはい!じゃあさっさと位置について位置についてぇえ」
ぱちぱちと手を叩きながら口ノ助に促され、リオは箱の右に雫は箱の左側に立った。
「ようしぃ 確認だけど今から二人はこれに腕を突っ込んでもらうよ そんで制限時間を設けるから、それが終わったら二人にはフリップに書いて答えてもらうからね おk?」
「はい」
「了解です!」
「はいそれでは! 第一問目、”箱の中身は何じゃろなっっ!”用意いいいいスタートおおおおお」
始まったあああああ
うほおおおおおお
(☝ ՞ਊ ՞)☝ウェーイ
口ノ助が張り上げた声を合図に第一問目が始まった。
早速リオと雫が、それぞれ片腕を箱の中へと入れる。
腕がうねうね。
視聴者からは、丁度箱の中央に置かれた酒の缶とそれを探して動き回る二本の腕が画面に映る。
「雫さん~なかなか見つからないですね~」
「そうですね・・・ あ、見つかりました」
「え、本当ですか?早くないですか!?」
「見つけました! ほらっ!」
そう言って雫はリオの手を握りしめた。
「リオさんの手です!」
「わー雫さん、手あったかいですねー」
画面には寂しそうに置かれた缶とそれの背後でにぎにぎし合う2つの肌色の手が映っていた。
ぼっちの缶ちゃん可哀想・・・
そんなところで百合すんな(ありがとうごじあます)
まさにポカン(缶)ってね・・・
↑はい極刑
「おいおいおい~時間無くなっちゃうぜぇ~~??」
「ああやばい」
「まずいですね」
口ノ助の言葉で二人は我に返ると、手を放して、再び忙しく箱の中を動き回らせ始めた。そうして最初に缶に触れたのは雫の方であった。
「あ、見つけました」
「え?どこですか!」
これは勝負だぞリオ
お前はまた負けるのだ・・・
ずーーーと迷子!
「中央の方だと思います」
言っちゃう雫である。
wwww
おいいいいいwwww
な・・・仲良しだから・・・
うちら、ずっと友やで!
「ありがとうございます! あ、ほんとにあったー」
リオは遂に念願の酒缶に手を触れた。
「あ・・・これは・・・」
リオは触れた瞬間に感じ取った。リオは今までに幾度となく触れてきた酒缶は細胞レベルでその記憶に刻み込まれていて、もはや目で見ずともその姿かたちは手に取るようにわかってしまったのだ。
だからこその悲劇ともいえる。
彼女は流れるように缶の表面を指でなぞらせて、そうしてヘッドの部分へといき、何の躊躇もなくプルタブを引っ張った。
\カパッ ぷしゅうううう/
開けた。
おいいい!
普通に開けてて草
この女迷わないwww
日常動作だからね仕方ないね
「やっべ、開けちゃった・・・」
「リオさんおっちょこちょいですね! でもおかげで私も分かっちゃいましたよ!」
「えへへへww」
「はい、しゅうりょおおおおおおおおお」
口ノ助が制限時間終了のお知らせをした。
「リオちゃん途中でなんかしちゃったねえ??」
「すいません そういう風にプログラミングされてるんで」
「あはああ~~~」
ならしょうがない(?)
リオの手は機械だったのか・・・
だから握力調整が難しいのか
あいるびいいいいばあああああああく
「それじゃあ回答してもらいましょうっかああ?」
口ノ助がフリップに答えを書き終えた二人を見てそう声を上げた。
「はいじゃあフリップを見せてください!まずは雫ちゃん!」
「お酒の缶です!」
「リオちゃん!」
「酒缶です」
口ノ助は二人の掲げるフリップをじっと見る。そして少しの静寂の後に。
「せいかああああい!!!」
「「わーーーい」」
正解を告げた。
まあ序盤だし多少はね?
おめでとおおおお
正解して偉い
「ちなみにどこの何の酒かとかはさすがに分からないよねええ~?」
「多分・・・N社のバカ絞りハイボールとかですか?」
「リオちゃんはすごいねえぇ 俺は絶対わかんないよ~ってことで、はい、こちら中に入ってたお酒、美味すぎて馬鹿になるでおなじみ”バカ絞りハイボール”です!」
「リオさんすごいです!」
「(☝ ՞ਊ ՞)☝ウェーイ」
うっそだろお前wwww
もう怖いわwww
表面にざらざらした部分があるからそれで見抜いたんやろ
酒に関してはIQ200
「それでは二問目を持ってきてもらいましょ! ほれ目を瞑って後ろ向いた向いたぁ」
再び口ノ助の指示によりリオと雫は後ろを向かされる。その間にスタッフによって箱が回収されて、代わりに新しい箱が持ってこられた。
口ノ助が中身を確認する。
「うわあ~~」
「え?」
「どうかしたんですか?」
急に嫌そうな声を上げた口ノ助に、二人は戸惑いの声を上げた、
「二人とも応援してるぜ」
中には水が張って合って、その中に泳ぐ黒くてうねうねした生き物がいた。
ウナギであった。
「それじゃあこっち向いておk! ぱぱっと二問目始めちゃうよお!」
リオと雫は振り返り再び位置へと着いた。
「そんじゃ用意いいいすたあああっと!」
「そりゃあ!」
リオ勢いよく腕を突っ込む。
「ひゃあ!」
秒で戻した。
指先に触れた水の感触がリオを驚かせたのだ。
可愛いwww
↑なにわろてんねんwww
これは雫ちゃんチャンス!
一方で雫は、落ち着いた様子で水に触れ、その存在を確かめた。次いで水面を払うように4本の指先ですーとなぞる。それでも何も触れないと分ると今度はその深さを増していく。
そこへウナギが近寄って行き、指先とウナギの身体が触れた。
「ひいっ!」
「ええ!?」
雫が可愛らしい声を漏らして、腕を瞬間的にひっこめた。リオもまた彼女の声に驚いて、再び箱から腕を引っ込めてしまった。
「リオさん!なんかいます!水の中になんかいますうう!」
「ええ何でいるんですか! ああ、いや、いますよそりゃあ!」
「なんかぬるぬるしてたんですうう!」
「うわあきついですねそれ・・・」
私のぬるぬるm[不適切な湖面により削除されました]
いいぞ、うなぎ!もっとやれ!スクショフォルダがいっぱいになるまで!
いけっ リオ!
ポケモンみたいな扱いで草
「じゃあ私もいってみますね・・・」
リオは改めて箱の中に手を入れて、恐る恐る手を伸ばした。
触れる水。
さらに深いところを目指す。そうして底にいたウナギの丁度腹あたりに指が触れた。
「ひいいいいいっっ」
リオがそのぬるぬるとした感触に声を漏らして指をびくりと動かした。それでもウナギは動かない。
リオは息をすーすーと吐いて自分を落ち着かせながら、ウナギの腹を手で握った。
「はああああっ!!今握ってます!なんか握ってます!」
「ど、どうですか!?」
「きもいです!!」
録音した!
草
ウナギ君ピンチ!
握られたウナギは、自らの危険を感じ負ったからなのか、急に体をばたつかせてリオの手から逃げようとした。しかしリオは離さない!ぬるぬるなどリオの前では無意味!
リオちゃんおかしいよ・・・
握力ステ全振りゴリラ
カミツキガメかな?
「はいしゅううりょおおおおおおお」
口ノ助が制限時間の終わりを告げたので、リオはようやくウナギを開放した。
「途中から雫ちゃん戦意喪失って感じだったね~~ ぬるぬるはきつかった?お水が苦手だった??」
「すみませんぬるぬるしたものが苦手で・・・」
「あはああ~~そんなところも可愛い!」
結局雫は、頭に触れて以降、ずっとリオの雄姿を見守っているだけしか出来なかったのだった。
「はいはいはい! それじゃあまずは雫ちゃんから回答を発表してもらいましょおお!」
口ノ助が二人のフリップに回答を書き終えたタイミングを見計らって、声をかけた。
「ではどうぞ!」
「納豆です」
「おおお~~ それはぬるぬるつながりで?」
「はい!」
「おおお~~」
泳ぐタイプの納豆だったんだよ 何だそれ
まあしゃーない
リオいけええ
「次、リオちゃん!」
「ウナギですね!」
「っっほおお~~~~~~ 良いですねえ~ それじゃあ正解したのは・・・」
静寂。
「リオちゃん!」
「やったああ!」
「うぅ・・・」
よしよしいける
馬鹿なリオが正解してる・・・だと・・・?
仕込みか?
↑リオに仕込みが出来るわけないだろいい加減にしろ!
「リオちゃんが1ポイントリードしてます!さて第三問!これが”箱の中身は何じゃろなっっ!”の方では最終問題となります!お二人さん、頑張ってください!」
「はい」
「頑張ります」
「それじゃあ目を瞑って後ろを向いてくださああいっ」
再びの箱チェンジ。しかし今度の箱は今までとは明らかに様子が違った。
なんと・・・中身が無かった。
トラブルかな?
空っぽだあ
引っ掛け・・・?
視聴者が訝しんでいる中、口ノ助が台へと近づいてきた。そして台を4回ノック。
\トントントントン/
すると、、
\ひょこっっ!!!!/
なんと箱の下の台から駿河武士の生首が生えたのだ! それは箱の真ん中の位置で、ホラー映画よろしく首から上だけが出ている。
つまり次の中身は・・・駿河武士である!
武士いいいいいい
何でいるんすかwwww
髭えええええ
生首での初出演オッスオッス!
先述の通り、口ノ助は台をバンバンしていた。それはなぜか。
この男が台の中に隠れていることを事前に知っていたからである。
口ノ助はいたずら野郎なのだ。
口ノ助は箱の赤みを覗き込んで駿河武士と目を合うと頭を下げて一礼した。
”頼むぜ武士ちゃん”
それに対して武士も少ない首の可動域ながら、頭を下げる。
”お任せあれえええ!”
口ノ助はグッジョブサインを武士に見せた。
「それではお待たせお待たせ! 準備の方が整ったってことで!こっちむいていいよ~」
口ノ助の呼ぶ声で雫とリオは振り向き、そうして立ち位置に行った。
「今回は先にヒントをあげちゃうよ! 親切なんだぜ俺は~~ てな感じでヒントは、二人に関係するものさ!」
「二人に・・・」
「関係するもの・・・」
二人は考えるように言葉を反芻した。
「まあとりあえずやってみそってことで、第三問目すたあああとおお」
第三問目が始まった。
リオも雫も同時に腕を箱へと突っ込む。今度は水が張ってあるわけでも、ぬめぬめしているわけでもないので、雫もリオも余裕そうに腕を動かしている。
「なんでしょうね雫さん、関係してるものとかって・・・」
「全然思い浮かばないですよね・・・」
二人は正反対の人間である。そのためこれは当然のことともいえた。ただ共通していることもある。それは同期であるという事。
それさえ気づければ或いはと言ったところだが。。
「また真ん中の方なんですかね~~?」
「かもしれませんね」
リオと雫は腕を箱の真ん中へと伸ばす。そうして最初に武士首へと接触したのはリオであった。
「えっ!? ナニコレ!?」
リオが触っていたのは武士のちょんまげである。武士はリアルでも躊躇いなくちょんまげスタイルである!
そしてちょんまげはワックスで固められていて、リオはその硬い表面をするすると指先でなぞっていた。
「なんか全然分かんないっていうか、触ったことすらない気がする・・・」
ちょんまげだもんなww
分からないぞ もしかしたらちょんまげを触らせる仲かもしれない
↑ちょんまげ・・・触る・・・はっ! 閃かない!!!
むずいぞ~これ
リオは困惑した声を上げていた。
そもそも髪の毛を触るなど全く予想していないリオにはその毛の束の感触は何とも奇妙なものに感じられ、ちょんまげを連想するなど不可能な事であった。
「ああ、私も見つけました」
リオが何なのかを考えていると、雫が言った。
「なんか柔らかいですね ムニムニしてます」
雫が触っているのは武士の耳たぶであった。雫はその感触に得も言えぬ親しみを感じながら、やがて指先で掴むとぎゅーーーと引っ張ってみた。
「すごいですよ!そこそこ伸びますよこれ!」
”いだだだっだだだだあだっっ”
武士は声が出せない状況の中でもはっきりと苦しんでいるのが分かるほどに、痛そうな表情を浮かべながら雫の手を入れてる穴の方向へと引っ張られる。しかし、首を出してる穴は狭いので肩が引っかかり、耳たぶが千切れそうなほどに伸ばされるのであった。
”夢野雫!意外と乱暴な女で候”
こうして二人とも武士首に接触したのは良いものの、肝心の中身は分からずにいた。
「二人とも悩んじゃってますかい??」
「そう・・・ですね、難しいですね」
「私もよく分からないです」
「そっかそっか だったらチャンスをあげようじゃないかぁ、ええっ!!??」
口ノ助はそう高らかに宣言した。
「「チャンス??」」
「そうチャンス! 今から二人には数秒間だけ背景を流れるコメント欄を見る権利を与えようってね! それを参考したら中身もあてられるってもんでしょ!」
うほおおおおおお
リオ達の命運が俺たちに託された・・・?
きたああああ
口ノ助が言った。
これは武士への救済処置でもある。武士も意外と長い事この番組のこの瞬間の為だけに台の中で待機していたわけで、この場に及んで当てられないとは悲しすぎるというものである。
そのための、流れるコメントを見るチャンスである。
「ってことなんでコメント欄の皆!出来れば答えをそのまま書くのはやめて、そのヒントになるものを書いてほしい!」
口ノ助からのお願いである。とは言いつつも、口ノ助や番組スタッフもさすがに答えの一つでもコメントに紛れ込んでしまうであろうという事は分かっていたし、それで分かるならそれでも良いという判断であった。
なにはともあれ、それで武士は浮かばれるだろう。
「ほいほいっ書いて書いて!」
しかしこの時、口ノ助たちはコメント欄の団結力を侮っていた。彼らはリオや雫のファンであると同時に、その配信一つ一つを楽しみにしている者でもあるのだ。
ゆえにコメント欄に答えなどという無粋なものは流さない。
代わりに流れるのは、場面が面白くなることを願った素晴らしいコメント達(注文)である。
「はい!じゃあコメントを3秒だけ見て良いよ! どうぞ!」
「「はい」」
二人はコメント欄の流れる背景(リアルでは大きく広がった白い布にコメントを映し出している)を振り返った、
めっちゃ引っ張ってみ
引きちぎるつもりで!
思いっきりな
見事なチームワークによって、武士のちょんまげを引きちぎるように誘導が行われた。
ちょんまげ死亡。いと無常。
そしてリオも雫もそれを知らずに真に受ける。
何故ならそれが、武士のちょんまげだとは知らないのだから。
「硬いのものって私が触ってたやつですかね?」
「多分そうですね・・・」
「はい チャンスタイムしゅうりょお! あとは自力で頑張るのです!」
こうして二人はまた前を向いた。
リオは、中身の正体こそ分からなかったが、とりあえずコメントに書かれていた通りのことを実行してみることにした。
腕を箱に突っ込む。
中央へと進める。
再び、硬い何かに出会う。
リオはそれを”むんずっ”と掴むと、箱の中の上の空間に向かって思いっきり引っ張ってみた。
”あだだああだだだあああああああああ”
武士の顔が口を大きく開けて、驚きと痛みで困惑している表情で、上へと伸びる。しかし台に阻まれるので一定以上は上がれない。
「どうですかリオさん?」
「うーーん、もう少しだと思います」
より引っ張る。
”や゛め゛ろ゛お゛お゛お゛お゛”
wwwww
死にそうで草
すまねえ
武士よ、お前は犠牲となるのだ・・・
「んんっ もうちょっと!!」
”ひ゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛”
「ぐぬぬぬぬっ!!!」
”死ぬ゛う゛う゛う゛う゛う゛”
「よいっっしょおおおお!!!」
武士は限界を迎えている。そんな時、リオが今まで一番大きく力を込めた。武士は我慢の許容を超えた。
彼は、、彼は生きる選択をした。
「死゛ん゛て゛た゛ま゛る゛か゛嗚゛呼゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
\どがあああああああっっ/
「お゛ら゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
\ばばばばばばばあああっっ/
台が崩壊した。
箱が破裂した。
轟音がした。
中 か ら 駿 河 武 士 が 現 れ た ! !
「「えっえええっええええええええ」」
wwwwwwww
草
草
ぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃああああああwwwww
雫とリオが叫びながら床へと倒れ込んだ。武士はそんな二人を見下ろしながら言う。
「某はああああああああ江戸の大剣豪おおおおおお駿河武士だあああああああああああ!!!!!」
「ということで中身は駿河武士さんでしたああ!」
「頭゛か゛痛゛い゛ん゛し゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
武士、心からの叫び。
wwwwwwwwww
神回
はい、放送事故っとwww
うほおおおおおwwwwwww
「えええ、え、え、何で、武士いるの?」
「番組に呼ばれたからだああああああああ」
「え、このためだけに!?」
「そうだああああああああああああ」
可哀想wwwww
よう頑張ったwwwww
武士、お前が一番だ
「夢野おおおお雫うううう!!!」
「ふぇっ、ああ、はいっ何でしょう!」
「いたあああああああああああああ」
「ふぇえええええっ!?」
武士は咆哮を上げながら雫へと近づく。
「ああああああああああああああ」
「ひいいっ」
「びやああああああああああ」
「ひいいいいい」
怯える雫。力を溜めるような叫び。そしてぇぇぇ!!
「・・・ファンですっ」
よろしくね☆
「あ、ありがとうございます」
急に丸くなるなよwwwww
こwっいwwつwww
ただのファン(レベルMAX)
武士はこれで役目を果たした。
「はいそれでは武士さんの退場ですぅ! 皆さん、拍手で送りましょう~~~」
口ノ助を筆頭にまばらな拍手に包まれながら、武士はスタッフが持ってきた手押しの荷台に膝を抱えて座らされ、スタジオの外へと出荷されていった。
\ドナド~~ナ~~ド~~ナ~~/
流れるBGM。
総出演時間3分。
ありがとう駿河武士。
さよなら駿河武士。
うるさかったね駿河武士。